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書房日記

2017-06-03

2017年度国立大学図書系採用試験の採用予定数

今年分はないのかなあと感じたので、過去2年分の2016年度国立大学図書系採用試験の採用予定数 - Yukimushi2015年度国立大学図書館採用試験の採用予定数 - まだ書きさしのを参考に作ってみました。

変更等発見された場合は、コメントにて御教示下されば対応致します。

既に5月24日をもって出願は締め切られ、7月2日(日)が第一次試験の実施日となっています。

6月3日時点の合計は24名です。予定数の多い地区と少ない地区が比較的はっきり表れた年なのではないかと。

ブロック法人名採用数
北海道予定なし試験未実施
東北東北大学1
東北秋田大学1
関東甲信越筑波大学1
関東甲信越東京大学2
関東甲信越東京海洋大学1
関東甲信越電気通信大学1
関東甲信越信州大学1
東海北陸静岡大学1
東海北陸名古屋大学1
近畿京都大学2
近畿大阪大学1
近畿神戸大学1
中国四国島根大学2
中国四国岡山大学1
中国四国香川大学1
九州九州大学3
九州九州工業大学1
九州熊本大学1
九州琉球大学1

ソース(各地区試験実施委員会等の「採用予定数」ページ)

北海道地区 http://www.hokudai.ac.jp/jimuk/soumubu/jinjika/saiyo/01_info/0104.html

東北地区 http://www.bureau.tohoku.ac.jp/shiken/090%20saiyou.html#cont01

関東甲信越地区 http://ssj.adm.u-tokyo.ac.jp/recruit/number/29_daigaku/

東海北陸地区 http://www.sssj.jimu.nagoya-u.ac.jp/shiken02/saiyouyoteisu/

近畿地区 http://www.kyoto-u.ac.jp/siken/examination/yoteisu/index.html

中国四国地区 http://home.hiroshima-u.ac.jp/jinji/shiken/shiken_saiyouyotei.html

九州地区 https://www-shiken.jimu.kyushu-u.ac.jp/07saiyo-yoteisu.html

2017-04-17

山本幸三大臣の学芸員と文化財への発言に関する一考察メモ

 まあ完全に不見識な発言と言う他ありますまい。

 毎日新聞報道がどうも一番詳しいようです。インバウンド:山本地方創生相「学芸員はがん。一掃を」 - 毎日新聞

まあ冒頭からいきなり「講演は滋賀県が主催し、山本氏は「地方創生とは稼ぐこと」と定義して各地の優良事例を紹介」でズッコケる訳ですが、

山本氏は京都市世界遺産二条城で英語の案内表示が以前は無かったことなどを指摘した上で、「文化財のルールで火も水も使えない。花が生けられない、お茶もできない。そういうことが当然のように行われている」と述べ、学芸員批判した。

はもう完璧に論外です。

この毎日の記事の末尾で取材を受けた学芸員が、

「観光のための文化財活用と文化財保護をいかに両立するかが大事な視点だ。観光に重きを置いている最近の国の風潮を象徴している発言だ」

と述べているのはごく一般的な見方で、文化財の活用は常に文化財の保護との相反という問題を抱えている訳で、この文化財の保護という問題が存在することさえ理解していないのではという批判が出来そうな発言です。

文化財保護のために火も水も認めない、というのは極めて真っ当なルールと感覚で、なにせ文化財保護法の出来たきっかけは法隆寺の金堂壁画の焼損焼失事件なのですから、普段先例や法律をやたらと持ち出したがる閣僚が文化財保護法の根本精神を批判している時点で、不勉強或いはそれこそ「不法」と逆に批判されて然るべきなのです。

さて、私の気になったのは、この二条城の英語の案内表示の話です。妙に具体的でしたので、ひょっとすると何か検索で分かるかもと「山本幸三 二条城」で検索してみますと、以下のインタビューがヒット致しました。20年には訪日客数3000万人 | FNホールディング

で関連する部分を引用しますと、

――今後の観光政策で目指していく方向は…。

山本 中国客の「爆買い」だけを当てにしていては、真の意味での観光立国を実現できない。そうではなく、欧州米国豪州からの訪日客などお金をたくさん持っていて、かつ長期滞在で地方に行ってくれる層をターゲットにしていく必要がある。観光で一番お金を使うのは豪州からの訪日客だという。米国欧州からの客も、日本に来ると長期滞在したくさんお金を落としてくれるが、アジアからの客は2〜3日の滞在が多く、都会は賑わうが地方まで恩恵は広がらない。とはいえ、現時点では日本の観光名所も、外国人観光客の増加に十分対応は出来ていない。一例を挙げれば、日本の文化財保護に熱心に取り組んでいるデービット・アトキンソンさんという英国人が、オックスフォード大学を卒業後に初めて京都二条城を訪れた際、説明書きがほとんどなく、各部屋の意味などが全然分からなかったという。つまり二条城でも、英語が出来るガイドを置いて、この部屋で何が行われたと丁寧に説明したり、昔の格好をした人を置いて当時のやりとりを再現したりすれば、観光客の滞在時間も長くなり、たくさんお金を落としてくれるようになる。また宗教界でも、地方の文化財や社寺観光を推進するため、歴史を調べたり、実際に訪れた証拠を御朱印のような形で取得できたりするようなアプリケーションの開発を進めている。

――日本の観光地では、景観整備などの課題もあるが…。

山本 景観を整備するためには相応のお金がかかるため、地方税としてホテル・宿泊税を取り、それを観光推進予算として使うべきだと提案している。他所から来た人から税金を取るので地元住民の負担にはならないというメリットがあり、米国もこの仕組みを取っている。また、日本の文化財・国宝管理においても、せっかくの茶室でも火を使わせないなどの厳しい制限がかけられているが、むしろ文化財国宝を有料で貸すようにすればいい。海外の例で言えば、フランスヴェルサイユ宮殿は2000万円くらいのお金を払えば結婚式を挙げることができ、それなりに利用されている。日本の文化財・国宝ももっと商業ベースの使い方を考えるべきだ。

という具合で、どうも山本大臣が就任前の2015年から観光戦略について有していた、かなり確固たる見解のようです。

でこのデービッド・アトキンソンさん、調べてみますとゴールドマン・サックス等に所属していた元金融アナリストで、その後小西美術工藝社というところで社長をされています。まあ良く言えば文化財関連会社の社長さんということで、あながち文化財の素人とも言えない訳ですが、別に日本文化を専攻していたとか、学芸員としての経験をお持ちとかという訳でもない、単なる経営者に過ぎないとも言えます。

この御方はいくつか本も出されていて、山本七平賞という似非保守言論人御用達の賞も取られております。そういったところで政界にも影響力があるらしく、山本幸三議員のインタビューでも言及されておりますし、内閣の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」というところでもプレゼンをされています。no title

でこのアトキンソンさんの資料を見ますと、項目名の一つは見事に「文化財の利活用の推進」で、文化財保護の観点ですとか社業でやっておられる文化財修復の御話などはございません。どうも「文化財専門家」というよりはやはり経営者的感覚をお持ちのようで、その点恐らく大臣と軌を一にされているのではと推測致します。

以上、手元の材料だけで考察した限りでも、大臣が文化財行政の根幹を踏まえたというよりも、観光政策上の文字通りの「アイデア」、悪く言えば思いつき程度の考えで学芸員批判した、という構図が浮かび上がってきております。それもその場の思い付きではなく、2015年のインタビュー以来一貫しているのですから、なおたちが悪いと言えるでしょう。日本の学芸員文化財行政の現場についてロクに調査もせず、一情報源の話を引用してそれで結論扱いしている、火を認めないという文化財保護の視点や文化財焼失の危険性については全く論じない、これでは本当に大臣自身がおっしゃるように「稼ぐこと」しか考えず、文化財の後世への保存はどうでも良いと考えている。そしてそれを公言するような政治家が、現職閣僚として文化財政策に介入していると言わざるを得ません。辞表を提出しても何ら驚かないだけの、大した御発言であられたと恐れ入っている次第であります。

2017-03-31

関千枝子『図書館の誕生』

 かつて北上次郎は日野市立図書館誕生のこの物語を「水滸伝」と評したが(『図書館読本 別冊・本の雑誌13』本の雑誌社、2000年)、初代館長による前川恒雄『移動図書館ひまわり号』筑摩書房、1988年(再版夏葉社2016年)を読了した上で読んでも、全く熱い群像劇に違いない。ノンフィクションライターとして、図書館に関するドキュメントを物にせんとした著者の狙いは十分に達成されている。

 『移動図書館ひまわり号』と基本的な構図を同じくしながらも、本書の独自性が現れているのはより利用者、特に女性と子どもへの視点に力点が置かれていることだろうか。「電車図書館」での子ども達、高幡図書館建設の原動力となった「子どもの本を読む会」の女性たち、読み聞かせを担った女性図書館員の描写を挙げることが出来る。

 日本図書館史と日本現代史、ことにその戦後女性史の研究とが交差する時、そこには戦後日本社会における性別役割分担の中での、主婦・母親としての女性たち、そして働く女性としての女性図書館員の存在が浮かび出て、そこからまた戦後日本図書館史の、日本現代女性史の新たな論点が見いだされていくのではないかと、本書からは読後にそんなことも感じさせられたのだった。

 それからもう1つ付け加えるなら、これ程「図書館映画」「図書館ドラマ」にふさわしそうな題材はまたとないように思われる。何時か映像化企画が生まれることを期待したい。

2017-03-05

ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏


1993年設立された出版社である岩田書院は、主に日本史民俗学関連の学術書を取り扱っていて、編集者を兼ねる岩田社長ただ一人が正社員という会社で、その設立以来20年分の「新刊ニュースの裏だより」をまとめたのがこのシリーズとなっている。

実はこの裏だより、同社のホームページでも全て公開されている。書籍として読むと一つ一つの記事の短さは時に感じるし、時には愚痴や毒も混ざっている。ただ通読することで、1990年代からの出版の変化、底が抜けるような学術書を取り巻く状況の変化と、その中で一貫して学術書を発行し続けてきた著者の出版への意気を読み取ることも出来る。学術書出版に関する具体的な記録として、出版に興味のある読者から今後も参照されることが期待される。

2017-01-20

『図書館を育てた人々 日本編1』

 田中稲城から中田邦造まで、明治期から戦前期までの代表的な図書館関係者18人を取り上げた評伝集で、『図書館雑誌』での連載記事が元なので、実物を手に取ると思ったよりコンパクトだった。

 

 個人史としてみると状況に恵まれなかったり不遇だったりと、なかなかに暗い話も少なくない。石井敦があとがきで述べるように、まさに「苦闘」という語が相応しいけれど、ただでさえ高等教育経験者が少なかった時期の帝大出身者など、相対的には皆結構な高学歴だったり、人事制度の確立前なので公共図書館大学図書館などの館種の区別を超えて複数の図書館を渡り歩いたりと、反面なかなかに自由と言えば自由なところもあったのだなあという印象も受けた。

 このシリーズ、日本編1に続いてアメリカを対象とした外国編1が出たところでストップし、単独でイギリス篇が出ている。戦後日本を対象とした「日本編2」が企画されることを期待したいものだ。