そろそろAndroidとChrome OSについてひとこと言っておくか

(偉そうなタイトルでごめんなさい。)

なぜGoogleは2つもモバイルOSを作っているのか

まずはなんでこんな一見、無駄に見えることをしているのか。この疑問は正しい疑問だと思う。

Paul BuchheitというGmailの作者であり、FriendFeedのco-founderでもあり(Facebookに買収されたため、最近まではFacebookで働いていた)、最近Y Combinatorのパートナーになったスーパーマンのインタビューの中にこういう記述がある。
http://www.motherboard.tv/2010/11/15/fyi-facebook-s-paul-buchheit-the-inventor-of-gmail-did-not-work-on-fmail

Q: How was Facebook different from Google?


A: A lot of the differences are subtle. On the surface, they seem similar. They have the same people in many cases. They have a nice cafe and those things. But really the way things are run is quite a bit different. Mark is very involved in really all of the key product decisions at a very detailed level. It’s a much more focused product in terms of it’s just Facebook and there’s a strong desire to keep it that way. Google has a much more diverse approach and the founders operate at a level more like a venture capitalist.

FacebookGoogleはどう違う?」という問いに対して、

  • 表面的には似ているけど、全然違うよ。
  • Mark (FacebookのCEO)は、プロダクトの詳細な意思決定にまで関与している。
  • 他方、Googleの創業者たちは、どちらかというと、ベンチャーキャピタリストのように振る舞う。

この点は興味深い。つまり、Googleのマネジメントからすれば、AndroidChrome OSは自社の「ポートフォリオ」の中の一部であって、別に両方存在していること自体、矛盾しないと解釈できよう。この発想自体は、シリコンバレーのエコシステムそのものであり、Googleは(以前から言われているが)このシリコンバレーのエコシステムを社内にも構築してしまったのだ。


つまり、簡単に言うと、マネジメント視点で見れば、「社内でAndroidChrome OSを競争させている」という言い方が正しいのだろう。別に両方生き残らなくても構わない。社内でも競争して、マーケットでも競争して、勝ち残ったものだけが本当の勝者だ、といういかにもグーグルらしい、多産多死を許容するダーウィニアン・アプローチをとっていると見るのが正しい(と思う)。


で結局、どっちがいけてるの?

分かりませんw。が、時間軸でこれまでの経緯を整理すると大体のことが見えてくる。


Androidというのは元々は買収した会社。スクラッチからGoogleの中で作ったものではない。ある日突然、ものすごい勢いでAndroidに人材を投入し始め、わずか18ヶ月で「そこそこ」動くOSがリリースされた。

この開発スピードは本当に凄まじいと思うが、初期のAndroidは、最終的なUIをハードウェーカーにゆだねていることもあり、iPhoneに匹敵するというレベルにはとても到達していなかった。僕もDroid, Nexus One, EVO 4G, Nexus Sと過去に4つのAndroidバイスを持っていたが、「自分の携帯電話にしてもいいかなぁ」と思えるのはNexus Sのみで、それ以前の端末は正直、タッチパネルが思ったように反応しなかったり、動作そのものがもっさりしていたりと、とても使い物にならなかった。(これは多分に僕がiPhoneの素晴らしいUXになれてしまっているからなのだが、GoogleiPhoneとも競合すると考えているはずなので、少なくても初期のandroid端末はgoogle enoughでなかった。)

また、根幹がJava VMであるというのも、正直いけてない要素であると思う。Sun(Oracle)から訴訟されたり法的な面だけでなく、Java VMに依存しているのは、技術的な意味でも決して良いということにはならないだろう。


他方、Chrome OSはある意味「最もGoogleらしいOS」と言える。Chrome OSの前に、Chromeブラウザが発表され、それまで最強と思われたFirefoxよりも遥かに高速化されたブラウザは、あっという間にブラウザランキングに入ってくるほどダウンロードされた。この時に覚えた感動は「シンプルだけど高速なブラウザを作る、みたいな仕事させたらGoogleには敵わないなぁ」という感覚であった。

皆がChrome OSに期待しているのはまさにこの点で、インターネット時代にふさわしい「シンプルだけど高速なOSを作る」ということに尽きるのだと思う。Chromeブラウザの時の「期待よりも全然良かった!」という感動が更に期待値を上げている。

が、この開発が思ったように進んでいない。当初は2010のホリデーシーズンに最初のChrome OSが搭載されたTabletが発売されるという発表があったが、結局延期。


で結局、どっちがいけてるの?(再)

去年の後半に言われていたことは、「Androidtabletみたいな大きな画面には向かないから、携帯はandroid, タブレットChrome OSという使い分けが現実的」ということであった。僕も自分が買ったandroid端末のダメさと、Chrome OSへの期待から、「いつか全部のandroid端末にOS updateが走って、全てChrome OSになりました、という日がくるんじゃないか」と書いたほどだった。


が、しかし、現時点では、明らかにAndroid優勢です。
Android 3.0 (Honeycomb)のプレビューを見れば分かるように、もう明らかに「携帯はandroidで、tabletChrome OS」みたいな棲み分けは誰も考えていないことが明らか。
本来、去年のうちに最初の製品が発売されているはずだったChrome OSが遅れに遅れていて、Androidの3.0のプレビューが先に出てしまった、という勢いの違いを痛烈に感じる。
冒頭のPaul Buchheitも
http://twitter.com/#!/paultoo/status/14631053989773313

Prediction: ChromeOS will be killed next year (or "merged" with Android) http://ff.im/vdmVs

tweetしています。


ただし、まだまだ勝負はこれからでしょう。
冒頭に書いたように、社内でも猛烈な競争をさせられているくらい。何がどこでひっくり返るのか、良くわからない。
Androidは優勢であると言っても、2.3->3.0と2.3->2.4の両方のブランチが同時に走っているようで、これはメーカーからすればややこしくなるだけ。2.4は2.3の延長でインプリできても、3.0はプレビューを見る限り全然違うものだから、メーカー側が「中途半端に3.0をインプリしたデバイス」を発売して、(以前僕が感じたような)中途半端なUXを体験してしまう人が多数出るであろうことは容易に想像できる。
個人的には、Chrome OSにもっと頑張ってほしいが、いかんせん発売されてこないと何とも言えないので...

追記

@masahif2さんにご指摘いただいたので、一点だけ追記。
androidはJave VMと書いたが、正確にはDalvik VMというちょっと別物。Andy Rubinが以前から「Java VMよりいけてるVM」とずっと宣伝してきたので、厳密には別物。ただし、Javaで動いています。

追記2

id:astrobugにいただいたコメント

Chrome OS の中身はほとんどがChromeブラウザーです。モバイルブラウザーの代わりにChromeAndroidに載せればAndroid + Chrome OSとなります。今のChrome OSと同じものがほしいベンダー向けに、Chromeブラウザー付きAndroidからChrome以外の機能を取りやすいソースツリー構造にしておくこともできます。Google TVは既にChromeブラウザーを載せたAndroidになっています。

これもおっしゃる通り。AndroidChromeブラウザ使っているわけなので、もう「ブラウザさえChromeなら、OSはどっちでもいいんじゃねーか」という話なのかも。
Google TVもAndroidで動いているわけで、もはやChrome OSの出る幕無しか、という気もする。

いずれにしても、Googleにとって、ブラウザレイヤーはChromeブラウザのみで競争させずに、OSレイヤーでChrome OSAndroidを競争させている(競争させてきた)という表現が正しいはず。

結局更新していなくて、すいません

でも!MacBook Air 11インチ欲しい!欲しい!欲しい!
どうやったら当たるのかなぁ。欲しいよぉ...

  • disk i/oがものすごく速いんだよね!
  • CPUとかしょぼくてもいいや、diskが速いなら!熱くならないなら!
  • lanケーブルも刺さらなくいいや!Network is faster than diskだもんね。wifiでいいや!
  • メモリも少なくてもいいや。swapしてもflash memoryだもんね!
  • 欲しい!欲しい!欲しい!

ゴールドマンサックスのFacebookへの投資は一体何を意味するのか

試験的にブログを再開します!なんと1年以上ほったらかしでした。初めてブログを書く時みたいにドキドキなので、もし気に入ったら、tweet / hatena Bしていただけると、安心します。笑


さてさて、本題。Facebookが今度は$500M調達したとのニュース。

What Goldman Sachs’ Reported $450 Million Investment in Facebook May Mean
http://www.insidefacebook.com/2011/01/03/goldman-sachs-facebook/


内訳は、ゴールドマンサックスが$450M, 以前も投資していたロシアのファンドDigital Sky Technologiesが$50M。前回、2009年5月にDigital Sky Technologiesが投資した時のvaluationが$10Bで、今回が$50Bのvaluation。

未公開企業に$50Bという意味

$50Bというのは、1 USD = 80 JPYとすると、約4兆円。既にYahoo, eBayの価値を超えている。つまり、facebookは既に十分公開できるレベルであるが、「意図的に」株式公開していない、と見るのが正しい。

ではなぜ公開しないのか。

Avoiding an IPO may be as much about talent as anything else.

とあるように、とにかく才能ある従業員をつなぎ止めるために株式公開しない、のだと言う。株式公開後というのは「創業当初から熱心に働いてくれた社員」を最も失いやすいタイミングである。ある社員が0.1%のストックオプション(簡単にするために行使価格がほぼゼロとする)を持っているとする。とすると、株式公開時にこの社員のストックオプションは$500Mの現金に交換できる。日本円にして400億円。0.1%の株式で400億円である。


もちろんこうしたキャピタルゲインを餌に採用を積極的に進めているのも事実ではあるが、逆に言えば、公開時というのはこうした社員が一気にfinancially independentになり引退する可能性が高まるタイミングでもある。facebookが公開を嫌がる理由の一つは間違いなくこの「タレント流出」であると言えよう。

ゴールドマンサックスが投資した意味

文中に

Goldman gets the inside track on underwriting Facebook’s IPO: The most obvious implication is that New York-based investment bank is leading the race to manage an anticipated IPO in 2012, which could bring in $50 to $150 million in fees to the New York-based investment bank.

とあるように、ゴールドマンサックスが株式公開時の主幹事になる可能性が高い。そして、そのフィーは$50M-$150Mになるとも書かれている。が、これだけではないだろう。


既存の株主はできるだけ早く公開してほしいと思っている。がしかし、創業者はコントロールを失いたくないがために、そして、タレントを引き止めたいがために、公開をできるだけ遅くしたい。まだ、マークザッカーバーグがある程度のコントロールを持っていると思われるので、外部株主の声が必ずしも十分に反映されていないかもしれないとも思う。ゴールドマンサックスの役割は「着実にIPOに向かわせるための監視役」なのではないか。

ここまで株主をコントロールしているFacebookの末恐ろしさ

facebookはすごいなぁと思う。未公開ながら、

For comparison’s sake, Amazon.com raised $8.3 million and Google raised just over $25 million before their respective initial public offerings. Facebook will now have raised more than $1 billion in equity investments prior to an IPO.

とあるように$1B(800億円)を調達してきた。公開前に集めた金額としては、Amazonは$8.3M、Googleは$25Mであるから、この金額がいかに非常識かが分かるだろう。


なぜfacebookはここまでの価値があると皆が思うのか。やはり、「言語依存性の低さ」だと思う。
facebookほどに簡単に文化圏、言語圏、国境を超えてしまうサービスはないだろう。もちろん、ユーザーが投稿するコンテンツは、文化依存、言語依存するだろうが、本質的にサービスそのものは、言語に依存しない。せいぜい、画面に表示されるメニューを翻訳するくらいだろう。


Googleも一見、言語依存性が低そうに見えるが、同じ検索でも、英語と日本語と韓国語では全く違う。それぞれの言語を深く理解したエンジニアが必要だ。Amazon/eBayは税関、国境という物理的な問題が起こる。その点、facebookは言語依存に左右されることがないという強みがある。これこそが、未公開にして$50Bの価値を持つとされる企業の所以なのではないかと思った。

Google Analyticsを(ある意味では)超えたアクセス解析"User Heat" by ユーザーローカル

アクセス解析というのは、実際に意味のあるフィードバックを得ようと思うととても難しい。PVやUUはちょっとツールを使えば誰でも測定できる。Google Analytics等を導入すれば、滞在時間やどのようなキーワードで検索されてそのサイトに至っているか、くらいは分かる。

しかし、一番重要な「じゃ、どこを直せばもっとアクセス増えるの?あるいはもっとたくさん読んでもらえるの?」という答えは誰も教えてくれません。(だからSEOコンサルが儲かるわけです。)ユーザーローカルの"User Heat"はこれまでのアクセス解析ツールよりもその答えを出すのにずっと役立ちます。しかも、このツール無料なのがすごい*1

User Heatを導入し(javascriptを貼リ付けるだけ)、アクセスがある程度貯まってくると、"Gaze Heat Map(上図参照)"、"Click Map"、"Mouse Track"の3つが見れるようになります。僕の場合、1日経たないですぐ結果が見れるようになりました。一つずつ僕ならこう読む、というのを書いておきます。

Gaze Heat Map(上図参照):どの辺が読まれているかを教えてくれるツール

上図は、http://d.hatena.ne.jp/shibataism/20091016/1255の例ですが、リンクや文章で段落っぽく書いたテキストよりも箇条書きがよく読まれていることが分かります。
というわけで、この結果からは例えば、

大事な論点、読んでほしいことは、論点を整理して箇条書きにしてみる。

みたいな形にするとより多くの人に読んでもらえるのではないかという仮説が立てられます。(実際、僕のブログの場合は、これを実践した方がはてぶとかが付きやすい傾向にあります。)よく、コンサルとかでも大事なことは3つ(5つ)に絞って、「一つ目は〜、二つ目は〜、最後に〜」みたいに言いなさいと言われますよね。そういう意味で非常に納得感があるのではないかと思います。

Click Map:どこがクリックされているかを教えてくれるツール

この例の場合、

  • はてぶの"xx users"がすごいクリックされている。笑
  • プロフィールリンクがすごいクリックされている。
  • 新着人気エントリーもクリックされやすい傾向にある。
  • 文中の外部リンクは(比較的上部にあるにも関わらず)あまりクリックされない。

というようなことは分かると思います。僕の場合、これを次のように解釈しています:

  • はてぶは被リンクを集める重要な仕組みなので好ましい結果。従って場所は変更せず。(ただし、あまりはてぶを強調したくない人は、B!やxx usersのリンクをページ下部に置くべきでしょう。)
  • プロフィールはこんなにクリックされなくても良い(笑)。僕の場合、どちらかというとコンテンツを読んでほしい。従ってプロフィールリンクはページ下部に下げるべき。実際に変えてみました。(逆に、個人事業等の方でプロフィールへの導線が重要な方には好ましい結果かもしれません。)
  • 新着人気エントリーがクリックされやすいのは良いことなので、そのまま。
  • 文中の外部リンクのクリックが少ないのは、僕のブログとあまり関係ないので、何もできない。笑

という具合になります。

Mouse Track:(使い方が良く分からないが)マウスの位置とクリック位置の関係を見るべし

この画面が実は一番使い方が難しいのですが、この画面自体は、マウスがどう動いているかを教えてくれます。例えば、広告が掲載されている商業サイトの場合は使い道があるかもしれません。というのは、"START"の場所に広告があった方がクリックしやすいですよね。少なくても、"START"の位置からものすごく遠く離れた場所に広告があるのはあまり効果が期待できない。
このように「クリックしてほしい場所」が決まっている場合は「ページに来た時にマウスがある場所」と「実際にクリックされている場所(Click Map)」の2つを分析すると意図通りにユーザーが行動しているかどうかが分かりますね。

個人的には、欲を言えば、参照元ごとにこれが取れると嬉しいです。例えば、twitterから来た場合と検索エンジンから来た場合では最初にマウスがある場所が違うと思うんですよね...


というわけで、自分で考えて、仮説検証しながらサイトを育てたいというウェブ関係者には"User Heat"お勧めです。無料だし。

*1:ただし、無料なので解析結果画面がpublicになります。

アメリカの民主党と日本の民主党の違い(資本主義を否定するな!)

あまり政治のことは考えないようにしているのですが、今日立て続けに2本同じ議論になったので...

※僕は政治にはそんなに詳しくないので、もし僕が事実誤認していることがあれば、是非ご指摘ください。


(写真はhttp://www.nikkei.co.jp/news/main/im20090923AS3K2300S23092009.htmlより)

僕はポリティカルにはニュートラルなつもりなのですが、日本の民主党の今の政策には同意できかねる部分が多々あります。もちろん自民党政権をひっくり返し、競争環境を作り出しこと自体は非常に素晴らしいと思っていますし、政治家個人の資質を否定するつもりも毛頭ありません。

アメリカの民主党と日本の民主党の共通点

まずは共通点から。
党の名前の通り、本来的にはどちらもリベラル色が強く*1、どちらかというと弱者救済、小さな政府よりは大きな政府という方向を向いているという点は共通しているように感じます。
例えば、オバマは全国民に保険が行き届くようにしようとしていたり*2、鳩山政権はこども手当の充実、公立高校の無料化などを行おうとしています。

この辺りは僕は個人的には違和感ありません。好みの問題なのですが、例えそれらの政策で自分が払う税金が増えようとも納得できます。
中にはアメリカの共和党のように、ある意味での弱者切り捨てをしてrich gets richerになるような政策を好む人もいるかもしれませんが、僕はこの点はあまりこだわりがないのです。

アメリカの民主党と日本の民主党の違い

では、何が違うのか、と感じているのかというと「国家の富は一体誰が作り出していると思っているのか」という点です。
オバマが率いるアメリカ政権の場合、それは明確です。徹底的に競争環境を作り出す。場合によっては頭脳を「輸入」してまでイノベーションを促進する。国家全体でそんなことをしなくても良いが、一部の超優秀な人たちには徹底的に競争してもらい、科学技術力を強め、(もう不必要なんじゃないかと思ってもそれにも飽き足らず)ひたすらイノベーションを起こすような場を用意する。
例えば、ボストン、シリコンバレー、マンハッタンなどはこういう場所に該当するのだと思います。明示的に名前は付いていませんが「経済特区」みたいなものです。超優秀な人たちが国内外から多数集まり、競争する。そこではリスクマネーが飛び交い、新しいビジネスがたくさん作られては消えて行く。その競争を勝ち抜いたビジネスが国家を支えるような規模に成長する。もちろん、そこでは失業率も高い。ハイテク産業は従業員の側の失業リスクも大きいが、徹底的な競争環境を作り出すことで多産多死の中で自然淘汰が起こる。
アメリカという国の本質的な富はこうした一部の特別な「特区」が作り出しているのだなぁと思います。


他方、日本の今の郵政民営化逆行の流れを見ていると、「必要になったら国債を刷ってお金を増やせばいいじゃないか。郵政が買い取ってくれれば、市場にインパクト出ないし。」と言っているように見えて仕方ありません。まるで、富はイノベーションではなく国債発行によって作り出されているかのような気さえしてしまいます。
この流れを主導しているのは、実は民主党ではなく、亀井大臣だと言う人もいます。亀井大臣は政治家としては素晴らしい人なのだと思います。あのタイミングで自民党を飛び出して新党を作り、今回の政権交代ではキャスティングボードをしっかり握っているわけですから、トレンドを読む力、戦略に長けていることは間違いありません。ただ、僕は彼や民主党の今回の一連の政策には大きく反対です。
雇用を守ろうとするプレッシャーのあまり、リストラもできずに新しいことを始められなくなっている大企業がたくさんいます。

まとめ

何が言いたいのかというと、僕が当たり前だと思っていた以下の2つのことが、今の日本政権では全く考慮されていないように見える、ということです。

  1. 現状、我々が知りうる限り最も優れた経済システムは資本主義である。
  2. 資本主義の経済成長ドライバーは、イノベーションの促進である。

この2つは経験則みたいなもので、社会主義国家が壊滅状態に陥って、資本主義国家は繁栄しているから資本主義の方がいいよね、というようなことだったりきちんと論理的に証明しようとするとものすごく大変なのだと思いますが、とにかく僕はこの2つは当たり前のことだと思っていました(が日本の民主党では当たり前でないのかなと疑うようになりつつあります)。


アメリカが完璧だと思いません。平均的なアメリカというのは日本の地方都市なんかよりもひどくローテクで、イノベーションの「イ」の字もありません。一部の特別な「特区」でも過度の競争によってドロップする人も多数います。ただそれでも資本主義とイノベーションの追求だけは民主党であっても共和党であってもやり続けているように見えます。

他方、日本は「お札すればお金増えるからね。」という安直な議論しかしていないような気がします。日本全体がハイテク産業に向かうべきだ、なんてことを言うつもりはありません。ハイテク産業というのは、本質的に、資本の側も働く側もリスクが高いのです。そういうリスクを許容したい人たちだけが集まって挑戦できる場を作り、新しい産業を生み出し続け、多くの雇用と多くの税収を得る。
東京全部じゃなくてもいい。東京の一部だけでもいいし、違う場所だっていい。世界のどこにも負けない「資本主義特区」を作る努力をしてほしい。ただただそう思った一日でした。


(この記事は大きく僕の主観に基づいています。日本はとてもキャッシュリッチなので、このままの民主党政権の政策で突き進んでもすぐに国がダメになるということはないでしょう。そういう意味では、本記事は僕の好みを書いたものだと思ってもらえれば幸いです。)

*1:日本の民主党に一部リベラルでない人もいると思いますが全体としてはリベラルな方だと思います

*2:アメリカの健康保険は今は原則民間の保険のみで貧しい人は保険に入れない

Googleに見る世界中の天才を集める方法

今回は、完全に人様のブログから。(あまりにも驚いたので。)
少々長いが、引用させていただきます。

初期の無名のGoogleがどうやって世界中の天才を集めたか

まだ全く無名だったGoogleが世界中からアルゴリズムの天才たちをどうやって集めたか、という話だ。

Woojaeは1999年頃、イギリスのケンブリッジ大学の博士課程に留学しており、研究のため物理の研究室にいた。
その時、同じ研究室に、15歳でインドからハーバード大学に留学し、飛び級して7年で博士号まで取得し、22歳にしてケンブリッジ大でポスドクをやっていた天才がいたと言う。
大学では、金属の表面にショックを与えたときに起こる振動を、数値的に計算するアルゴリズムを開発していた。

その彼が、ある日突然、「アメリカの企業に呼ばれて、そこに就職することにした」と言い出す。
「何て会社?」と聞くと、「Googleという会社だ」という。

Google?そんな聞いたこともない会社に何故行くんだろう?とWoojaeは思った。
その数週間後、またWoojaeはGoogleという耳慣れない名前を耳にする。

彼の研究室が入っていた建物の隣は、理論物理の建物があった。
そこには、車椅子の天才、宇宙物理学者ホーキングの研究室がある。
当時ホーキングの研究室には5人の大学院生がいたそうで、彼らはケンブリッジ大学でも誉れ高い、「選ばれた天才」だった。

ホーキング研究室の大学院生は、ホーキングが頭で考えている数式を、
彼の表情や彼が操作するジョイスティックで示されるカタコトの言葉を頼りに、
黒板に板書し、ともに議論することが出来る才能を持っている必要があった。

ところがその貴重な大学院生5人のうち、2人もが突然博士課程を退学する。
Google」という聞いたことも無いアメリカの会社に行くためである。

その二人は、当時一部で流行っていた、脳科学のアナロジーアルゴリズムを作って初期宇宙の数値計算をする、という研究をやっていたという。

とにかく、ケンブリッジ大学の物理学科の天才学生を3人も奪っていったGoogleに、Woojaeは興味を持つ。
その後、いろんな人に話を聞いて、事の全容が分かってきた。

1998年にGoogleを創業した、Larry Pageという男が、1999年、世界中の計算機科学の基礎研究に携わっている「天才」学生にアプローチしたらしい。
Larry Pageは、自分のいたスタンフォード大学の計算機科学の教授を5人、相談役として雇う。
その教授のネットワークで、「これは天才だ」という学生を見つける。
その全ての学生に、FedExで、スタンフォード大学の教授の手紙と、ファーストクラスの往復チケットを送る。
「是非あなたの研究について話して欲しい。パロアルトに来て話してくれませんか?」

まあ学生なら、スタンフォードの誉れ高い教授にファーストクラスのチケットを送られたら、行ってみるだろうな。
それで、Larry Pageと教授たちが「面接」する。
見事面接を通った学生たちが、本格的にアトラクトされる。
Larry Pageが、当時既に考えていた、検索エンジンの構想と、将来的にはデータマイニングの手法で、人々の生活の隅々まで入っていくサービスを確立する夢を語るのだ。

この方法で、世界中の「天才学生」にアプローチしていった、という話。

これが「天才」学生のネットワークで更に広がっていく。
採用された元学生たちは、自分の知っている「天才」たちに声をかけていく。
Larry Pageが夢を語って、アトラクトする。

こうして集められた天才学生たちは、Google検索エンジンの開発を成功させただけでなく、その後のGoogleの新しく、面白いサービスを次々に開発するリーダーとして活躍していったそうだ。

いやー、面白かった。
Googleの初期の数々のイノベーションは、Larry Pageの確固たる夢と、こうやって集められた「天才学生」によって実現していったのか。
Larry Pageの天才を探す方法も面白いが、初期の時点でそれだけの天才を集めることが成功の鍵だと認識していた先見性がすごい。

何だかあまりにもスケールが大きすぎて圧倒されるだけだが、こういう狂気を持っているのがグーグルという会社なんだ、と改めて思う。

考えてみれば、やっていることはとてもシンプルだ:

  • とにかく頭がちぎれるほど、最良の方法を考える。(「天才を集めることが成功の鍵。」)
  • そして、一番見晴らしの良い場所に場所取りする。(「自分のいたスタンフォード大学の計算機科学の教授を5人、相談役として雇う。」)
  • 手段を選ばずに、最良の方法でアプローチする。(「その全ての学生に、FedExで、スタンフォード大学の教授の手紙と、ファーストクラスの往復チケットを送る。」)

あんまり小さいこでくよくよせずに、頑張らなくちゃと思った次第。

Facebookのサーバーもすごいことになっている件(直近10ヶ月で20,000台のサーバーを追加。ログは毎日25TB。)

Googleに比べるととっても地味なPRしかしていないが、実はFacebookのエンジニアリングも結構すごい。CTOのJeff RothschildがUCSDで講演したビデオが見れるので今日がある方は是非見た方が良いと思います。


ビデオを見たのが昨日なので、全部覚えていませんが、覚えていることだけでメモを書いておきます。全般的に、非常に素直な講演で、自分たちの良いところも悪いところも素直に言ってしまっているという印象です。(普通、この手の講演だと自分たちが優れていることだけを言うのですが、これまでどういうところで苦労してどうやって克服しようとしているか、みたいなことがとても良く分かります。)


ビデオを見て頂ければ分かりますが、Googleとはベクトルが違うものの、やはり相当技術的にもすごいです。単にPRしていない、あるいは下手なだけですね。
Yahoo!のコアなエンジニアたちが相当FBにいると聞きますので、是非興味がある方はビデオをご覧ください。

  • エンジニア一人が支えるユーザー数はGoogle等の列強と比べても何倍も多い。(この話はいつも採用イベントで出てくる。)
    • 最初の1億ユーザーになった時は、エンジニアが2人しかいなかった(うち一人はCEOw)。
  • 基本的にフロントエンドは今でも全部PHPで作っている。
    • PHPの最大の良さは、何と言っても簡単に作れること。
    • 他方、PHPにも悪いところがたくさんある。リクエストが増えると処理が遅くなるなど。その辺はFBでPHPに改良を入れて、OSSにフィードバックしたりしている。
  • 分散ファイルシステムも結局自作した。
    • 主に写真をどう配置して、どう配信するかというところ。
    • 最初は高いNASとか買っていたけれど、壊れるしスケールしないし、ということで自分たちで作るしかなかった。
    • でも最初にパッケージ製品を使っていたおかげで、どういう部分がボトルネックになるのかが良く分かった。そこを直すように作った。
  • memcachedはあらゆるところで使っている。
  • DBは基本的にmySQL
    • mySQLのエンジン自体に改造してDBへ変更するとmemcachedのキャッシュも変更されるようにした。
    • 最初は西海岸(確かサンフランシスコだと言っていた)にしかDCがなかったが、東海岸に新たに設置したDCとDCまたぎレプリケーションしてる、みたいなことを言っていた。
  • とにかくすごい勢いで成長している。
    • 18ヶ月前まで1万台だったサーバーが今は3万台。
    • 毎日のログは25TBでこれを解析するだけで大変。syslogを吐く部分もカスタマイズしなければならなかった。