星エリナのほろよいハイボール(連載29)

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星エリナのほろよいハイボール(連載29)


神様を待つ

   何か悪いことがおきてしまいそうな予感がするとき、みんなはどうする?
 例えば自分の横を通った車がものすごいスピードを出していて、その先に老人が歩いていたら。危ない、と叫ぶ? 助けようと走る? ぶつからないで、と神様に祈る?
 私はいつも、神様を呪う。あぁ、なんで今あの老人にあそこを歩かせたの? なんで今この運転手に無茶な運転をさせたの? なんで、この二つを同時に鉢合わせたの。全部全部、天から見てる神様の仕業なんでしょ。
 悪いことが起きる直前は、いつもぞくぞくする。悪いことをするときとは違う、そわそわが抜けたぞくぞく。そして、悪いことがおきた瞬間にスーンと静かになって、無音になって、ときには無色になる。
 神様の存在は信じているけど、神様に祈る人間を正直私はみんなバカだと思ってる。「神様おねがーい」とか言ってる女の子はそう言ってる自分がかわいいアピールをしている狡猾な人間だから別。なんの努力もしていないのに「大学受験なんとかして! 神様!」とか言ってる男の子はただのバカ。どれだけご利益があると言われている神様に祈ったって、結局自分がなんとかするしかないんだから。本当に頭がいい人は、私みたいに神様を呪ったりもしない。自分で努力を重ね、その結果がわかりつつ、神様にお祈りをしているやつが一番頭がいい。
 現代の日本にはもっとやすっぽい神様がいる。何の見返りもなしに、お金をくれたりご飯を食べさせてくれたり、部屋にとめてくれたりする存在のこと。ちなみにもちろん人間。神様を待っているのは主に十代の少女たち。キャリーバッグをひいて、新宿や渋谷、大都会を移動する。彼女たちはインターネット上の神待ちサイトで、必死に神様と呼びあがめる男性を求めてる。
 彼女たちをどう思う? 出会い系とおんなじ? 汚いとか、くだらないとか、そういうことを思う?
 私は、なんとなくだが、私と同じ部類の人間だな、と思った。彼女たちは努力を重ねつつ神様に祈ってるわけじゃない。頭がいいとは言えない。でも何の見返りもなしに「神様おねがーい」とネット上で叫んでいるあたり、バカだと思う。それでもどこか、心のどこかで、神(と呼ばれる男)を呪ってる。
 当たり前だけど、何の見返りもなしに家に泊めてくれる男なんてそうそういない。確実に肉体関係を求めてくる。そんな男を彼女たちはきもいとかうざいとかって言葉で貶してる。だったらなんで神待ちなんてしてるのって、頭のお堅いおばさんおじさんたちは言うかもしれない。なんで、だろうね。
 黒羽幸宏神待ち少女」(双葉文庫)を読んだ。実はそれまで神待ち少女という単語を聞いたことがなかった。ただ、書店で出会ってしまったこの本には、どこか私がずっと求めていたものにも似ていた。
 加藤ミリヤの新曲「Lonely Hearts」は彼女たちの心を歌ったものだと思った。だって加藤ミリヤは「神待ち少女」の解説を書いていたからね。「神待ち少女」を読んでから「Lonely Hearts」を聞くとすごく切なくて儚い夢を見ている気分になれるのでおすすめ。
 最後に加藤ミリヤさんの言葉をお借りして。
「誰かと心から繋がりたい。ただそれだけを切実に願う。これは私たちの物語。」
 


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