星エリナのほろよいハイボール(連載77)

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星エリナのほろよいハイボール(連載77)


過ちは認めたくない
星エリナ

 
 昨年の授業のレポートで、社会問題に関するコラムを書いた。社会問題ならなんでもオッケーらしいので、私は所謂「さとり世代」について書いた。さとり世代っていうのはまぁゆとり世代とも被っているんだけど、いろいろなものに対してさとっていて、高望みをしないバブル崩壊後に生まれた若者を指す。恋愛も仕事も車も、並程度であればいい。むしろ結婚もしないで高級外車も買わないで、一人で生きていける分の貯金を望む。
 そんな世代がオトナたちは理解できないとか、ありえないとか、社会問題だ!なんて言っている。ではさとり世代がなぜ登場したのか、生まれてきた時代や、青春時代の社会背景についてを私はコラムに書いたのだ。その過程をここでは省略するが、まとめには、さとり世代自体が全て悪いのか?ということ。さとり世代が義務教育を受けていて時代、社会をつくっていたのは鼻垂れ小僧じゃないでしょ?ということを丁寧に書いた。もちろんさとり世代の意識の低さは大問題だけれど。
 不服なことに、評価はBだった。さとり世代に関する情報は新聞のコラムをたくさん読んで調べた。当時の社会背景もインターネットで過去の新聞記事をいくつも読んだ。「不景気」という単語を何回見たかわからないくらい。事実においては間違えていないと思う。ならなぜBだ。出席が足りないということはない。絶対にない。ということは私の文章力が無さ過ぎて呆れられたか、私のまとめが先生の気に食わなかったか。
 私は同世代にものすごく腹を立てている。(かといって自分が誉められた人間だとは思っていません。自分にも腹が立つ。)それと同時に過去に縋るオトナたちが大嫌い。あの頃は良かった、と言う言葉も大嫌い。過去を見せ付けて「これだからゆとり世代は」と笑うオトナなんて論外。
 さとり世代を生み出しちゃった過去を認めてはどうだろう。オトナたちがつくってしまった過去の借金を払うのはオトナたちがバカにしてるさとり世代以外にいないんです。
 これを認めた大人を、はじめて見た。作家の石田衣良さんだ。「坂の下の湖」というエッセイ集のなかで、
「ぼくはこれまで、若い世代の草食傾向をきちんと評価できずにいた。でも、このあたりではっきりさせておきたい。間違っていたのは、バブル世代のぼくたちだったのだ。ごめんなさい。高度成長の再来などという夢を見ずに、一〇年早く巨額の景気刺激策をやめていれば、これほどの財政赤字にはならなかった。」
 と、つぎの世代に対する謝罪を書いている。
「初任給で貯金を始めるのも、自動車やもち家に興味が薄いのも、恋愛や結婚をしないのも、目のまえにある成熟国家ニッポンを生き延びるため、個々の人間が選択した最適解にすぎない。」
 さとり世代が生まれた原因をこのように考えている。その上でエッセイの中で、この時代を楽しく生きよう、とつぎの世代にもエールを送っている。
 もともと石田衣良さんの小説が好きで、エッセイも読み始めたが、このように過ちを認め、年下に頭を下げることができる大人は少ない。だって人間みんな心の奥底では負けず嫌いなのだ。さとっているくせに負けず嫌いは本当にたちが悪い。頑張って負けを見るのが怖いだけ。私だって過ちを認めたくないときばかり。人間はあーだこーだ言い訳を考えるのが得意なのだ。血液型や星座のせいにすることが大好きだ。
 頭を下げることが立派だなんておかしいかもしれないけれど、開き直って偉そうにふんぞり返ってるオトナより全然格好良い。従軍慰安婦はいましたよ、それが何か? ってその態度はどうなんですか。それがオトナなんですか。(これに関しては個人が頭下げりゃいいって問題でもありませんが。)
 とにかく過ちを認めてみませんか。さとり世代は小さな声でしか文句言いませんから。なんだかんだ、尻拭いしなくちゃいけないことも「さとって」いますから。
  
 

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