星エリナのほろよいハイボール(連載22)

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星エリナのほろよいハイボール(連載22)

 メトロノームを破壊した
 
 カチカチカチカチ。絶対規則正しいテンポを刻むメトロノーム。音楽をする人の必需品で、おもりがついた振り子を左右に振り、テンポを刻む。おもりを上へ移動すれば遅くなり、下へさげれば早くなる。振り子式のものは劣化するとテンポがずれたりするため、今では電子式のものが多いそう。電子式のものはとても便利で、チューナー(音程測るやつ)に内臓されていたり、いろいろなリズムを刻んでくれるものもある。私はそんな高性能なものを持っていなかったので、知らない。
 吹奏楽部にももちろんたくさんのメトロノームがあった。一つのパートが三つくらい持っていたから、音楽準備室には約30個はあった。古くて黄ばんだものもあれば、新しいデザインのきれいなものまで、たくさん並んでいた。クラリネットパートが主に使っていたのは、SEIKOのちょっと丸っぽいデザインのメトロノーム。OGの方々がプレゼントしてくれたやつだ。いつも持ち運びは後輩の役目だった。
 私が通っていた中学は女子の上下関係がものすごく厳しかった。それはもう学園ドラマのよう。現代ゆとりっ子とは思えないくらい。廊下ですれ違ったら、顔見知りでなくても後輩が挨拶をする。後輩は必ず相手の上履きの色を見て先輩かどうかを確認していた。挨拶を忘れようものなら先輩に目を付けられ、所属部活を割り出され、部活動の先輩に怒られるのだ。厳しかったのは挨拶だけではない。制服のスカート丈が規定の膝下よりも短ければ目をつけられる。帰り道にすれ違ったときに「中村さん、スカート短いよ」と知らない先輩に言われるのだ。女こっわー。
 他にも、上級生になるまでハイソックス禁止とかスクールバック、エナメルバック禁止とか、女生徒間では暗黙のルールがあった。破れば部活の先輩にいびられる。
 メトロノームを運ぶのは後輩の役目っていうのも、吹奏楽部内の暗黙のルールだったように思う。その日は私がメトロノームの入った巾着袋を持ち運んでいた。四階にある音楽準備室から、クラリネットパートがいつも練習している三階の三年三組まで。同い年の子と少しお喋りをしながら階段を降りた。そこで、足を滑らせた。必死に楽器を守った私、先輩たちも楽器が無事でよかったーと笑っていた。
 そして練習。楽器を組み立てて準備する。メトロノームが入った巾着袋あけて、先輩は動かなくなった。
 まぁ、タイトルどおり壊れたんですよ。壊れた、どころじゃなく、破壊しちゃった。いや、粉砕しちゃった。おどろくほど粉々だった。私は楽器ばかりに気をとられ、巾着袋を踏みつけていたのだ。
 ちゃんと弁償はしたので、どじっ子ということにして、許してね。
 


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