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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2016-02-22

実際のところ、人はいつまで経っても中間管理職である! 刮目して読むギャグ漫画 06:19



 中間管理職。


 ああ、なんと悲哀に満ちた言葉だろう。

 なんと悲しい言葉だろう。


 ただの管理職ではなく、中間という言葉がついただけで、突然、悲しいパノラマが見えてくる。


 しかし諸君、騙されてはならない。

 人は結局のところ、いつまで経っても中間管理職なのだ。


 ある会社に就職するとしよう。

 君を管理する人は全て中間管理職だ。


 君が管理するのは日々の業務だ。でも、管理する対象が人間でないということがどれだけありがたいことか、君はまだ知らない。


 いつの日か新人かバイトか、とにかく君より年次の若い、いわゆる「後輩」みたいなものが入ってくる。

 君の仕事は、その後輩やバイトを管理することに移行する。おめでとう。中間管理職の仲間入りだ。


 君は上司の指示や自分の判断に基づいて新人やバイトを管理する。

 生意気なやつもいれば、優秀な奴もいる。


 うかうかしているとあとからきた優秀な奴に君はすぐ追いぬかれ、管理される側になってしまう。


 営業に出て、顧客から仕事を請け負った時点で、君は暗黙的な中間管理職をしていることになる。君は顧客という真のボスの依頼を受け、社内のリソースを管理しなければならないのだ。顧客の望むものを提供するには、社内でのさまざまな調整を行わなければならない。


 なにかを外部の業者に発注するとする。

 そうだな。たとえば創立記念日のケーキの発注などだ。

 その場合、君はケーキ屋を管理しなければならない。


 ケーキは予定通り納品されるか、ケーキのサイズは、味は?

 偉い人に味の好みはないのか。アレルギーはないのか、何種類用意するか。


 極めてくだらないように思えるが、これのさじ加減ひとつでせっかくのパーティが台無しになる。

 創立記念日が休みになるのは学校だけだ。会社にとって創立記念日とは、開戦記念日なのである。


 さて、万が一、君が運や才能に恵まれて、組織の中で出世していくとしよう。


 バイトリーダー、班長、主査、係長、課長、部長、本部長、執行役員、取締役、・・・組織によってはこの間に「課長代理」「次長」「局長」などが含まれることも有る。基本的にでかい会社にいけばいくほどこの中間管理職の数は多くなり、それだけ出世がし辛くなる。


 そしておめでとう、何十年か後に、君は幸運にも社長にのし上がったとしよう。社長の上の会長はもう鬼籍だ。バンザイ。君は自由だ。君はもう何者からも管理されない。


 ・・・と思うかもしれない。

 が、日本の会社では、自分がオーナーでもないかぎり、代表取締役社長以下、全ての取締役は株主によって選出された、いわば株主を上司とする中間管理職に過ぎない。ごめんな。社長だろうが会長だろうが中間管理職なのだ。


 よろしい、ならば独立だ。

 身を粉にして働き、独立資金を貯め、100%自分のカネで会社を作り、誰からも支配されない自由を求めるとしよう。


 そして君は会社を設立した。君の、君による、君のための会社だ。


 さあそして・・・その会社は一体どのようにして利益を上げるのだろうか。

 おめでとう。君は気の遠くなるような努力の果て、絶対的な社会の最下層に到達した。中小企業の経営者である。


 中小企業の経営者には、基本的人権がほとんどない。


 まず、職業選択の自由がなくなる。

 会社をひとたび始めれば、いつでも辞めるというわけにはいかなくなる。

 辞めることができるのは、仕事をしていないときだけである。


 社員がほとんど居ない会社なら、会社ごっこの段階で解散すれば被害は少ないだろうが、社員が10人程度を超えただけで社会の一部になってしまう。他人の生活を背負うという十字架は、時に命よりも重い。


 日本は自殺が多いというが、そのなかに中小企業経営者の占める割合は少なく無いだろう。

 中小企業の経営者は借金をするときに、会社受け取りの高額な生命保険に入る。


 中小企業においては経営者の生存は会社の存続にとって絶対の前提条件であり、経営者の死は会社の死を意味する。


 だから経営が行き詰まった時、やむなく自殺を選択する経営者が少なくなかったのだ。


 また、基本的に会社の借金は全て自分が個人保証しなければならない。個人保証というのは、要は無限責任である。


 株主の資本金は会社が潰れたら失うというリスクしかない。これは有限責任だが、中小企業の経営者が会社の運転資金を借り入れする時は個人保証である。


 これは事実上の無限責任で、たとえ会社が潰れても、自分が働いて返さなければならない。何億という生涯賃金に匹敵するようなカネを、一人の個人が働いて返すという約束をするのである。まさにカイジに登場する帝愛グループの地下帝国ではないか。


 月の労働時間の基準もない。従って労働基準法も適用されない。残業代など出るわけない(これは課長以上の中間管理職では当たり前である)。中国での製造がまごついたとき、他の誰でもなく僕自身が中国に行ったのは、社長の場合はどれだけ働こうと法律に触れないからだ。休日出勤手当もかからない。仮に誘拐され、殺されても、労災にも問われない。中小企業では、社長は最強の捨て駒なのである。


 中小企業の経営者にとって、上司とは社会そのものだ。

 サラリーマンは会社の歯車だが、中小企業の経営者は社会の歯車にならなければならない。


 通常、サラリーマンは会社の歯車として嵌まるべき場所を会社が探してくれるが、中小企業の経営者は自分の居場所だけでなく社員全員の居場所と食い扶持を社会全体の中から探しださなければならない。いわば究極の中間管理職である。


 中小企業の経営者になった君は、毎日必死で食い扶持を探し、時には自分の私生活を犠牲にしてまで社員に仕事と給料を与えても、社員は給料が安いとか有給がとれないとか、君の口臭が臭いだとか、最後の最後は伝家の宝刀「一身上の都合」とか、とにかくあらゆるインネンを理由に会社を見限り、君に与えられてこなしただけの仕事を自分の実績として履歴書を書いて、もっと条件のいい会社に転職していってしまう。


 まあそんなもんだよ。それを愚痴ったとしても、そんな人間を雇った君が悪いのだとか、そもそも君に魅力ある会社が作れなかったのが悪いとしか社会は判断しない。中小企業の経営者なんて誰も庇ってくれない。まさに社会の最下層。


 その上、どれだけつらい目にあっても、会社を自分で辞めることが許されない。

 まさに生き地獄。ここから抜け出すためには、そりゃ自殺もしたくなるってもんですよ。


 経営者をやって13年。「こういうときに自殺したくなるんだろうなあ」と思う時が、僕にも何度かありました。幸いにして、僕は運と友人に恵まれていたので、最終的にはそこまで追い詰められなかったけど、ヒヤッとしたことは何度かあった。毎日眠れない時もあったなあ。


 でも一番ショックだったのは、とある老舗ゲーム会社、いまもなおときめく某社の創業者に言われた言葉。


 「ゲームが発売されるまでの間はカネが出て行く一方だから毎日心配で寝付けない。特に開発に何年もかかるようなゲームは心臓に悪い。ゲーム会社なんてどれだけ儲かろうが経営者に平穏な日々はこない」


 何百万本もゲーム売ってもそうなのか!!


 絶望。

 もう目の前には絶望しかなかった。


 所詮我々はどんな仕事をしようと中間管理職の一形態に過ぎないのだよ。


 そんな中間管理職の悲哀を描いたのが、このマンガである。

 

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 大人気マンガ「カイジ」に登場する帝愛グループ総帥、兵藤和尊の暇つぶしの余興のために日夜奮闘する中間管理職、利根川幸雄の物語だ。


https://i.gyazo.com/cd7549a05169bcdb45132b97da81f3f9.png


 この兵藤、なにで儲けたのかは全く謎だが、円でドルでユーロで、それぞれ百億以上のカネを持っているそうである(レートが100倍くらい違うので百億がどの単位なのか不明)。


 その暇つぶしに企画を考えろと命じられたのが、利根川である。

https://i.gyazo.com/91cbb1232bc1514a0b408738666ecb26.png


 上司である兵藤の無茶振りに答えるため、楽しみにしていた週末のゴルフがパーに(ゴルフだけに)。


 カイジを知っている人には全ページ爆笑モノだが、知らなくても面白い。


 特に、兵藤の気にいるような、悪魔的ゲームの企画会議とかは爆笑モノで、しかもわりとリアルな気がする。

https://i.gyazo.com/7c25b4bab0d7088f45ba314760929818.png


 カイジの序盤に登場する限定ジャンケンを考案するためのブレインストーミングの一コマ。

 

 よく見ると「山手線ゲーム(死)」とか「殺人ケードロ」とか恐ろしいアイデアが並んでいる。

 「リアル人狼」とかも怖いじゃん。きっと面白いわ。本編で採用して!


 そういう珠玉の悪魔的アイデアに混じって、「無限ババ抜き」とか「モノポリーおじさん」という、一見、なにが起きるのかわからないようなクズアイデアがあったり、「UNO」とか「鬼ごっこ」とか、なんのヒネリもないゲームが混じっているのがまたリアルである。ブレストではかなりどうでもいいアイデアもこうやって書き出すことが多いからだ。


 利根川が部下の心をつかもうとして企画する社員旅行や、数々の心理戦などは「最強伝説クロサワ」を彷彿とさせる。


 このマンガ自体は「カイジ」の公式スピンオフではあるがカイジの作者である福本伸行の作品ではない。お弟子さんの作品かな。それにしてもよく書けてる。


 ラストはなんと福本伸行御大が書き下ろした「トネガワ」で、これも爆笑モノ。

 だがありえないとは言いがたいところが、中間管理職という仕事の恐ろしさである。