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2007-03-13 うまさが光る短編集

貫井徳郎『ミハスの落日』

 重厚な長編が多い貫井さんの新作は、小説新潮を中心に掲載された短編集です。

 読んでみて意外だったことが2つ。

1.海外舞台とした短編集だということはわかっていたけれど、登場人物も現地の人。当然といえば当然だけれど、日本人が中心だと思い込んでいました。

2.実は既読だった作品があったこと。普段文芸誌パラパラめくる程度で小説は読みません。だからすべて未読だと思っていたのですが。ところが表題作は・・・


 ということで、読んでみるとなかなかバラエティに富んだ作品集でした。

「ミハスの落日」

 既読だった表題作は『大密室』に収録。読んでいたわけですが、真相にたどり着くあたりまですっかり忘れていました。逆に言えば、唾棄すべき真相が生々しく忘れられない作品。ただし密室トリックイマイチか。

ストックホルムの埋み火」

 いかにもといった風のサスペンス、しかしとんでもないところから読者の世界を反転させてくれます。最後の一文はわかる人だけに贈られた遊び心溢れるもの、なのですね。さてはこれのためにストックホルム舞台なのか。

サンフランシスコ深い闇

 コメディタッチの人物造形なのに、隠されているものはなかなかに深く、そして苦い。同じキャラクターを使った作品が『光と影の誘惑』に収録された「二十四羽の目撃者」だということなので、早く『光と影の誘惑』を探し出さなければ(本棚のどこかにあるはず)。

ジャカルタ黎明

 これはちょっとした驚きでした。ミステリでこういう動機があっても説明がつけば問題ないと思うけれど、現実だったら取り合ってもらえない気がします。

カイロの残照」

 伏線が若干わかりやすい気もするのですが、世界が反転するインパクトは大きい作品。人の気持ちなんて常にすれ違い続けるものなのかもしれない。


 いずれも派手な作品ではないのですが、粒が揃った作品集となっています。貫井さんのうまさが光っていて、限られた紙幅の中に社会深い闇だとか人間の暗い陰といったものを折り込み、鮮やかな切れ味で目の前の世界が反転あるいはグニャリと歪むような感覚を味わうことができます。

 各編のタイトルにあるとおり、それぞれ別個の都市舞台なのですが、現地の雰囲気がよく伝わってきます。それだけでなく、ほとんどの作品が日本舞台にはできない、あるいは日本では扱いにくい設定になっているようです。貫井さん自身がすべて現地を訪れているというだけに、その労苦が活かされていると言うべきでしょうか。何せ短編5編に10年近くを要した作品集ですから。完成度が高く、安心して読むことができるオススメ短編集です。


収録作:「ミハスの落日」「ストックホルムの埋み火」「サンフランシスコ深い闇」「ジャカルタ黎明」「カイロの残照」


ミハスの落日
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書評

感想拝見】

貫井徳郎
新潮社 2007-02-21
売り上げランキング : 52196

おすすめ平均 star
star著者の新しい面を見た感じ
starsもう少しひねりが欲しい…です
stars既に読んだのに、買ってしまった
starsミステリ面白さをたっぷり詰め込んだ逸品。
stars本格ミステリーとは呼べないが、主人公たちの人生の苦さはある程度心に響いた

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west32west32 2007/03/15 00:49 はじめまして、本が好き!から来ました。
うーん、面白そうな本ですね、直ぐにではないですが、手に入ったら読ませていただきます。(既に図書館の予約を入れましたが、9番目でした)
ありがとうございました。

shiba_motoshiba_moto 2007/03/16 10:18 west32さん、はじめまして。
実は海外ものは得意ではないので不安だったのですが、これはアタリでした。本が好き!万歳です。
ぜひ読んでみてください。

藍色藍色 2007/09/22 00:43 こんばんは。
切れ味鮮やかな短編集でしたね。
犯行理由(設定)が、その国ならではの考え方や事情に絡んでたりしていたのが、さすが貫井さんでした。
トラバさせていただきました。

shiba_motoshiba_moto 2007/09/24 10:04 藍色さん、こんにちは。コメント、トラバありがとうございます。
一言で海外が舞台と括ることもできるのですが、土地柄を生かし、バラエティに富んだ作品集でした。
世界が変わってしまうような切れ味が印象的でした。

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