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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2012-12-29

結局enchantMOONって何なのよ、という疑問に対する答えはいつ出るのか? 18:41

 携帯電話の予測変換方式であるPOBoxを発明し、Appleジョブズ直々の特命を受けiOSの日本語入力IMEをプログラミングした、「ユーザーインターフェースの神」こと増井俊之さんと、マイクロコンピュータを見つめて35周年の角川アスキー総研の遠藤諭さんと、もともと鼎談をする企画があったものの、ふたを開けたらなぜかenchantMOONの話になってしまった。

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ASCII.jp:世界をプログラミングせよ! でもってMOONってな〜に? (1/7)

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 でまあ、この鼎談の時点では発表していいことというのが何も決まってなかったので、僕も途中で混乱してしまっているのだけど、enchantMOONに関して僕がどうしてここまで過剰に勿体ぶっているのかというといくつか理由がある。


 ひとつは、enchantMOONそのものがUEIという会社にとって非常に重要なプロダクトであること。従ってできない約束はできないのでできるだけ言質をとられないようにしないといけない。

 もうひとつは、あまりにも新しいデバイスなので、あまり簡単に説明しても意味がよくわからないだろうということ。


 僕は口が上手すぎるので、僕自身が説明しても誰も信じてくれないだろうから、こればっかりは誰か他の人の力を借りる必要がある。


 そこで複数のジャーナリストさんたちに事前に繰り返し説明を行って、僕たちはなぜこれを作るのか、どうやって作って行くのか、どうしてこうなっているのか、ということを丁寧に丁寧に説明したあと、それを彼らが噛み砕いて「ちゃんと地に足の着いた」enchantMOONの解説、というのを書いてくれることになっている。


 また、僕が東浩紀さんを必要としたのもこのためで、僕の説明というのはどうしてもエモーショナルなものになってしまう。僕自身がハードウェア事業をやるというのが子供の頃からの夢だったので、冷静な言葉で語るのが難しい。僕個人がいくら「これは○○が○○して、○○なところが凄い」と言っても、それは僕自身や僕とごく近しい人にしか正確に伝わらない。


 それでまずはITジャーナリストの方や、遠藤諭さんみたいな長年のコンピュータの歴史や文脈を知っている方に協力してもらうのはもちろんのこと、より広い範囲でものごとを総合的に捉えることができる社外の思想家・哲学者として東さんの認識力・説明力が必要になった、というわけ。

D

 東さんが具体的にどう関わっているかというと、例えば今回公開されたプロモーションビデオ、これは全4回のシリーズなんだけど、このストーリーラインとして「Brave New Story」をやるんだと、それを決めたのが東さん。


 僕は最初、もっとすごく軽く考えていて、「まあアップルも1984でMacintoshのデビューをガツンとやったし、僕らもなんかそういうのやれたら面白いかもね」くらいのイメージだった。


 樋口さんはちょうどAKB48のロケをしたあとで、「まあ女の子とかと南の島、沖縄とかグアムあたりでさ、バーッと。楽しくやりたいよね。どうせ予算ないでしょ?」「うん。予算ないです。最小の予算でお願いします」「しゃーねえなー。まあせめて楽しく撮りましょうよ。ワッハッハ」くらいのノリだった。


 樋口さんとそういう話をいろいろしていたら、「ただ撮るってのもなんだから、文脈的なとことか東さんにいろいろ知恵を借りたいよね」という話が樋口さんから出て来た。それで「ちょっと悪いんだけど来てくれない?」と。

 やってきてものの数分で東浩紀はなぜこのムービーを作るのか。このムービーは何であるべきか、なにをベースにすべきなのか、どういうテーマ設定で、どう撮るべきか、ということをまるでマシンガンのようにバーッと語ってくれた。

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 東浩紀が考えた世界観を、樋口監督がどんどん画にしていく。

 二人は10年ぶりに会ったらしいんだけど、凄いスピードのコラボレーション。10年ぶりに再会してわずか30分で楽しい南の島ロケは吹っ飛び、壮絶なディストピアものに変わった。

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 予算は自主制作映画並みしかないからさあ大変。中央で頭を抱えているのがプロデューサーの松野さん。このときまでに彼が立てていた予算計画が全て吹き飛んだ。苦笑いしてるのは撮影監督の湯浅弘章さん。押井守さんの弟子として数々の映像制作に関わって来た。


 樋口さんはその場でヤッターマンやガンツの実写版衣装を担当した竹田団吾さんに電話して、「わるいけど再来週一日か二日空けてくんない?」とアポをとっていた。


 しかし無茶苦茶。だってミルナイン並みの予算で樋口特撮作品を撮るって話になっちゃったんだもん。本当ならこの時点で話が終わっていてもおかしくない。

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 飯を食いながら突然樋口さんがノートに絵を書き始めた。東さんがなぜ「Brave New World」をやるべきだと言ったのか、それはまたそのうち明らかになると思うんだけど、そのディストピア観をベースに「与えられた快楽で満足していて、自分たちが拘束されていることに気づかない人間たち」のイメージが作り込まれて行った。


 「たとえば今のスマートフォンの世界観では、人差し指と親指しか使わずにオペレーションできるようになっていますよね。それが便利だとみんなが信じ込んでる。だとしたら、他の指は要らないから拘束するような感じだと思うんですよ。iPadが見るための端末だとすれば、MOON・・・enchantMOONは作るための端末。快楽を受け入れるのではなく、自ら主張するための道具。MOONはペンだから、拘束具が邪魔になる。拘束が解けたところで自分の頭で考える、自分の考えを主張する、というテーマを暗示させてはどうでしょう?」


 東さんが言うと、樋口さんがあっという間にイメージボードを書き上げる。


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 ものの数分で三枚ものヴィジョンが纏まって行く。もの凄い早技。エヴァンゲリオンのイメージボードもこうして作られたのか!

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 樋口さん直筆のイメージボードを見ながら、ストーリーのディティールを説明する東さん。

 凄いコラボレーションが目の前で起きていた。

 

 このスケッチを竹田団子さんに送り、松野さんと湯浅さんは樋口さんが見つけて来たという長崎の離島へロケハンへ。


 この打ち合わせからわずか一週間でオーディション。

 この短期間で、しかも低予算で全ての権利を買い上げるという無茶なリクエストにも関わらず8名の子役がオーディションに参加し、満場一致でヒロインの小泉遥香さんが決定した。オーディションの現場で発表と同時に団子さんが採寸。すごいスピード感。


 それからわずか一週間後にはロケ開始。15人しか泊まれない公民館に樋口監督以下スタッフ全員雑魚寝で、しかも最後には取材に来たジャーナリストさんやヒロインのお母さんまで総出で手伝うという壮絶なものになった。


 僕が僕自身の言葉でenchantMOONを語るよりも、色々な人の目線で語ってもらった方がよりフェアでわかりやすい言葉になるのではないかと思っている。


 だから今回は僕が自分の言葉で語るということを意図的に避けているのだ。


 とりあえず今言えることは、次のPVは1月4日公開ということ。同時に詳細な取材記事もアップされる。

 CESにあわせて、さらにもうひとつ別のムービーもアップされるかもしれない。


 enchantMOONは少しずつ、繰り返し説明していくことが必要な端末だ。

 クセのつよいラーメンと同じで、最低三回は食べてもらわないと魅力が解ってもらえない。

 まあ三台買って下さいとは言いませんので


 週アスPLUSでは安倍吉俊さんの書いたイメージラフスケッチも見れます

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『enchantMOON』のPV第一弾が公開、タブレット形状であることが判明(追記あり) - 週刊アスキー

http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/121/121986/

↓enchantMOON公式ページはこちら

http://enchantmoon.com