あさのあつこ『ありふれた風景画』
ウリをしていると噂される高二の高遠琉璃。学年で爪弾きにされている彼女のもとにあらわれたのは、美貌の持ち主綾目周子だった。だが、一学年上の周子もまた、動物と会話できる特異な能力のために変わり者として扱われていた。
初めてあさのさんの作品を読みました。もう少しエンターテインメント寄りの作品化と思っていたのですが。
学校でも家庭でも他人との間に壁を作り頑なに遮ってきた琉璃が、周子に出会い惹かれていくことによりその壁を取り除き心を開いていくというのが主題で、そこに同性同士の恋愛感情というのが絡む感じかなあと。
しかし、それにしてはいろいろなところに寄り道をしているような気がします。例えば花屋でバイトをする加水くんのこと、あるいは琉璃の家族のこと。どちらも書くな、出すな、というわけではありません。加水くんは瑠璃にとって数少ない社会との接点だったわけですし、琉璃の家族、特に姉の綺羅は琉璃の変化と成長を表現するという役割を担っています。ただ、それに割く分量が多すぎます。特に加水くんの場合、1章使って書かれているわりに、ストーリーに与える影響はあまりに少なく、その1章丸ごと削っても問題ないような気すらします。
琉璃と周子、2人の発する言葉は、時に痛みを覚え、そして時に輝きを発します。2人の心情が深いところから抉り出されているかのような言葉の数々が印象的でした。
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