2010-01-11
■エレグラ1 
星野さんはメガネの軟弱な男を見かけるたびに「ワープが好きそうですね」と言った。ワープが何なのか知らないが、おおかたそういう名前のグループに属している奴らが集まって仲良く音楽を作ってるという程度のことだろう、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、という言葉を聞いたことがあるけど、人の話の腰を折ってまで自分の利益を求めようとするのは意地汚いことだと教えられて育ったし、恥をかくことを恐れていたらいつまでたっても成長は望めない。僕は当たり前のような顔をして「そうですね。ワープが好きそうですね」と答えた。
幕張メッセは三つの巨大な部屋で構成されていた。手前の部屋と奥の部屋ではアーティストさんによる演奏が行われ、真ん中の部屋では外国の映画が上映されているようだった。そして僕たちオーディエンスは各部屋を自由に移動することができるのだった。
僕たちは暫くの間DJの奏でる音楽を聞きながら踊っていた。その音楽は間違いなくテクノの一種だったが、僕の考えるテクノよりもずいぶんと荒々しく感じられる物だった。電子音の隙間に挿入されている「ガシャン、ガシャン」という金属のぶつかり合うような音が荒々しさの原因であることは明らかだった。そして、それは僕が工場でいつも聞いている音とまるっきり同じ物であることに気づいた。
「星野さん、星野さん、この音楽は僕が工場でいつも聞いている音と同じですよ」
「え?工場ですか?あ、それは面白いですね。インターネットに書き込むといいですよ」
「え?インターネットですか?わかりました。それでは、この曲が終わったら、さっそく書き込んでみます」
僕は携帯電話片手に、工場の音楽が終わるのを今や遅しと待ち続けた。しかし、DJとは複数の曲をあたかも1つの曲であるかのようにつなぎあわせることができる者。待てど暮らせど、工場の音楽が終わることはなかった。
odo-mikikov
2010/01/20 09:22
シヴイさんはテクノな環境で労働しておるのですね!!社長さんの不可解な発言もテクノのせいなのだと理解したのですが、それでよろしいでしょうか?
shibui
2010/04/16 23:40
違います。
2009-11-14
■ロボゲイシャ 
『ロボゲイシャ』という映画を観ました。
世界的な不況の影響で給料が通常の三分の二以下になってしまっている今、1800円という大金を支払ってまで『ロボゲイシャ』を観る必要があるのかどうか。そんな疑問がなかったと言えば嘘になりますが、自身の映画のために来場していたあがた森魚さんと体を密着させながらすれ違うことができた、心配で様子を見に来ていた井口昇監督の話を聞くことができた、久しぶりに女と二人きりで映画を観ることができる、という3つのいいことがあり、映画を観る前から既に1800円分の元はとれていると感じることができたため、気持ちよく『ロボゲイシャ』に挑むことができたのです。女はミキコフさんです。ミキコフというのは本名ではありません。おそらく日本人です。
はっきり言って『ロボゲイシャ』は面白かったです。僕は何度か声を出して笑いました。本当はこんなこと言いたくないのだけれど、笑ったのは事実なのだからしかたありません。最初から最後まで絶え間なく面白いことが詰め込まれているので、この映画の監督はよっぽどサービス精神が旺盛な人か、神経を患っている人のどちらかだろうと思いました。また、ふざけた演技をしている人が竹中直人くらいしかおらず、殆どの出演者が真剣に演技をしていたところは好感が持てました。当初『ロボゲイシャ』に1800円を支払うことに疑問を感じていましたが、蓋を開けてみたら、それはちょうどいい買い物であることがわかりました。まだ東京での再上映などもあるようなので、興味がある人や映画秘宝が大好きだという人は観に行かれてみてはいかがでしょうか。私は本気で言っています。
ところで映画の半ばに音が出なくなるというトラブルが発生しました。まず音が出なくなったことも演出のうちである可能性を考えて、しばらくの間はそのまま黙って見ているという現象が発生し、次にどうやら本当に音が出なくなっているらしいとわかった後も、誰も係りの者にそれを伝えに行こうとしない、という現象が発生しました。実はこの時、僕は立ち上がって係りの者に伝えに行こうと思ったことは思ったのですが、常識的に考えて既に後ろの方の席の人が伝えに行っているだろう、恥をかくのはごめんだ、と一瞬躊躇してしまったため僅かに動き出しが遅れてしまい、僕よりも前の方に座っていた映画が大好きそうな男に大役を奪われてしまったのです。
「音は復活するかなあ。こんな時、ミキコフさんは怒ったりするほうですか?」
「シヴイさんもそういうところがあると思いますけど、私は最初から何も期待していないので、たいていのことは平気なのです」
「あー!それってすごいよくわかる!僕もそうなんですよ!なんだか僕たちって気が合いますね!」
それからしばらくして音が復活した時には、客席から自然に拍手と歓声があがり、劇場が奇妙な一体感に包まれました。なんとか最後まで上映を終えた後には、劇場の者から丁寧な謝罪の言葉とともに招待券をいただきました。心が広くユーモアあふれる男である僕は、トラブルも含めて楽しめてしまっていたので、逆に得した気分になりました。『ロボゲイシャ』を観た後に参加したオフ会の席で、友人たちから「何故『ロボゲイシャ』を観に行ったんですか?」という質問をされました。僕は何故そのようなことを質問されなければならないのか、全く意味がわかりませんでした。
odo-mikikov
ロボゲイシャは大変面白い映画なので人々に勧めたいのですが、タイトルだけで引く人がいるので、なかなか勧められずにいます。「なぜ見に行ったのか?」の質問には「見たかったからです。」としか言いようがなく、大変に困りました。
そして、わたくしは日本語しか話せないのでおそらく日本人で間違いないと思われます。
shibui
ミキコフさんも日本人でしたか!僕も日本人です!なんだか僕たちって似た者同士っていう感じがしますね!
僕は「なぜ見に行ったのか?」の質問には「ミキコフさんが行くと言ったから行った」とミキコフさんが悪いみたいに答えています。でも本当は楽しかったです。あと、正確には「なんでイカレスラーを見に言ったんですか?」と質問されていたことを忘れていました。おもしろを1つ損しました。
2009-10-19
■第6回酒蔵コンサート2009 あがた森魚LIVE 
酒蔵でコンサートを行うということが、いったいどういうことなのか、僕にはぜんぜん解らなかったし、酒が飲めない僕のような人間が酒蔵のような所に入ったら、空気中に飛散した目に見えない酒が、口や鼻あるいは体中の毛穴という毛穴から体内に入り込んで、急性アルコール中毒で死んでしまうのではないか、という不安を感じていたが、わざわざあがた森魚さんが僕の住む街にまで足を運んでくださるというのだから行かなかったら悪いかなと思い、群馬県太田市にある今井酒造に電話をかけてみたのだった。
駐車場に車を停め、誘導灯を持ったおばちゃんの案内に従って門の方に歩いて行くと、大きな民家か古工場のような、おそらくこれが酒蔵というものなのだろうと思われる建物があった。「酒蔵ほろ酔いコンサート」と大きく書かれた看板が掲げられている入り口らしい所の両側には、近所のおばちゃん連中が並んで談笑していた。ほろ酔いコンサートに下戸がやって来たら笑われるのではないかという不安に、入場のシステムが全く解らないという不安が重なって、精神的に危険な状態になりかけたので、入り口から少し離れた場所で携帯電話を開いて心を落ち着けなければならなかった。携帯電話でインターネットを見て、すっかり心が落ち着いてきたところで、適当なおばちゃんに声をかけて、昨日電話で予約をしておいたことや、自分がシヴイであること(実際には本名を名乗りました)を告げて、無事に入場することができた。
入場券は1ドリンク付きで2,500円。酒蔵というくらいだからドリンクは酒しか用意されていないかも知れない、飲めない酒を無理矢理に飲まされたら死んでしまう、という不安にも苛まれていたのだが、蓋を開けてみたら「珈琲とお茶のどちらにしますか?申し訳ないけど、このへんで飲んでいってくださいね。ゴミ箱はそこにありますからね」と、おばちゃんが珈琲を紙コップに注いでくれた。珈琲を飲み干すまで暇だったので辺りを見渡してみると、客層はやはりご年配の方が多く、町内会の集会みたいな雰囲気が漂ってはいたものの、個性的なデザインの真っ黒なワンピースを着た前髪パッツンおばさんを始め、僕好みの文化系おばさんが多く見受けられたのでテンションはあがりっぱなしだった。あがたコン現場(あがた森魚さんのコンサート会場という意味です)に行けば、僕など最も若く健康な男子の部類に入るので、その気になれば文化系おばさんの一人や二人はゲットできるのではないか!と、半ば本気で考えていた。珈琲を飲み干してステージの方に行ってみると、客席は8割がた埋まっているものの何故か最前列には誰も座ろうとせず、開演直前まで列の半分が空席のままだった。最前列を巡る醜い争いが繰り広げられているアイドルの現場との違いに戸惑いながらも、僕は最前列のややヒダリ寄りの席に腰を下ろした。
開演時間を数分過ぎた頃に、近所のお姉さんのアナウンスがあり、大きな拍手に迎えられながら、あがた森魚さんが登場した。最初はあがたさん一人で弾き語り。キザなお話をしながらポロポロとギターを爪弾いているうちに、いつの間にか歌が始まっている、ということを21世紀になった今でも平然とやってのけるので興奮した。二曲ほど歌ったところで武川雅寛さんが登場。バイオリンに加えて、ギターやトランペットも演奏してくれたので得した気分になった。あがたさんは細くて小さいから簡単に倒せると思うが、武川さんを倒すことは難しいだろう。
コンサートは、初めて見る人でも楽しめるように(友だちではないので本人から訊いたわけではないが、常識的に考えてそういうことだと思います)代表曲を中心に演奏されており、やはり有名な『赤色エレジー』の時には、この日最高の盛り上がりを見せたが、「深夜食堂」というテレビドラマに流しの役で出演した時に歌った『函館の女』をドラマの台詞付きで歌ったり、松田聖子の『風立ちぬ』をしっとりと歌っていたかと思ったら、突然「かえりたーい!かえれなーい!」と叫んだりしていたのも、おもしろかった。また、客席には強力なファンの方もいらしていたようで、『最后のダンスステップ』の時に、あがたさんが「おどろうかー」と歌った瞬間、何の指示もされていないのに一人の女性が大きな声で「おどりましょうー」と歌い出したのには驚かされた。それから彼女に引っ張られるような形で、多くのおっさんを含めた観客全員が「おどりましょう」を合唱。この掛け合いは執拗に繰り返され、「いつ終わるんだよ」という馴れ馴れしいヤジに笑いが起こったところで終了した。
他にも面白いことがあったので、その話しをさせていただきます。あえて自らハードルを上げたら面白いのではないかと思ったので、このように書いてみましたが、言うほど面白い話ではありません。面白いことを書くと、後で読み返した時に酷く辛い気持ちになることが多いので、あまり面白いことは書きたくないのです。さて、おっさんが勝手にステージに上がってきてマイクスタンドを持ち上げた時には、テロだ!もしくは頭の狂った奴だ!と思い、おっさんをぶん殴って止める覚悟を決めたものだが、おっさんはマイクスタンドを少し後ろにズラして「せっかくだから顔がよく見えたほうがいいから(照明がよく当たる所に移動した)」と、あがたさんに気安く話しかけただけで、さっさと観客席の後ろの方に戻って行った。また、2回目のアンコールを始めようとしている時には、突然近所のお姉さんによるアナウンスが割り込んできて、「普通なら花束なんでしょうけど、今日はバースデーボーイズからお酒を贈呈させていただきます。それでは誕生日ボーイズのお2人どうぞ」とやりだした。バースデーボーイズなのか誕生日ボーイズなのかハッキリしてほしい、その前にお前ら誰なんだよと考えているうちに、おっさん2人が現れて、あがたさんと武川さんに酒を一本ずつ渡した。以上です。
はちみつぱいのメンバーや矢野顕子さん、緑魔子さんなどがゲスト出演した2月の九段会館でのコンサートも素晴らしかったけど、九段会館に比べたら遥かに小さい酒蔵での、たった2人のコンサートも、あの時に負けないくらい素晴らしいものだった。あまりにも感動しすぎてしまい、大好きな『大寒町』を聴いている時には、音楽を好きにならなかったら死んでいたかも知れない、という考えにとりつかれ、終演後に2名の男性ファンと立ち話をしているあがたさんに近づいて行って、「あがたさんの歌に出会わなかったら死んでいました」と言おうかと思ったが、流石にそれはしなかった。あがたさんは最近公開されたばかりの映画に関するイベントや、それ以外の小規模なコンサートを続けているようなので、機会があればまた歌を聴きに行きたいと思う。
2009-10-12
■午前5時30分 
「おい!おい!」というような男性の叫び声を聞きながらベッドの上でボンヤリしていたら、遠くのほうから消防車のサイレンの音が聞こえてきたので、なるほど、火事なんだな、と気づきました。のろのろとベッドから降りて窓から外を見ていると、サイレンの音がどんどんどんどん大きくなってきて、田所さん家の曲がり角から消防車が入ってきたと思ったら、僕の家の目の前に止まったので、たいへんだ!僕の家が火事だ!と思いました。「お母さーん!お母さーん!」と叫びながらドタドタ階段を下りて行くと、お母さんは窓辺に腰掛けて外を眺めていました。お母さんの視線の先を見てみると、道路を挟んだ三軒隣の家の屋根から炎と煙が上がっているのが見えました。「あ!燃えてる!でも少し離れた場所でよかったね」口に出してから、しまった、ちょっと不謹慎だったかな、と思いましたが、お母さんは僕の話を聞いていなかったのか、そのまま静かに火事場を見つめているのでした。
2009-10-06
■まだメロン記念日が大好きです 
まるで昨日のことのようにも何十年も昔のことのようにも感じられます。僕はメロン記念日のコンサートを観に行きました。
メロン記念日たちは現在ロック化計画を推し進めており、ロックなバンドとのコラボレーションによるシングルCDを次々に発表しています。僕のようなロック畑の人間から言わせてもらえば、待ってました、ロックなバンドとのコラボレーションは大歓迎です、といったところですが、誤解を恐れずに言うならば、メロン記念日がロック化しようがデスメタル化しようが、そんな些細なことはどうでもいいのです。そもそもメロン記念日は既にロックを超えています。とにかくメロン記念日たちが新しい曲を得て、嬉しそうにしていることが重要なのです。
柴ちゃんの小学生時代の友人たちがステージにあがり、柴ちゃんと一緒に相川七瀬の『夢見る少女じゃいられない』を歌い、中学生の頃からの親友であるキョウコちゃんが柴ちゃんへの手紙を読みはじめた時には、ステージ上でいったい何が行われているのか全く理解することができずに混乱しました。我々ファンは柴田の思い出作りに利用されたのだ、という面白いジョークが頭の中を駆け巡り、コンサート中だというのに携帯電話を取り出して twitter に書き込みしようとさえしました。しかし、いつまでもメロン記念日のあゆみでいてください、というキョウコちゃんの言葉を聞いて涙を流す柴ちゃんの顔を見た時には、僕の瞳からも大粒の涙がポロポロと零れ落ちたのです。
もう少しわかりやすく説明します。メロンラウンジの時に「ロックを勉強しようと思ってザ・フーさんを聴きました」という柴ちゃんの言葉を聞いた時には、上から目線ではありましたが、泣きそうになるくらい感動しました。
