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書房日記

2016-10-30

三度日本将棋連盟と不正疑惑について

前回以降の動きとしては、(1)渡辺明二冠による『週刊文春』のインタビュー等により、渡辺二冠が告発者の一人であることが明かされると共に、日本将棋連盟常務会は羽生善治三冠佐藤天彦名人、棋士会長の佐藤康光九段らを集めた会合を開き疑惑について検討を行っていたことが明らかになった。

(2)三浦弘行九段は改めて不正行為を否定し連盟側に反論する文書を公表、PCの提出等の調査に応じる準備があると表明した。

(3)一般棋士向けの説明会が開催され、竜王戦挑戦者決定戦3番勝負で敗れ、三浦九段の出場停止に伴い挑戦者となった丸山忠久九段は、挑戦者決定戦で不正行為の疑義を感じることがなく連盟の決定に疑問をもっている旨を表明した。

(4)羽生三冠は(1)の会合に出席し、週刊誌では限りなくクロに近い灰色という趣旨の発言が報じられたが、ツイッターでは妻の羽生理恵が完全にクロであることを証明することが難しいこと、クロと証明できない場合は疑わしきは罰せずが原則であるという認識であること、を羽生本人の認識として表明した。

(5)連盟理事会は、但木敬一検事総長委員長とする調査委員会を設置。今後改めて疑惑について検証することを表明。

この一件については、続報があるごとに当方の予想を上回る事態が明らかになって、何とも憂鬱で閉口している。

まず(1)については、渡辺二冠の告発までは正当と思われるが、その後の連盟常務会の対応は、構成員以外を参画させるという中立的な処分者としての役割に反するものであり、大いに疑問である。特に渡辺二冠の他、羽生三冠や佐藤名人を検討に加えたことは、最悪の場合タイトル保持者の責任問題に発展する可能性さえあり、余りにも迂闊と言わざるを得ず、少なくとも長くトップ棋士としてタイトル戦を戦ってきた谷川浩司会長は、運営にトップ棋士を参画させて対局以外の対立含みの事件に巻き込ませることの問題性を理解していた筈であるのに、理事会・常務会の対応はこの点だけでも大いに批判されるべきであろう。

また順位戦に限ってみても、佐藤九段は同じA級順位戦競争相手であり、判断の中立性という点が問題になるので、せめて順位戦に限定しても同一クラスの競争相手は省く、という程度の配慮は求められて然るべきではないだろうか。

トップ棋士も含めた会合で、棋士の多くが三浦九段の不正行為の疑いに賛同した、という点は疑惑の度合いを深めるものではあるかもしれないが、不正行為の立証には何ら寄与しない、という点に注意する必要がある。

プロ野球八百長認定は、試合中のプレーそれ自体からではなく、暴力団八百長関係者の接触の立証によって行われるのであり、陸上競技等のドーピングの判定も走り自体では立証が為されずに、不正薬品反応の有無による。いわば、不正行為の立証は一般人でも共有・判断可能な、プレーそれ自体の外側の明白な証拠による。

どうも連盟の対応にしても、一部ネット上での三浦九段の不正行為を断言する論調にしても、プロ棋士の多くが指し手に疑問であるという、指し手自体に不正行為の立証を求める傾向が見られており、この路線に固執するようでは不正行為の決定的な立証は難しいと言わざるを得ない。

結局第三者調査委員会に調査が委ねられることになったが、これは連盟常務会単独での不正行為立証が不可能な場合は告発受理後最初の処分までに行うべきことであって、もはや手順前後と言う他はない。

結局この件については、何月何日のどの対局において電子機器を用いて自身のものではない指し手が着手されたのか、それともそのような行為は無かったのか、という点についてはっきりと結論が下されなければならないが、いずれの結論が出るにしてもこの一件は将棋界にとっての汚点である。仮に不正行為が存在した場合はともかく、不正行為が存在しなかったのにタイトル戦と、そして棋士人生に成績が一生反映されるA級順位戦とを不出場とした重い処分を下した場合は、連盟自らが汚点を作ったと言わざるを得ない。

渡辺二冠の告発自体は決して責められるべきではないものの、二冠の告発は結果として余りにも竜王戦を重視し過ぎたのではないだろうか。竜王戦開催中の疑惑発覚を恐れたのかもしれないが、あくまでも竜王戦の挑戦者決定までの過程での不正行為の認定を重視した方が良かったのであり、連盟常務会も不正行為の認定を行わない内での処分を行わなければこうした状況には陥っていなかったはずだ。

今回の一件への連盟の対応を、玉虫色の解決策として支持すると言明した人もネット上ではちらほら見かけられるが、もはや灰色人物をタイトル戦の舞台から引きずり降ろした利点よりも、この数週間の連盟の白黒のはっきりしない迷走ぶりが広く知られた損害の方が大きいのを無視していると思う。公平な条件の下での対等な存在としての人間同士による勝負に意義を見出している将棋ファンを、公平性の点でかえって失望させているし、仮に連盟や渡辺二冠が、灰色のままでの三浦九段不在の竜王戦に満足しているとすれば、竜王戦の勝負以上に連盟が勝負に対してどれだけの重みを見出しているかという点により注目が集まってしまっていることを認識する必要があるだろう。

これ如何にこれ如何に 2016/10/30 20:22 まともな組織は調査してから処分します
日本将棋連盟は処分してから調査します

ななしななし 2016/10/30 20:55 そもそもが、利害関係者が懲罰与える時点で問題だと思う。
連盟の幹部は引退した棋士にやってもらうとかなかったんだろうか?

shigak19shigak19 2016/10/30 22:42 まあ「手順前後」、という点は確かかと存じます。

連盟理事会、今の構成員は全員A級以外なので、理事会だけで決定していればまだ最低限の中立性が保たれたとも言えそうですが、今回はその辺りの配慮がほとんどなかったようですね。確かに審判委員会的な役割は引退棋士のみで構成する、理事会の下部組織にでも委ねるのも手かと。

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