第42夜 個人でも使える国内クラウドを比較する

と書いたものの、調べてみると国内で高レスポンスを得られるクラウド検索してみたらAmazon Web Servicesをのぞくと2つだけだった。あわせても3つ。選択肢ないやん・・・。


日本は法人格もってるかそうでないかで明確にサービスを分けてるけど、海外はそこに差をつけてないのが多いですね。これ、勉強してみようとか試してみようという敷居が段違いなのでスタートアップでの手軽さは国内と海外とで大きな差があるのがわかります。

技術者に優しい海外とそうでない日本。


とまぁ愚痴はおいておき、その2つを紹介してみよう。AWSもサーバーが国内にあって高レスポンスなので国内用としてカウントしてもよいと思うが、すでに紹介済みなのでそちらを参照してください。

ここでいうクラウドGmail等のサービスではなく、レンタルサーバーの延長、サービスを提供する側が利用するものをさします。VPSとの違いはわかりにくいのですが、マシンのリソースを綺麗に分割して提供しているもの、とかってに考えています。

たとえば2.4GHzのCPUがあった場合、VPSはそこに同居しているマシンで瞬間的にフルのマシンパワーが使えたり使えなかったりするもの、クラウドは1.2GHzのCPU2個としてそれを限度に提供、あわせて2.4GHzとして上位プランとして提供も可能というものです。

1.2GHzくらいという数値が出てきた理由はこれは各社指標に使っている仮想CPUの単位として事実上標準ということ。AWSもそうですし、Google AppEngineもそうです。


では順に見ていきます。
いつものお約束。間違っていても泣かないこと。それぞれのサイトにあり情報をまとめただけです。

GMOクラウド

http://www.gmocloud.com/service/cloud/public/

GMOクラウドはリソースを細かく設定可能なのが説く量です。CPUも1%単位で割り振り出来ますし、メモリは1MB単位、HDDは1GB単位で調達が出来るようです。

そのほかオートスケール機能があり、スケールアップやスケールアウトが可能です。ロードバランサーもあります。

また、CDNサービスもあります。
http://www.gmocloud.com/service/cloud/network/

面白いのがプランで仮想サーバーが固定されない点です。スペックを自由に仮想マシンとして割り振ることが可能です。

たとえばメモリだけ見てみますが、8GBの契約した場合これで1つの仮想マシンを構築するだけでなく、メモリを2GBで4個の仮想マシンとして割り振るといったことが可能のようです。あくまでも契約はリソースの最大限度。

つまり、国内クラウドでよくある月額での料金設定ですが、より細かい単位でリソースを調整できるため、そのデメリットを打ち消しやすいということです。

http://www.gmocloud.com/service/cloud/public/feature/virtual-server/


価格は月額料金ゼロのプランもあり完全従量制も可能ですが、細かい単位でのリソース増設はコストパフォーマンスが悪いようなので、月額料金あるプランのほうがいいとおもわれます。

プラン料金は以下の通り。

プラン CPU メモリ HDD 料金
Z00 -- -- -- 0円
Z10 0.1 0.5GB 10GB 950円
Z20 0.2 1GB 40GB 2,500円
Z50 0.5 2GB 40GB 4,000円
Z100 1 4GB 40GB 8,000円
Z200 2 8GB 40GB 14,000円
Z400 4 16GB 40GB 22,000円

プラン名はCPUリソースの数と一致していてわかりやすいです。

初期費用はすべて0円。

全プラン14日の試用期間つきだそうです。

OSは基本CentOS 5.5、WindowsServer2008も追加の支払いで利用可能です。下位のプランで割り引かれないことを考えると、基本WindowsServerは企業向けという位置づけのようです。

SaaSesクラウドサービス

http://www.saases.jp/cloud/

低価格VPSが有名なところですね。

ややこしいのですが、クラウドサービスはIaaS以外もあり、IaaSだけでも3つあります。

Osukiniクラウド

http://www.saases.jp/cloud/osukini_cloud.html

OsukiniサーバーというLinuxVPSをすでに展開しているので、名前からわかるようにそのクラウド版です。

非常にシンプルです。基本価格は月額1000円。これに1CPUと1GBメモリ、HDD80GBが含まれます。
仮想CPU1個とメモリ1GBをセットで増設するとプラス1000円。HDDを80GB単位で増設すると+900円。

プラン CPU メモリ HDD 料金
基本 1 1GB 80GB 1,000円
CPU&メモリ増設 +1 +1GB -- 1,000円
HDD増設 -- -- +80GB 900円

最大でCPU4つ、4GB、HDD320GBとなります。

ThunderHeadクラウド

http://www.saases.jp/cloud/thc.html

こちらも名前からわかるようにVPSThunderHeadクラウド版のようです。

ただし、CPUリソースごとにプランが分かれており、HDDとメモリを増設できるようです。

プラン CPU メモリ HDD 料金
タイプ1 1 1GB 80GB 3,630円
タイプ2 2 2GB 230GB 7,260円
タイプ3 4 4GB 430GB 14,520円

プランによってHDDとメモリの最大増設可能数に制限がかかるので、CPUをあまり必要しないタイプ1でメモリやHDDを大量に増やしたい、といった用途は無理です。

ただし、タイプ1のHDD最大容量230GB、メモリ4GBはCPU1つ十分な量でしょう。

メモリ1GB増設で630円、HD50GB増設で525円です。
OSはWindowsServer 2008。

エラスティッククラウドコンピューティングサービス Industria

http://www.saases.jp/cloud/industria_001.html

コレが俗に言うクラウドでしょう。前項目2つはVPSの延長ともいえます。

ロードバランサーやオートスケールがあります。

プラン CPU メモリ HDD 料金
Standard Small 1 0.5GB 35GB 390円
Standard Entry 1 1GB 35GB 980円
Standard Medium 1 2GB 35GB 2,500円
Standard Large 2 4GB 35GB 4,500円
Hi-Performance Small 4 8GB 35GB 8,800円
Hi-Performance Medium 4 16GB 35GB 17,000円
Hi-Performance Large 8 32GB 35GB 39,000円

上位プランでもHDDが増えてないのが気になりますが、分散ストレージを使うようになったあたりが原因でしょうか。
1500円で100GBずつ増やせるようです。最大2TB。

無償試用期間は14日。

OSはCentOS 5.6。

思ったこと

この2つのクラウドともにすぐに5分でサーバーを調達可能なのはいいです。


GMOは柔軟なリソース管理が売り。ロードバランサーも追加コストが要らないのも強みです。

契約と仮想マシンリソース割り振りが別というのがとても面白く、スケールアップやスケールアウトがしやすい印象です。たとえば最初に低スペックのマシン構成ながらもスケールアップ/アウトできるような構成に最初からしていけば手間がなくなる可能性もあります。さほどCPUリソースはいらないけどマシンを用意したい、でもそのために価格が跳ね上がるのがいやという場合にうってつけです。このへんはAWS以上に便利でしょう。

ただし、HDD量が上位プランであっても少ないのが気になります。仮想マシン数が無制限なのでここで制限をつけていると思われますが。CPUリソースも全体的に低いです。それと比較するとメモリはリッチです。AWSと比較した場合、Z100が基本となる構成ですが、これは複数仮想マシン造ればいいということでもあります。ただし、CPUは厳しくなりますが。

個人的にはCPUリソースとメモリのバランスからZ50以上がおいしいのではないでしょうか。


SaaSesは価格の安さが魅力です。Osukiniクラウドが安いのはもちろん、ThunderHeadクラウドのコストもWindowsServerとしては安いですし、ライバルはAWSくらいです。単純なコストだけで見るとVPSのほうが安いのですが、やはりクラウドの柔軟な構成とリソースの固定された割り振りは魅力です。IndustriaはWindowsServerは未対応ということでOsukiniの上位と見てよいでしょう。

ただ、SaaSesはサイトのドキュメント量が圧倒的に少ないです。OsukiniクラウドのOSがなんなのかとかそういうのすらありません。人的リソースが足りてないイメージです。もったいない。


OSと仮想マシンのリソースごとのプランを綺麗に分けてあるAWSのスマートさがわかります。OSがなんであるかは関係ありませんし。また、AWSは時間課金も強みです。そのかわりリザーブで年単位にしないと割高なのがマイナスですが。半年とか3ヶ月とかのリザーブがあるだけでぐっと使い勝手は変わる気もしますし、smallより下のプランが事実上存在しないのに対して、これら国内クラウドはsmall以下があります。


国内のクラウドの特徴として大抵転送量に課金をしていません。月当りの価格がわかりやすくなるメリットは絶大ですが、そのかわり月単位が最低なので、1時間だけ高スペックマシンを使いたい、瞬間的に大量にマシンを調達したいというのには向きません。

また、円単位で支払えるので為替に左右されないのも魅力となっています。ただし、今は超円高なのでAWSが激安になっています。この辺は良し悪しでしょう。

サポートされる言語はもちろん日本語。コンソールが日本語化されているのはやはり強みです。