描かれた猫…?「猫と蝶」

【描かれた猫…?「猫と蝶」】
 昔から、たくさんの猫と蝶が戯れる絵が描かれているが、私は生まれてこのかた猫と蝶が戯れている場面を見たことがない。
 実は、「猫に蝶」は、猫と蝶という好ましい組み合わせをモチーフにした長寿を願う縁起のよい画題なのだそうです。



鈴木春信「猫に蝶」



森寛斎「睡猫図」



森村宜稲 「猫蝶図」部分



司馬江漢「猫と蝶図」部分


 猫を表す中国語(老+毛「ボウ」)と蝶を表す(老+至「テツ)」という言葉の音が、それぞれ「70歳」(ボウ)と「80歳」テツ)を表す言葉に似ていることから、中国では両者を組み合わせた猫と蝶の図を「長寿」の象徴とされているようです。
 (耄とは老いぼれ、という意味の漢字であり、『礼記、曲礼上』よりには年齢を表す言葉の例として「八十九十曰耄」とある。『釈名』には七十を耄と曰う。とあり、『説文解字』には九十を耄と曰う。とある。)
 耄(マァオ)の読み方については、かたかなよみで「マァォ」。耋(ディエ)はディエと読むようだ。どちらも七十〜九十歳を表す。


猫が蝶を食べてしまう絵もある! 歌川国芳「賢女烈婦伝 大納言行成女」。行成の娘は絵がうまく、居眠りをしているうちに絵に描いた蝶を猫が噛みついてしまったようだ。絵が上手いというのはわかるが、当時は猫が蝶を食べると思われていたようだ。

歌川国芳「賢女烈婦伝」


 日本でも招き猫だけではなく、猫が縁起物、神様として崇められている例はたくさんあります。食物や蚕を天敵のネズミから守るために、長らく猫と共存してきて、養蚕信仰とともに猫は神と崇められ、全国に猫稲荷や猫仏・猫地蔵などがたくさん点在しているんです。



東京都世田谷区・豪徳寺は招き猫発祥の地とされる。


長野県下伊那郡高森町・瑠璃寺「薬師猫神様」は、お蚕様をねずみから守ってくれる「猫神様」。