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周志の読み跡・視聴跡 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018年06月17日

WUG解散の発表を受けて…

本日は皆さまへ大切なお知らせがあります。

声優ユニット「Wake Up, Girls!」は、2019年3月をもって解散することとなりました。

 仕事中だった6月15日(金)午後3時、Wake Up, Girls!ファンクラブ「わぐらぶ」からメルマガが届いた。スマホの通知ランプが点滅したままだと気になるので、たいていチラ見だけしてすぐ仕事に戻るのだが、「▼いつも応援してくださっている皆さまへ」という普段と違う書き出しが気になり、そのまま読み進めると、上記の一文に辿り着いた。そこから午後7時の定時まで、正気を維持して仕事をするのが如何に苦痛だったか。

 WUGが解散する

 いつかこの日が来ることは分かっていた。でも今じゃない。まだユニットとしての可能性に満ちている。まだまだこれからじゃないか…!なぜ今なのか?

 頭の中はぐるぐるで整理がつかない。なんとか仕事を終えて退社すると、すぐ帰路につく気にはなれず、近くのコーヒー屋に入ってワグナーたちのツイートを追う。みんな混乱している。当たり前だ。

 タイムラインで、インターネットラジオ番組「Wake Up, Girls!のがんばっぺレディオ!」とニコニコ動画配信の「WUGちゃんねる!」でメンバーからのコメントが特別配信されることを知り、覚悟を決めて帰路につく。正直に言って、聞くのも見るのも怖かった。でも彼女たちの声を聞かねば始まらない。だから帰宅後PCを立ち上げ、覚悟を決めて彼女たちの声を聞き、表情を見た。

 ますます分からなくなる。メンバーそれぞれの言葉で突然の発表を謝り、これまでの感謝を述べ、来年3月まで応援してほしいと語る。でも「なぜ今解散なのか?」がない。

 週末に入り、土曜日は一日何もせずに、ほぼずっとこのことを考えていた。前日の晩のようにワグナーのツイートを追うのも控え、とにかく一人で考えた。

 一つ、半ば確信していることがある。この解散は、おそらくメンバー側から言い出したものではない。なぜなら、彼女たちの声や表情に、この決断を自ら下したという強い意思が感じられないからだ。見えているのは、この運命を受け入れることを決めた、という意思である。

 実は金曜日の晩にいろいろ眺めている中で、一つ引っかかっていることがあった。エイベックス・ピクチャーズのWUG担当プロデューサー田中宏幸氏が同社を辞めていたということだ。調べてみると、今年2月からサイバーエージェントに籍を置いている。

 WUGというと、アニメ作品の原案・前作監督である「生みの親」山本寛氏の名前が兎角話題に上る。しかし彼は飽くまでアニメ制作の責任者であり、声優ユニットに対しては口を挟むこともあっただろうが、そのプロデュース責任者ではない。アニメの版元プロデューサーであり、WUGの所属音楽レーベルDIVE II entertainmentのプロデューサーでもあった田中氏が、いわば声優ユニットWUGの「育ての親」であった。

 彼がなぜエイベックス・ピクチャーズを辞めたのかは問うても仕方がない。サイバーエージェントのほうがよい条件だったなら、個人の人生の選択として誰も責めようがない。いつから辞める話があったか分からないが、アニメ新章が彼のWUGへの置き土産だったのだろう。

 しかし田中氏がアニメにおいても声優ユニットにおいてもWUGの要であったことは事実で、彼が抜け、新章という一つの大きな区切りのあと、WUGというプロジェクト全体のプロデュース体制がゼロから見直されることになったのは想像に難くない。

 つまりその結果として、声優ユニットWUGのプロデュースは終了となったのだろう。

 振り返ればWUGの活動は決して順風満帆ではなかった。それゆえ、新章とそれを受けた5月12日のグリーンリーヴス・フェスは、最後の起死回生の策だったといえる。しかしアニメは制作スケジュール破綻の底質作画という前作とまったく同じ轍を踏み、グリフェスは幕張イベントホールという無謀とも思えるキャパの箱を押さえ、結果スタンド上段席は未使用という、集客力の限界を見せてしまった。フェスの内容には満足してるのだが、シビアにビジネスとしては、あれがとどめになってしまったのかもしれない。WUGのファンは徐々に増えているという実感はあった。だがその地道なペースでの継続を、ビジネスとして打ち切った、そういうことなのだと思う。

 これらはもちろん私の推測に過ぎない。ただ「なぜ今解散なのか?」という点では、一先ず自分を納得させるのに十分な理由だ。本当の答えは、おそらく今後誰からも語られないのだから。

 ただ、土曜のかやたんのブログを読むと、解散が発表される金曜日の朝を迎え、「いよいよこの日が来たなぁ」と思ったことが書かれている。解散がそれなりに前から決まっていたことが分かる。WUGチャンネルでコメントするメンバーの姿にある程度自制が利いていたのは、そのせいだろう。そのかやたんが、最も感情を抑えるのに必死だったのが、痛いほど分かるとしても。

 少なくとも先々週のWUG舞台では、解散が決定していた中で、真正面から役に向き合い演じてみせ、直前木曜日の楽天コラボナイターでは、弾ける笑顔でスタンドを盛り上げて楽天を勝利に導いていたのだろう。もしかしたら、グリフェスの時点でもう分かっていたかもしれない。よっぴーが叫んだ「みんな家族だ!」も、既に分かっていたから込み上げてきた言葉だったのかもしれない。

 グリフェスのときに発表されていたライブツアー。そのタイトルが、解散発表のあと告知された。

 Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME -

 ズルいじゃないか、「HOME」とか…

 3部構成の最後のサブタイトルは「KADODE」。ワグナーは家族なんだから、7人の門出を祝って送ろうってか。

 でもね、「HOME」とは「帰る場所」ってことなんだから、いつでも戻ってこられるってことなんだよ。

 ホント、WUGちゃん7人はみんな仲良しなんだよね。若い女性が7人集まれば、絶対にあの子とあの子が仲悪いとか、派閥ができてたりするもんだと考えるだろうけど、WUGちゃんたちはそうじゃない。もちろん最初から全員打ち解けあってたとは思わない。よくネタになるまゆしぃとよっぴーの喧嘩だけでなく、1年目にやってた「Wake Up, Radio!」のときなんか、お互いの間合いを計るような気遣いも時々感じられていた。

 でもね、この7人のよいところは、そんな中でも誰かを省いてしまおうという子がいなかったこと、ユニットとしてそれぞれに慮って向き合える子たちだったってことなんだよね。

 ブログやラジオ、イベントでのMCなど、彼女たちの言葉をほぼ毎日、5年近く聞いてきた。7人の中のどの組み合わせでも必ず、プライベートで一緒に遊びに行ったり、夜通し語り合ったり、相談し合った話がある。

 今回もきっと7人でいっぱい悩んで話し合ったことだろう。そんな彼女たちが、解散という運命を受け入れる決意をした。ワグナーとしてはその決意を受け入れるしかない。家族なんだから。

 私はWUGの箱推しだ。この7人だからこそのWUGが大好きだ。同時に7人単推しでもある。だから来年の4月以降も、変わらず一人ひとりを応援する。

 ツアーは、貯金残高眺めると頭を抱えざるをえないのだが(今年5年目のデスクトップPCやスマホ、10年選手の家電類を買い換えようとか考えてたので…)、可能な限り多く参加する。そして来年3月のファイナルでは、「いってらっしゃい」と送れるよう、心の準備をしておきたいと思う。

2018年01月09日

WUGの物語から多くの物語へ Wake Up, Girls! 新章 ― 最終話「明るいほうへ」

内容(公式サイト 各話あらすじより)

Wake Up, Girls!ツアーファイナル当日。

Vドル・マキナXは複数のスタジアムで、I-1clubはセンターの座を賭けて、

そしてWUGの呼びかけにより各地元アイドルたちが『Wake Up, Idols!』を

合言葉に、全国同時多発ライブが開催される。

ファイナルの前座を務めるRun Girls, Run!の緊張をほぐすため、

WUGメンバーはある行動に出る…!

 各話感想を書くつもりだったのに、11月に入って急遽忙しくなったせいで、筆が止まってしまった。中途半端なタイミングで再開しても上手く書けそうもなかったので、最終話を見終えた上で全体的な感想をば。

 監督の交代、キャラデザの変更、前作からの連続性への不安から、一定の批判的ファン層を抱えて始まったWUG新章。その連続性も踏まえ、新章のストーリーは私にとって「腑に落ちる」終わり方だった。

 もちろんストーリーのディテールについて各話感想を書いていたら、いろいろとツッコミどころはあった。それは前作も同じだが、前作は「もっと他の描き方はあっただろ」「それより他に描くべきところがあっただろ」というツッコミに対し、新章の場合、6話や10話(実質9話)など「もっと他の描き方はあっただろ」はあるが、「描くべきところ」に関しては、丁寧ではなくても、全12話という尺の中では一応やるだけやったかなと思う。

 前作からの連続性という観点で。まずWUGの7人は、それぞれ心の傷や自分への自信のなさ、欠点など抱えつつ、それぞれの「何か」を変えたいと思って集まってきた者同士だ。真夢、藍里の同級生組を除き、互いを知らぬまま集まった7人が、時に露悪的なほどの状況に直面して苦しみ、すれ違い、ぶつかり合いながら、徐々にお互いを知り、ユニットとしての結束を高めていく。

 一方で、軍隊的な規律とトレーニングにより、より精度の高いパフォーマンスでトップに君臨するI-1 Club。人間的な泥臭さという点で、WUGはI-1のアンチテーゼであり、「アイドルである前に人間です」というのが、前作WUGの大きな主題の一つであった。続劇場版でI-1のセンターであり、I-1の申し子のような存在だった岩崎志保を、世代交代を理由に福岡へ「都落ち」させたのは、I-1 Clubというアイドル=偶像の永遠性を維持するためであったが、そんなI-1に、恐らくファン投票を加味した「アイドルの祭典」でWUGが勝ったことで、I-1プロデューサー白木が、そしてその出資者「ダルマの老人」が描いていたその永遠性に綻びが生じる。

 これが前作で描かれた、新章の前提となるアイドル界の状況だ。新章から登場したヴァーチャルアイドル(Vドル)は、アイドルの永遠性を突き詰めた形といえ、ダルマの老人はそちらに乗り換えていく。

(ところで、ヴァーチャルアイドルというと初音ミクを想像するが、このVドルとは明らかに違う。初音ミクは事実上フリー素材として二次創作に開放されたため、ファンによって集合知的に個性を作られていったアイドルだからだ。)

 新章のWUGは、前作から新章開始までに当たる期間を地元仙台に根を下ろすことに集中し、アットホームな環境でユニットとしての仲を深めていた。しかし改めて全国へ打って出るには、前回東京進出で失敗し、やり残してきた宿題に直面することになるが、ユニットという信頼し合えるホームを築いたことで、個々のメンバーが自ら考え、刺激し合いながら個性を伸ばし、またユニットとしての力に還元できるようになる。そこには時に甘えも生じ、それゆえに誤解や喧嘩も起こるけど、それもまた他の誰かの助言や補い合いによって克服できる、真の仲間となっていく。

 また新章ではそれと同時に、WUGの外との影響関係も描かれる。WUGに憧れてアイドルを目指す中学生3人のRun Girls, Run。事務所がなくなって一度は解散したものの、WUGの地道な活動に刺激されて再活動する男鹿なまはげ―ず。真夢とのドラマ共演によって心動かされ、自ら考え選択するアイドルとなる志保。物語性という観点では、新章はWUG7人以上に志保の成長のほうがより印象に残るくらいだ。

 真夢と志保の関係から、吉川愛、七瀬佳乃も繋がり始める。佳乃は真夢の過去にあったI-1という巨人に無意識の壁を持っていたが、愛とライン交換出来る仲になって、その壁が失せていく。愛もまた、自立する真夢と志保、真夢を支えようとする佳乃の姿に刺激され、I-1新キャプテンとして「私たちは私たちに出来ることをやろう」とメンバーを鼓舞するようになる。

「アイドル界を変えるのは、Vドルでも僕でも、あなたでもない。」

 最終話で早坂が白木に語った言葉は、作中に時折描写された過去の早坂自身へ向けた批判でもある。WUGが互いに照らし合うことによって全国のアイドルを巻き込んでいったうねりは、早坂や白木、ひいてはダルマの老人の思惑をも越えて輝き出す。そんな全国のアイドルたちの輝きの前に、白木もまたダルマの老人の軛を断ち切り、一から這い上がるI-1 Clubの育成を覚悟する。新たなアイドルの祭典でI-1のシード枠を撤廃したのはそのためだ。I-1のセンターという地位に最も翻弄され苦しんだ萌歌も、その座を返上し、一から挑戦する覚悟を決める。そこではVドルもまた、個性あるアイドルの一つとなる。

 「This story is only the beginning!」

 最終話の最後に映ったホワイトボードに書かれたこの言葉、WUGが繋がりあったアイドルユニットたちの名前の下にある。WUGの物語は即ち、多くのアイドルたちの物語の序章に過ぎないということだ。新章では、「アイドルである前に人間です」という前作の主題に正面から取り組んだゆえに、WUGだけでない多くの物語の入口を示して最後の幕としたのである。私にとって「腑に落ちた」とはそういうことだ。

 今後続きがあったとしても、WUGが主役ではなく、RGRやその他ユニットのスピンオフになるんじゃないかと思うし、多分それでいい。

 なお、前作は震災復興支援もテーマに掲げていたから、「新章には思想がない」という批判もツイッター等で見かけた。だが第1話冒頭で「2017.03.13」という日付が示されたとおり、あいちゃん(永野愛理)が4thツアーで選んだ数字「313」が意味する、「311」から二歩進み、合計「7」人で新たに歩み出すところから物語が始まっている。だから前作が震災の苦境からタチアガる物語であったのに対し、新章がアイドル自身に集中して、東北から全国の一人ひとりへ明るさを届けていく方向に話をまとめたのは、前作の思想とは何も矛盾していない。

 一応最後に作画について。どう考えてもスケジュールがきつすぎた。その点は前作からまるで学んでない。BDでの描き直しよろしく。 

2017年11月02日

気持ちの変化が連鎖していく Wake Up, Girls! 新章 ― 第4話「美味しい時はうんめーにゃー!」

内容(公式サイト 各話あらすじより

WUGメンバーがそれぞれ各方面で奮闘する中、ついに真夢にドラマのオファーが。

しかも岩崎志保とのW主演ということで、注目を浴び話題になる。

エキストラ募集の記事を見つけて東京へやってきた歩たちは、

憧れの真夢や志保に会うことができて……

 今回はまず内容について語る前に……

 制作現場が早くもヤバいですな。ある意味前作で鍛えられてるから、作画のヤバさは苦虫噛み潰しながら耐えられるけど、キャラクターの声を入れ間違えちゃダメでしょ。こういうのって、どんな状況から起こるのだろう?脚本上は当然役が決まっており、絵コンテも監督や設定を熟知した演出家が書いてるわけだから、そこで間違うはずはない。声が入れ替わっているところは、未夕と実波の止絵の口パクだけなので、原画か動画担当が口を動かす順番を間違えたのだろうけど、とにかくこれは痛恨のミスだよね。もちろんうっかりミスはどんな職場でもあるものだが、最後のチェックが出来てなかった、あるいは差し替える時間すらなかったのだから深刻だ。現場も分かっちゃいると思うので、円盤化の際の修正と、今後の再発防止はマジでお願い。こういうのに気づいてしまうと、物語に集中できなくなるので。その他にも不自然なくらいの止絵長回しが多くあり、とにかく制作現場がんばってくれ。

 では内容についての感想。

 今回は真夢がメインの話だ。前回、他のメンバーたちが自分なりに個性を活かして現状克服に動き出したのに対し、真夢だけ新たな仕事がなく、自分の「個性」のあり方に悩んでいた。そこに、ドラマのオファーが飛び込んでくる。しかもI-1 Club時代の仲間でありライバルである岩崎志保との、ダブル主演での共演だ。真夢はそのことが引っかかり、少し躊躇するが、メンバーたちに後押しされて、そのオファーを受ける。

 今回の話では、真夢についていくつかのポイントが挙げられる。

 その一つが、真夢がドラマのプロデューサーに、自分にオファーしたのは相手役が志保だからかと尋ねたことだ。元I-1 Clubのセンター同士という話題作りありきのキャスティングなのは、誰の目にも明らかだったが、それを暗黙のうちに受け入れるのではなく、真夢はまずはっきりさせたかったのだろう。自分の現状の価値が「島田真夢」の個性ではなく、世間的にはいまだ「元I-1 Clubセンター」という昔の肩書にあることを、はっきり認識しておきたかったのだ。WUGの他のメンバーたちが、それぞれ自分の弱点を認識し、一歩踏み出したことを見ていて、自分が乗り越えなきゃいけない壁はまずこの肩書だと、真夢は気付いたのである。

 次にドラマの役作りについて。ドラマで演じる役は、明るい元気な体育会系の女の子だ。それに対し真夢は、自分とは全然違うタイプと感じ、役を掴みきれずに悩んでいた。そんな中、束の間のオフの際、未夕と実波にその悩みを打ち明ける。すると二人は、彼女自身が気付いてなかった側面を言い当て、「もっと素直に自分を出しちゃえばいいんじゃないですか」(未夕)とアドバイスした。そのことで真夢は何かに気づく。このシーンは、一見ありがちな演出だけど、メンバーと共同生活していることで、前作では一人で抱え込みがちだった真夢が日常的に悩みを相談できること、そして未夕や実波もそれに対し、自信を持って普通に答えてあげられるという、新章での新たな設定が非常に活きているのである。

 そして続くシーン。ドラマ撮影のある場面で、真夢は度々NGを出す。そのときちょうど脚本家が現場を訪ねてきたので、彼女は思い切って監督と脚本家に自分の考える役のイメージを話した。すると二人はそれに納得し、脚本を修正して撮影。真夢は自分のイメージした役を演じ、周りも納得する仕上がりとなった。恐らくそれまで、脚本が求める役柄をそのまま演じようとしていたのに対し、自分自身を役の中に投げかけ、その役が持つ個性を自ら引き出そうとしたのだ。そのためには脚本の変更を促すくらい、彼女は積極的に自分から動いたのである。ドラマを見た母からも「こんな顔もするのね、とびっくりしました」という驚きとともに嬉しさと期待を込めたメールが届く。前作での険悪な関係から和解へという二人の関係を思うと、真夢の成長が大きく感じられる憎い演出だ。

 私は、この真夢の成長シーンを見て、声優吉岡茉祐とリアルWUGの成長を思わずにはいられない。吉岡茉祐は小説を書くのが趣味で、これまでライブ前の影ナレの脚本を書いたりしていた。真夢が脚本の変更に関わるという形で一歩踏み出した演出には、恐らくこの中の人の特性が意識されていると思える。そして今年の4thライブツアーでは、吉岡、永野愛理を中心に、WUGのメンバー自身がセットリスト等の演出に大きくコミットとしていた。こういったリアルWUGの成長が、今回の真夢の成長に反映されてると感じるのである。

 この第4話では、もう一人意識の変化を感じさせる人物がいる。岩崎志保だ。志保は、かつて真夢がI-1を抜けた後のセンターを担っていたが、前作の続劇場版で萌歌にその地位を明け渡し、白木の指示で博多へ拠点を移して、若いメンバーとともにネクストストームのリーダーとして活躍していた。そんな彼女は、ドラマの演技ではNGを出さず、メディアへの受け答えも卒がなくて、まさに優等生アイドルである。真夢に対しては元々強い対抗心を抱いており、前作を通じて認め合うライバルへと変化する心境が描かれていたが、それでも真夢に負けたくないという気持ちは強い。しかし上述のとおり、役に悩んでいたはずの真夢が、自分の考えを主張し脚本の変更までさせる動きを見せた。これに志保は動揺するのである。

 志保の心理について考えてみたい。かつて真夢は白木に反意を示したことで、追い出されるようにI-1 Clubを辞めている。一方そんな真夢に対し、I-1 Clubのセンターとしてトップに君臨し続けることが、志保にとってアイドルとしてのレゾンデートルだった。そんな彼女もまた博多へと「都落ち」したことで、挑戦者として真夢と対等の気持ちを分かち合うことになるが、新章の彼女がアイドルとして改めて挑戦する形は、求められているものに気づき完璧にこなす、誰からも好感を持たれる優等生の姿だった。だからこそ彼女は、真夢の意見で変更された脚本にもすぐに適応して演じている。実はなおもI-1 Clubの「人気アイドルの心得」、「休まない、愚痴らない、考えない、いつも感謝」が、志保の中に生きているのだろう。だから「考えて」周りを動かした真夢の姿に、動揺せざるを得なかったのだ。そこへ萌歌が怪我をした報が入り、白木より一時I-1復帰が命じられる。自ら考え動く真夢を目の当たりにし、志保が今後どう変わるのか。これもすごく楽しみだ。

 さて最後に。ランガちゃんたちが真夢のドラマのエキストラとして出演し、速志歩が彼女とついに邂逅する。それは一瞬の出来事だったが、中学生女子にとってファンから「私もアイドルになりたい」という気持ちに変わるきっかけとしては、十分すぎるものなのだろう。ランガちゃんの物語も、来週からついに動き出すのだろうか。こちらも楽しみだ。

2017年10月25日

機能し始めた「ホーム」 Wake Up, Girls! 新章 ― 第3話「ポニーテールは本体です」

内容(公式サイト 各話あらすじより

食べっぷりが評価された実波と夏夜に、

次々と食レポの仕事が入ってくるようになった。

新たに未夕と菜々美は超有名バラエティ番組出演が、佳乃は人気雑誌のモデル撮影、

藍里に地元テレビ局のミニコーナーレギュラーが決まる。

それぞれが気合十分で現場に臨むのだが……

 第2話の感想で「和気藹々に騙されるな」と書いた。問題や課題が持ち上がっても、仲良く励まし合いながらぬるっとやり過ごしている展開は、いずれくる落とし穴への布石と読めたからだ。なので第3話でも基本的にまた失敗を見せてはぬるくやり過ごし、ラストでバカっと落とし穴に落ちるような、所謂アニメの第3話的な急展開があるんじゃないかと半分予想していた。だがこの話では、予想していたのとは違う空気の転換を図ってきた。これは上手く騙された。

 まずAパートでは、こちらが予想していたとおりに話が進む。未夕と菜々美が丹下社長の謎の人脈で、超有名トークバラエティ番組のゲストにねじ込んでもらえたものの、本番では緊張のあまりぐだぐだとなってしまうのだ。一緒に出演していたI-1 Clubの相沢菜野花の場馴れした対応とは完全に差がついてしまい、結局オンエアーで二人のトークはカットされてしまった。社長曰く「バラエティーのトークっていう商品になってなかった」というわけだ。

 一方佳乃も、やはり社長の人脈で(これ、ホント万能設定だなw)、有名ファッション雑誌のモデル撮影の仕事を受ける。佳乃は仙台の地元誌でモデル経験があったため、自信をもって現場に臨んだが、しかし期待された表情が出来ず、専属モデルの子たちとの差を見せつけられ、鼻を折られてしまった。そこで彼女は「もっとさ、らしい顔できない?アイドルなんでしょ?」と言われてしまったのだ。

 藍里は地元局で、日常ニュースを紹介するコーナーを任されることになる。地元とはいえ今までは仲間たちが一緒だったが、初めて一人でコーナーを持つことになり、真面目な彼女なりに一生懸命準備して、まずはなんとか失敗なく乗り切った。しかしディレクターからはもう少しアイドルらしい「それっぽさ」を求められ、悩むことになる。

 Aパートでは、4人それぞれが課題を持ち帰ってきたわけだ。しかし先週までの流れなら、あまり気負わず頑張ればいいんじゃない、って感じでやり過ごしていたに違いない。だがBパートで、この4人プラス先週課題を持ち帰った2人にも変化が現れた。いやあ、侮っていた。先週は馴れ合いの「ホーム」のように見えた共同生活が、メンバーの意識に変化の連鎖をもたらす「ホーム」として機能し始めたのだ。

 まずは先週ダイエットに悩んでいた夏夜。あれからダイエット日記のブログを始めたのだ。アイドルがそんなことして大丈夫かと心配する未夕に対し「逆にアイドルだからいいかなって」と、飾らない自分を出していくことにしたのである。先週のエピソードを、決して有耶無耶にはしていなかったのだ。前作の夏夜は最も震災の傷を背負った子として描かれ、真夢と同じかそれ以上に心に悲しみを抱え、自分の内側をさらけ出すのに勇気を必要としていた。そんな夏夜が、ダイエットという女の子らしい日常に悩み、それを素直に表に出していけるようなったのは、恐らくこの一年余りの間に絆を深めたメンバーとの共同生活がベースとなっているからだろう。

 未夕もまた、夏夜に触発されて、一人トークのネット番組を始める。好きなことを一杯しゃべりつつ、トーク力を高めていこうという狙いだ。元々WUGのムードメーカーで、オフでは好きなことを元気にしゃべれる子ではあったが、負けず嫌いというタイプではなく、また決断力もない方だった。それが「またトーク番組に出られるように」と自分でアイデアを出して松田を説得し、自ら弱点克服に努力をし始めたのである。

 佳乃には、今度は水着グラビア撮影の話が来る。しかし自分のスタイルの自信のなさ(千早マイナス2cm)に一旦躊躇する。だが断ったらこの話はI-1に行くと聞かされ奮起。海辺での撮影で、ちょっとドジだけど、とても楽しそうな笑顔を引き出してもらい、佳乃はここで「自分らしさ」を感じ取るきっかけを掴んだ。第3話の作画は実は全体的にちょっと怪しげなのだが、ここの静止画に全力投じたんじゃないかというくらいよっぴーが可愛い。

 そんな佳乃の「楽しそう」「自分らしさ」というのを目にして、次は藍里と実波が触発される。藍里は番組で、思い切ってイメージアニマルのサメの被り物を被り登場。自分自身が明るく楽しく番組をやることにしたのだ。思い切ったギャップを見せ、評判も悪くない。

 実波は前回共演した食レポ芸人二人の番組に出演し、「また、うんめ〜にゃ〜かあ?」とからかわれたところで、得意の演歌調で歌いながら味を表現し、それでも最後にしっかり「うんめ〜にゃ〜」で定番ネタもアピール。これが芸人たちにも受け、彼らから可愛がってもらえるポジションに入り込んでいけそうだ。

 そして今度は菜々美。実波が歌を武器の一つとし始めたことで、自分も歌の仕事がしてみたいと社長に話す。すると社長がミュージカルのオーディションのチラシを彼女に手渡した。かつて菜々美は、光塚歌劇団に入ることを夢見た少女だったが、悩み尽くした末にWUGとの絆を選んでいた。そのため「今さらこういうのは…」と躊躇する。だが、ここからの菜々美と社長のやりとりが実にいい。

社長「アイドルがミュージカルをやっちゃいけないっていう法律でもあるの?」

菜々美「そういう問題じゃ…」

社長「なによぉ、まだ光塚に未練でもあるわけ?」

菜々美「そんなんじゃないです!」

社長「あっそ。ならいってらっしゃい。」

菜々美「…はいっ!」(気づいたような笑顔で)

 諦めることと否定することはイコールではない。諦めたものも、今の自分として肯定していくことは可能だ。菜々美がそのことに気づいた瞬間が、実に気持ちよく描かれている。続劇場版後篇「Beyond the Bottom」の菜々美を見ていればこそ、このシーンはたまらなく胸にくる。オーディションは「全然ダメ」だったが、帰宅した菜々美の表情は清々しい。そして「私いつか絶対ミュージカル出てみせる!」と力強く宣言するのだ。

 この第3話は、前作で残してきた宿題に取り組んでいく話とも言える。前作で一度は東京に進出したものの、バラエティ番組では全く馴染めず、bvexから与えられた新曲「素顔でKISS ME」も自分たちのイメージに繋げられなかった。そこで彼女たちが取った手段は、地元仙台に戻り、ステージパフォーマンスに特化して、ユニットとしての力を高めていくことだった。だから新章第1話でも、Sステという全国ネットの超有名歌番組で、ステージだけは完璧にこなしているのである。しかし再び全国を目指すには、かつてやり残してきたものにも向き合わなければいけない。菜々美については、個人としてかつて諦めた夢を、アイドルとして克服していかなければならない。この第3話では、ユニットとしては既に絆が深まっていたWUGメンバーたちが、共同生活という「ホーム」を得たことで、逆に個人として互いを刺激し合うことになり、各々が自立してそれぞれのやり方で宿題に取り組み始めたのである。第2話のサブタイトル「ここが私たちのホーム」は、ここで活きてきた。

 しかし、実はまだ一人だけ動きがないメンバーがいる。センターの真夢だ。元I-1 Clubセンターという経歴が、逆に使い所の難しさになっているのである。前作で真夢は、WUGというユニットに自分を見出したことで、I-1の過去の重荷から解かれているのだが、WUGを「ホーム」としつつも個人として動こうとするとき、再びI-1という過去に直面することになる。構図的には菜々美に近い。そこで舞い込んできたドラマ出演のオファー。しかもかつての仲間でありライバルである岩崎志保との共演だ。新章もどうやら、真夢を話の軸にして進んでいくことになりそうだ。

 物語はもちろんまだ序盤なので、このまま勢いに乗ってイケイケの展開とはならないだろう。今回前向きに取り組み始めたものは、落とし穴ではなくとも、壁にぶち当たるかもしれない。もっと大きな逆風かもしれない。でもこの第3話の彼女たちを見たら、とてもポジティヴな気持ちで続きが見たくなってきた。当たり前だけど、「三話切り」はないねw

2017年10月18日

和気藹々に騙されるな Wake Up, Girls! 新章 ― 第2話「ここが私たちのホーム」

内容(公式サイト 各話あらすじより)

丹下の指示により、寮で共同生活をすることになったWUG。

さらに全国ツアーの構想を聞かされ、驚きつつも期待に胸を膨らませる。

丹下は知名度をUPさせるため、積極的にWUG!個人の露出活動を売り込み始める。

 第2話の感想をはじめる前に、改めて新章が始まった時点での、WUGの置かれている状況というのを想像してみたい。第1話を見た限り、新章開始時点のWUGは変わらず仙台に留まり、全国ネットのテレビ出演は殆どしていない。前作では1回目のアイドルの祭典出場後に東京の大手プロダクションbvexから声がかかり、一度は東京進出しメジャーデビューしている。しかし東京のビジネスルールに馴染まず、一旦仙台に戻って自分たちらしさを見直し、再度アイドルの祭典に出場して優勝、という大団円をもって、物語に一区切りを付ける。

 そこで本来なら、再び勢いに乗って東京進出してもおかしくないだろう。しかし一度失敗しているため、前作終了の2015年12月から新章開始の2017年3月の間は、敢えて仙台ローカルで足場を固めることに専念していたと想像できる。それゆえ第1話感想でも書いたとおり、この間にメンバー7人の仲が深まり、ユニットとしての安心感が出来てきたのだと思う。ただ一方でそれは、この間ぬるま湯に浸かっていた状態とも言え、いざ全国ネットの番組に出ると、素人っぽい油断が現れてしまうのだろう。第2話でも、そういった素人臭さが描かれることになる。

 第1話の最後に社長が「やるわよ、全国ツアー!」とブチ上げ、第2話にてメンバーたちにそれが告げられる。しかも最終会場として仙台スタジアム(名前からして当然万単位のキャパだろう)を押さえたという。しかし現在のWUGに当然そんな集客力はない。そこでまずピンの活動によるメンバー個人の露出機会を増やし、知名度を上げていく作戦を立てた。また同時に、メンバー全員が集まる機会が減るため、7人が一軒家で共同生活をすることになる。シリーズ演出的には恐らく、メンバー個人にスポットを当てやすくなると同時に、共同生活という設定によって、日常シーンとメンバー同士の喧嘩と和解といったシーンも入れやすくなるという狙いがあるのだろう。

 さて、早速第2話でスポットを当てられたメンバーは夏夜と実波、特に夏夜のほうだ。二人は全国ネットのご当地紹介番組に出演することになり、有名な食レポ芸人たちと並んで仙台料理を紹介することになる。食レポと言えば、その食べっぷりのよさが自慢で、仙台ローカルでは「うんめ〜にゃ〜!」の決まり台詞が人気の実波だが、しかし全国番組ではそんなアットホームな反応は返ってこず、食レポ芸人たちのリアクション芸に圧倒されてしまう。ただ、アイドルは太ると困るからこういうのはできないよねと、遠回しに馬鹿にされたことで夏夜がブチ切れ、「アイドルのカロリー消費なめんなよ!」と啖呵を切って食べまくってみせた。当人は収録後「やっちゃった…」と落ち込むが、これが思いのほか受けて、その後も二人に食レポ番組が舞い込むようになる。

 しかし連日の食レポ収録のため、夏夜が体重を気にしはじめる。だが「アイドルのカロリー消費なめんなよ!」と啖呵を切っていた手前、そのことをメンバーにも打ち明けられず、帰宅後もみんなとの食事を避けて、こっそりランニングに出たりしていた。しかしすぐにみんなにも発覚することになり、笑って励まされて、結局あまり悩んでも仕方ないよねって感じで丸く収まったのである。そしてみんなでお菓子をつまみはじめるという、メンバーの仲睦まじさが演出されて、このシーンは終了となった。めでたしめでたし。

 ……いや、果たしてそうだろうか?これ、間違いなく今後の落とし穴が示唆されてるよね。最初の食レポ番組では経験不足を露呈。とりあえず勢いでその場はいい方向に転換出来たものの、決して考えて乗り切ったわけではない。その結果、その時の勢いに縛られて、体重管理に失敗。しかしそのことも、メンバーみんなから笑って励まされて、何となく解決したような締め。でも、この回で起こった問題は、結局何も解決されていないのだ。WUGちゃんたちが和気藹々として、視聴者もほっこり気分になったかもしれないけど、これ、まさにぬるま湯に浸かった状態じゃないだろうか。折角与えられた引き締めの機会も、ゆるっとやり過ごしてしまっているのである。特に、最後にみんなでお菓子に手を出してしまうシーン。完全に弛緩している。

 そしてこのシーンから切り替わった瞬間、前作でWUGを叩き上げた早坂の登場だ。彼は仕事がどことなく捗らない中で、一瞬テレビを点けてそこに映った夏夜と実波を見、無表情にすぐそれを消した。現状に何か満足してない様子であることは明らかだ。そこにかかってきたI-1 Clubプロデューサー白木からの電話。I-1の新曲の件はどうなっていると聞く白木に、「どうも気分が乗らなくて。」とだけ答える早坂。それに対し「本当にそれだけか?」と問う白木。ワンシーン前のWUGとのコントラストに、今後このままではいかないであろうというWUGの未来が暗示されていると言えるだろう。

 また、そのまま切り替わった場面で登場した白木。スマホを手にしていることから、早坂との電話を切った直後かと思いきや、その画面に映っていたのは、この話の中で度々映し出されていたヴァーチャルアイドルの姿だ。現時点ではこのヴァーチャルアイドルが物語にどう関わってくるのか全く分からないが、何かしらWUGの活動をかき回すギミックになるのだろう。

 将来Run Girls Runとなる中学生3人も、今のところWUGにどう絡んでくるのかは読めない。しかし後輩の出現が、現在ぬるま湯に浸かっているWUGに刺激を与えていくことは確かだろう。

 今の和気藹々な雰囲気に騙されてはいけない。来週以降楽しみになってきた。

2017年10月11日

Wake Up, Girls! 新章 ― 第1話「私たち、Wake Up, Girls!でーす!」

内容(公式サイト 各話あらすじより)

「アイドルの祭典」で一度は国民的アイドルグループ「I-1Club」を下して

優勝した「Wake Up, Girls!」だが、未だ地道な活動を余儀なくされていた。

丹下はWUGのさらなる飛躍を目指し、松田に全国メディアへのプロモーションを命じる。

 2014年1月の劇場版、1〜3月のTVシリーズ、及び2015年秋の続劇場版前後篇にて一つの作品を完結させたアニメ「Wake Up, Girls!」が、約2年ぶりに「新章」という名で帰ってきた。

 決してスムーズに予定されていた続編ではない。前作はそもそもヒットしたと言えるほどのものではなかった。いろいろな意味で、お世辞にも出来がよいとは言えない作品だった。私も過去にTVシリーズについて、かなり厳しく書いている(”Wake Up, Girls!”というアイドルの物語 − 単独イベント「イベント、やらせてください!」を終えて振り返る)。もちろんこれを書いた後に続劇場版を見、更に時間を経ていることで、良し悪し諸々、私の中の評価も多少は変わっている。しかし両手を挙げて「この作品は素晴らしい」と賛辞を送れないのは、やはり今も変わらない。一言で言えば、いろいろと「もったいない」作品だったということだ。

 それでも新章として続編が作成されるに至ったのは、言うまでもなく、作中のアイドル「Wake Up, Girls!」を演じたリアル声優ユニット「Wake Up, Girls!」の力によるものだ。彼女たちが、前作が終わったあともキャラクターたちを担い、リアルアイドルとして活躍してきたことで、作品としての「Wake Up, Girls!」を再び掴み取ったのである。

 しかし、監督の交代、キャラクターデザインの一新で、前作に思い入れの深いファンからは批判的な目を向けられる中での新章スタートだ。リアルWUGのメンバーも、ファンの間に不安があるのは当然と、折に触れて認めている。しかしそれでも見てほしい、キャラクターたちはみんなの知っている彼女たちのままだと訴えていた。

 そうなのだ。私は確かに前作の作りそのものには批判的だったが、それでも作品を否定できない気持ちにあったのは、7人のキャラクターたちがとても等身大で、リアルWUGのそれぞれと並び寄り添いながら存在していたからなのだ。私はリアルWUG7人のファンである。と同時に、アニメWUGの7人も好きで、彼女たちのその後も見てみたいと思っていたのである。

 因みに監督交代についてはあれこれ思うところはあるが、何かと面倒くさくなるので、深くは触れない。ただ一点だけ言及すると、前作は監督自身の半生に基づいた思いが反映されていたのに対し、ファンクラブ会報誌にあった新章の監督のインタビューを読むと、捉えようによっては、作品に対する彼のスタンスは、とても他人事なのだ。作品に対する個人的な思い入れが、ほとんど感じられないのである。ただそれは、彼がとことん職人に徹しているということでもある。

 夏の4thライブツアーでは、途中の衣装替えの間に、前作のシーンをまとめた映像が流れていた。それはまるで、旧キャラデザの7人へ別れを告げるような演出だった。人によってはそれを、前作を切り捨てる儀式のように捉えたかもしれない。しかしあのツアーのテーマは「つなご(TUNAGO)」である。ツアーの構成については、WUGメンバーも深く関わり、一杯議論したと話していた。つまりあれは、決して切り捨ての儀式なんかではない。新たな出発にあたり、「あなたたち(旧キャラデザ)を決して忘れたりしない。ちゃんとあなたたちの思いもつなげていくよ。」という決意を表す演出だったと私は受け止めている。

 前作は前監督個人の思いに基いて作られていたが、しかしそれを越えて、当時新人だったリアルWUG7人とともに、アニメWUG7人のキャラクターも、独り歩きを始めていたといえるだろう。とすれば新章は、彼女たちに対しとことん客観的になれる、職人のような監督でよいのではないだろうか。音楽担当のMONACAもまた、徹底した職人集団だ。彼らは職人に徹しているからこそ、作品に対して適切で感動的な曲を作ることが出来るのだ。ツアーの映像を見、新章監督のインタビュー記事を読んで、私の中では不安よりも期待のほうが大きくなっていた。

 而して迎えた新章第1話。すっかり前置きのほうが長くなってしまったが、率直な感想を述べていこう。

 まず新しいキャラデザについては、個人的には大きな違和感なく受け入れられた。いざ動き出し、声が付けば、原案としてのデザインが同じであれば、それほど抵抗なく入ってくるものだ。

 次にストーリーだが、これも導入としての第1話なら、取り敢えずこんなものだろうという感想。一度はアイドルの祭典に優勝したものの、そのまま全国区のトップアイドルに駆け上がれるほど業界は甘くなく、基本的にまだ仙台で地道な活動をしているというのは、序盤設定としては違和感ない。久しぶりに出演するという全国放送の歌番組で歌った曲も、初期代表作で、一度東京進出した際にメジャーレーベルから出していた「7 Girls War」だ。いまだ一般的にはそれが最も知名度が高いというわけで、彼女たちが一つのヒット曲を歌い続けている演歌歌手と近しい状況だというのが読み取れる。

 とはいえ、地元仙台では冠番組も持ち、前作と比べてメンバー同士の仲も安定感が出ている。夏夜と未夕は、前作ではツッコミとボケコンビではあったものの、二人でふざけあって遊ぶというシーンはなかった。しかし今回は実波も加わった三人で投稿動画にアテレコして遊んでおり、メンバー間の距離が縮まったんだなと実感させられる。また藍里が失敗して落ち込んでいるときも、ちゃんと注意しつつもみんなで励まし、菜々美が「ま、それならいいんじゃない。結果オーライってことで。」と笑顔で言っているところなど、随分成長したなと思わせるシーンだった。個人的にはリアルWUGをずっと見続けてきて、彼女たちの仲や信頼関係が年々深まっていることを実感していたので、キャラクターたちの変化もまた、違和感なく受け入れられた。

 あと、I-1 Clubのセンター萌歌がWUGに対して冷たく、敵対心を持っていることも、自分がセンターになって最初のアイドルの祭典で負けていることを思えば、人一倍ライバル心を抱いていたとしても不思議ではない。そういった人間関係の構図を、ざっと分かりやすく描いていたという意味で、ストーリーとして特別なインパクトはないものの、前作との繋ぎに違和感はなく、導入の説明として無難な第1話だったといえるだろう。

 前作では散々叩かれた作画については、ところどころカロリー抑えた簡略さはあるものの(新幹線のシーンは笑ったが)、特にバランスが崩れたような場面はなく、一先ず及第点ってところではないだろうか。今後もこの調子で適度に手抜きはしつつ、人物描写は最後まで上手くやっていってほしいものだ。

 そして最後にライブシーンについて。前作は手書きにこだわったものの、制作スケジュールが破綻していたためか、テレビ放映時の第10話など目も当てられない惨状だった(あのときの絵コンテが今作の監督で、本人にも思うところはあるかもしれないが)。しかし新章では昨今のアイドルアニメに倣いフルCGに切り替え、動きもリアルWUG自身のダンスをモーションキャプチャーしたため、それ自体はとてもリアルに出来ている。表情がCGで多少変わってしまうのは、技術的に諦めざるをえない範囲だろう。しかしCGの長所をやたら活かそうとしたためか、とにかくカメラがぐるんぐるん動きすぎだ。結果として一人ひとりの動きが掴みづらくなっている。リアルWUGのライブを何度も見てきた立場からすると、折角モーションキャプチャーしたのだから、それぞれのクセが発見できるような見せ方をしてくれたらよかった。もちろんアングルやカットはいろいろ切り替えてくれていいのだが、手足の動きや表情、メンバー同士のアイコンタクトなどが素人目にも「おっ」と気づくような演出だったら嬉しいなと。初回だけにインパクトつけた演出にしたのかもしれないが、今後はもうちょっと落ち着いたものにしてほしいものだ。

 本格的なストーリー展開は次回から始まるということで、少しの不安を持ちつつ期待して待ちたい。

2017年01月24日

3年の思いを込め原点を演ずる7人 − 舞台「Wake Up, Girls! 青葉の記録」を観劇して

 1月19日〜22日、舞台「Wake Up, Girls! 青葉の記録」がAiiA 2.5Theater Tokyoにて公演された。私は21日(土)昼公演を一般席(15列目)、及び夜公演をプレミアム席(6列目)にて2回観劇してきた。

 ストーリーは最初の劇場映画『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』を再現したものだが、オーディション風景だけを描いた特典映像の『Wake Up, Girls! - 出逢いの記録』や、TVシリーズを見てから知るような場面も組み込まれている。特に後者については、ライバルアイドルチーム「I-1 Club」をWUGのストーリーと並行して描くことで、本編の主人公である「島田真夢」が抱える過去が、『七人のアイドル』の時点でも見えてくる形になっている。基本的にはWUGのストーリーを全て把握しているワグナーたち向けの脚本だが、初見の人にとっても「一つの物語の始まりとして、少女たちが立ち上がる姿を描いたもの」として楽しめるものだったのではないだろうか。

 WUG7人の配役は、この作品から声優としてデビューしたリアルWUGの7人。もともと「ハイパーリンク」というキャッチフレーズの下、アニメの作品内同様に、ド新人が集まったユニットとしてリアル声優7人がアイドル活動していることにWUGの特性があったが、この舞台は彼女たち自身が声だけでなくリアルな役者として、所謂「2.5次元」の世界を演じる特別なものとなっていた。

 大抵二次元作品の三次元化はアニヲタたちから嫌われる傾向にあるものだが、WUGに限っては二次元と三次元が最初からリンクしているため、ファンであるワグナーたちには告知当初から歓迎されていた。それだけに演じるリアルWUG7人は、大きなプレッシャーを感じていたことだろう。殆どのメンバーは、舞台経験すらなかったのだ。

 しかし彼女たちの演技は素晴らしかった。それはきっと、3年間自分とともにいたキャラクターへの積み重ねた思いが、このステージ上の演技に注ぎ込まれていたからだろう。そして私だけでなく、きっと多くのワグナーたちも、その彼女たちの思いを見つめ続けてきたからこそ、恐らく他の舞台では味わえない感動で胸が一杯になったことだと思う。

 島田真夢が自ら閉ざしていた扉を開いてWUGの中へ飛び込んだシーンの後、この舞台ではアニメの中にはなかった場面が挿入される。社長が失踪し活動継続の是非が問われている中、島田真夢の加入によって一度はやる気を取り戻したものの、1ヶ月経ってもやはりライブの予定が立たず、七瀬佳乃、久海菜々美は具体的な目標がない現状に苛立ちを募らせる。そして佳乃はつぶやく。

 「あのときスッパリやめておけばよかった。……結局自分は何をやっても上手くいかない。もう夢なんて見れない……。」

 2015年暮れ、続劇場版後篇が公開され、アニメ作品としての一区切りがついてしまった時に開催された幕張のWUGフェスで、吉岡茉祐は「まだWUGを終わらせたくない!」と泣きながら叫んだ。リアルWUGの7人も具体的な目標をこの時失っていたのだ。それでも翌2016年、「今度は私たちが作品を引っ張っていく番だ。」とメンバーたちは口々に語り、作品への誇りとキャラクターへの愛情を持ってそれぞれの活動に臨み、7人揃ったときには「WUGここにあり」とばかりに、初見の観衆をも惹きつけるパフォーマンスを演じた。3rdツアー初日に「私の役目は他からファンを連れてきて、WUGを大きくしていくことです!」と宣言した山下七海の凄みは今でも忘れられない。それでも16年暮れの幕張では、みなが「今年は不安で一杯だった。」と本音を漏らしていた。去年は本当に苦しみの中、頑張った1年だったのだと思う。

 脚本の待田堂子は、デビュー当時からの彼女たちをずっと見ていたからこそ、この新たなシーンを挿入したのかもしれない。挫けそうになる佳乃に真夢は、今まで逃げてきた自分だからこそ「もう諦めたくない」という思いを伝える。そして「行き詰まった時に歌う歌」としてTwinkleから教えてもらったという『ゆき模様 恋のもよう』を、7人がアカペラで歌うのだ。普段こういった作品を見ても涙を流すことがない私でさえ、このときばかりは目頭が熱くなるのを抑えられなかった。

 そう、この舞台の上にいたのは、島田真夢を演じる吉岡茉祐ではなく、島田真夢であると同時に吉岡茉祐であり、林田藍里であると同時に永野愛理、片山実波であると同時に田中美海、七瀬佳乃であると同時に青山吉能、久海菜々美であると同時に山下七海、菊間夏夜であると同時に奥野香耶、そして岡本未夕であると同時に高木美佑だったのである。これほどの「ハイパーリンク」があるものだろうか……。

 雪降る演出の中で、バラバラの制服を着て『タチアガレ!』を歌い踊るラストシーン。劇中のライブシーンではコールと手拍子はOKということになっていたが、それをする観客は僅かであった。今、道なき道へと向かいタチアガッた7人。そして3年の思いを込めて新たな道へと踏み出そうとする7人。私たちはきっと、そんな彼女たちを胸に刻みこむように、じっと見つめることしか出来なかったのだ。

 さてこの舞台では、WUG7人以外のキャラクターも、三次元の姿で登場する。しかし岩崎志保役の大坪由佳を除き、全員アニメ声優とは別のキャスティングだ。だがなんということか、全く違和感を覚えないのだ。特に松田耕平役の一内侑の演技は、アニメの松田以上にWUG7人とともにいると感じさせる松田だった。社長も『七人のアイドル』の作中としてはアニメ以上に愛すべきキャラで、演じた田中良子はシリーズを通した丹下社長をしっかり汲み取ってくれていたのだろう。

 狂言回しを演じた大田組の3人も、ワグナー側に立ってとても楽しませてくれた。大田がアニメキャラそのままで、見ていたワグナーみんな納得だろう。

 そしてI-1Clubのメンバーである。実はアニメでは、メイン7人揃ったI-1Clubとしての印象に欠けるところがあった。しかし舞台では7人がみなトップアイドルとして輝き、レッスン風景での掛け合いで各々の個性が感じられ、アニメ以上にキャラクターとしての存在感が溢れていた。素直に「この7人も応援したい」と思わせてくれたのである。加えてキャスト陣がみなツイッターアカウントを持っていて、レッスン中や本番舞台裏の様子をツイートしてくれていたので、彼女たちもまたWUGという作品を愛し、舞台で演じることを心から楽しんでいることを感じられたのが嬉しかった。是非またこの7人が歌い踊る『Knock out』を見てみたい。

 文中は敬称略してしまったが、舞台を支えてくれた裏方の皆さん含め、心から敬意をもって感謝したい。

 心の奥深くまで沁み入る素敵な舞台をありがとう。本当にありがとう。

<追記>

 終演後に書かれたI-1Clubを演じた方々の言葉が嬉しい。舞台はWUGの物語だけど、同時にリアルなI-1の物語もここにはあったんだなと。ブログ記事にはそのリンクを、ツイッターでつぶやいてくれた方には終演後ツイートのリンクを以下に紹介します。心より感謝。

 ◆吉川愛役 岩田華怜さん

  タチアガレ

 ◆近藤麻衣役 小山梨奈さん

  Wake Up, Girls! 青葉の記録 ありがとうございました!

 ◆相沢菜野花役 水原ゆきさん

  『Wake Up, Girls!〜青葉の記録〜』終演

  『Wake Up, Girls!青葉の記録  終演◆

  『Wake Up, Girls!青葉の記録  終演 ラスト』

 ◆鈴木萌歌役 山下夏生さん

  ※このリンク先ツイートに画像での長文記事あり

 以下お二人はまとまった記事を書かれてないが、ツイートでいろいろつぶやいてくれてました。

 ◆鈴木玲奈役 立花玲奈さん →終演後ツイート

 ◆小早川ティナ役 日下部美愛さん →終演後ツイート