Hatena::ブログ(Diary)

佐久間庸和の天下布礼日記

2013-05-24

スウェデンボルグ(1)





夫婦は一人の天使である




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、17世紀にスウェーデンで生まれた偉大な神秘主義者であるエマニュエル・スウェデンボルグの言葉です。巨大な霊能力の持ち主としてあまりにも有名な彼は、科学者としても超一流でありながら、人生の後半以降を霊的研究にすべてを捧げ、他に例のない独自の哲学、人間観、宗教思想をつくりあげた人物です。誰も開かなかった巨大な地平線を人類の前に開いてみせたのがスウェデンボルグでした。




彼は生きているあいだ、人類に許されたすべての知識をものにし、ヨーロッパ最大の学者とされていました。その一方で、不思議な霊能力者として当時のヨーロッパ全土を震憾させ、同時代の大哲学者カントに『霊視者の夢』という評伝を書かせたのも彼でした。わが国で知られているスウェデンボルグは、いながらにして外国のことが見えたり、死者と話をして死者だけが知る秘密を語る人、いわば超能力の巨人として評価されているようです。たしかに彼は、そういう能力によって霊の世界を探究し、そこから独持の宗教や哲学をつくりあげています。しかし本人は、この能力自体は誰にでもある、ごく平凡な能力だとして、自分のそういう能力のことだけが問題にされることに苦笑していました。



神秘主義者である以前に科学者であった彼は、数学をはじめとして実に20の学問分野で、150冊もの大著を書いています。そのエネルギーの量も大変なものですが、彼の本当の価値はエネルギーの質にあり、それゆえ生存中からカントやゲーテをはじめ、さまざまな分野の碩学たちに大きな影響を与えてきましたし、その影響は現代にも及んでいます。
20世紀の多くのノーベル賞学者がスウェデンボルグの物理学、生理学、医学などの業績に舌を巻いています。また、彼の思想のなかにはすべての思想が包含されているとして、生涯傾倒したストリンドベリをはじめ、ドストエフスキーなど多くの世界的文学者、思想家が影響を受けました。明治の末年に彼の業績や著作を日本に紹介し、自ら日本スウェデンボルグ協会の会長を務めた国際的禅学者・鈴木大拙などもその1人でした。科学にも精通していたアメリカの哲学的思想家で詩人のエマーソンは、スウェデンボルグを「北欧のアリストテレス」と賞讃し、同時にその著書のいくつかを「真に人類の宝」と評価しています。




そんな精神界の巨人であったスウェデンボルグは、真の結婚の霊的な秘密を知ったといわれています。1768年、彼はアムステルダムで結婚の問題を扱った大著『結婚愛』を出版しました。同書で主に論じられているものは結婚の道徳などではありません。彼の他の著書と同じく、枝葉の問題よりも根元の問題が論じられているのです。彼は真の結婚愛の起源と性質とを詳細に論じており、真の結婚愛は天国と地上の根元的愛であり、そこから他のすべての喜びが流れ出ていると言っています。ちょうど甘美な水がその源泉から流れ出るように・・・・・。



今ではこの愛はきわめて乏しく、そのために、人々は天使たちの口から結婚愛について学ばなくてはなりません。天使たちのみが、その中にいるからです。この愛の起源は霊的で神的なものであるため、他のあらゆる人間の愛にも勝って純潔なものです。そして、それは主における神の愛と神の知恵の結合から発しています。
最古代の人々のもとでは、それは「愛の中の愛」そのものでした。真の結婚愛の残り火のみしか地上に残っていないのは、結婚はもはや永遠のものとしては認められていないためです。結婚における永遠のものが考えられないなら、その主要な砦は破壊され、その結果、真に婚姻的な愛は地上から死滅してしまうのです。



『結婚愛』には、天国における男性の天使と女性の天使とのあいだに見られる真の婚姻愛の性質が詳しく論じられていますが、天界に結婚が存在しているという考えは実は現代のキリスト教会の教義とは真向から対立するのです。
なぜなら現代のキリスト教の教義は「マタイ伝」22章30節の「復活のときは人間は結婚もしないし、嫁ぎもしないし、天にいる神の天使たちのようになるからである」という主の聖言を楯にして、天国では結婚はありえないと主張するからです。しかし主はこの聖言をただ文字の意義においてのみ語っているのではありません。



この世の結婚は「外なる人における結婚」であって、「感覚を主体とした結婚」です。一方、天国の結婚は「内なる人の結婚」であり、「精神を主体とした結婚」です。スウェデンボルグは、天国の天使たちの身体は、その内なる人、「精神」の完全な具象化であり、最高の天国の天使たちの身体はその内部までも光に満ち、「見るが、見ることもできないほどに輝いている」とさえ語っています。このように考えることによって、イエスの聖言である「人は復活のとき天界の天使のようになる」の意義が自ずから理解されるでしょう。
天国にいる男性の天使は女性の天使を見て、あるいは女性の天使が男性の天使を見て、互いに心を惹かれ、愛し合い、ついに結婚に至ります。その結婚は「内なる人」における相互愛である以上、それは永遠に存続し、もはやそこにはこの地上に見られるような離婚や別居は絶対にありえません。天国にのみ「真の、永遠の夫婦愛」が見られるのです。



それでは「真の夫婦愛」の本質とは何か?
スウェデンボルグは次のように説きます。
天国では、夫は知性と呼ばれる心の部分を代表し、妻は意志と呼ばれる部分を代表している。この和合はもともと人の内心に起こるもので、それが身体の低い部分に下ってくる時に知覚され、愛として感じられるのである。そしてこの愛は「婚姻」の愛と呼ばれる。両性の天使は身体的にも結ばれて1つになる。つまり天国にあっては、夫婦は2人の天使ではなくて1人の天使である、と。これが天国の天使たちの「真の結婚愛」だと言うのです。



実際、スウェデンボルグは天国から彼のところへ1組の夫婦がやって来るというヴィジョンを見ています。そこで、その夫婦は2人に見えはしたけれども、1人の天使のようでした。なぜなら、2人は完全にお互いを補い合っていたからだと述べています。
また、1人の天使に案内されて天国のテントのなかに入ったとき、そこには夫婦が住んでいました。スウェデンボルグは天国の結婚について知りたいと思っていたので、2人の顔や様子を代わるがわる見比べ、それからこう言いました。
「あなた方2人は、1人ですね」



これに対して、男性が「その通りです。われわれは1人です。妻の生命は私の中にあり、私の生命は妻の中にあります。身体は2つでも、霊魂は1つです。われわれの結びつきは、胸の中にある心臓と肺という2つの神の居所が2つに結びついているようなものです。妻は私の心臓で、私は妻の肺なのです」と答えました。

まさに男性も女性も超えた魂の結びつき。真の結婚とは、「結魂」なのです。なお、スウェデンボルグの今回の名言は『結魂論〜なぜ人は結婚するのか』(成甲書房)でも登場します。

結魂論―なぜ人は結婚するのか

結魂論―なぜ人は結婚するのか



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年5月24日  佐久間庸和