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XRQ技研の業務日誌(XRQ Tech Lab)

2018-07-02 「状況」

Askrepiosの杖

 先日、ある署で救急活動訓練効果確認を見学する機会があった。この署では2台の救急車を運用しており、3部編成なので、6つの隊が日頃の訓練成果を展示した。

 想定は、認知症の弟と自宅で生活する80歳代の男性が食事中にものが喉に詰まり、たまたま訪れていた介護ヘルパーからの通報というものであった。

 「状況始め」という合図でそれぞれが動き出した。この状況という言葉は自衛隊などでも使われているが、想定された状況の中で各隊員が情報を収集し、それぞれの判断で目的に向かって行動することを指すようである。

 119番通報で指令室からポンプ車と救急車が連携するPA連携での対応が指令された。ポンプ車隊と救急隊はそれぞれの場所から出場準備に入り、現場の確認、そこまでのルートの危険・配慮個所の確認、走行時の注意などを口々に呼称しながら出動する。救急車内からは直接通報者に電話をし、状況把握と共に応急手当の方法が指示される。

 ポンプ隊が先着し、状況の確認と同時に要救助者への対応が始まる。要救助者が呼吸停止に至っている様子から、室内の家具などを移動し場所を確保、CPR(胸骨圧迫蘇生法)を始めると共に、口腔内からの異物除去を試みる。室内にいる弟さんやヘルパーさんへの声掛けも忘れない。ポンプ隊がCPRを実施しているうちに救急隊が到着すると、情報共有とともに、本部と連携し、救急医からの気管挿管の承認を得て、応急措置を進めていく。ポンプ隊4名、救急隊3名の隊員が、隊長の指揮のもと、それぞれの状況判断で命を救う活動を進めていく。

 救命救急士の背負った機材から酸素を供給し、CPRを続けながら要救助者をストレッチャーに載せ、車内収容。搬送先の選定を確認し、家に残る弟さんへ行き先を伝えて救急車が出発したところで、「状況終了」となった。

 要救助者を乗せるストレッチャーを室内に運び込み、その動線を確保し、ストレチャー搬出時、隊員が靴を履きやすいように通路の左右に並べる。認知症のある弟さんを一人残さないために関係機関と連絡を取りケアマネージャに来てもらう手配をする。要救助者の様子を記録し、病院の医師への引き渡しの準備をする。事故の様子を知っている通報者であるヘルパーさんに病院までの付き添いを依頼する。要救助者の搬出を終える時、忘れ物がないことを声を掛け合って確認する。などなど、隊員が自分自身で状況を確認し行動する姿が見られた。

 6つの隊の展示を見ると、同じ想定なので同じような活動なのだが、細部を見ると異なっている場面がたくさんあった。それが「状況」なのだと思う。想定内ですべてが進むわけではなく、さまざまなアクシデントがあり、各隊の状況も異なるのだ。

 要救助者の命を救うという目的に向けて、一人ではできないことを隊として連携して達成するのが使命なのだ。そのための訓練が、こうした「状況」という中で行なわれているのだと思った。

 隊員が、心肺停止の状況にある要救助者に対して「大丈夫ですよ。頑張ってくださいね。すぐ病院へお連れしますからね」と必死に呼びかけていた声が、まだ私の耳に残っている。