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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2015-09-26

いま日本に圧倒的に足りないのは人工知能に詳しい人材 15:14


 ・・・人が足りない。

 どう考えても足りない。


 いまさら遅いかもしれないが、いま大学三年生の人がいたら、文系だろうが理系だろうが、とにかく今すぐAIの研究を始めたほうがいい。


 目下、AIに詳しい人材が圧倒的に足りず、ドワンゴとして共同研究を持ちかけようとあちこちの大学の研究室を軽く見てみたが、今のところどこも傑出した存在という感じではなく、小粒な研究をバラバラにやっている感じ。もちろんいくつか「おお、ここは!」という研究室もなくはないんだけど、かといってやってることは結局、CaffeやChainer、Pylearn2あたりを弄ってる段階を出てない。なにしろ出てきたのがつい最近だから先生の方の頭も追いついてない。機械学習系の先生はDNNは手法の一つでしかない(そりゃそうなんだけど)という立場を崩さないし、いきなり授業に組み込むのは無理なので、結局、頭のいい連中が趣味の範囲でやってるだけのようだ。


 で、ChainerやCaffe(というかNVIDIA DIgits)は圧倒的に簡単である。

 理論を理解してなくてもとりあえず触ることはできるし、遊ぶこともできる。


 マシンはドスパラでOSなしモデルでGeForce980Tiを詰んだ奴が20万弱で買えるからそれでいい。Amazon EC2はセッティングだけでめげるのであんまりお勧めしない。


 そして人工知能を活用するアイデアが、これまた圧倒的に足りない。

 

 シルバーウィークを利用して全脳アーキテクチャ勉強会がハッカソンをやったんだけど、専門的すぎて(当然だが)すぐにビジネスに繋げられる感じのものはない。まあそういう目的のハッカソンだから仕方ないんだけど。


 これからの企業が欲しい人材は、人工知能が使いこなせる人材だろう。

 できれば人工知能をプログラミングできるともっといい。


 そして人工知能のプログラミングは、その他のプログラミングに比べると圧倒的に簡単である。

 簡単なわりには効果は絶大であり、これを勉強しないというのは実に勿体無いと思う。


 なぜ人工知能のプログラミングが圧倒的に簡単なのか。

 理由を示そう。


  • Webプログラミングは最低でもHTML、CSSSQLJavaScript、そしてPHPまたはRubyその他を覚えなければならず、合計5言語を使わないと作れないのでハードルが高すぎる
  • 3Dプログラミングは高度な数学的理論と背景を理解したうえでハードウェアの特性も考慮してプログラミングしなければならず、しかもCまたはC#とGLSLなどのシェーダー言語、最低二言語を使いこなす必要がある
  • enchant.jsによるゲームプログラミングはこの上記2つに比べると(3Dでさえ)最も簡単だが、ゲームを作るという行為そのものが極めてクリエイティブなため敷居が高い
  • 人工知能プログラミングをやるために覚えなければならない言語はPythonだけである(torchを使う場合はLua)。しかもプログラムが短くて済む。理解すべき理論はそれほど複雑ではない。

 たとえばいまや深層学習についてはバイブルと言ってよい教科書的な本が以下の本だが


深層学習 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)

深層学習 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)


 この本に出てくる数式を理解する必要はない。

 エーッと言われそうだが、理解するのに越したことはないが、もうそのへんの数式のややこしいところは

ほとんど全部Chainerの関数が隠蔽してしまっているので、かいつまんだ原理だけ知ってればいい。


 かいつまんだ原理なら、松尾先生の本だけ読めばいい。

 圧倒的に読みやすいのでこれは最低でも読んでおいて欲しい。



 必要なのは手数とアイデアであるから、専門知識はほとんどいらない。

 専門家が聞いたら「エーッ」と言いそうだが、どういうことなのかというと、下図のような状態なのだ。

https://i.gyazo.com/a3cc5dbdc615c81cf92ba0e8fd25bac3.png


 つまり、本職の研究者ももちろん足りないが、正直、このレベルでニューラルネットを自分で作れる人間というのは、今のところ僕の周りには東大卒しかいない。

 東大に入る人間が限られている以上、東大卒ばっかり集めるのは無理である(ドワンゴでは現在インターン含めて東大生を大募集している。給料はちゃんと出すよ)。


 しかし、実のところ、この黄色で示した人工知能研究者というのはどっちにせよ数が少ないのは仕方がないのである。


 しかし彼らが発見・発明した理論を使うのは非常に簡単で、それが水色で示した「人工知能ユーザー」と呼ぶ層である。これはハッキリ言って誰でもできる。


 そして僕はなんというか、むしろこの領域は文系の方が向いているのではないかと思っているのだ。


 なぜなら人工知能を教育するとは、人間を教育するのに似ているからである。



 これはどういう意味で言ってるのかというと、例えば、相対性理論をきちんと数式含めて理解していないとGPSを作ることはできないが、GPSを使って現在地を確認することは今や小学生でもできる、ということである。


 小学生がGPSを使って新しい鬼ごっこをやったり、宝探しをやったりするのだとすると、彼らは相対性理論を永久に理解する必要はない。



 今、ディープラーニングで使える道具はかなりそろっていて、自分ごのみのニューラルネットを作るのもそれを使うのも非常に簡単になった。

 

 あとはまさにアイデアの問題であり、ことアイデアということに関しては専門家でなくても、いやむしろ専門家でないほうが新しいアイデアを試すことができる。


 これを趣味の範囲でやってもいいし、面白そうな結果が出てきたら実際に仕事にしてもいい。

 日本中の大企業が、この「人工知能ユーザー」たる人々を欲する時代が遠からず来るだろう。


 既にトヨタや金融系もディープラーニングをどう活用するかということに熱心になっている。


https://i.gyazo.com/811ce9732d1eafdc204bba737f796dfc.png


 先日、連休明けに大岡山の東京工業大学で行われた日経の人工知能セミナーは500人近い人が押しかけて立ち見が出るほどの超満員となった。企業の関心が急速に高まっている証だろう。NVIDIAのGTCもディープラーニング一色だが、これも毎回満員になる人気イベントになっている。

 

 理科系の学生が人工知能を作ったり使えたりするのは当たり前として、文化系の人間も人工知能を使えるとスキルの幅としては非常に広く魅力的な人物に見えるだろう。少なくとも、できないよりはずっといい。



 11月からNHK文化センターで行う今度の「教養としてのプログラミング講座」では、iPhone/iPadだけでプログラミングできるツール「MOONBlock DX」を使って簡単なゲームからチャット、そして人工知能を活用したプログラミングまで解説する。

NHK文化センター:全国50教室で展開する総合カルチャースクール


 が、本当はもっと人工知能にどっぷりなハンズオンセミナーをやりたい。


 せっかくGPUファームも作ったことだし、近々学生限定でそういうセミナーも企画したいと思う。


ディープラーニング専用GPUサーバファーム「紅莉栖(くりす)」を構築|ニュース|広報情報|株式会社ドワンゴ

http://dwango.co.jp/pi/ns/2015/0917/index2.html