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XRQ技研の業務日誌(XRQ Tech Lab)

2015-04-16 トラブルシュート その3

終段はモジュールにし、交換容易に

KD1JV Steve Weberがデザインし、Hendricks QRP Kitsから発売されているMBDCというキットがある。DDSという発振器で所定の周波数を得て、ダイレクトコンバージョンの受信とQRPの送信ができる装置である。DDS発振器はマイコンからデータを送り込めば直接その周波数の電波を生成してくれるので、フィルターを換えることで、さまざまな周波数帯(Multi Band)の機器とすることができる。

この機器の構想はATフォーラムというネット上の掲示板で話題になり、100台ほどがSteveから直接、世界中のアマチュアに頒布された。大変な人気で、数時間で売り切れてしまい私は手に入れることができなかった。その後Hendricks QRP Kitsから市販されることになり、やっと手に入れたキットである。

このキットを組み立てるときに、さまざまなトラブルがあったので、備忘録としてまとめておく。

 大きめの基板でSMDではない通常のスルーホール部品が使われているので基板の製作は特に難しいところはなかった。組みあがり、スモークテストをし、送信出力が出るところまで確認できた。しかし、受信ができなかった。

 基板を見直し、ハンダ不良や部品の間違いなどを確認する。アンテナからの入力付近で不安定な箇所があり、ハンダをやり直すとどうやら夜間の交信が聞こえてきた。ケースに収納し、操作マニュアルを読みながらいじっていると、何かおかしい。音がぶるぶる震えるような現象が起きている。ケースを叩くと音が変わるのだ。どこかに接触不良を起こしているところがあるようだ。再度、基板の見直しをして一つ一つの部品に指を触れてみる。すると、受信回路のトランジスターに触れたときに音が途切れる現象が起きた。ルーペを使って詳しく見ると、ハンダが十分に流れていなかった。ハンダ付けをやり直すとぶるぶる震えるような現象は収まった。

 やっと実用になるかとセットをしてみるが、今度は送信出力がまったく出ていない。回路図で確かめ、順を追って導通を確認する。終段トランジスターの破損を疑い全て交換してみる。取り外したトランジスターには問題はなかった。サイドトーンは聞こえているしキーイングに従っての電流も供給されている。DSSからの信号は74AC00というロジックICで緩衝増幅されて終段に送り込まれている。このICを交換してみるが変化はない。

 何日間か回路を辿り原因を探ることを繰り返していたのだが、ある時ふと思い出した。この機種はバンド外の送信を規制する機構が組み込まれているのだ。バンド幅を指定し、それ以外の周波数では送信できなくなっている。そのデータがずれているのでは?。操作マニュアルを読み返しデータをマイコンから読み出してみるととんでもない値になっていた。この誤ったデータによって送信規制が行われていたのだ。機器自体は正常な動作をしていることになる。データを所定の値に書き直してパワーメーターで確認すると出力が出ている。組み上げてすぐのとき、いろいろ操作をしている中でデータの書き換えをしてしまっていたようである。今の機器はハードだけでできているのではないことを思い知らされた。

 さて、送信もできるようになったのでアンテナを繋ぎ実戦で使ってみようとしたとき、次のトラブルが発生した。十分に整合の取れていなかった負荷のために終段が飛んでしまったのである。終段のデバイスを交換する。しかし、出力が出てこない。回路を見直し、ネットの掲示板でA1クラブの皆さんにも状況を説明、支援をお願いするが解決しない。悶々とした日々を経る中で、思い切って開発者のSteveに尋ねてみることにする。メールでトラブルの状況を説明するとSteveから早速返事をもらった。「DDSモジュールからの信号が出ていないようだ。DDSチップの出力ピンを調べてみるように。強く押さえれば解決するかも知れない」とのこと。ルーペを使ってチップを詳しく見てみると半田がとても薄いことがわかる。半田付けをやり直すとすんなり出力が出るようになった。モジュールとして供給されたものの半田付けまで確認することは検討の範囲外だったのだ。トラブルの原因のほとんどは半田付けと言われるが、まさしくそのとおりになってしまった。とんだトラブルシュートである。