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清水正ブログ

2015-06-26

信濃毎日新聞(2015-6-21)に『黒板絵は残った』の書評

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信濃毎日新聞(2015-6-21)に『黒板絵は残った』の書評が載りました。

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2015-06-23

「熊谷元一展を見て」小澤百花

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熊谷元一展を見て 

 小澤百花   

今回の展示で率直に思ったこととしては、熊谷元一氏の写真家、また教育者としてのポテンシャルの高さである。まず、私が思うに、写真家としての重要な素質は着眼点であると言えよう。なぜなら、いくら優れた技術を持ち合わせいようが優れた行動力があろうが、着眼点がよくない限り人には認められず、無意味なものであるからだ。よって、黒板絵の数々を被写体としてとらえ続けた熊谷氏の着眼点は写真家熊谷元一を評価する上で無視することが出来ない点である。

また、熊谷氏のもう一つの顔が教育者であるということだ。初め私は何も考えず、無の状態で展示を見て回った。段々と子供らしさ溢れる黒板絵にのめり込み、伸び伸びとした子供の絵にある種の感動を覚えていった。しかしふと我に返らされることとなる写真に出会う。それは吉田茂の似顔絵を描いた黒板絵である。この時私は急に時代を感じさせられた。子供はどんな時代でもそのままの自分をさらしながら生き、純粋である。あまりのその純粋さにこの時代が戦後の貧困に立たされていた厳しい時代であることなどを忘れてしまっていたのである。子供であっても多くの自由を与えてもらえなかった子供たちにとって、熊谷氏はこの黒板絵を通して自由な表現、それは芸術の根源を感じて欲しかったのではないだろうか。教育者としての熊谷氏は伸び伸びとさせることで表現を教えていたのであろう。

熊谷氏は教育者であると同時に写真家であることを痛感させられるのは、この子供たちの黒板絵を作品として写真に残したと言う点である。記録写真の種類は様々であり、いろいろな写真家がやっていることではあるが、この場合、表現の幅として記録写真にしているのでは無い。言うなればすべての黒板絵合わせて一つの作品なのである。その、アーティスト性のようなものに感動させられました。写真を学んでいる身としては写真と言うのは芸術作品であってほしいと個人的に思っているので、ただの記録で終わっていないということに注目しました。

教育者としての熊谷氏は生徒同士の喧嘩を仲裁に入る訳でもなく、ただカメラを向けていたと言うことを考えると生徒たちといかにして客観的に接していたかがわかる。現代の教師は生徒たちの個の重要視の仕方を改めるべきである。それは漠然とした言い方であるかもしれないが、例えるのであれば生徒に対して自分の価値観を押し付けたりであるとか、自分の信念を強要したりすることにある。私は実際に小学校時代にそういった教師に悩まされ、苦しんだ経験もある。子供はそれぞれ成長の速度も異なるであろうし、そのことをふまえた上で接することのできる教師こそが真の教師と呼べるであると私は考える。熊谷氏の場合は黒板絵によって生徒たちに自由の大切さを教え、またそれによって生徒たちの個を見出していたのであろう。それは熊谷氏の教え子であった元生徒の女性の後日談からも見受けられる考察である。熊谷氏と生徒たちの信頼関係はこの黒板絵を通してつくられていき、またそれが熊谷氏が生徒たちの姿を捉えた作品になっていったとわかる。被写体が人間である場合はいかに信頼関係を築いて写真に溶け込ませるかが重要である。そのため、生徒たちの学校での雰囲気を自然のまま捉えた作風は熊谷氏にしか成せないものであり、この作品を人々を惹き付けさせるものとする要因の一つにあるであろう。

子供たちの黒板絵を見ているとまるでキャンバスに描かれた絵画のように見えてくる。それは、子供たちの自由な絵が黒板の縁に囲まれ、それが額縁に囲われた作品であるかのように錯覚させる。子供たちを芸術家に仕立て上げた熊谷氏の教育の方式は今の人々は見習うべきであり、本質を変えるべきである。昨今では教師と生徒を隔てる教壇の撤廃であったり威圧的な姿勢をなくす努力がなされているようであるがそれの先駆けを熊谷氏はしていたのではないだろうか。教師の聖域でもある黒板を開放し生徒たちに自由に使わせるというは当時では今以上にタブーなことであったことが想像つく。教育者としての熊谷氏は真に子供たちにとって必要なことを追求していったのであろう。

子供たちのことを考えた教育をしつつ写真家として写真を追求していった熊谷氏だからこそこの作品を残すことが出来たのである。特に熊谷氏が写真家としての特徴とあげて良い点は当時の時代の流れや情勢を揶揄するかのような写真が数多くあるということである。それは現代社会に自分が生きていることによってみえる見え方であるのかもしれないが、少年がパンをむさぼるように食べていたりであるとか、子供たちを辛辣に捉えることによってその時代を風刺しているのが垣間見える。一見黒板絵に関係のないこととも思えるがこれは子供たちのことを客観的な視点で見つめそして時代をも客観的に見つめていたと言うことにある。

私は写真を追求していく上で重要なヒントのようなものを数多く得た。そして、教育者としてまた一アーティストしての熊谷氏をこの「黒板絵は残った」を通してみることとなった。

熊谷元一写真集『黒板絵は残った』(D文学研究会発行・星雲社発売)は五月三十日に刊行されました。

f:id:shimizumasashi:20150423170849j:image定価は1800円+消費税

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2015-06-17

写真家熊谷元一展

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写真家熊谷元一展を訪れた人々

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熊谷元一展・打ち上げ 同心房にて

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2015-06-12

写真家熊谷元一展を訪れた人々

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写真家熊谷元一展を訪れた人々

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下原敏彦さんと姉の栄子さん 6-11

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下原敏彦さんと日大農獣医学部拓殖学科同級生長畑美成さん。

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日芸図書館課長補佐の山崎さんと課員の斉藤さん

2015-06-11

写真家熊谷元一展

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写真家熊谷元一展を訪れた人々

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写真家熊谷元一展 開催中の日芸アートギャラリー

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「黒板絵は残った」編纂者・下原敏彦さんと日大農獣医学部拓殖学科の同級生たち。中に私と下原さんの奥様、長畑美成さんの奥様がいます。

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日芸経理長佐藤一哉さん(右)は長野県出身。

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大塚頼安   写真家熊谷元一展を観て 

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写真家熊谷元一展を観て 

大塚頼安

 小学生5年生まで私は先生に興味がなかった。それはマニュアルにのっとり、子供たちに教え、いけないことをすれば叱り、いいことをすれば褒め、いい生徒達をかわいがっていたからなのかもしれない。私は4歳時に病気かかって1年近く入院していた。親に甘えることが必要な時期に親から離されていたせいか、少々性格が捻じ曲がっていた。そのせいで、人と同じというのが好きではなかった。なのでマニュアル通りの世間で言ういい先生が好きではなかった。小学3になり塾に通いだしたので、小学校の授業もますますつまらなくなり先生への興味はますますなくなっていった。小学5年生になる頃には、学校は友達会いに行く場所になっていた。

 6年生になった時新任の先生が学校にやってきた。その先生は、なんとも爽やかで、いかにも小学生が好みそうな物事をよく知っており、元気な人だった。私が嫌いそうな人物だった。その先生は私のクラスの担当になった。初めてクラスにきた時のことは今も覚えている。

「僕のことは先生と呼ばずにあだ名でよでくれ」

男子はすぐに打ち解けていた。しかし女子の数人は冷ややかな目で先生を見ていた。その中には男子だが、私もいた。しかし、日が経つにつれ冷ややかな目は先生への興味の目に変わっていた。先生は今までの先生と違っていた。それに気がついたのが桜の木が緑に変わった頃だった。生徒同士がクラス中でケンカをしていた。男子達はやれやれと盛り上がり、女子はため息をつきながらそれを眺めていた。そのケンカ中に先生は教室に入ってきた。男子はケンカが止められると思い、ため息をついたが先生はケンカを止めずその光景を見ていた。一通りケンカし終えた二人は、片方が謝りおさまった。それを見て先生はよし、と一声発して授業をはじめた。今までの先生ならかならず止めていたのに何で止め なかったんだろうと疑問に思った。そこから先生に興味を示すようになった。次に先生のとった行動は、生徒一人一人に通り名をつけ出した。たとえば優しい何君、絵がうまい何さん、歌がうまい何ちゃんなどだ。私の通り名は比喩表現であった。先生は個性をとても大切にしていたのだ。そしてその個性を出しているときを一番に褒めていた。そんな先生を生徒は男女問わず大好きになっていた。私もそのうちの一人だった。

大学生になった時、母校にい行き、その先生と話す機会ができたので、色々と聞いてみると、なるほどと思った。先生は行けなかったのだが日藝の映画学科を目指していたそうだ。妙に私は納得した。個性を大事にするわけだと。

今回、熊谷元一先生の作品を見てそんな小学校の頃の先生を思い出した。しかし、熊谷先生は私の先生よりもっと、個性を大切にしていたと思う。黒板が先生の聖域である時に黒板を解放し、授業中にやりたいことをやらせ、子供達に自由に学ばせた。黒板に自由に書かせたのはその生徒が何に興味を示しているのかを知るためだと私は、考えている。文章を書いている子は、文章に興味を持っていて、政治家を書いてる子は、政治に興味を持っていいる。名前を書かしたのも知るためだと私は、考える。興味がある事柄を聞くのは簡単なことだが、先生はそれを表現の中から見つけ出し、その子の個性を伸ばしていく。これは、純粋にすごいと思った。その他に先生は、子供達の動きや言葉を全部ノートに書 いている、という事もしていた。これは、生徒というものに純粋に興味があったからだと、考える。やはり興味があるというのは、とても大切なことだ。先生は、怒ることはないと元生徒さん達は言っていたが、静かに真剣に生徒とぶつかり合っていたと思う。怒りとは、別の何かで。私の小5までの先生たちは生徒に興味がなく純粋に教師は仕事としてやっていたのかもしれない。上っ面は良い顔をしていたが、やはり距離を感じた。やはり生徒に真剣にぶつかり、近くなくては小学校の先生はだめだと私は思う。ウィリアム・アーサー・ウォードの有名な言葉がある。「普通の教師は、言わなければならないことを喋る。良い教師は、生徒に分かるように解説する。優れた教師は、自らやってみせる。そして、本当に偉大な教師というのは、生徒の心に火をつける」熊谷先生は偉大な教師だと思う。「写真を撮られていたことをあまりよく覚えていない」これは元生徒さんから聞いた言葉だ。なにげなくいっているが、これはすごいことだと思う。普通カメラを向けられると自然とポーズをとってしまったり、顔を作ってしまったりする。小学生ならなおさらだと思う。しかし先生の写真には偽りのない笑顔やぼーっとしてる顔など、自然体なのだ、その当時の生の感じが直に伝わってくる。これは生徒達と先生が打ち解けているからだと考える。先生は生徒の心の中まで入っているのだ。

今回作品展を見て感じたことは、「興味」の大切さだ。熊谷先生のまねを今の小学校教育でマネしようとしても絶対できない。しかし、生徒に興味を持つことは、できると思う。興味を持った上で生徒と真剣にぶつかりあう先生が増えてほしいと思う。

中嶋悠理『熊谷元一 感想』

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熊谷元一 感想』

中嶋悠理

 正直なところ、はじめ熊谷元一の取り組みのすごさというものが、いまいちピンとこなかった。私たちの時代、黒板に落書きをするくらい当たり前のことだし、それを写真に収めることは多少珍しいかもしれないが、手の込んだ黒板の落書きを写真に撮ったものならネット上に案外ありふれている。しかしよくよく考えてみると、本当はすごいことだったのに、現代の私たちにすごくないと思わせること自体、とんでもなくすごいことなのだ。

 つまりそれほど時代の方が変化してしまったというわけである。先生が生徒を殴ることはしなくなったし、写真だってもう白黒ではない。見たところ写真の男の子はだいたいみんな坊主頭だったようだが、今ではそんな髪型の子の方が珍しいくらいだろう。それほどまでに変わってしまった現在の、変わる前を知らない私のような人間が見て「普通だな」と思うということは、当時の熊谷の試みは数十年時代の先を行っていたということだ。

 そんな写真の内容だが、そこに描かれている絵そのものはさほど特異なものではない。遠近法を使わない平べったい絵など、どんなに絵の上手い人でも幼い頃一度は通った道であり、これには世代を超越した親しみを覚える。初めて見た時には白黒で描かれた正体不明の化け物のイラストに出くわして度肝を抜かれたが、怪獣への憧れもまた男の子のお約束である。注目するべきなのは、絵を描いた子供の名前がひとつの絵につき複数書かれていることが多い点だろう。子供たちの黒板へのお絵かきは、時として共同作業の性質を帯びた。黒板があくまで教室にひとつしかないことと、描いた作品が写真に残されることなど考えれば共作が出てくることは当然なのかもしれないが、教育という面ではきっと素晴らしい効果があったのではないだろうか。国数理社など基本の科目の中で、子供たちが共同作業をする機会は限られている。熊谷が教壇に立っていた時代であれば、なおのこと少なかったのではないだろうか。それを授業外で、しかも子供たちにとって何らやらされているという意識を与えない方法で実践したという意味ではただただ驚くばかりだ。

 熊谷によって解放された黒板はこうして共同作業の場と化した。それはただ協調性を学ばせるためにだけ機能しただろうか。おそらくそうではない。私はこの黒板が持つシステムに、現代のインターネットにも通じる性質さえ感じる。ツイッターやフェイスブックなど、昨今のメディアは多様化し、双方向化した。インターネットでは誰かが作ったコンテンツを提供するばかりではなく、ユーザー同士の交流のための広場を提供する、そんなようなサービスが主流だ。熊谷の黒板には、まさにそうした広場的性質が宿っている。

 誰かが描き始めた絵を、後からやってきた別の生徒が書き足す。あるいは最初から二人で書き始めて、ひとつの黒板の中にそれぞれが望むものを競うように描いていったのだろうか。作業がいかなる経過をたどったのか、そこまでは写真の中から読み取ることはできないが、結果としてできあがった混沌とした作品の数々を見ていると、そこに創造的なコミュニケーションが生じていたことが容易に察せられる。言葉ではなく、互いが描いたものが黒板というフィールドの中で対話する。しかもそうして絵として具体化した対話の記録が、教師熊谷の手によって写真の中に納められるのだ。当時の子供たちの対話、彼らが欲していたもの、憧れたものの内容が、今でも写真の中に息づいている。通常、写真の中に会話を収めることはできない。会話とは瞬間のできごとではないからだ。しかし熊谷の写真の中には、瞬間化された会話の軌跡が確かに見て取れるのである。

 熊谷の黒板解放が先駆的であったことについては疑いはない。しかし熊谷の教育が現代教育と比べてどのように優れ、あるいは劣っているのか、私にはよく分からない。詰め込み型の教育が創造性という面では発展性がない一方、知識なくして創造することができないのもまた事実だ。それとも熊谷のように教師が授業外で子供と向き合ってくれるような状況が成立しづらくなったことこそ問題の本質であろうか。子供には同年代の友人が必要であることはもちろん、年長者との深い交流もまた不可欠である。カメラという一枚のガラスを隔てて、しかし確実に傍にいるという距離感は、果たして熊谷が当初から予定していたものなのだろうか、私には教育者として絶妙の位置取りであるように思われる。

 熊谷の取り組みは確かに広く世に知られるべきだ。これは昨今の教育の在り方に対して重要な問いかけとなるだろう。だが、私はこの問いかけを教育者である大人たちにだけ投げかければ良いとは思わない。教育における本当の主人公、子供たちにこそ熊谷の取り組みを知ってもらい、これに魅力を感じるか否か、素直に答えてもらうのが何よりの近道だと思う。教育を施す側と受け取る側、双方で問題を共有してこそ、新しい教育の道が探し出せるのではないか。