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XRQ技研の業務日誌(XRQ Tech Lab)

2013-06-14 思いこみ ”MTR2 kit”

MTR2 & MiniPaddle

 気象庁がフライングをしたのではないかと疑われるような空梅雨だったが、このところそぼ降る雨で紫陽花にふさわしい天候になっている。水源地の貯水量が減り、水不足が心配されるような天気よりも例年通りの梅雨の風情が好ましい。

 3月20日のアナウンスで頒布が始まったトランシーバーがある。”The Mountain Top’er MTR2”だ。昨年にも一度頒布され、数日でsoldoutになったキットだが、KD1J V SteveWeberが開発し年々進化しているトランシーバーである。数ヶ月も前から「そろそろ頒布が始まりそうだ」という話題で持ちきりだった。そして、3月19日、22:51(現地時間)、トランシーバの筐体の写真がアップロードされ、20日、5:55(同)"Order / reserve your MTR kit now"というアナウンスが流れされた。私は大急ぎで注文のメールをSteveに送った。そしてどうなっているのか心配していると、同日22:55(同)MTR SOLD OUTのアナウンスがなされたのだ。昨年頒布された150台に続いて#151からの配布で、150台程度が準備されていたようだが、17時間あまりで終了になってしまったようである。

 日本は時差の関係で都合がよかったのだろう。世界中からのオーダーの中で私の知る限りでは数人の方がこのキットを手に入れることが出来たようだ。私は予約が出来た旨のメールをもらい、折り返し代金と送料を振り込むことができた。そして4月5日に品物が届いたのだった。フォーラムではたくさんの人たちが買えなかったと悔しがるなか、これを手に入れることができたのはとても幸運だった。

 じっくりとマニュアルを読み、部品の点検をし、製作方法のシミュレーションを繰り返してから製作に入った。なにしろSMT(表面実装技術)の小さな部品を基板の表裏に取り付けていく作業である。高倍率のルーペと先の尖ったピンセット、細いはんだごてでの奮闘だった。クリームハンダやヒートガンという専用の工具もあるようだが、手持ちの道具で立ち向かった。小さい部品では5mm×7mm、厚さ1mm程の本体に左右10本ずつの脚が出ているものもある。それぞれのピンがショートしないように取り付けてなければならない。

 おおかたの部品を付け終わって動作テストをすると、思い通りには動いてくれなかった。製作では一度でうまくいくことは稀である。一つひとつの部品の取り付け状況を確認し、主な部品の電圧状況を測定し、あれやこれやと確かめたのだが原因がわからない。悶々としたなかでこの作業を数週間繰り返した。そして、どうやら一つの部品が怪しいと問題箇所を絞り込んでいった。

 基板は銅箔を貼り付けて、不要な部分を化学的な処理によって取り去ることで作られている。そのため何回もハンダ付けを繰り返すとその熱で銅箔のパターンが剥がれてしまうおそれがある。髪の毛のように細いパターンが剥がれてしまったら修理は大変なことになってしまう。しかし、前に進むにはこの怪しい部品を何とかしなくてはならない。

 意を決して交換することにした。部品屋さんに発注しその部品を手に入れた。そしてハンダごてを暖め作業に取りかかろうと、新しい部品を眺めていると、意外なことに気が付いたのだ。部品の表側にも裏側にも記名がある。通常の部品では表側だけに記名がありその表示によって第1ピンがどこかを知ることが出来るようになっている。記名がある方が表と思っていた。悪い予感がしてきた。改めて基板を確認すると、その怪しいとにらんでいる部品の記名が型番ではなく、製造者名のようになっている。・・・・・よく確認せず、記名がある=表と思いこんで取り付けてしまったようなのだ。

 何回も熱を掛けられてきたその部品は、新しい部品と交換した。そして動作も正常に戻った。2ヶ月かかってしまったが、このキットがやっと動きだした。やり遂げた充実感はとても大きく、満足感でいっぱいだった。それと同時に、これまで頭のどこかにいつも引っかかっていたものがなくなって、寂しさも感じた。大きな壁があるからこそ乗り越えた喜びも大きいのだ。それにしても今回は初歩以前のミスである。思いこみは恐ろしい。