島田裕巳氏と葬儀について語り合う

一条真也です。
お盆休みも終わりですね。みなさんは、お墓参りには行かれましたか?
さて、わたしはNIKKEI STYLE「一条真也の人生の修め方」というコラムを連載しています。第38回目となるコラムが本日アップされました。


「島田裕巳氏と葬儀について語り合う」



今回のタイトルは、「島田裕巳氏と葬儀について語り合う」です。
ゴッドファーザーのような島田氏、健さんみたいなわたしのイラストが洒落ています。このイラストレーターさん、どうしてこんなに才能あるの?(笑)
そうです、わたしは宗教学者島田裕巳氏と対談したのです。島田氏との共著『お葬式を問う』(仮題、三五館)の巻末企画です。これまで往復書簡の形で「葬儀」をテーマに何通か手紙のやりとりをしてから、最後に両者で対談しました。かつて、わたしは島田氏の『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)というベストセラーに対し、『葬式は必要!』(双葉新書)を書きました。それから5年後、再び島田氏の著書『0葬』に対抗して本書『永遠葬』を執筆しました。島田氏は葬式無用論の代表的論者として有名ですが、わたしは葬式必要論者の代表のように見られます。そんな2人が共著を出すということに驚く人も多いでしょう。



対談は東京の六本木ヒルズ49階にある「アカデミーヒルズ」で行われました。当日、宿泊していた赤坂見附のホテルからタクシーで六本木に向かったのですが、1週間前、ぎっくり腰になってしまったわたしは、腰にコルセットを強く巻きました。まるで、往年の東映ヤクザ映画で高倉健さん演じる主人公が殴り込みをする前に腹にサラシを巻くような感じでしたね。そのサラシの中にはドスを隠しているわけですが・・・・・・。



島田氏とは意見の一致も多々あり、まことに有意義な時間を過ごすことができました。当事者のわたしが言うのも何ですが、理想的な議論が実現したのではないかと思います。けっしてなれ合いではなく、ときには火花を散らしながら、ある目的地に向かっていく。今後の日本人の葬送儀礼について、じつに意義深い対談となったように思います。島田氏から「もちろん、葬式は必要ですよ」「結婚式はもっと必要ですよ」との言葉も聞くことができて、大満足です。対談を終えて、わたしは「葬儀は人類の存在基盤である」という持論が間違っていないことを再確認しました。その詳しい内容はここには書きませんが、10月刊行予定の島田裕巳一条真也著『お葬式を問う』(仮題、三五館)をぜひお読み下さい。



なお、第39回目のアップは8月30日(火)を予定しています。
タイトルは、「老年期は実りの秋である!」です。わたしは50代の前半ですが、若い頃と違って暑さが体にこたえます。昔は夏が好きだったのですが、今では嫌いになりました。四季の中では、秋が好きです。古代中国の思想では人生を四季にたとえ、五行説による色がそれぞれ与えられていました。すなわち、「玄冬」「青春」「朱夏」「白秋」です。また古代インドでは、人間の一生を「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期」の四つの段階に分けて考えました。いずれも、老年期を人生の中で最も豊かな「実りの秋」ととらえました。次回はそんなことを書きます。どうぞ、お楽しみに!



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2016年8月16日 一条真也

「秘密 THE TOP SECRET」

一条真也です。
今年のお盆の期間は小倉にいました。ずっと執筆や校正作業に専念していましたが、ひと息ついたので、久々に映画を観に行きました。
日本映画「秘密 THE TOP SECRET」です。
ネットでの評価がかなり低いので不安はありましたが、「死者の脳に残された過去の記憶を映像化」するというアイデアに惹かれたのです。


ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。
「『月の子 MOON CHILD』などで知られる清水玲子の人気コミックを実写化したサスペンスミステリー。死者の脳に残された過去の記憶を映像化できるスキャナーを駆使する警察の捜査メンバーが、謎に満ちた猟奇事件の真相を追う。メガホンを取るのは、『るろうに剣心』シリーズなどの大友啓史。『グラスホッパー』などの生田斗真、『ストレイヤーズ・クロニクル』などの岡田将生をはじめ、栗山千明大森南朋松坂桃李ら豪華な顔ぶれがそろう。二転三転する展開はもちろん、俳優たちが繰り出す妙演にも注目」


また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。
「死者の脳をスキャンし、生前の記憶を映像化するMRIスキャナーが開発される。同システムを導入した第九こと科学警察研究所法医第九研究室が組織され、室長・薪剛(生田斗真)の指揮のもとでさまざまな難事件が捜査されることに。第九に配属されたばかりの青木(岡田将生)をはじめとする捜査官たちは、家族を殺害し死刑を執行された男の脳をスキャニング。事件発生時から行方不明になっている、彼の娘・絹子がナイフを手にした姿を捉えた映像を目にした彼らは・・・・・・」


140分間、退屈せずに一気に観ました



T・ジョイリバーウォーク北九州で鑑賞したのですが、上映されていたブログ「シン・ゴジラ」ブログ「ファインディング・ドリー」ブログ「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」ブログ「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」などはすでに観ていました。残りの上映作品の中で一番面白そうなのが「秘密 THE TOP SECRET」だったのです。
ネットでは低評価でしたが、なかなか面白い映画でした。140分の作品でしたが、まったく退屈せずに最後まで一気に観ることができました。


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ネットでは「原作コミックの素晴らしさを台無しにした」みたいなコメントが多かったですが、わたしは原作を読んでいません。そのせいか、ストーリー展開を追うのに戸惑うことが多々ありました。おそらく脚本が説明不足なのだと思います。「おいおい」と突っ込みを入れたくなるような場面も多く、せっかくの面白い素材が「もったいない」と思いました。「もったいない」といえば、豪華な俳優陣はいずれも素晴らしい演技でした。


生田斗真岡田将生松坂桃李のイケメン・トリオも良かったです。最近、生田斗真が主演した「予告犯」をWOWOWで観たのですが、これが意外に良くて、彼のファンになりました。岡田将生は、ブログ「想いのこし」で紹介した映画での役のイメージとはうって変ってエリート役をうまく演じていました。松坂桃李は、 ブログ「日本のいちばん長い日」で演じた終戦に反対するクーデターを画策した若手将校のイメージが強かったのですが、「秘密 THE TOP SECRET」でもある意味でエキセントリックな狂気に満ちた役を熱演していました。「日本のいちばん長い日」は昨年の今頃観ましたが、あれからもう1年が経ったのですね・・・・・・。


エリート刑事を演じた岡田将生

解剖医を演じた栗山千明



解剖医を演じた栗山千明も熱演でした。
彼女を見ると、どうもNHKの「幻解!超常ファイル」を連想してしまいます。わたしは彼女がナビゲーターを務めるこの番組の大ファンなのですが、オンエアではなく「NHKオンデマンド」で全部観ています。
それから、大森南朋もクズ刑事を熱演していましたね。
この人は、本当に演技がうまい。香川照之と双璧ではないでしょうか。
あと、リリー・フランキーの役どころはよくわかりませんでしたね。
怪しさだけはよく伝わってきましたが・・・・・・。


クズ刑事を演じた大森南朋

狼男を演じさせてみたい!



殺人鬼を演じた吉川晃司は存在感がハンパなかったです。彼が催眠術のルーツとされるメスメリズムを使って人々を洗脳する場面が出てきましたが、中途半端な描写に終っていました。あのへんの洗脳とか自己啓発セミナーの闇をもっと描けばホラー映画の要素も加味され、かつての「CURE」や「催眠」のような傑作に近づけたのではないかと思います。
秘密 THE TOP SECRET」を観て、わたしは吉川晃司にフランケンシュタインのモンスターを演じさせたら面白いと思いました。きっと、哀愁に満ちた極上のモンスターが生まれることでしょう。あと、生田斗真は吸血鬼ドラキュラ、大森南朋は狼男が似合いそう!(笑)


死者の脳を切り開く!

死者の脳内を覗き見た結果・・・・・・



吉川晃司扮する殺人鬼は死刑執行後に脳をスキャンされます。
彼の脳内を画像として見た人々は次々に自殺するという異常事態になりますが、その画像に込められた「秘密」は正直、大したことないというか、「自殺するほどの内容か?」と思いました。「死者の脳に残された過去の記憶を映像化」するというアイデア自体はとても興味深いですね。


わたしは、最近読んだある本の内容を連想しました。
ファンタスマゴリア―光学と幻想文学』(ありな書房)を書いたマックス・ミルネールによると、1865年にアメリカのある新聞が「法医学に対する写真術の新しい活用法が発見された。殺害された人間の網膜をダゲレ オタイプ(銀板写真)で撮影すると、襲いかかった犯人の映像が再現できた――」という内容の記事を載せたそうです。


心霊ドキュメンタリー読本 (映画秘宝COLLECTION)

心霊ドキュメンタリー読本 (映画秘宝COLLECTION)

  • 作者:小池 壮彦
  • 発売日: 2016/05/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

このマックス・ミルネールが紹介した記事について、小池壮彦氏は著書『心霊ドキュメンタリー読本』(洋泉社)において以下のように述べています。
「殺された人間の目が、死の直前に発せられた何かの力によって、犯人の姿を記録していることがわかったというのだ。そこで被害者の網膜を写真に撮ることで、死者の目撃した最後の映像を再現することに成功したと。文学者がこのニュースに触発されて小説のネタに取り入れたそうだが、一般的にもなんだかありそうな話と受けとめられたようである」


秘密 THE TOP SECRET」を観た前夜、わたしは自宅で2本の映画をDVDで鑑賞しました。1つは、「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」です。2012年のイギリス映画ですが、「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフが主演しています。彼がイギリスの田舎町にある古ぼけた館で黒衣の女の亡霊を見るというゴシック・ホラーなのですが、自分が見たものが「幻覚」か「実像」かと悩むシーンがリアルでした。また、子どもがたくさん死ぬのですが、彼らは死ぬ前にみんな黒衣の女の姿を見たことになっています。「秘密 THE TOP SECRET」では、死ぬ前の人間が幻覚として見たものも脳内には視覚情報として記録されると説明される場面がありましたが、そのとおりならば、死んだ子どもたちの脳をスキャンすれば、すべての最後の脳内画像には黒衣の女が映っているはずです。


もう1つの映画は、「ブラック・ハッカー」です。こちらは2014年のアメリカ映画で、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのイライジャ・ウッドが主演しています。「覗き」というという甘美な誘惑から始まる、官能と戦慄のサスペンス・スリラーですが、パソコン1台で他人のパソコンもスマホも自宅もホテルの客室もすべて覗き、盗撮できる最新のIT技術に驚くばかりです。思ったのですが、他人のPCやスマホの内容を見放題というのは、その人脳内を覗き見していることに限りなく近いのではないでしょうか。
ということで、「ブラック・ハッカー」も「秘密 THE TOP SECRET」の世界に通じているのです。こうして、ダニエル・ラドクリフイライジャ・ウッド生田斗真岡田将生松坂桃李という日米英のお気に入り俳優が仲良くつながって、わたしはニヤリと笑うのでした。なんのこっちゃ?(笑)



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2016年8月16日 一条真也