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2009-05-06

シリコンバレーで「シリコンバレーから将棋を観る」の感想を書く

| 12:37 | シリコンバレーで「シリコンバレーから将棋を観る」の感想を書く - shibataismの日記 を含むブックマーク

シリコンバレーに来てようやく、梅田さんの新著

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

が読み終わった。ここ1ヶ月くらいは、大好きな著者の本もまともに読めないくらいドタバタだったという反動を差し引いても、久しぶりに良い本に出会えた気がする。

さて、何を隠そう、僕は将棋が全く分からない。将棋を「指せない」だけではなく「観ても分からない」。なぜ僕が将棋を観ることもできないのかは、自分でもよく分からない。どちらかと言えば、将棋のような知的ゲームをとても愛する子供であったはずだ。将棋をする年代(小学校中〜高学年)よりもずっと小さい頃、僕はとてもゲームが強く、例えばオセロをやると同世代だけではなく大人にも負けなかった。本気でやるといつも圧勝してしまう。そしてそれは幼少期の子供には友達を減らす要因になりうる。子供心にそう思っていたのかもしれない。ただただ、僕は今も昔も将棋が分からない。そういう読者はもしかしたら本書の想定ターゲットではないかもしれないが、僕には十分得るものがあった。

将棋が分からない僕にとっての本書は、羽生、佐藤、深浦、渡辺という4名の超一流棋士の人物像を描いた書であるとも言える。超一流の棋士を観察することで、著者は超一流の定義をあとがきで次のように記している。

「超一流」=「才能」×「対象ゆえの深い愛情ゆえの没頭」×「際だった個性」

そして、続くその個性とは何かという部分で、羽生は「真理を求める心」、佐藤は「純粋さ」、深浦は「社会性」、渡辺は「戦略性」と見事なまでにエッセンスだけを抽出している。著者は、棋士たちとふれあい、彼らの将棋を観る中で、超一流とは何か、そして、彼ら4人各々の個性をここまで短い言葉で切り取っている。

ここまで本質的な個性を短い言葉で表現するのは、想像以上に大変な作業である。大きなリスクも伴う。著者がこの部分(私には一番本質的だと思える部分)をあとがきに記しているのは謙遜そのものだとも思える。そして、ここが「将棋を観ることも出来ない」僕にとって、一番価値がある箇所でもあった。というのは、この本は「将棋を観ることが出来ない人」にとっては経営学の教科書そのものだからだ。経営学とは「競争優位を作り出すための戦略立案の方法論」が研究対象である。戦略を作るのは人間である。従って、経営学の研究対象というのは本質的には人間そのものだ、ということにもなる。本書は、「超一流を構成する要素とは何か」という視点で読めば、経営学の教科書そのものだ。ここまで人間の本質だけを見事に抽出できたのは、著者が日頃からシリコンバレーのビジョナリーたちの言葉に耳を傾け続けてきたからに他ならないと思う。その意味に置いて本書のタイトルに「シリコンバレーから」という語が入っていることに納得がいった次第だ。(最初は単なるSEO狙いかとも思ったが。)

超一流のエッセンス以外にも学ぶべきことがあった。将棋界そのものの在り方だ。将棋が全く分からない私にも、将棋界の「高貴さ」が良く理解できた。本書から伝わってくる棋士には、煩悩が全くない。もちろん、経済的なインセンティブもない。ただただ、最高峰の知同士がぶつかりあい、より美しく将棋を進化させようとする、というそれだけだ。著者は、棋士研究者に似ていると何度か表現しているが、その通りだ。研究者というのは、自らの知だけなく人生そのものをかけ、最先端の科学的知見を創造することに文字通り人生をかけている。彼らにも煩悩が全くない。煩悩がある研究者というのは(私も含めて)超一流ではない。以前、私が研究の道に戻る時に、指導教官は「研究者になるということは出家するようなものだよ。もし出家する(=経済的なインセンティブも社会的な名誉も全て捨てる)つもりがないなら、一生研究者で居ようと思わない方が良い」と言われたことがあるが、将棋の世界も全く同じだと思った。本書に登場する深浦は、小学校卒業後に家を出て将棋のための人生を歩むことになったとあるが、これはまさに「出家」そのものだ。超一流の棋士たちが文字通り、人生をかけて、美しい将棋を作り出し、普及しようとする。その清々しいまでの姿にあこがれを抱いた。僕も人間の根本の部分でそうありたいと思った。同じ文化と言っても、スキャンダルにまみれている相撲界とは全く異なる。将棋界がなぜこれほどまでに高貴であり続けられるのか。この質問を今度、著者にぶつけてみようと思う。

以上のように、本書は「将棋を観ることもできない人」にとっても多くの示唆を含んでおり、是非おすすめの一冊だ。

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

2009-03-21

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台

| 01:57 | サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台 - shibataismの日記 を含むブックマーク

サッカーという名の戦争―日本代表外交交渉の裏舞台」を読んだ。サッカー日本代表のマッチメイクの舞台裏についてここまで書いて良いのかというくらい詳細な記述でありながら、よくある暴露本の類とは一線を画した名著だ。

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台

内容に入る前に、著者の当時の役職であった日本サッカー協会の専務理事(ゼネラルセクレタリー)というポジションはどういうものかというのを少し調べてみた。

まず、日本サッカー協会というのは財団法人財団法人というのは(株主総会取締役会によって運営される株式会社とは異なり)理事会によって運営される。現在の理事会のメンバーは、

http://www.jfa.or.jp/jfa/organization/rijikai.html

にある通りで、川淵前会長の後を犬飼会長が引き継いだというニュースは見たことがある。会長が1人、副会長が3人、専務理事が一人ということは、専務理事=社長みたいなものだと思えば良いはず。続いて、収支規模を調べたところ、なんと150億円/年くらいの売上がある。

http://www.jfa.or.jp/archive/jfa/organisation/report/2008/hyogi/pdf080712/080712_02.pdf

確かJリーグクラブで最も大きい浦和レッズでも70億円/年だったので、「日本サッカー協会の専務理事(ゼネラルセクレタリー)」というのは「年商150億円くらいの会社の社長」だと思えばいい。


本書は、基本的には著者の実体験を元にした回顧録のようなものである。その意味においては、How To本ではないし、普遍化した知識が得られる本でもない。だが、僕はこの本を読んで「絶対に負けられないインテリ戦争の戦い方」について少なくても考えさせられた。


前者の「絶対に負けられないインテリ戦争の戦い方」というのは、サッカー日本代表における国際試合を取り仕切るという仕事においての勝負の戦い方である。なぜ、「インテリ戦争」とまで書いたかというと、それは日本代表戦をスタジアムで観戦すればよく分かる。Jリーグの試合とは全く異質な雰囲気がそこにあり、良くない表現であることを承知の上で書けば、日本人は本当は戦争をしたがっているのではないかと思うほどの熱気と狂気に包まれている。その全てのマッチメイクを担うというだけでなく、オリンピック予選やW杯予選という公式戦では、文字通り負けは許されない。

例えば本書で出てくるように「オリンピック予選のフォーマットを決める場面でホーム&アウェイ、ダブルセントラル、シングルセントラルの3つがあり、監督はダブルセントラルかつ日本開催は後半にしたいと要求している。」という状況で理想通りの結果を勝ち取らなければならないというような勝負である。ビジネスでも似たような場面はありそうであるが、ここでかかれているのはオリンピック予選である。一旦失敗したら4年間は確実にチャンスが回ってこないという点で、圧倒的に我々のビジネス環境とは異なるだろう。そんな中、著者は数日前からのシミュレーションや当日の機転、さらには「神風」とも呼べる運の良さで交渉を勝ち抜き、結果として日本代表オリンピック予選を勝ち抜けたわけであるが、このくだりは本当にドキドキしながら読んだ。

こうした勝負は本当の意味でのインテリ戦争だと思う。自国に少しでも有利になるようにゲームをコントロールする。しかもそれを暴力的な手段以外で。それも一旦決着がついたら4年間は二度とその勝負ができないことが事前分かっている。こんな制約条件の中での勝負をコントロールし、勝ち抜いていく様は読むだけで興奮を覚えた。僕は今までこんな勝負をしたことがあるだろうか。今後このような勝負をすることがあるだろうか。あるとすれば同じように勝てるだろうか。と思わず自分自身に問いかけてしまった。


他にも本書でたびたび登場する、アジア外交(政治)とサッカーの関係は非常にスケールが大きく興味深い。著者の経済産業省時代のシルクロード外交サッカー界に転身した後も役立っているというのは、何かの因縁なのかもしれない。

いずれにしても、本書はビジネス本であり政治本でもある。スポーツビジネスに関心がある人、公共政策に関心がある人、大きな仕事をしたいと考えている若い人にはとてもお勧めの一冊だ。

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台

2008-05-08

「私塾のすすめ」から学んだ5つの教訓

| 23:20 | 「私塾のすすめ」から学んだ5つの教訓 - shibataismの日記 を含むブックマーク

献本ありがとうございました。

本書のオリジナリティは、「ぶっちゃけ具合」にあると思います。(特に齋藤さんが)「そこまでしゃべってしまっていいの?」という場面が多々あり、読んでいる側がひやっとすることが多々ありました。もしかすると酒入ってるんじゃないの?*1というくらい、二人が惜しみなく自分たちのことを語っている本です。


逆に言えば、内容がてんこ盛りすぎて、書評を書くのが難しい本だなぁと思いましたが、

梅田 本を読むときに、「頭で読む人」と「心で読む人」がいると思っています。(中略)ある程度の基礎力は必要だけれど、それ以上のところの読書の意味として「心で読む読書」を心がけて、自分の生きる糧として知を使ってほしいです。(p.154)

とあるので、「自分の心に響いたことだけを勝手に解釈するメソッド」*2と称して、僕自身に響いたことだけを抽象化して、5つの教訓としました。

(皆さんも同じところで響くかどうかは分からないけど、心で読めば何かぐっと来るものがある本だと思います。)


教訓1:自分が信じた道を諦めない

齋藤 (中略)この三年、この五年、この十年はこの水に入ってしまうと決める。冷たい水で肌に合わないかもしれないけど、とにかく入ってしまう。(中略)その頃、「ご職業は」と聞かれると「思想家です」と答えていました(笑)。今はちょっと気恥ずかしいですが、当時は、「大学院生です」などと答える気になりませんでした。(中略)僕は大学を卒業した時点で、まったく自分を学生だと思っていなかった。研究職という仕事に入ったという意識で、「あなたたちと同等ですよ」と思って入ったら、あくまでも学生扱いされる。それに反発して、当時、スーツにネクタイで大学院に通っていました。スーツなんてものは本当は大嫌いだったのですが「これは仕事でやっているんです」というのをアピールするためにそうしていました。(p.122)

これは齋藤さんを齋藤さんたらしめている実に本質的な部分だと思うのですが、自分がこの道に入ると決めたら、自分に自信を持って、絶対に諦めない。

スーツを着ていったからといって、周りの見方が変わるということはないと思いますが、齋藤さんは「自分の心が折れないようにするために」わざとそうしていたのだと思います。

大抵失敗する場合の原因は「内部」にあります。自分自身だったり、自分のすぐ周辺に原因があるということです。自分さえ折れずに戦い続けられれば、いつか必ず勝てる、そう思わせてくれるお話でした。


教訓2:幸せのレベルを下げる

梅田 (中略)僕が自分の事業をつくってきたベースにあるのは、営業経験です。前の会社(ADLというコンサルティング会社)にいたときに、コンサルティングのプロジェクトを売る営業をずっとしていましたが、これはもうほとんど「ノー」と言われ続けます。無料のセミナーを企画して、経営者や部長クラス以上の人を呼ぶわけです、招待者リストを作って千人くらいに案内を送る。返事がくるのが十分の一で百人ですね。百人がセミナーに足を運んでくるということで、ホテルの一室を借りてプレゼンテーションをする。アンケートを配る。半分は無反応ですね。代理出席で若い人が情報だけ取りにくるというのもけっこう多い。それで残りの大半は「面白かったけど、お金を払ってまで付き合う気はないよ」という返事になる。アンケートの「一度訪ねてくれ」という項目に印がつくのは、百人の中で多くて五人です。その人たちを全部訪ねていっても、本当にプロジェクトが売れる相手は一人いるかいないかです。(p.130)

実に勇気づけられました。何が言いたいのかというと、梅田さんだって昔はこういう普通の営業をちゃんとやっていたんだ、ということです。そして、1000人呼んで成約するのが1件以下。つまり999件は断られているわけです。本書の中にもありますが、大半は「ノー」なわけです。そんなことで落ち込んではいけない、別に自分の人格を否定されているわけではない、と思うことが重要だと思います。

僕の場合は、例えばこの事例だと、100人「も」セミナーに来てくれた、5人「も」来てほしいと言ってくれたというように考えるようにしています。目標は高く持つべきですが、幸せの基準は低くした方が、同じ目標を達成するのに何回も幸せを味わえます。


教訓3:アウェーでもビビらない

齋藤 僕は結構、「無理やり」というのが好きなのです。やる気のない、ぐたっとした雰囲気の連中を変えていくというのが、むしろ快感だったりします。これは大人に対しても同じです。講演会などで講師としてよばれたときに、会場に最初から眠ろうとしている人がいます。(中略)そういう人に対する、僕の無理やり感ってすごいです。立ってもらって体操してもらったりする。

「うんざりしている方もいらっしゃるかと思いますが、そこに一人座ってていこうし続けるだけの神経の太さを持っている日本人はいません」みたいに言う(笑)。「私に関心がない方にはごめいわくですが、私は、自分がかかわった場が何かを残さないということに、自分自身が耐えられないので、付き合ってください。私に根拠のない敵意を持っていらっしゃる方は、ムダですから、今捨ててくださいね」。そうしているうちに、「だんだん根負けしてきましたね。私は根負けしません。みなさんはこの状況に慣れていないかもしれませんが、私はこの無理やりな空間に圧倒的に慣れていますから。さあそれでは.....」という具合で、それで、肩をまわしたり、実際に体操をやってもらいます。(p.78)

これも実に齋藤さんらしいやり方だと思います。そもそもそんな講演引き受けなきゃいいのに、と思う方もいるかもしれませんが、世の中、アウェーだと分かっていても、やらねばならない時もあるかと思います。

そんな時は、アウェーだから上手く行かないかもとネガティブに考えるのではなく、「アウェーでも勝つにはどうしたらいいか」ということを考えて、ビビらずに頑張ろう、そんな風に思える事例でした。


齋藤さんクラスだったら常に味方ばっかりで、ということではなく、アウェーでも勝ち続けたから今の齋藤さんがあるということなのだと思います。


教訓4:先に有言、後から実行

梅田 一度実験してみたいと思っていることがあります。今度、しばらくものを書くのを休業することにしました。(中略)それで、全国四十七都道府県それぞれ一カ所ずつ、ブログを通して知り合った人を訪ねる旅、「ウェブの細道」というのをいつかやってみたいと思っているんです。その構想を実現する決心が本当についたら、ブログに書きます。そうしたら「私のところにどうぞ」という人がかなり手を挙げてくれると思うんです。(p.187)

「その構想を実現する決心が本当についたら、ブログに書きます。」とありますが、ブログに書く前に本に書いちゃってる(笑)。読者も「梅田さんなら本当にやりかねんな。」と思う。そして、それが実際に起こる。

予定調和といえば予定調和なのですが、有言実行が続くと好循環になる。それだけではなく、有言することで、自分に目標を課すだけではなく、自分がやらないことも明確にできる。そんなことを一番良く知っている梅田さんだからこそ、本に「ウェブの細道」と書いたりしたのだなぁと思いました。


教訓5:「あこがれ」と「習熟」を明確にしてモチベーションを高める

齋藤 そもそものきっかけ、モチベーションがない人がどうしたらいいかというご質問ですね。端的に言うと、「あこがれ」と「習熟」が二本柱だと僕は思っています。「あこがれ」というのは、これがすばらしいんだとあおられて、その気になってやってみるということ。もうひとつ「習熟」というのは、「練習したらできた」という限定的な成功体験だととらえています。すべてにおいて成功するというのは難しいのですが、限定的な成功体験があると、「できるって面白い」と思える。それに何の意味があるかということは関係なしに、限定的な成功体験によってモチベーションがあがる。「あこがれ」か「習熟=限定的成功体験」のどちらかだと思うんですよ。(p.85)

この本の中で一番ぐっと来たのがこの部分だった。自分のこれまでを振り返って、どういう時にモチベーションが上がるかというのを考えると、この2つのいずれかなんですよね。モヤモヤが非常にすっきりした気分になりました。

これは、自分だけではなく、自分の仲間や後輩のモチベーションを気にする時も同じだと思います。この2つを明確にして、皆がモチベーション高く活動できるようにしていきたいと思いました。


私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

*1:たぶんそういうことはないと思います。一応、お二人の名誉のために注記。

*2:名前が長すぎて流行らないかも

DesperadoDesperado 2008/05/09 00:10 今度本は「×齋藤孝かぁ...」と思って読む気を失くしていたのですが、shibataismさんの書評を読んで俄然気になってきました。抜き書きのチョイスが素晴らしいと思います(回し者かというくらいに)。

CUSCUSCUSCUS 2008/05/09 23:21 引用されているところが生きているところで、とてもよかったです。「私塾のすすめ」を買いたくなりました。

2008-03-01

「ウェブ時代 5つの定理」:あなたと「5つの定理」の関係

| 01:54 | 「ウェブ時代 5つの定理」:あなたと「5つの定理」の関係 - shibataismの日記 を含むブックマーク


まず、本の内容以前に、「ビジョナリーたちの名言リンク集」が既にウェブで公開されている。

http://www.bunshun.co.jp/umeda_web/umeda_link.htm

普通に考えれば、でたばかりの本の内容の一部を惜しみなくウェブ上に公開するということを、出版社がやるというのは狂っているとしか思えない。しかも、このページでは、本からでは辿るのが難しい「原文」へのリンクまである。

つまり、リンク先まで含めれば、本よりも情報量が多いことになる。このようなチャレンジをした著者と出版社の関係者の皆様には本当にお礼を言いたいくらいだ。

実際問題、このページは、未購入者へのマーケティングにも役立つし、読後の「復習用」にも使えるからユーザーにはこの上なく価値があるページであることだけは事実だ。


さてさて、前置きが長くなってしまったが、本題に。

本書には2つの使い方があると感じた。一つは「良き教科書」あるいは「公式集」としての使い方だ。本書には厳選された名言だけが書かれており、それ自体に凄まじい価値がある。もし大学受験に「ウェブ」という科目があったら、本書を丸暗記しておけば恐らく100点を取れるだろうというくらいに。


もう一つは、本書を「リトマス試験紙」として使い、自分の特性を理解するという使い方だ。

僕はこの本を読むに際して、単に「海の向こう」の異国のお話としてではなく、自分の知り合いの顔が何人も浮かばせながら読んだ。どういうことかと言うと、「Aさんには昔これと真逆のことを言われたなぁ。」とか「Bさんにはこれと全く同じこと言われそう。」と言った具合にだ。そして、その後のAさん、Bさんとの関係をよく考えてみると、本書に書かれたことと逆のこと言うAさんとは疎遠になり、本書に似たことを言うBさんとは今でもおつきあいが続いている。

本書は極めて前向きで創造的な仕事をする(したい)人向けだけに書かれているのは間違いないが、自分が本当に「守りの仕事」に向いているのか、あるいは「攻めの仕事」に向いているのかを判定するのに使えるのではないかと思った。

  • 自分の身の回りの人と本書の登場人物を重ね合わせ、
  • その身の回りの人と自分の関係を考察することで、
  • 自分がどの程度「前向きで創造的な仕事をする(したい)人」なのかということを逆説的に理解できるのではないか

と思った。

「本書の登場人物と知人の行動の類似性」と「自分とその知人との付き合い」を考えれば、自分がどういったことに向いているのかが分かるという使い方を是非してみて欲しい。

何故、わざわざ知人を登場させているかというと、人間誰しも自分のことは良く分からないのと、本書のような前向きすぎる本を読んでしまうと「僕もこうなりたいなぁ」と夢見て終わりというパターンも出てくる気がするからである。


僕の場合、これまでを振り返れば振り返るほど、「明るく前向きな大人」に惹かれ、自然とそういった人たちとのお付き合いが増えてきて今に至っている。思えば、大学に入って進路が決まるとき、大学院で研究テーマを決めるとき、会社に入るときなどなど、僕に影響を与えてくれた方たちというのは、皆本書に出てくるような「明るく前向きな大人」ばかりだった。(そんなわけで、人に会った瞬間に「明るく前向きな大人」かどうかを瞬時に判定する能力だけは身に付いた。)

そうした形で今に至っていること自体に感謝の気持ちでいっぱいで、「明るく前向きな大人」からの「投資」(だと僕は勝手に思っている)を受けた以上は、いつか、今している以上の大きな貢献を、社会に対してしたいと思うようになった。


最後に、本書の金言から一つだけ一番好きなものを選べと言われた、僕は↓を選びます。

社会に対して何かを提供していく上で、本質的に代替が効かないのは、賢い奴でも器用な奴でもなくて、引力のある奴だ、という言葉。

表現は難しいが、「だだをこねる子供のようにエネルギーレベルが高く、こだわりが強い」。そんな人なんだと思います。

■p.157

テクノロジーカンパニーでも、

強い「プロダクト志向のカルチャー」が必要だ。

多くの企業が素晴らしいエンジニアと頭のいい連中を山ほどかかえている。

でもつまるところ、すべてをまとめる引力が必要だ。── スティーブ・ジョブズ

You need a very product-oriented culture, even in a technology company. Lots of companies have tons of great engineers and smart people. But ultimately, there needs to be some gravitational force that pulls it all together.──Steve Jobs

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

2008-02-03

『賢者の買い物』:価格comが何故、価格comたり得たのかがよく分かる一冊。

| 20:04 | 『賢者の買い物』:価格comが何故、価格comたり得たのかがよく分かる一冊。 - shibataismの日記 を含むブックマーク

すごく面白かった。価格comというサイトは、実は相当すごいサイトで、本当に良く出来ていると感心ばかりしてしまうが、価格comというものがどうやって産まれて、どうやって成長し続けてきたのかが良く分かった。


1年間以上、ほぼ無収入で、ひたすら最安値を調べてサイトに掲載し続けた、創業者槙野さん。ほとんどクレージーとしか言いようがないが、ネットバブルで皆が浮かれる間も、300万円だけの資本金で外資の価格比較サイトにも打ち勝って来た。

きっとPCやパーツのことが大好きな人だったんだろう。1年間も無収入でこれだけをやり続けるというのは、はっきり言って尋常じゃないエネルギーだと思った。

今、10年前に戻ったとして、同じことができる人が何人いるだろうか。


その槙野さんのすごさを理解し、投資家として価格comに投資をし、後に自らが社長になる穐田さん。バブルがはじけてもICFのファンドが高利回りを出すなどVCとして一流なだけでなく、価格comみたいなコミュニケーティブなサービスを率いて、東証一部まで引き上げた人物だ。

はっきり言って、日本であまりいいVCに会ったことが無いが、穐田さんはきっとそういうVCとは一線を画していたのだと思う。価格comの社長をやるのは、恐らくYahooの社長をやるのと全く違った能力が必要で、しかもこれだけの勢いで成長させたというのは本当にすごいと思う。


いずれにしても、価格comというのは、創業から今までずっと「ユーザー」のことだけを考えて成り立ってきたサービスで、それを可能にしたのが、この2人なのだということが良く理解できた。是非おすすめの一冊です。


価格.COM 賢者の買い物

価格.COM 賢者の買い物