常田富士男の語り「なかすねひこ ものがたり」

「第13回 平和を祈る演劇祭」(於:保谷こもれび小ホール)で、「日本昔ばなし」の語りで知られている常田富士男(ときた ふじお、1937年1月30日 - )の語り「なかすねひこ ものがたり」(別役実作)を聞いてきた。村の語り部?に扮した80歳の常田の語りは、演技を越えたまさに語り部ともいうべき白熱の名人技だった。



 真っ暗な舞台でスポットライトを浴び、今も耳に残る「日本昔ばなし」を彷彿させるあののんびりとした口調は、満員の聴衆の耳を一点に集中させた。




別役実「ながすねひこものがたり」(『別役実童話集 山猫理髪店』三一書房、1971年)を読んでみました。「ながすねひこ」には最初の冒険、第二の冒険、第三の冒険があり、常田富士男さんの語りは、そのうちの最初の冒険でした。読んでいるうちに常田さんの声が聞こえてきて、もう一度語りを聞いているような気持ちになりました。「ねえ、頭が、猿みたいで、胴体がたぬきみたいで、しっぽが蛇みたいで、手足が虎みたいで、声がツグミみたいなやつのことを、知ってるかい」「しってるよ」…。