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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2013-10-05

enchantMOONのこれまでとこれから 07:22

 2.6.0も無事リリースされたので、いちどここでenchantMOONプロジェクトのこれまでを振り返り、これからのことをひとまずまとめておきます。


 まず、enchantMOONの現状に関して

 先日、開発者向けのドキュメントを公開しました。

404 Not Found

http://enchantmoon.com/news/?p=391

 ブコメで2.6.0の新機能の使い方がよくわからないという指摘を受けたので、別記事を起こしました。ぜひご覧下さい

wise9 › [enchantMOON] MOONPhase 2.6.0に追加された「初期設定ブロック」を使おう!

http://wise9.jp/archives/8345


 ハードウェアそのものに関しては、デザイン上、機構設計上、製造上、さまざまなレイヤーで問題があり、経験値が少なかった故に、スケジュールを満足に守ることが出来なかったことと、同時に工場内部、そして成田でUEIが検品するときに、最終的に検品拒否率が15%以上だったこと、工場が度重なるスケジュールの遅延を重ねてきたことなどをふまえて、一旦、新規の予約受付を停止しています。工場は製造を続けており、それは今月中には納品される予定です。




 即納在庫はわずかだけれども存在しています。

 アスキーさんが書籍の発売にあわせて、アスキーストアで限定50台だけでも販売したいというのでそれはさすがに仕方が無いということで許諾しました。これは即納体制で販売される初めてのenchantMOONということになります。


 その他の部分については、enchantMOONを、今まで売ったことがないチャネルで売って経験値を稼いでおきたいという気持ちから、数週間後を目指して再度、残り在庫の販売計画を立てています。


 ソフトウェア、MOONPhaseに関しては、2.6.0でかなり改善された部分も多いのですが、まだまだ荒削りな部分が多いと認識しておりますし、当初のイメージしたビジョンとは程遠い状態で、まだ道半ばにあると言えます。


 なぜそうなってしまったのか、と言うと、主な原因はコミュニケーションのロスにありました。

 Androidとはいえ、基盤が変わればSDKは変わる。ドライバ類も変わます。ところがどうも中国のメーカーには、ソフトウェアエンジニアが殆ど居ないらしく、メーカーであってもSDKをきちんと用意できてないケースが多かったのです。ソースを貰っても、一部が脱落していたり、ドキュメントの英語が間違っていたりして、Saturn-Vの担当者はずいぶん混乱していました。しかも、開発途中でSDKがどんどん変わるので、MOONPhaseの開発チームはその変更に大きく振り回されることになってしまいます。ようやくメーカー側から提供されるSDKが確定し、枯れてきたのが3月末でした。


 もう一つは書き味の追求で、これに通常よりも時間を掛けた結果、基本機能の実装やチューニングをする時間を充分にとることができませんでした。


 実装を担当するプログラマーの強い要望で機能を削ったり、仕様変更した場所がずいぶんあります。

 今後は、これを当初の企画コンセプトに近づけていくという方向性でバージョンアップしていく予定です。


 また、機能要望に関してはIssue Tracker(https://code.google.com/p/enchantmoon/)を公開していて、ユーザーの皆様からの要望を広く募り、毎週の定例会議でトリアージ作業を行っています。既に100以上の要望のトリアージが終わっており、現状は一段落していますが、2.6.0公開に際して、さらに要望が寄せられると期待しております。

 MOONBlockに関しても、できることをこれからもっと増やして行きたいという開発チーム側の意志があります。過去に例のない仕組みであり、手探りの部分も多いのですが、継続的にやる予定です。



 enchantMOONの現行世代機に関しては、ハードウェア、ソフトウェアともに未成熟であることは認めざるを得ない状況です。とはいえ、あの時点で発売していなければ、プロジェクトは解散し、僕は会社を追われていたかもしれません。


 ソフトウェアに関しては、今後もバージョンアップを続けて行くことで、改善を継続し、次につなげて行きたいと考えています。


 ハードウェアに関しては、内部ストレージエラーが、ハードウェア的な問題であることを確定するのに時間が掛かってしまいました。ソフトウェア的な問題、またはハードウェアの問題、どちらも検証したのですが、バラバラな状態では正常に動作するものが、組み合わせによっては動作しなくなることを工場側に証明するのに時間がかかり、これがハードウェア内部の相性問題に起因することを先方に認めさせることができたのは9月頭の時点でした。現在この問題は、工場側の責任に於いて保証されており、現象が発生する個体に関しては適宜内部基盤の交換対応をさせていただいております。


 現行世代のenchantMOONをビジネス的に見ると、プラスマイナスゼロか、ほぼ赤字、です。

 特に、製造が遅れたことになって、分割して輸送しなければならず、航空機や通関手続きの費用が予定よりも大幅に膨らんだ(数百万円が数千万円に)ことが大きかったです。この費用によって、本来得られるはずだった利益が吹き飛び、最悪のケースでは一台あたり271円の粗利しか見込めなくなってしまいました。


 これは製造の遅れと、倉庫の専有面積と占有時間に主な問題があります。


 そこで、製造プロセス全体を見直す必要がありました。

 ひとつの工場に頼り切るのが危険であると判断し、実は6月時点から、深圳にある別の工場とも実験的にコンタクトをとり、別プロジェクトを進めていました。


 別の工場を使って日本国内の教育サービス大手企業のタブレットを使った学習の大規模な実証実験のための端末のOEM製造を我々が担当させていただきました(このことについてこの表現で言及する許可を先方からいただいている)。


 実験なので規模は小さい(1000台程度)のですが、他の工場で製造した場合、きちんと期日までに納品できるか見極める経験値を積むことを目的にしていました。また、技適にスムーズに合格したのも経験値としては大きかったです。前回は日本国内で行ったのですがラボが秋田で工場が深圳と絶望的に遠く、しかもラボが非常に混雑していて全く時間がとれない状況の中、回路の変更もままならないという状況でした。中国国内で日本の技適をとれる試験会社を見つけ、きちんと国内で販売できたのは大きかったです。CPUとGPUもクワッドコア化し、HDMI端子もついていてIPS液晶を搭載していて、USBから充電できます。enchantMOONの次世代機にもこのノウハウは必ずフィードバックされます。


 クライアント企業に中国でのODM製造経験者の方がおり、その方たちと実際に工場を視察し、注意点などを充分ふまえた上で新しい工場と交渉し、これに関しては、10月1日に無事、予定通り全ての端末を納品することができ、ほっと胸を撫で下ろしています。


 これに関しては、年内にクライアント企業からUEIの関与も含めて正式にアナウンスされる予定だそうです。


 どちらにせよ、我々はこれによって二回の工場生産という経験値を積むことが出来たので、次世代機はより安定した生産ラインで製造ができると考えています。


 この端末では既にSaturn-Vが動作しており、高性能なデジタイザーとIPS液晶を搭載した端末を教育用途向けに提供する実績が出来ました。今後のことを考えると、これは非常に大きな一歩です。


 とはいえ、ベンチャー企業にとって、収益性がトントンの仕事だけをしていては、プロジェクトの継続性は非常に危うくなってしまいます。現に主要株主の中には、ネットの評判を見てハードウェア事業から撤退してはどうかとかなり早い段階で提案する人も居ました。僕は時間をかけてバージョンアップを続けて行けば、必ずユーザの信頼は取り戻せるし、今ここで撤退したら、それこそ永久に信頼を喪ってしまうと主張し、同時にビジネスを広げるためのパートナーシップを早期に確立することの重要性を訴えました。


 そこでenchantMOONのプロジェクトをより大きく発展させていくことができるような事業パートナーを獲得することが、このプロジェクト全体にとって重要な関心事になりました。


 要はenchantMOON本体のビジネスがトントンであっても、その先の発展性、将来性に目をつけ、一緒に未来を作り出す可能性を模索してくれるパートナーが必要だったのです。そのことが株主を安心させ、事業の安定性を担保する存在として、しっかりとした結びつきが必要でした。


 例えば、かつてのAppleやNeXTにとってのキヤノン販売(Macintoshの代理店やNeXTへの出資などを担当)のようなパートナーを見つける必要があったというわけです。


 その意味で、今回、我々は最も理想に近いパートナーを得ることになりました。

 既に両社の取締役会決議を通過し、今月末にも正式に新会社が始動する予定で、今は物件を探しているところです。


 新しい組織では、enchantMOONの持つ可能性をさらに大きく広げることに集中し、一年、二年といった短期スパンではなく、3年後、5年後、10年後といった中長期的スパンで事業のグランドデザインと製品試作・開発を行って行く予定です。


 enchantMOON、およびMOONPhaseのアーキテクチャにおいて重要な特徴は、二つあると思います。

 ひとつはスケーラブルUXです。

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 現状の商用OS、WindowsとMacOS、そしてAndroidとiOSのいずれも、画面のサイズがデスクトップ以下の、シングルユーザ向けUXしか想定していません。

 しかし、仮に今後、未来世界において、会議机がひとつの巨大なコンピュータになり、複数人が同時に同じ画面を使用するなどの用途を考えた場合、現状の延長上にあるUI/UXではなにもできません。


 現状のUI/UXはあくまでも一人の人間が一人で使うコンピュータのためのUI/UXであり、複数人が同時に使うことを想定していないからです。


 UEI/ARCでも当初から電子黒板を導入していましたが、Windowsで起動する以上、文字通り黒板としてしか使うことが出来なかった。これでは電子黒板である意味がほとんど感じられませんでした。


 ところが、MOONPhaseは、UI/UXの実現において、NO UIというコンセプトを貫いています。

 このコンセプトの重要なポイントは、利用する画面のサイズや場所を一切選ばないということです。同時多発的に利用することが出来、なおかつ、ユーザは自分の書きやすい大きさの文字を書いて、それを指で丸く囲んだところがUIになるという仕組みです。

 これなら、シール台帳の出現方法を工夫するだけで、すぐにマルチユーザ向けのシングルスクリーンUI/UXとして拡張することが出来ます。


 Microsoftがシャカリキになって目指した、デスクトップとモバイルの融合は、Windows8によって派手に失敗しましたが、NO UIならば完璧に実現できます。この差は非常に大きいと思います。


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 もう一つは、データとアプリケーションの逆転構造です。


 現行のどのOSでも、アプリケーションにデータが従属するという構造は20年以上も変わっていません。


 WordのファイルをExcelが読み込むことはできません。ただし、OLEというややこしい機能によって、Wordの文章をExcelに張り込むことはできなくはありません。しかしこれは、大掛かりなわりには効果が薄いやり方です。


 なぜそういうことが起きてしまうのかというと、OSがきちんとデータフォーマットを定義していないからです。

 複数のアプリケーションが同一のデータを編集するコンパウンドドキュメントのアイデアは、それほど目新しいものではありません。

 AppleがOpenDocを提唱し、坂村健は仮身/実身モデルをBTRONで示しました。


 それぞれ優れているのですが、それぞれ上手く行きませんでした。優れていれば上手く行くというわけではないのが難しいところです。


 Microsoftだけが唯一、OLE(Object Linking and Embedding)で実用的なコンパウンドドキュメントを実装したのですが、現在きちんと活用されているとは言い難い状況です。ExcelにWordの書類を張り込んで使ってる人がどれだけ居るのでしょうか。そもそもそんな機能がある事自体、知らない人が多いのではないかと思います。


 この中で最も優れているのは仮身/実身モデルだと思いますが、いかんせん実装系が少なくて充分に研究されていません。


 僕がenchantMOONを単なるソフトウェアではなく、ハードウェアとして事業化しようと考えたのは、BTRONが最終的にソフトウェアとしてだけ販売されて、それがビジネスとしてなかなか広がって行かないという現状を見たからです。


 魂には依り代が必要なのだと思いました。


 あまたのコンパウンドドキュメントアーキテクチャが失敗した原因は様々ですが、例えばOpenDocは既存のソフトウェアビジネスの延長上に位置づけようとした結果うまくいかなくなり、OLEはコンパウンドドキュメントを扱う主役を決めなかったのでどちらとも言えない中途半端なキメラのようなアプリケーションを生み出すことになりました。


 そのうえ、OLEのプログラムを書くのが難しすぎます。

 僕は四回挑戦して、四回とも挫折してしまいました。

 なにしろOLEのバイブルみたいな本が、実のところ、聖書よりも厚く、難解なのです。

 それを隅々まで全部読んでも、思い通りのOLEコンテナを作れるようにはならないのも失望を大きくさせました。


 とはいえ、いずれにせよ、これからのOSはコンパウンドドキュメントの方向に行かなければなりません。これは必然的な流れであると思います。人間はExcelを使うためにコンピュータを起動しているのではなく、データを扱うために起動しているのです。道具に人間の方を合わせるなんていう今の現状が、そのまま続いて行っては人類の進歩は袋小路に入ってしまいます。


 しかし、OpenDocの惨めな失敗と、OLEの複雑すぎる構造は、人々を混乱させ、OSの本質的な進化から目をそらせることになりました。その結果うまれたのが、WindowsVista以降の姑息な見た目の変更やWindwos8のとても合理的とは言い難いUXの大幅な変更でした。


 ちょうどSGMLが理念としては優れていたものの、実際にはほとんど実用的には使われなかったのと似ていると思います。その後、SGMLはXMLとしてより実用的なものに生まれ変わります。


 僕は過去のコンパウンドドキュメントの最大の欠点は、編集と表示環境の分化にあると思っています。

 OpenDocを例にとると解りやすいのですが、OpenDocでは、ひとつのドキュメントに画像やテキストを埋め込むことができ、画像やテキストはそれぞれ異なるプログラムで編集・表示されるようになっていました。


 メールかなにかであるドキュメントを受け取った時、そのドキュメントに含まれている"全てのデータ"に対するビューアアプリケーションがインストールされている必要がありますが、たいていはインストールされていません。下手をすると、ある一部分のデータを見るために、ビューアを別途買わなければならない可能性もありました。


 そんなもの、誰が喜んで使うのでしょうか。

 結局、この世代のコンパウンド・ドキュメントというのは、データの内容に関わる管理をOSが放棄していたのです。データの内容はあくまでもアプリケーションに任せていて、OSはアプリケーションを管理するものであるという前提を覆すことが出来なかったことに原因があります。



 ところで、実は既に我々は、非常に強力なコンパウンドドキュメントの実装環境を持っています。

 HTML5です。

 HTML5は、かつて皆が理想としたコンパウンド・ドキュメントの理想形に最も近いと思います。

 ハイパーテキスト構造を持っていて、画像とテキストを扱うことができ、高度なプログラム機能も内蔵しています。ビューアが必要でも、ビューアプログラムごと、ドキュメントとして配布できるのがHTML5の強みです。

 我々が新しくコンパウンドドキュメントフォーマットを作る必要はありません。HTML5で充分なのです。

 ただひとつの問題は、HTML5がコンパウンドドキュメントの最終進化系であるという、その前提にたって設計されたOSが世界のどこにもなかったことです。FirefoxOSやPalmPreはHTML5ベースですが、あれは単に既成概念のアプリケーションをHTML5で実装できるようにしているだけで、コンパウンドドキュメントとしてHTML5をとらえているわけではありません。


 HTML5によって、ユーザは「ビューアの制約」からようやく解放されました。

 編集は無理でもせめてみることだけでもできれば、現状はずっとマシです。


 次の問題は、HTML5は流通性が高く優れたドキュメントフォーマットであるが、多くの場合、それを作成する環境がOSと切り離されているということです。多くは有料の別アプリケーションです。これほど重要な機能なのに、OSが一切関与していないのです。



 未来のコンピュータは、あらゆる細かな機能について、ユーザがそれを必要か不要か選択できるようになっているべきだと、僕は考えています。


 enchantMOONでは、HTML5がコンパウンドドキュメントであるという前提に照らして、アプリケーションとデータの関係性を逆転させています。

 これがMOONPhaseが(実装上はAndroidベースではあるけれども)、独自のOSであると名乗る根拠となっています。

 OSの定義には色々ありますが、そのうち重要なひとつは、「アプリケーションとデータのあり方を定義する」というものです。

 例えばWindows3.1は、MS-DOSの上で動いていたので、厳密にはOSではないとも言えますが、Windowsアプリケーションが動くのはWindowsの上だけで、従ってWindowsアプリケーションを定義しているという点では立派に独自のOSです。


 MacOS、iOSも、内部はDarwinというBSDベースのUNIXですが、iOSアプリ、MacOSアプリを動作させるにはDarwinだけではダメです。従って、MacOS、iOSも独自のOSであると言えます。


 同じ意味で、MOONPhaseも、内部的にはAndroidを使っていますが、MOONPhase向けのシール、またはハイパーステッカー(HyperSticker)と呼ぶ機能も、MOONPhaseなしでは動きません。従って、MOONPhaseは独自のOSです。


 シールは、これまでのGUIアプリケーションとは全く異なる概念を提供します。

 MOONPhaseは、コンパウンド・ドキュメントの作成・編集機能をOS側に持たせた特殊なOSであると言えます。

 ハイパーリンク、作図、などをOSだけで行うことが出来るようになっているのです。

 

 シールは、そうして作られたコンパウンドドキュメントを「変化」させるためのフィルターとして機能します。


 その結果、「Undo」を行うシールを作ることが出来たり、データを書きはじめから書き終わりまで「再生」するシールを作ったり、カット&ペーストをするシールを作ったりすることができるのです。


 これは、GUIアプリケーションの歴史そのものから考えれば、あり得ないほど大きなパラダイムシフトであり、思考のための道具としてのコンピュータの可能性を、無限大まで拡張するものです。


 コピー&ペーストやUndo機能はOSが提供して当たり前だとみんなが思っていました。


 しかし実際にはUndo機能はアプリケーションが個別に実装するケースが多いのです。

 だから、Undoができるアプリケーションとできないアプリケーションが混在することになります。これは複雑です。でも仕方ないんです。アプリケーションによってデータ構造が違うので、データの扱い方を知っているのがアプリケーションだけならば、そういうことになります。


 MOONPhaseはデータの扱い方を知っているOSです。それはMOONPhase自身のみならず、全てのシールアプリケーションがデータの扱い方を知っています。従って、Undoやコピー&ペーストのような基本機能も、アプリケーションとして後から追加可能なのです。


 MOONPhaseではできるだけシンプルに自分のやりたいことを実現するシールだけをシール台帳に集めて、ミニマムな環境で思考に集中できるよう配慮しています。


 たとえば僕はアイデアスケッチをするときにはボールペンを使います。

 消しゴムは使いません。ボールペンの書き味が好きなので、一発で書く爽快感がアイデアの源泉です。


 しかし人によってはUndo機能が欲しいという場合もあるでしょう。

 単なるUndoではなくて、好きなだけ手順を戻せるとか、さらにRedoもできるのがいいと思う場合もあると思います。

 MOONPhaseではそういうシールを、作ることが出来るのです。

 ユーザは好きなUndo機能を自分で実装するか、他に誰か賢い人の作ったシールを活用することができます。


 つまり、道具を自分たち自身の手で拡張したり、カスタマイズしたりできるのです。


 最もイメージとして近いのは、UNIXのフィルタープログラムです。

 UNIXではテキストファイルを様々なフィルタープログラムにかけることで複雑な処理を簡単に行わせることができます。

 ただしこれはテキストデータに対してだけできることで、画像データはUNIXが生まれたときにはまだ一般的ではなかったから、できませんでした。


 MOONPhaseでは、基本は画像であり、テキストデータではありません。

 だからこそ、シール側のプログラムにはこれまでにない大きな可能性があると思います。


 MOONPhaseはコンピュータの歴史を継承しつつ発展させた、新しいパラダイムを具現化したものであり、当の開発チームさえも予想していなかった大きなジャンプを遂げている、と僕は評価しています。よくやってくれた、と思っています。


 半分は意図的な、半分は偶然の産物であり、結果として非常に筋の良い構造を持っています。

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 さらに、MOONBlockは、アラン・ケイ氏との議論の中で、学習曲線を意識することによってその存在意義がより明確になりました。

 MOONBlockは全ての人々をプログラミングさせるための枷であり、同時に思考のカタパルトでもあります。

 通常のOSでは、人々はマウスやタッチパッドに習熟し、キーボードに習熟した時点で学習をやめてしまいます。

 ハイパーテキストを作るまでのハードルが高く、そこに第一のギャップがあり、次にアプリケーションをプログラミングするという、コンピュータ本来の使い方にたどり着くまでに第二のギャップがあります。


 僕のように、六歳児の頃からプログラミングをしているような生粋のプログラマーであっても、今のコンピュータ向けのプログラミングは面倒くさいのです。


 たとえばラーメンが出来上がるまでの時間を測るキッチンタイマーを作ろうとしても、Xcodeを起動する気には全くなりません。まあそんなものは、

javascript:window.setTimeout(function(){alert("ラーメンできたよ")},3*60*1000)

 とでもブラウザのURL窓に打てば済む話なのですが、こんな呪文をコンピュータを使う人みんなに覚えさせようというのはかなり大それた話です。

 

 しかしMOONBlockなら誰でも簡単に書ける可能性があります。

 ペンの色を変えるのにも背景の色を変えるのにも、わざわざMOONBlockでプログラミングしなければならないようにしているのは、文字通り「あらゆる人々」にプログラミングの入り口だけでも体験して欲しいからです。


 実をいうと、これはゲームデザインなのです。

 学習曲線の設計はゲームデザインと類似性があることを我々は良く知っています。

 なにしろ我々はずっとゲームを作ってきたのですから。


 正確にはレベルデザインです。

 少しずつ複雑にしていき、最後はなんでもできるようになるといいなと思っています。

 そういうふうにOSがユーザを育て、またユーザがOSを育てるという共生関係を構築することを目指しています。


 実はMOONPhaseの可能性はあまりにも途方もなく広いのです。

 この大海原をくまなく冒険するのは、UEIにいるチームだけでは到底できないことです。


 まずはコンテストです。

404 Not Found

http://enchantmoon.com/news/?p=384

 賞金総額100万円を、enchantMOONの活用法を考えて下さった方々に分配します。

 また、審査員として、iOSの開発者の一人であるUX研究の第一人者である増井俊之先生、人類の未来を真剣に研究しているソニーCSLの北野宏明所長、そしてコクヨの山崎部長とEvernote日本法人会長の外村仁さんといった、蒼々たる方々をお迎えしました。


 そうした素晴らしい才能と見識を持った方々と一緒に、enchantMOONの未来を考えて行きたいと思っています。


 さらに、来週にも正式に発表することになっていますが、日本国内の大学、公的研究機関の希望する研究室に、enchantMOONを、無償で貸し出すことにしました(複数台も可)。多くは成田で「出荷基準に達せず」と出荷を見送った、画面やハンドルに傷があるもの、要はアウトレット品です。


 そして、enchantMOONを使った研究を国際学会で発表する際には、その渡航費を1チームあたり最大50万円まで援助する「Global Society Challenge」をスタートします。


 既に先日、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で開催された芸術科学会(http://art-science.org)においてこの構想を発表したところ、大変な反響をいただきました。

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 というのも、日本のコンピュータ研究室は、通常、瑣末な予算獲得に追われており、学生やポスドクを雇うための助成金をあてにした「ためにする研究」のために優秀な人材の貴重な時間が奪われているのです。そのうえ、本来、世界の一流国であれば国際学会へは積極的に参加し、学生の見聞を広め、世界に向けて発信していかなければならないにも関わらず、渡航費などの予算を確保できないため、国内でこじんまりした研究を意志に反して続けている先生方も少なくありません。


 UEIリサーチ設立時に、西田友是教授に要請されたのは、「自分の給料は年100万でもいいから、研究員の渡航費だけはなんとしても確保して欲しい」ということでした。世界有数の研究者である西田教授にとっても渡航費の問題だけは頭痛の種だったようです。一流の研究をするには、まず渡航費の確保が大前提であると、何度も力説されました。UEIリサーチの年間予算は数千万円ですが、その大半は渡航費に使われます。


 東大の一流研究室ですらその有様なのだから、他大学の状況は推して知るべしでしょう。


 結局、ポスドクや助教の人件費を捻出するために、文科省の官僚が考えた絵に描いた餅のような近視眼的な研究テーマに沿った研究しか許されないのだとしたら、これは人類の大きな損失です。官僚はあくまで官僚。彼らが負っているのは国家・国益への責任であり、科学の未来に責任を持っているわけではありません。研究者は自らのテーマをもっと自由に選択できるべきだと思います。


 そうであれば、我々として貢献できるのは、enchantMOONに関連した研究に取り組む意志のある研究室を支援し、一緒に大きな成功を目指すことです。

 これからの未来のコンピュータを考えようとするとき、タブレットはいずれの場合でも必要になるでしょうし、一台や二台ならともかく、大量に必要な実験の場合は予算に占める割合もばかになりません。

 ですからそこに、我々のアウトレット在庫を貸し出しましょう、ということです。

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 優秀な人材が見聞を広めるチャンスを得るために、我々をうまく利用していただきたいと思っています。


 既に当日参加されたお茶の水大、東京工科大、神奈川工科大など、多数の研究室から打診を頂いていますが、公平を喫すため正式な公募は来週発表とさせていただきます。


 私たちが描いたenchantMOONの夢は、一年と6ヶ月が経って、最初に予約していただいた方々、度重なる延期をじっと耐えていただいた方々、出来の悪いOSを騙し騙し使ってみていただいた方々、等等、無数の人々の愛によって、いまや、大きな流れを作り出そうとしています。


 私たちがここまで来れたのも、ただひたすら、予約し、待ち、購入して下さった方々のご理解とご助力の賜物です。その結果、私たちは次の打席に立つことが出来ました。


 現状のハードウェアそのものが、日本国内の基準に照らして厳しいものであることは、今後、様々な不具合を改良し、大幅に性能を向上した次世代機を発売できるようになったとき、現行世代からのアップグレードとして現行ユーザの皆様に大しては大幅な値引きとともに発売すると社長としてお約束させていただきます。

 おそらく、次世代機以降を3万9800円という価格で販売できることは、二度とないと思います。それは直販を前提とした価格であり、日本のベンチャー企業が初めて挑むからこそ、販売パートナーの皆様からも、かなり無理なお願いを聞いていただいた結果の価格設定であり、UEI自身はもちろん、販売パートナーの皆様にも、かなりの忍耐を要求する価格です。


 けれども、現行世代の端末を購入して下さったユーザの皆様に対しても、ハードウェア的に未熟な部分に関して同様の忍耐を頂いているであろうことは想像に固くありません。従って、我々にできることは、せめて、次世代機が完成した暁には、それをできるだけ安く現行ユーザの皆様に提供するということだけだと考えています。


 従って、ユーザ登録ハガキは非常に重要なので、ぜひユーザ登録をしていただきたく思います。


 また、今月はMOONBlockの活用法をみんなで模索する、MOONBlockハッカソンを開催します。

MOONBlock ハッカソン | Peatix

http://peatix.com/event/20971

 とにかく、enchantMOON、そしてMOONPhaseの可能性を皆さんと一緒に模索し、広げて行きたいと考えています。


 そのうえでの、人材募集を行っています。

 これからもどうぞ宜しくお願いします。