東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』レビュー

・100字レビュー

小さな物語を往復する「データベース消費」のみにより充足する「動物」と化したオタクの紡ぐメタ物語を「ゲーム的リアリズム」と命名。「萌え」はオタクのリテラシーで、ゲームと小説の境界が消失しつつあると説く。

・長文レビュー(400字)

〇一年の前作では、本来の人間は他人の欲望に欲望していたが、ポストモダン時代になると「大きな物語」の崩壊により「小さな物語」を往復する「データベース消費」のみによって充足する「動物」と化してしまったことを、ライトノベル美少女ゲームに興じるオタクを代表例として論じた。その続編の本書では、一方的なコンテンツ志向から相互的なコミュニケーション志向に移行したメディアが紡ぐメタ物語を、大塚英志の「まんが・アニメ的リアリズム」に対し「ゲーム的リアリズム」と命名し、後半の作品論で「萌え」はオタクのリテラシーであり、ゲームと小説の境界が消失しつつあると説明する。オタクを現代の要とする仕事によりゼロ年代批評は東の独壇場となったが、本書末尾で希求した村上春樹舞城王太郎を繋ぐ「寓話的で幻想的でメタ物語的な実存文学」の系譜に自ら連なるべく小説家に転向。テン年代は東超えを狙う論客の群雄割拠する戦国時代に突入した。

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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