ショパンのピアノソナタ第2番

「葬送行進曲」といえば、文字どおり、遺体を墓地まで運搬するときの行進曲ですが、日本で最もメジャーなのは、

タンタタターン、タタ、タタタタターン
(なかなか文字でメロディは表現しにくいですね)

‥‥と、死神が舞い降りてくるような、ダメージをくらって立ち上がれないときのテーマソングみたいな曲です。

誰しも一瞬で暗い気分になる、陰鬱なメロディの代表ともいえますが、そもそも、これは、ショパンピアノソナタ第2番の一部分であり、つい最近、なんとなくですが、はじめて全体を通して聴いてみたのでした。

すると、驚きでした。

全編が力強さと叙情的な美しいメロディで彩られ、わずか一台のピアノ音の連続が、あふれる泉のように、ずんずんと耳に響いてくるのです。

第三楽章におなじみの葬送行進曲が流れますが、すぐにその陰鬱さを包み込むような、圧倒的な力と美を讃えた旋律が奏でられていくのです。

何度となく聴いていくと、ショパンがこの曲に込めた思いが想像されます。

《死神》に追い回されるような、どうしようもない時期は(想像したくもないですが!)、誰しも一度か二度はあるのではないか。

けれど「そういう時期も、あるさ」と認知することで、それは、過ぎ去っていくのではないかと。

ショパンピアノソナタ第2番は、ざっと20分間あります。
そのうち、あのおどろおどろしい行進曲は、数十秒ほど。

ほんとにつらいときは、やさしい曲よりも、こんな曲を聴いてみるといいのかも、と思いました。

ショパンの葬送行進曲は、《死神》を呼び寄せる曲ではなく、(一度受け入れつつ)連れ去っていってくれる曲なので。

あと、やっぱり、舞い降りてきた《死神》が、じつは自分の化身であったりするのでしょうか?!