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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2016-11-10

トランプ大統領誕生で、日本がAI立国として世界一流国になれる可能性が浮上してきた 08:59


 トランプ大統領が誕生してしまった。


 過激な政策を掲げる彼だが、これでもうアメリカの大統領には人格や品位さえも求められないということが分かってしまった。直接民主制おそるべしである。


 さて、米国の大統領諮問機関のひとつであるアメリカ科学技術委員会が先月まとめた「アメリカAI研究開発戦略プラン(National Artificial Intelligence Research and Development Strategic Plan)」が公開されている。


https://i.gyazo.com/486c247141a1dcf2e76d38ba59c6b813.png

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https://www.nitrd.gov/PUBS/national_ai_rd_strategic_plan.pdf


 ここで掲げられたプランの一部を紹介しよう。

https://i.gyazo.com/8aeac89d60b07893fa40156b36497b9d.png

 戦略1 長期的なAI研究への投資

 戦略2 人間とAIの効果的なコラボレーション手段の開発

 戦略3 AIの倫理的、法的、社会的な実装への理解と周知

 戦略4 AIシステムのセキュリティおよび安全性の確保

 戦略5 公的なAIサーバ環境の開発と共有

 戦略6 AI技術の標準的なベンチマーク評価

 戦略7 国家的AIワークフォースの必要性の理解


 どれも重要な視点であり戦略であるが、特筆すべきは、これは今、我が国の内閣府で行われている議論とほとんど同じレベルかそれ未満ということである。


 つまり、民間や大学の研究レベルでは日本はアメリカに大きく遅れを取ってはいるが、政策レベルでは同格のスピード感で、むしろいくつかアメリカが「これからやるべき」と示している戦略の中には、日本が既に先行して予算を付け、実際に動いている部分もある。たとえば戦略5の「公的なAIサーバ環境」に関しては、まず東工大TSUBAMEがChainer開発に使われたり、やドワンゴの紅莉栖が東大に貸し出されるなどして先行しているし、その他にも今期の中間補正予算で公的GPUファーム(ABCI;AI橋渡しクラウド)が建造されることが決定し、動き始めている。また、文科省はAIPプロジェクトを推進し、同種のクラウドの整備が指向されている(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/05/1371147.htm)


 また、それ以外にも、我が国には世界で唯一と言って良い、AIや機械学習の利用促進に特化した著作権法の特例条項、47条7項が存在する。


https://i.gyazo.com/de7b4afbf9997d56210de530ff6023a0.png


 これは要するに、AIが学習するためには、ひとまず著作権は脇においておいて、なんでもかんでも学習させていいし、しかも、それを商用利用しても良いという、世にも珍しい特例である。


 この辺の議論に関しては、今月開催される「法とコンピュ−タ学会」でも議論されるらしいので興味のある人はチェックされたし

法とコンピュータ学会第41回大会案内,東京工業大学

http://www.lawandcomputer.jp/41th_conference2016.html

 

 このように、我が国では大域的な国家戦略ではむしろ米政府に対して先行していると言っても良い。

 しかし、残念ながら今まで我が国では独自の軍備を持つことができなかったため、どんなに技術的に優れた要件があったとしても、どうしても軍事予算に由来する米国の潤沢なお金の使い方に追いつくことができなかった。だからこそわざわざアメリカ国防省が企画するDARPAチャレンジに日本から出かけていく必要があったわけだ。


 加えて、戦後の国家弱体化を目的としたGHQの意向で日本の国立大学は軍事研究は公にはできないことになっている。


 ところがトランプの主張は、「日本は自分の国は自分で守れ」だ。少なくとも当選するまではそう言っていた。在日米軍を引き上げ、日本は勝手に核武装でもなんでもしろと言う。それは極論だし今すぐ引き上げられても困るが、長く続いた彼の国の属国としての立場から、対等とは言えないまでも近しい水準まで我が国を軍事的・文化的に独立させるチャンスと捉えるべきだと思う。


 さらには、トランプの支持層は「白いゴミ(http://www.newsweekjapan.jp/watanabe/2016/11/post-26.php)」とまで呼ばれる労働者階級である。労働者階級にとって、AIやロボティクスによる労働の置き換えは、短絡的なラッダイト運動を引き起こす可能性がある。


 僕は個人的に米国はトランプ体制下でAIの社会実装に急激なブレーキが掛かると思う。ただでさえ、この二年、ディープラーニングが急激に進歩している間、米国は大統領選挙で国政の方向が定まらなかった。この二年の遅れは、米国にとって致命傷になる可能性がある。


 トランプを支持しなかったインテリ層は、軒並み米国外脱出を考えるか、それともトランプをうまく利用しようとするだろうが、そもそも、そんな余計なことに彼らが時間を奪われている今がチャンスだと言える。


 もちろん、帝国主義国家であるアメリカでは民間企業の力が強いので、Google,Microsoft,Facebookの牙城を崩すのは容易ではないが、我が国は水道や電力、電話が半ば公的なものとして発達してきた(アメリカでは全て民間企業である)のと同じように、AIを国家的重要事業として推進していけば、対抗できる可能性は十二分にある。


 国が主導となって官民連携でAI公社のようなものを作り、ここに人的資源を集積し、AI事業を国家的に発展させていけば、或いはかつてのNTTドコモiモードのように、世界に先駆けてAI文化を獲得し、広めていくことができるかもしれない。


 とにかく、これはチャンスだ。