賑 や か な さ む け

柴田有理(しばたあり)ブログ

うわずみ駅

うわずみ駅  / 柴田有理


出口まで行きさえすればごほうびにでっかい福田パンがもらえる

ひも類で体を椅子に固定する しばらくここにいてもいいんだ

生物が発生したり活性化するときの音だポコ マリンバ

ささやかな幸あれ ハナレグミさだまさしの歌唱 聞くとやせそう

土着ではいられなくなる 「受け取ったパンが焼きたて」 そんな音楽

赤い服 紫の床 グラマラス民生が歌う川沿いホテル

中心に行くってだけで華やかな行為なんです叫ばなくとも

やわらかい布で包んだ赤ちゃんで携帯電話を拭くお母さん

先生だ 先生だこれ なつかしー 顔から化粧が落っこちそうだ

今日じゃない日にまた来て聞かせてください うわずみ液のようなお話

ちょっとそれさわらないでよ え?理由? 不潔だからよ このエロ河童 

智恵子さんええと言ったら悪いけど困るんだよね狂われてもね 

ちらほらと駅に子供が集まって 今度の智恵子役、誰にする?

智恵子、背負う。 演劇の初歩 とりあえず心が病気の人の真似っこ

もう二度と会わない人に泣きながら本音を言って 風俗客か

田舎から売女になりに来たようで妙にやましい東京の駅

バーミヤン破壊しないでバーミヤンつつき回せば流線形に

グールドがどんどん弾くとグールドがどんどん好きになってうれしい

百均で売ってるものを百均でない店で買うぐらいの意欲

日暮里の地下でいろいろ考えて戻ってみたら一面ナポリ

今月も唐十郎を見せられる 毎月のことだけど疲れる

手のひらをひらひらさせて星空の星を表現 酒もってこい

こめかみをぶち抜きに来るレモン色 やたらみなぎる宮澤賢治

何かいい名前を付けてやりたくて冴えた痛みに近づいていく

少年の天然パーマが濃くなって そう途中って大変なのよ

ぐらぐらと私の塔が揺れるのだ 短歌にしたらピッタリだぐら

都々逸のリズムの方がたくましいんじゃないだろか 楢山節考

風邪をひくのが分かってて寝てしまうこたつみたいな魅力はあった

泳ぐ泳ぐ 遠のきながら ひとつだけ体の中に残る高温

「つまらない物ではない」ということを伝えるための作業 梱包