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星エリナのほろよいハイボール(連載98)
女子高生を妬む
星エリナ
高校三年の夏から、私は路上ライブにはまる。ひとつのバンドを追いかけるようにして、大宮、春日部、池袋、北千住、所沢、朝霞台……。交通費はかなりかかったけれど、そんなこと私には痛くもなかった。まるで依存するかのようにそのバンドを追いかけた。それは、そこに居場所を感じていたからだった。
両親はまじめで、私の進路には反対していた。「フツーの大学」に通ってほしいと思われていた。塾の先生たちも「フツーの大学」を私に勧めてきた。塾の実績があるのだろう。それでも日芸にAO入試で合格した私。高校の友人たちは受験勉強を頑張っている。気軽に遊ぼうと言えるはずがない。もちろん、私にも悩みはたくさんあった。大学へ行って、勉強やまわりの文章力についていけなかったらどうしよう、なんて思ったこともあった。そんな私を受け入れてくれたのがそのバンドメンバーだった。
「オレも専門学校行くって言ったら、親に反対されたよ」
ベース担当の人には何回か相談にのってもらった。専門学校でベースや作曲について学んで、今バンド活動をしている彼ら。格好良く言うと、芸術の道を歩んでいることは同じだね、と笑ってくれた。なかでも私の話をたくさん聞いてくれたのはリードギター担当の人だった。イケメンなギタリストなんだけど無口で、クールとまわりからは言われていた。
「そんなことないよ、コミュ障なだけ」
と笑う彼を私は一番応援していた。学校のこと、将来のこと、なんでも聞いてくれる人だった。それどころか、不思議な空気を持っている人で、お互い無言でも居心地が良いとさえ感じたこともある。ショッピングモールでのライブでは、複数のバンドがライブをするのだが、二人で並んで他のバンドのライブを見ていたこともある。そんなだから私は彼にだんだん恋(今思えばただの憧れだが)をしていた。路上ライブで彼と話が少しできるだけで嬉しかった。
ある日の路上ライブ。私はなんとなく、女子高生アピールをしようと思い制服を着ていった。しかし、私の高校には指定の制服がなかったので、ブレザーではなくパーカーを着ていた。その頃には最初とは違ってファンがとても増えていた。特に女子高生が多かったので、対抗心があったのだと思う。その日も女子高生たちがたくさん見に来ていた。お客さんには平等に接してくれる彼らだから、みんなと話をしてくれる。だけど、ファンの女子高生たちはすごく積極的。私がギタリストの人と話をしていると後ろから声をかけてくる。話ができただけで嬉しかったけれどすこしムッとする。特にみんなから可愛い可愛いと言われていた女の子が、恥ずかしそうにギタリストの人に話しかけ、何かプレゼントを渡しているところを見たときが一番面白くなかった。
路上ライブがきっかけでできた友達もいて、楽しかったのは事実。だけど、他の女子高生らしい女子高生たちを妬んでいた。そんな自分をバカじゃないのか、とも思っていた。自分にうんざりすることもあった。それでも通い続けていたのは、私を理解してくれる、受け入れてくれる、ここが自分の居場所だと感じていたからだった。
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