栞が12本も付いている

  
内田春菊『愛だからいいのよ』(講談社、2002年7月)は、最近稀にみるゲテ装本だ。ただそれだけで十分に嬉しい本だ。栞が12本も付いているのがすごいよね。1折りごとに栞が付いている事になるが、もちろんそんな機能的なことを目的として付けるはずなんかない。ジャケットの髪の毛の延長のつもりであろう。そんな遊び心のある、オブジェとしての本なのだ。
 

ジャケットは4種類の色違いがある

 
栞の色もジャケットのモデル(著者?)の髪の色に合わせてある。このジャケットには、コメントが付いていて、
《『愛だからいいのよ』のカバーは、ホワイト、ブラック、ブラウン、ブロンドの4色あります。(本文の内容は同じです。)》とある。ちなみに、私は3色持っている。
 

インターネットで色違いを見ることが出来る

 
更にジャケットの袖には《インターネットでカバー4色すべてがご覧になれます。「講談社ブック倶楽部」(http:
//www……)の「検索コーナー」で、書名(愛だからいいのよ)または著者名(内田春菊)を入力してください。》だって。
 

リトマス紙を試してみたが……

 
同じ本に、4種類のジャケットを用意したようだが、これもさすがの講談社だ。もう10年くらい前のことかもしれないが、乃木坂にあった日活会館で、日本図書設計家協会主宰の林望氏の後援会があった。そこで私は「いずれ、インターネットが普及したら、ジャケットは数種類作られるようになって、読者はその中から好きな装丁を選べるようになるのではないでしょうか?」との質問をしたら、即座に「そのようなことは、ありえません」と考える様子もなく否定されてしまった。
 
講演の最後にもしつこく「沢山用意された装丁の中から、販売点数によって装丁家には、装丁料が支払われるような時代がやって来るのではないかと思いますが、如何でしょうか?」との質問をしたが、不愉快そうに「そんなことは起こりえません」と断言した。
 

私の夢がちょっと近づいた?

 
「愛だからいいのよ」は、私が夢に見ていた、「1冊の本に数人の装丁家による多種類の装丁を用意して、選択された(売れた)回数によって、それぞれの装丁家には印税のようにして装丁料金が支払われる」というようなシステム誕生を予感させる出来事ということでも、刺激的な装丁だ。架蔵書は全部初版なのが気になる。売れなかったのかな?
 

松井はいいなあ

 
こんなシステムが採用されれば、装丁家はいつも競争にさらされ緊張するし、装丁家にとっても、1点10万円とか15万円などというちまちました話ではなく、年商数千万円あるいは億万長者が誕生するかも知れません。「愛だからいいのよ」の場合は、定価1580円だから仮に著者の10分の1でしかない1割が制作の代償支払額だとすれば、1冊につき158円支払われることになる。1万部売れれば158万円になる。
 
そうなれば月に2冊売れる本を装丁すれば年商約3800万円……。松井は52億円か、いいなあ。