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一条真也の新ハートフル・ブログ

2013-05-05

小倉昭和館

一条真也です。
ブログ「旦過市場」に書いたように、「北九州の台所」と呼ばれる旦過市場をブラブラ散策しました。「旦過うどん」で昭和の雰囲気満点の昼食を取った後、市場のすぐ近くにある小倉昭和館を訪れました。
ここは創業74周年の名画座で、かの松本清張も愛したことで知られる映画館です。洋画・邦画・そしてヨーロッパ・アジアのミニシアター系作品を2本立てで上映しています。

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小倉昭和館」の外観
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チケット売場もいい感じ・・・



少し前に『キネマの神様』原田マハ著(文春文庫)という本を読みました。
わたしの小説読みの指南役である「ダンディ・ミドル」ことゼンリンプリンテックスの大迫益男会長に薦められて、原田マハさんの作品をまとめ読みしたのです。中でも、映画と映画館への愛情に溢れる『キネマの神様』には感動しました。映画をテーマにした小説は多いですが、この小説の最大の魅力は、映画館で映画を見ることの至福を見事に描いていることでしょう。「映画」という文化が人間にとってかけがえのないものであることは言うまでもありませんが、本書にはさらに「映画館」という空間についての思い入れがたっぷりと語られており、これが映画好きの心の琴線に触れるのです。

キネマの神様 (文春文庫)

キネマの神様 (文春文庫)



おそらくは著者の原田さんが勤務していた森ビルをモデルとした不動産開発会社のシネコン部門に在籍していた入社5年目の歩が書いた文章には、以下のように「映画館の臨場感」について書かれています。
「映画館の臨場感とは、映画というシステムがこの世に誕生すると同時に作り出された究極の演出なのである。それは1世紀経った現在でも、ほとんど原型を変えることなく伝えられているのだ。ドライブインシアター、カウチポテト族、ホームシアターなど、映画を取り巻く環境は確かに変化しつつある。しかしそれでも映画館が滅びないのは、その臨場感こそが、『娯楽』を追求した人類がようやく獲得した至宝だからだ。映画館は一級の美術館であると同時に、舞台、音楽堂、心躍る祭りの現場でもあるのだ。
この世に映画がある限り、人々は映画館へ出かけていくだろう。家族と、友人と、恋人と・・・・・ひとり涙したいときには、ひとりぼっちで。人間の普遍的な感情、笑いや涙、恐怖や驚きが映画館にはある。ありとあらゆる人生がある。人間が人間である限り、決して映画館が滅びることはない。たまらなく心躍るひとときを求めて、人はきっと映画館に出かけていくのだ」(文春文庫『キネマの神様』p.28〜29)

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次回は「The Lady〜引き裂かれた花」が上映されます



『キネマの神様』には、東京の市ヶ谷にある「テアトル銀幕」という名画座が登場します。この名画座は「イタリアの感動名画 豪華2本立て」として「ニューシネマ・パラダイス」と「ライフ・イズ・ビューティフル」を一緒に上映するような映画館ですが、小倉昭和館もまさにそんな感じなのです。ただし、「屋根裏部屋のマリアたち」とか「The Lady〜引き裂かれた花」とか「レ・ミゼラブル」とか少し前にロードショーで上映されていた作品が中心です。「The Lady〜引き裂かれた花」は5月11日からの上映ですが、アウンサウン・スーチーさんの実話映画というから、これは絶対に観なければ!

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今日は、この2本立てを観賞しました



わずか半年前の話題作が2本1000円で観れるとは、お得!
まったく、映画ファンにはこたえられませんね。わたしも、高校生の頃からよくお世話になりました。今日も、「ワケあり人生生きてます! 2本立て」と銘打って、「グッモーエビアン!」と「まほろ駅前多田便利軒」という邦画がペア上映されていました。そんな映画をわたしはまったく知りませんでしたし、また別に観たいとも思わなかったのですが、観てみると、これが2本とも素晴らしい名作でした。ほんとに。





グッモーエビアン!」は、麻生久美子大泉洋、三吉彩花らが出演するハートウォーミングなホームドラマです。かつてパンクバンドのギタリストとして鳴らしたシングルマザーとしっかり者の中学生の娘、それに海外の旅から戻ってきた超・自由人の男の物語です。原作は吉川トリコの小説で、「キズモモ。」の山本透が監督を務めています。
麻生久美子大泉洋もなかなかの名演技なのですが、この映画、とにかく三吉彩花がムチャクチャかわいかった! 
吉高由里子と成海璃子を足して2で割って、さらにキュートにした感じ。顔は美形ですし、スタイルは抜群、加えて演技力もあります。まだ16歳とのことですが、こんな素晴らしい才能が日本映画界にいたとは初めて知りました。10年後には、間違いなく映画界を代表する女優になっていると思います。




それから「まほろ駅前多田便利軒」も、ハートウォーミングな人間ドラマでした。三浦しをんの直木賞受賞小説が原作で、彼女の作品は「風が強く吹いている」や現在上映中の「舟を編む」も映画化されています。監督は、「ゲルマニウムの夜」「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」の大森立嗣です。主人公の便利屋を瑛太と松田龍平が演じており、ワケありの客たちとの出会いとエピソードが綴られていきます。また、出演している麿赤兒の存在感がハンパではありませんでした。そういえば、「グッモーエビアン!」には麿赤兒の息子である大森南朗が出演していました。三國連太郎亡き今、日本映画界を代表する親子であると言えるでしょう。



グッモーエビアン!」も「まほろ駅前多田便利軒」も、ともにユーモア満点で大いに笑わせてくれました。それでいて、観終わった後は、家族や生きることの意味を考えさせられる名作でした。特に、両作品とも「子ども」が大きなテーマとなっており、子どもの苦悩、子どもの絶望、そして子どもの希望というものが描かれていました。わたしの涙腺は、もちろん緩みましたとも。「グッモーエビアン!」に登場する女子中学生が必死に生きる姿は、わたしの次女の姿と重なってきて、しんみりしてしまいました。まさに「こどもの日」に観る作品として、これ以上の2本立てはなかったと思います。



これも、すべて小倉昭和館のおかげです。この名画座を訪れなければ、わたしは絶対にこの2本を観なかったと思います。ネットや情報誌だけでなく、映画館そのものが知らない名画を教えてくれるということもあるのです。こんな素晴らしい映画館が小倉に残っていてくれることに感謝するとともに、これからも残り続けてくれることを心から願っています。今月18日には、『キネマの神様』の著者である原田マハさんが小倉で講演をされますが、ぜひ原田さんに小倉昭和館のことをお話ししたいと思います。

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「こどもの日」に「小倉昭和館」の前で



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年5月5日 一条真也