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佐久間庸和の天下布礼日記

2013-04-04

ファンタジーの旅



2008年の8月にイギリスに行きました。イギリスといえば、『ピーター・パン』『ピーター・ラビット』『くまのプーさん』『指輪物語』『ナルニア国物語』・・・・・数多くのファンタジー作品を生んだ国です。そう、この旅は「ファンタジーの旅」でした。

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シェイクスピアの生家で
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まるで、わたしが妖精のようです



ファンタジーには妖精の存在が欠かせませんが、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』に出てくる妖精こそ、その代表格でしょう。イギリス訪問時にはストラットフォードにあるシェイクスピアの生家を訪れることができたのも大きな収穫でした。
また、シェイクスピア夫人のアン・ハサウェイの生家の庭は見事なものでした。近年、この家はイングリッシュ・ガーデンの聖地となっています。ちょうどこの頃、わたしは『花をたのしむ』(現代書林)という本を書いていました。ですので、コッツウォールズ地方のさまざまな名庭を訪れ、花の洪水を浴びました。とても楽しかったです。

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キングス・クロス駅のホームで
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ホグワーツへのプラットフォーム
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クライスト・チャーチは「ホグワーツ」のモデル



21世紀におけるファンタジー界の大事件といえば、なんといっても『ハリー・ポッター』シリーズの登場です。この全世界で3億冊以上も読まれたという新時代のファンタジーはすでに古典の風格さえあり、島田裕巳氏のように「現代の聖書」と呼ぶ人さえいます。この作品が歴史的ベストセラーになった原因について、わたしも色々と考えましたが、最大の要因として「ホグワーツ魔法魔術学校」の存在があると思います。
魔女や魔法使いになるために教育を受けなければならないという設定は非常に説得力があります。わたしも「ホグワーツ魔法魔術学校」に入学したいと思い立ち、イギリスではロンドンのキングス・クロス駅にある例のプラットフォームから学校に向かいました。実際のホグワーツのモデルは、オックスフォードにある「クライスト・チャーチ」です。
ここは、かの『不思議の国のアリス』を書いたルイス・キャロルことチャールズ・ドジソンが数学の教授として勤務していたことでも有名です。

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下ノ畑ニ居リマス
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宮沢賢治記念館にて
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よだかの星」のレリーフの前で
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「月夜のでんしんばしら」のオブジェの前で
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銀河鉄道の停車場にて



日本が誇るファンタジー作家といえば、宮沢賢治です。
彼の偉大な足跡を尋ねて数年前に岩手県の花巻に行ってきました。花巻を訪れたのは2回目だったのですが、2回とも羅須地人協会に使われた「賢治の学校」(花巻農業高校内の建物)、「宮沢賢治記念館」、「宮沢賢治童話村」などを訪問しました。
学校には「下ノ畑ニ居リマス」と書かれた看板が掲げられています。また、童話村には『よだかの星』のレリーフや『月夜のでんしんばしら』のオブジェ、さらには『銀河鉄道の夜』に登場する停車場などもあります。
ブログ『銀河鉄道の夜』にも書いたように、この物語は高い霊能力をもっていた賢治が書いた大いなる臨死体験の物語であると思います。死が霊的な宇宙旅行であり、死者の魂は宇宙へ帰ってゆくという真実をうまく表現しています。
さらに何よりも重要なことは、ジョバンニが死後の世界からの帰還後、「ほんとうの幸福」に気づいて、その追求を決意する点です。それは、賢治が影響を受けたというメーテルリンクの『青い鳥』のチルチルとミチルの気づきと同じでした。
「死」について説明するとき、「宗教」や「哲学」や「科学」という方法があります。でも、その他に「物語」という方法があることを『銀河鉄道の夜』は教えてくれます。読者は、この物語によって「死とは何か」を知るでしょう。

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「幸福」と「死」を考える、大人の童話の読み方
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『銀河鉄道の夜』から『星の王子さま』へ・・・・・



わたしは、『涙は世界で一番小さな海』(三五館)という本を書きました。
「『幸福』と『死』を考える、大人の童話の読み方」というサブタイトルがついています。この本で、わたしは『人魚姫』『マッチ売りの少女』『青い鳥』『銀河鉄道の夜』『星の王子さま』の5つの物語は、じつは1つにつながっていたと述べました。
アンデルセン、メーテルリンク、宮沢賢治、サン=テグジュペリの4人の作品には、非常に普遍性の高いメッセージがあふれていると考えています。いわば、「人類の普遍思想」のようなものが彼らのファンタジー作品には流れているように思います。
わたしは特に、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』とほぼ同時期にサン=テグジュぺリが『星の王子さま』を書いたことに注目しました。両方とも、幸せを求めて星々をめぐる物語です。両作品のメッセージは見事につながっています。

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星の王子さまミュージアムの入口
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念願の訪問を果たしました



ブログ『星の王子さま』にも書きましたが、宮沢賢治やサン=テグジュぺリといったハートフル・ファンタジー作家たちは「死」や「死後」や「再会」を描いて、わたしたちの心の不安をやさしく溶かしてくれます。それと同時に、生きているときには良い人間関係をつくることの大切さを説いているのではないでしょうか。わたしは、ハートフル・ファンタジーを求めて、箱根にある「星の王子さまミュージアム」を訪ねました。

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王子さまのモニュメントの前で
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街灯夫のモニュメントの前で



王子さまは、自分の星を出てから6つの星を旅しました。
訪ねた星を順番に並べると、王さまの星、うぬぼれ男の星、呑み助の星、実業家の星、点灯夫の星、そして最後に地理学者の星でした。これら6つの星の住人たちは基本的にナルシストで他人のことなど気にせず、自分自身に酔っています。
王子さまは彼らと友だちにはなりたくないなと思いますが、1人だけ例外がいました。夜と昼のめまぐるしい交代に合わせて休み泣く街頭の灯を点けたり消したりする点灯夫です。『星の王子さま』には、こう書かれています。
「点灯夫が街灯に灯をともすとき、それはまるで彼が新しい星や一輪の花を誕生させたかのようです。彼が街灯の灯を消すときに、その花も星も眠ります。これはとても素敵な仕事です。素敵だから本当に役に立つのです」
わたしはこの言葉が大好きで、よく社員にも話します。新入社員には必ず話します。
わが社は接客サービス業ですが、お客さまに接する現場のスタッフも、総務や経理などの現場を裏でサポートするスタッフも、ともに本当に役に立つ素敵な仕事をしているのだということを説明します。王子さまも、役に立つ素敵な仕事をしているから点灯夫に好意を抱き、友だちになってもよいと思ったのです。
星の王子さまミュージアム」には、点灯夫のモニュメントがあります。

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『星の王子さま』から『ハリー・ポッター』へ・・・・・



そして、『星の王子さま』には「大切なものは目には見えない」という有名な言葉が登場します。名言ブログ「サン=テグジュぺリ(1)」でも、詳しく紹介しました。
本当に大切なものとは、思いやり・感謝・感動・癒し、といった「こころ」の働きに他なりません。そして、わたしはホテルや冠婚葬祭などの接客サービス業とは、挨拶・お辞儀・笑顔・愛語などの魔法によって、それを目に見える形にできる存在ではないかと思うのです。もちろん、それらのホスピタリティ・スキルを身につけるのには教育と自らの訓練が必要になります。
わたしは常々、接客サービス業に携わる人間とはホグワーツ魔法学校で教えるような「魔法使い」をめざすべきだと言っています。魔法使いになるのは教育と訓練が必要だからです。
それにしても、1943年に書かれた『星の王子さま』で示された「本当に大切なもの」が、ちょうど50年後の1993年に書かれた『ハリー・ポッター』の方法論で目に見える形になるなんて、なんと素敵なことでしょうか!


涙は世界で一番小さな海―「幸福」と「死」を考える、大人の童話の読み方

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*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年4月4日 佐久間庸和