『犬神家の一族』+『人間の証明』÷7

ということで『天河伝説殺人事件』である。「天河」は「テンカワ」と読む。間違ってもTENGAと読んではいけない。
文庫で


天河伝説殺人事件〈上〉 (角川文庫)
天河伝説殺人事件〈下〉 (角川文庫)

読んだ後に、レンタルで

天河伝説殺人事件 [DVD]

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を見た。

浅見光彦シリーズ第二十三弾「金田一耕助から十五年……天河に浅見光彦、走る」や「昭和51年『犬神家の一族』・・・昭和52年『人間の証明』・・・昭和56年『セーラー服と機関銃』・・・・・・そして平成3年『天河伝説殺人』」なんて宣伝文句に、ヒットシリーズにするぞ!という大きな意欲を持って製作されたのが伺えるハルキ映画である。
原作ではすでに名探偵の誉れ高い光彦を第1作にふさわしく「最初の事件」テイストに設定しているほか(でも、兄陽一郎刑事局長関連のお約束はしっかりあり)、原作から「恋心」や「吉野の歴史」を大幅にカットして、『犬神家の一族』(石坂浩二加藤武大滝秀治が出演している)的な一族のどろどろに『人間の証明』的な離れ離れとなった母による息子殺し(原作ではなかなか登場しない「母」岸恵子がとっとと登場)にフォーカスした、いかにもハルキらしいハルキ映画となっている*1


市川崑監督も楽しそうに演出しており(能楽シーンの美しさはゾクゾクした)、浅見光彦役の榎木孝明も後のテレビシリーズで証明されている如くのはまり役で、おそらく0号試写の時点では金田一の夢再び!と関係者一同大喜びしたに違いない。
が、残念ながら続編がつくられることはなかった。Wikipediaには

その後の角川春樹の逮捕に始まる一連の角川書店内部の混乱の影響を受けたこともあってか、現在において「浅見光彦シリーズ」で唯一の映画化された作品である

と、その原因をハルキと角川内部の問題としているが、石坂金田一シリーズ自体が必ずしもハルキ映画ではない(犬神家の一族))ことを考えると、ハルキから離れてシリーズ続行しても良かったはずである。が、配収が『犬神〜』の15.6億、『人間〜』の22.5億、ついでに『セーラー服〜』(併映『燃える勇者』)の22.8億に遠く及ばない4億円(ハルキ映画でいえば『スローなブギにしてくれ』と同じくらい)とふるわなかったのも原因だったに違いない*2


まあそれよりも何も、異能の覇王ハルキにとって吉野を舞台ってのが悪かったのかもしれない。

異形の王権 (平凡社ライブラリー)

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