氷室冴子『海がきこえる2 アイがあるから』
帰省し、クラス会に出席していた夏休み。東京に戻った拓を待っていたのは、部屋で泥酔して眠る津村知沙だった。一方里伽子の前には、父親の再婚相手である美香の妊娠という問題が立ちはだかっていた・・・
『海がきこえる』のラストであるクラス会以降の、東京での拓と里伽子の物語。
まったくの続編なのですが、今回は父親の再婚問題を乗りこえていく過程で、里伽子と拓が互いに信頼し合い、その距離を近づけていきます。
やっぱり里伽子はわがままで、腹立たしいような部分も多々あるのですが、そういうところを含めて受け止めることのできるに、男としての器の大きさを感じます。『海がきこえる』のときはもう少し子どもっぽかったですから、やはり彼も東京に出て成長したのでしょう。正論を言われていることを理解しながら、里伽子のために安西に言い返すあたり。
また、離婚・再婚、不倫、流産というようなドロドロになりがちな話でもさっぱり爽やかに書くあたり、氷室さんのテクニックなのでしょうか。登場人物の成長に合わせたわけではないでしょうが、読者の年齢も少し高くしたようにみえます。あるいは、2冊の刊行のブランク*1を考慮したのかも。
願わくば、氷室さんがまた筆を取り、続編を書いてもらえれば・・・
関連作:『海がきこえる』
海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫) | |
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