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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2016-02-23

VRがやばい。いろんな意味で 07:48

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 VRというものがある。

 ご存じですか?


 Virtual Realityを「仮想現実感」と訳すのは誤訳なのだそうです。


 なぜ誤訳なのか。


 そもそも、Virtualには、「仮に」というニュアンスが一切含まれていないのだそうだ。


 Random House英英辞典によると、VIrtualの定義は以下

1.

being such in power, force, or effect, though not actually or expressly such:

a virtual dependence on charity.

2.

Optics.

noting an image formed by the apparent convergence of rays geometrically, but not actually, prolonged, as the image formed by a mirror (opposed to real ).

noting a focus of a system forming virtual images.

3.

temporarily simulated or extended by computer software:

a virtual disk in RAM; virtual memory on a hard disk.

http://dictionary.reference.com/browse/virtual?s=t


 光学的な意味の「虚像」の意味はあるっぽいけど、これは「仮想」ではない。


 問題は第三の定義、「temporarily simulated or extended by computer software(ソフトウェアにより一時的にシミュレートまたは拡張されたもの(ハードウェア)」であり、これが日本に入ってくるときに、当時のIBMのエンジニアが日本語でvirtual memoryをどう表現したものか苦心した挙句、「仮想記憶」と翻訳したのが、virtualが仮想という言葉に誤訳されてしまった始まりだとされている。


 本当の意味は1番目の「being such in power, force, or effect, though not actually or expressly such(実際にそのようなものではない、またはそのものであることが明示されていないにもかかわらず、そのように振る舞うある種のパワー、力、または効果)」が最も適切で、つまり「virtual」とは今風にいえば、「エミュレートされたもの」という意味になるだろう。


 ところが「仮想」という言葉は、必要以上に「仮の」「偽の」というニュアンスを持っていて、これが実によろしくない。


 そもそもコンピュータの仮想記憶(と誤訳されてしまったvirtual memory)は、メインメモリーより大きいメモリーを実質的にハードディスクとの組み合わせ(スワップ)でエミュレートする。つまり現実にメモリーとして振る舞うための仕組みであって、メモリーが存在すると「仮に想う」わけではない。「ハードディスクを併用して実質的なメモリーを増やせる」と考えるのが正しい。


 IBMのエンジニアは、virtualを仮想と訳してしまったことを今も後悔していると聞く。


 ある単語の日本語訳は通常、とてつもないパワーを発揮するが、このように誤訳されて入ってくると、そのパワーをあらぬ方向に発揮されてしまう。


 ・・・という話を、大学のVRの授業ではとにかく最初の最初にされるのだ。今もそういう教え方をしてるかは知らないけど。


 「とにかくこの授業を受けたからにはVRを二度と仮想現実感などと呼んではいけない」と言われたので、従順な受講生であった僕は、おとなしく先生の指導に従うことにする。



 さて、しかしながらVRが「仮想現実感」(ちなみにRealityを現実と訳すのは間違いである)という言葉に誤訳されてしまったことによって、とてつもない方角から変人の注目を集めることになった。



 先週末に秋葉原で開催されたOcufesとVRまつりという2つのイベントに行くと、昔の知り合いに多数遭遇した。


 中でも、黎明期のドワンゴで最も優秀なプログラマーでありながら、ゲームを仮想現実感のための手段と割り切り、ひたすら現実から逃避し続ける、いわば現実逃避の天才とも言えるKAF the Doomerこと佐藤耕司(今のペンネームは佐藤カフジ)がイキイキと現れたのだ。


 彼は天才的に頭はいいのだが、とにかく現実がキライである。

 そして現実から逃げ、快楽に浸るためにはその持てる能力を全力で発揮するという、一種の天才的社会不適合者なのだ。


 仕事の面ではものすごい怠け者だが、瞬発力では会社でナンバーワンだった。


 ま、それはいいや。


 他にも、とにかく社会復帰が危ぶまれていた人たちに何人か遭遇した。


 それで思ったんだけど、彼らはもう最初からこれがやりたくてこの業界に入ってきたんじゃないか。

 そして技術の方が彼らの欲望に追いついてなくて、何度も絶望し、挫折しながらも、どうしても彼らの思い描く「仮想現実感」に到達できずに、ただ自分たちの時代が来るのを待ち焦がれていたのではないか。


 その意味では、VRは他の流行りモノとはちょっと様子が違うのである。


 今、他に流行ってるモノというば深層学習とドローンだが、ドローンにはかつての携帯電話コンテンツ業界で大暴れした人たちが多数ハマっている。彼らは本質的にクリエイターであるが、実際にはビジネスマンであり、大空に夢を託す人であり、本質的にはリア充だ。バランス感覚があって、ビジネスやテクノロジーへの嗅覚が鋭い。今や「ドローンを飛ばす」ということが一端のレジャーになってしまった時代だから、リア充でなければドローンへは行かない。


 深層学習に行ってる人は、ガチの機械学習系の研究者と、僕のような緩いビジネスマンだ。特にわけもわからず上司が日経かなんかを読んで「キミ、パソコンに詳しかったね。ディープラーニングを勉強したまえ」と命令されて仕方なく勉強している人も含まれる。だから深層学習業界(という業界はまだ小さいが)では、昔の知り合いにはほとんど会わない。僕にとってはそれはそれで面白いからいい。


 しかし、VR業界は、かつて血を血で洗い、生き馬の目を抜かれたら、相手の耳から脳天を突き刺すみたいな超音速バトルであった3Dゲーム業界の中でも、自分でガチの3Dゲームを作るほどの根性はない、まさしくKAFのような人間と多数遭遇する。これはどうしたことだろう。

 

 とすると、やはりここは彼らにとっての約束の地なのだ。


 だいたい、VRヘッドセットは女子にモテない。

 かぶっている姿が異様だし、髪が乱れるから人気がないのだ。


 それはMicrosoft HoloLensも同様である。

 これを解決しないかぎり、未来はない。


 と思ったら、LGから髪が乱れないメガネ型のデバイスが出てきた。

 うーん、でもまあ、女性は化粧とかあるからやっぱりガッツリゴーグル被るってのは、スノボーに行くときくらいだろ、と思わなくもない。


 そして彼らが求めているのは、間違いなく、「本質的な現実感」たる真のVRというよりも、「現実から完全に遊離できる」、つまり「仮想現実感」だと思う。


 KAFは意気揚々と、VR空間で寝転がりながら女の子のスカートの中を覗く、という、現実の世界でやったらたとえ相手が嫁さんだろうと変態呼ばわりされることは確実なアプリケーションの可能性について語り、「恋人がいない男性の一人暮らしの多い日本でこそVRは流行る。そのためにはアダルトVRプラットフォームが必要」と熱く語る。


 そんな彼も今はジャーナリストをやる傍ら、「ImagineVR(https://beta.imaginevr.io/landing)」という会社で働いているらしい。これはSteamVRのようなVRコンテンツに特化した配信プラットフォームで、アダルトコンテンツを許容するということが最初から決まっている。儲かりそうじゃないか。


 しかし、もともと現実逃避気味なニュアンスのある日本のVRに、さらにimagine(想像・妄想)を重ねるとは、どんだけお前は現実がキライなんだとやや心配になる気がするが、とにかくそういうことらしいのだ。



 それでKAFに強烈に勧められる感じで、HTC Viveを体験してみたんだけど、これが本当にスゴい。


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 Viveをやると、Oculusの体験が玩具のように思える。あれは所詮はかりそめの幻だったと感じてしまう。


 なにしろViveは「歩ける」


 ルームランナーのような特殊なデバイスや、方向キーで「歩くふりをする」のではなく、本当に自分の足で、普段歩くのと全く同じように、VR空間の中を探索することができるのだ。


 そのためにはやや広いスペースが必要だが、このスペースを用意するという面倒臭さを、Viveの体験は大きく上回る。もちろん、「歩くことができる」だけであって歩かないゲーム、Oculusと全く同じゲームも遊ぶことができる。


 けれども、真価はやはり「歩ける」こと。しかも、ヘッドセットが複数あれば同時にVR空間を共有できる。


 これを家に設置したとする。価格も高級オーディオや大画面テレビに比べれば全然安い10万円程度だ。


 ただそれだけで、ワンルームの四畳半全体がVR空間に様変わりする。

 自由自在だ。


 ・・・もうKAFは帰ってこないだろう。


 なんとなくそう思った。


 この男は、もう、ひたすら、そういうヤツなのだ。

 VR空間に旅立ちたかった。いや、むしろ生まれてくる次元を間違えてしまった。


 KAFにとって、それが約束の地、それが彼の本来いるべき場所。


 彼がローンチタイトルの開発中にゼルダ64にハマったせいで発売延期になったドリームキャストのことを思い出した。ゲーム業界じゃ、敵を殺すのに弾はいらない。ただ面白いゲームを出せばいい。面白いゲームが出ると、KAFは会社支給の携帯電話を会社に置きっぱなしにして、数日から一週間は音信不通になった。



 もちろんそこまでの逃避は普通の人間にはなかなかできない。

 プロの社会不適合者であるKAFのようなエリートにだけ許された特権的な生活だろう。


 普通の人がVRを活用し、人生を充実させるにはどうすればいいか。

 KAFのように引きこもり、自らアダルトVRプラットフォームを作り、そこに集まるであろうコンテンツがあれば、彼はもう帰ってこない。わざわざ現実なんかに戻る理由がないからだ。


 KAFはニュータイプだ。しかし我々、現実の重力に魂を引かれた人間にはなにが残るのか。

 KAFのようになれたら良かった。しかし無理だ。現実の生活があり、現実への渇望がある。


 VR空間、Virtual Realityを活用して、現実の生活を豊かにするにはどうすればいいのか。



 「ウソだー。絶対ウソでしょ」


 随分と酔いがまわったその美女は、僕にとろんとした視線を送りながら白ワインを飲んでいる。

 

 「ウソじゃないよ。ほんとうにオキュラスなんかとはモノが違うんだ。その中を歩きまわったり、魚と戯れたりもできるんだよ」


 僕はもはやお決まりとなったルームスケールVRエンジンで彼女の興味を引いていく。

 

 「しかも二人で一緒にできるんだよ。それを体験したら、もうほかの遊びなんてつまんないよ」


 「ほんとにそんなにスゴいの?」


 タクシーを拾い、僕は品川のタワーマンションに借りた四畳半のワンルームに彼女を導いた。

 二人でViveのヘッドセットを被り、僕らはその日、もう現実に帰ろうとは思わなくなった。

 

 これだ。

 3Dテレビと同じやつだ。


 部屋まで来ないと体験できない。

 したがって部屋に来る。


 「DVD見ようか」とか、「子犬を飼ってるんだ」とかと同じだ。


 これなら現実もVRも充実できる。

 

 これがOculusだと、モテない。

 一人でしか体験できないからだ。


 3Dテレビを買ったら、メガネは必ず2つ買え。

 これが鉄則である。


 それと同様、Viveを買ったら、HMDはもう一つ買え、ということだ。

 対応してるソフトは今はないけど。


 なければ作ればいいじゃないか。



 僕はUnityをダウンロードした。

 Unityをダウンロードするのはもう10年ぶりだ。


 10年前、日本人が誰もUnityを知らない時、僕たちはUnityを密かに日本語に翻訳して使っていた。

 当時のUnityは情報も少なく、対応しているマシンも少なかった。大前広樹は当時Unityの存在すら知らなかったはずだ。スマートフォンはまだ発表もされていない。


 当時の環境では非力すぎたUnityは結局仕事には使えないと判断して、それから使わなくなった。

 しかしマシンが進化した今やUnityくらいで十分なのだ。

 

 もう会社の仕事の大半はUnityである。


 ドキュメントも充実して、機能は大幅に強化され、使いやすくなった。


 10年の歳月を超えて、Unityを起動した。

 そして昔よりかなり洗練されたテキストエディターで、僕は最初のVRプログラムを書いた。

 驚いた。最初のアイデアを表現するのに30分も要しなかったからだ。


 今はここまで簡単になったのだ。



 「・・・あとは女体だな」



 KAFはアダルトでも使用に耐えるUnityちゃんとも言うべきImagine Girlsを開発中だ。しかも同時に三体も。


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http://blog.imaginegirls.com


 とにかくやる気を出していていろいろやばい。


 なにか。


 いつもの新技術と接した時とは根本的に違うなにか


 もっと禍々しい「ヤバさ」を感じてしまい、今から恐怖している。


 果たしてKAFは新時代の神になるのか。

 はたまた・・・


Unityで神になる本。

Unityで神になる本。