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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2016-12-05

まさかの新事実「Everfilter」は著作権者の許諾をとっていた!?(ただし中国側だけ) 16:08

 今朝のエントリを書き、朝イチで内閣府の委員会に出席するために移動していたら、鈴木健がとんでもないニュースを持ってきた。


 なんと話題のアプリ、Everfilterは、著作権者の許諾を取った上で、配布しており、新海誠ともコンタクトをとって、日本版では新海誠の絵は使わないことになっているのが、誤ってそのままになってしまっていたという驚きの見解を発表した。


 彼らは新海誠の絵を使わないバージョンを日本で展開するそうである。


https://i.gyazo.com/536fc4f8d7582a08efa2ec9aa76680f2.png


 なぜ画像なのか、と思ったのだが、コメントを見て気がついた。

https://i.gyazo.com/cbee001a56aff4ac11fe5dfe7eeea3a8.png

 世界中にユーザがいるため、日本人にだけ謝ればいいという考え方だ。

 しかも画像なら、最近進歩の激しいニューラル翻訳でもまだそう手軽には翻訳できないと考えたのかもしれない。


 いずれにせよかなり姑息である。


 鈴木健によると、Everfilterの開発元のTopBuzzは、中国の超大手企業(日本で言えばLINEとかGREEDeNAに匹敵する)らしく、ちゃんと権利処理してる可能性があると鈴木健自身が指摘した直後に、このようなアナウンスが出た。


 しかし、今現在、僕が試したところ、まだ新海誠の絵っぽいけど、そんなに新海誠の信者ではないから、どこの絵なのかまでは特定できない。

https://i.gyazo.com/6013748988f17800376992908a9f5ad8.png


 そもそも中国でだけ著作権処理をしているというのは奇妙な話だ。

 通常、この手の画像の流用は、著作者人格権の侵害であり、ふつうは権利を認めることはほとんどあり得ない。

 フリー素材とか、よほど特殊な場合を除いて、作家が意図を持って描いた背景を切り貼りして再配布するなど、作品の蹂躙であり到底許されるものではない。


 本当に権利は守られているのか、新海誠氏はほんとうに許諾したのか。

 今後もなにかニュースが入ってきそうだ

「はじめての深層学習」発売前なのに書評いただきました。そしてAIと剽窃について 08:18


 発売前なのに早速書評をいただきました。

 長年本を書いていますが発売前に書評を頂いたのは初めてです。

ジュンク堂など一部の大型書店では発売日より前に本が売られるのが普通なので、こういうこともあり得ないことではありません

発売前だったのですが、ジュンク堂書店池袋本店にふらっといったところ平積み(しかもラスト2冊だった)ので確保しました。DeepLearningなどの本はいろいろ読んだけど、非常実践的!とおもったのですよ。これは実践で使って、商品開発している清水さんならではないでしょうか。



(中略)



過去にいろいろな機械学習の本が出ていますが、Chainer / TenserFlowの使い分けについては自分で試してみる以外なく、そゆ意味では非常に実践的な本です。オライリーや、他から出ている本は、何故Sigmoid関数を導入しなきゃいけないのか書いてあるところまで辿りつくだけで決行なページが割かれているのですが、本書では「こうやるとダメでしょ?だからSigmoid関数つかうんですよ!」と書いてあり、その後に「Sigmoid関数でもダメな学習もあるでしょ!」と使い方に徹してします。助かります。


ただ、機械学習の基本的な知識なしでもできるようにした半面、体系的な知識が欲しい人向けには、オライリーなどから出ている本で基礎知識を確認してから読むと「ははーん、なるほど。Chainerではこうやるのか。」と分断された知識が1つになります。


書評: はじめての深層学習プログラミング 著者:清水亮 - yuuna log's 5th edition.

 栗田さんありがとう!


 というわけで、今週発売予定ですが、わりと売れてるらしいのでご予約はお早めに



 栗田さんの書評にあるように、「なんで?」という知識が知りたい人は他の本との併読をお勧めします。



 ↑これとかオススメですよ。



 まあしかしね、人工知能がなんでもできるようになってきてものすごい緊張感がでてきたよねー。

 そして一方でEverfilterみたいなインチキにも対応していかなきゃいけない。


 たまたまEverfilterは丸パクリだったからたぶん明確に著作権侵害と言えると思うんだけど、Welqじゃないけど多少のコンテンツの変更があったら現行著作権法では対処できないということに成りかねないわけで。



 次に問題になるのは、Deepartみたいに、元ネタが完全に消えてしまうけれども雰囲気は残るような作品の場合をどうするか。


https://i.gyazo.com/616f751a5786f0820fc2af8c78255efa.png


 左が生成画像、中央がコンテンツ画像、右がスタイル画像

 これはまあ、ぜんぜん違う絵だからあくまでも「ムンク風」になると思うけど


 ただ、もっと学習が進んでいけばもっといろんなことができるようになってしまうのは疑いようもなく。

 その問題に関しては先回りして議論しておかないと混乱が起きかねない。



 僕が思うのは、あくまでも主観的に「これは同じだろ、と思われたらダメ」としか実は判断できないのではないかということ。たぶん杓子定規なルールは作れなくて、まあ裁判官なり陪審員なりが「これは同じだろ」と思ったら同じものとして扱うようにしないといろいろマズい。


 ただ、もっと怖いのは、そういうコンセンサスにすると、「似てる」でもダメになってししまう可能性があるということ。


 たとえば田中圭一


田中圭一最低漫画全集 神罰1.1

田中圭一最低漫画全集 神罰1.1


 田中圭一は意図的に手塚治虫など他の人のタッチを真似してパロディとして漫画を描く。

 これは著作物として認められるのか、認められないのか。


 さらにいえば、日本には二次創作の文化があり、コミックアンソロジーなども堂々と出版されている背景がある。


 つまり法律的には限りなくグレーな部分だが、たとえば田中圭一の「三鷹の森の女子会」はこんな漫画だ。


https://i.gyazo.com/6c768abd13d344603e4aa56ba53bc4c1.png


 明らかに、ある作家のキャラクターをそのまま剽窃しているが、世界観を踏襲しているのでこれは盗作ではなくパロディとわかる。


https://i.gyazo.com/ccf1385f0bbd15a17d8ff438f3c389a4.png


 じゃあこれを許すのか、許さないのかというのは実は難しい。

 どうみてもドラえもんだが、どう見てもドラえもんじゃない。


 単にこんなキャラクターには誰も愛着を持たないから著作物としては無価値だが、仮にこれに人気が出てしまったらどうするのか。



 著作権に多少は敏感な人でも、無頓着に使っているのがフォントである。


https://i.gyazo.com/e9e16972b69360d6a254fcbdf26d4219.png


 上の2つのWindowsの書体の違いが分かるだろうか?


 どちらがより美しいと思うだろうか?


 少し意地悪なクイズだが、これはフォントを扱う人が最初に出くわす関門でもある。

 正解は、上がWindowsの標準書体であるArialであり、下がMacやiOSの標準書体であるHelveticaだ。


 Helveticaが作られたのは1957年、Arialが作られたのは1982年である。

 経緯は省くが、簡単にいえば、ArialはHelveticaのパクリである。


https://i.gyazo.com/a1ebde949a991c72073f64cca3c4862c.png


 その証拠にフォントを重ねると幅がピッタリと一致するように作られている。

 こんなことは、意図的にやらなければ絶対にそうならない。


 Helveticaは極めて美しいフォントで、ほとんど完璧なまでの美を誇っている。

 Arialは、Helveticaを開発したライノタイプ社にカネを払いたくない人が発明したコピーフォントで、それを採用したのがWindowsである。


 Windowsでは、フォントにHelveticaが指定されていると自動的にArialに変換されるという、信じられない実装が行われている。ビル・ゲイツがフォントにライセンス料を支払う価値を認めなかったからだ。


 つまりWindowsを日常的に使っていると、劣化コピーされたフォントを日常的に見ることになる。


 さて、現行法では、Arialは著作権侵害とは見做されない。

 でも不思議だ。


 重ねてみればわかるように、ArialとHelveticaは、99%くらいは一緒なのである。

 ArialがHelveticaの著作権侵害とならないよう"意図的に"字形を劣化させている以外は、ほとんど同じだ。


 Arialが許されるならば、たとえばEverfilterも新海誠の絵を反転させて縮小しているのだから多少は変形されている、と考えることもできてしまう。


 しかしEverfilterを許さないとするならば、Arialは何故許されるのか。


 実はArialは意図的にHelveticaの美しさをブチ壊しにするいくつかのフォントでエキスキューズしている。


https://i.gyazo.com/62f1c087993b42dc26b0b701d86be05d.png


 詳細のディティールをわざと変えているのだ。

 ただ、こんな小手先のごまかしだけで「違う著作物です」と主張できるのならば、ドラえもんの髭の数を変えれば誰でもドラえもんを使って良いことになってしまう。


 はてさて、AIの著作性を議論するということは、人間の著作性を議論するのとほぼまったくおなじフレームワークを使う必要があるのである。


 なぜなら、この場合、「誰(何)によって作られたか」が問題なのではなく、「あれとそれはどう違うのか、どのくらい違えばオリジナルと言えるのか」という問題になっているからだ。


 最後に、20世紀を代表する芸術家、パブロ、ピカソの言葉を引用しよう

Good artists copy. Great artists steal.

(良い芸術家は真似をし、偉大な芸術家は盗む)