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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2013-10-20

未踏ブースト合宿 10:21

 朝

 起きると、テレビをつけ、昨夜の深夜番組を再生する。

 冷蔵庫を開くと、ベーコン、ひき肉、タマネギ、ガラムマサラ、カレー粉

 よし、とカレーリゾットを作る。

 このくらいは即興で作れるようになって来た。

 料理は本当に楽しい。

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 それから、クルマを飛ばして埼玉へ。

 埼玉はひろい。

 たっぷり一時間半かけて、目的地にたどり着いた。

 国立女性教育会館

 不思議な名前の施設だ。


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 マムシが出るらしい。

 今日ここに来たのは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行う、未踏IT人材発掘・育成事業の「未踏ブースト合宿」にアドバイザーとして参加するためだ。


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 未踏IT人材発掘・育成事業とは、突出した若手人材を発掘し、育成することを目的としたプロジェクトで、夏野剛統括PMのもと続いているプロジェクトだ。


 名前の通り、このプロジェクトは、未踏ソフトウェア創造事業の後継となるプロジェクトで、未踏OBや未踏のプロマネOBの中から何名かがアドバイザーとして参加している。

 アドバイザーとして報酬も出る仕事なので、国家国益のために、まあなにかしら発言しなければならない。

 

 しばらくぶりに未踏の空気に触れたが、思いのほか空気がよりフランクになっている、と感じた。

 以前に比べると全体的に採択者の年齢が若く、かつての僕のようにベンチャー企業の経営者みたいな顔ぶれはほとんど見ない。


 事業の「未踏性」についても、疑問となるようなアイデアが多かったが、おそらく「未踏」という言葉は精神だけ受け継いで、事業の未踏性をあまり重視せず、人材を重視して育成する方向に切り替えたようだ。


 そのまま事業化しても上手くいく感じのするアイデアは少なかったが、ここまで発表者がその提案内容について徹底的に叩きのめされる会議はちょっと他に無いだろう。そしてそれこそがこの事業の目的でもあるのだと感じた。


 学会は学生に甘い。厳しい指摘をする先生は敬遠されるし、嫌われたくない、嫌な奴だと思われたくない、という一心で、本心を隠し、表面的な褒め言葉をなげかける。


 しかし一旦、研究が世に出れば、それは無責任な批判の言葉に曝される。

 この研究が、将来どのような批判を受け、それを回避するにはどのような視座が必要なのか、採択者自身が事前に知っていれば、完成までに理論武装できる。


 責任ある批判をする人間が、未踏のOBやPMには揃っている。

 その批判は、もちろん、脇を甘くすれば当然自分にも跳ね返ってくるだろう。自分に跳ね返ってくることのない批判は、単なる暴言に過ぎないが、その切先が跳ね返ってくることを覚悟した上での批判は、真剣勝負であると僕は思う。


 僕を未踏に誘った鈴木健は、「正直、PICSY以外の研究テーマは、どれも未踏性があるとは到底思えない」と語った。



 それはある意味で真実に近いと思う。

 これまで誰もやったことが無いこと、すなわち前人未踏の事業に取り組むというのは、言うなれば志の高さが必要な仕事である。


 国家の税金を使って研究をする以上、それが単なる目先の技術の改良や改善、冴えないベンチャー企業の立ち上げるちょっと変わった新サービスのようなものであってはならないだろう。


 ただし、人材育成という観点でこのプロジェクト全体を俯瞰すると、それなりに上手くいっているようにも思える。事業の提案としての新規性は危ういものもあったが、それを構成する知見や、その発想に至った個々人の資質に関しては、確かに未踏性を感じる人々が採択されたのだと感じた。


 未踏ブースト会議で発表された内容はNDAがあるので明かせないが、その大半は非常に興味深く、いくつかはとても未踏性があり、一つは今すぐ事業化できそうな内容だった。


 僕はアドバイザーとしての役務を果たすべく、辛辣なことも言ったが、質問者として発言した提案は全て興味深いと思っており、批判は形式的なものだ。批判的な目で見て、それを指摘しなければ本質は掴めないからだ。とりわけ、こうした未踏的事業にはそうした視座がなければすぐに独りよがりの珍発明で終わってしまう。


 その事業が真に国益に、ひいては人類全体の利益に繋がるような大きな志を抱いて、そのためのわずか九ヶ月という時間をどう活用するか、真剣に考えて欲しいと思った。