きのう、個展会場の画廊の電話が鳴りました。
画廊の女性が出て、話しているのを聞くと、画廊への道を尋ねているようです。
「山本病院の前にいるんですか?ちょっとわかりませんが・・・駅前を、西の方に・・・」
女性がいろいろ説明するけど、伝わりにくい感じです。
エンエンと会話が続く。
そのうち、女性が電話を持って画廊を出ました。
しばらくして、女性が戻ってきて、私に電話機を渡しながら、「かわってくれって言ってます」
かわってくれと言われても、私はこのあたりにくわしくありません。
くわしくありませんが、仕方なくかわりました。
受話器から聞こえてきたのは、意外にも、かなり若い男の声でした。
「今、山本病院の前にいるんですけど・・・あ〜、女子大付属小学校が・・・」
「女子大付属小学校からだったら、もう少し東です」
「東・・・東と言われてもわからんのですけど・・・ナビで見たらね・・・」
「ナビ?車ですか?」
「歩きです」
誰だろうか。
声と話し方からすると、かなり若い男の様なんですが、今回の個展に、歩きでナビを使うような、かなり若い男は想定してません。
「え〜っと、女子大付属小学校から東ですか・・・こっちでええんじゃ!」
突然怒鳴り出した。
誰に怒鳴ってるのか。
「東へ行ってから、南へ折れて下さい」
「南・・・わかりませんねん」
「電車の線路の方です」
「電車の線路・・・そやから、こっちでええ言うてるやろ!」
またもや怒鳴ってる。
こんな男が、私の個展に来るのか?
若い男が、「近づいてると思うんで、道路に出てもらえますか」と言った。
で、電話機を持って道路に出てきょろきょろ左右を見回しました。
「スポーツジムの工事現場が見えると思うんですが」と言ったら、「あ!見えます見えます!・・・あ〜!わかりました!」
うれしそうな声が聞こえた。
右手を見たら、ケータイ片手の男を先頭に、三人連れがやってくる。
三人とも、十代と思える、「あんちゃん」と言って悪ければ、「ヤンキーの兄ちゃん」というか、暴走族というか、真っ白い派手な上下の、一見危なそうな、道で会ったらよけたくなるような三人組であった。
この三人が、なぜ私の個展に???
なんとも理解しがたい状況であった。
どういうことであろうかと、近づいてくる三人を見つめてたら、その後ろから80代と思える女性の姿が。
あ、いぬいさんだ!
以前住んでいたご近所の奥さんです。
以下、いぬいさんの話。
道に迷って、案内状を見ながら、30分ほど同じところをぐるぐる回ってたら、建設工事現場にいたこの若者たちが、「おばちゃん、どこ行くの?」と声をかけてくれたのだそうです。
一見危なそうな若者は、実は親切な若者なのであった。
若者たちにお礼を言って、せっかくだから個展を見て下さいと言ったら、まだ仕事中だからと逃げるように去って行った。
一見おとなしそうだけど、危険なおじさんだと思われたかもしれない。