おもてなし講演

神無月晦日となる10月31日、「おもてなし」についての講演を行いました。
わたしが理事を務める公益社団法人 北九州市観光協会が推進する「百万にこにこホスピタリティ運動」が20周年を迎え、「ホスピタリティ表彰式」が行われました。その記念講演です。表彰式および講演会の会場は、リーガロイヤルホテル小倉でした。


リーガロイヤルホテル小倉の久富総支配人と

北九州市観光協会田中会長と



到着すると、講師控室が用意されていました。そこで、リーガロイヤルホテル小倉の久富拓取締役総支配人にお会いしました。わたしが出されたお茶を飲んでいると、観光協会田中会長が控室までわざわざ御挨拶に来て下さいました。


「ホスピタリティ表彰式」のようす

挨拶をする田中会

松柏園ホテルの2人が受賞しました



もともと「百万にこにこホスピタリティ運動」は、サンレーグループ佐久間進会長が北九州市観光協会の会長を務めていた時代に発案、開始したものです。
ブログ「観光協会総会」で紹介したように、今年6月5日、北九州市観光協会の新会長に田中亮一郎副会長(第一交通社長)が就任されました。
ブログ「観光振興大会」で紹介した全国商工会議所の観光イベントが2011年11月24日に北九州市で開催されましたが、史上空前の1700人以上が参集しました。「北九州のおもてなしに全国の人たちが満足された」と、大きな話題になりました。当日のパネル・ディスカッションでは、田中社長とわたしが北九州代表で共演させていただきました。その田中社長が観光協会の会長になられて、わたしは感無量でした。この日の記念式典では、最初に田中会長が挨拶をされました。また「ホスピタリティ表彰式」では松柏園ホテルの塚野優子さんと軸丸葉子さんの2人が「ホスピタリティ賞」を受賞しました。おめでとうございます!


わたしが講師として登壇しました

「おもてなし」について語りました

特別講演会のようす

1ハートフル」について

心豊かな人生のために

ホスピタリティと礼

礼の心で「おもてなし」



それから特別記念講演の時間となり、わたしが登壇しました。
わたしは、「おもてなし〜ジャパニーズ・ホスピタリティ〜」と題した講演を行いました。
最初に、わたしのキーワードでもある「1ハートフル」について説明しました。また、「心豊かな人生のために」「ホスピタリティと礼」「礼の心でおもてなし」などについて話しました。


「おもてなし」の意味とは何か



それから、「おもてなし」の意味について話しました。
「おもてなし」という言葉には2つの意味があるとされています。
基本的には茶事や懐石料理における「おもてなし」ですが、次の2つです。
1.モノを持って成し遂げる → お客様を待遇すること
2.表裏なし → 表裏のないココロでお客様をお迎えすること
この場合のモノとは、季節感のある生花、お客様に合わせた掛け軸、絵、茶器などです。ココロとは、言葉や表情や仕草に表れます。つまりは、「おもてなし」とは、相手を思いやり、相手を喜ばそうという気持ちの表現であり、まさに「ハートフル」に通じるのです。


「おもてなし」の源流として「神饌」を紹介



もともと「おもてなし」の心は、言葉を交さなくても相手の気持ちを「察する」ことにあり、そのルーツは神道の「神祭」にあります。ブログ『本当はすごい神道』で紹介した本では、神道研究家の山村明義氏が以下のように述べています。 
「『神祭(しんさい)』は、自然の厳かな雰囲気など目に見えない貴いとされる神々、あるいは太古の昔から人々に畏れられた自然の脅威や、その自然からの恵みを大切に敬う精神性に基づいています。そもそもは、その人がもっとも大切だと思うものに何かを差し上げることが『まつり』の意味のひとつなのです。その場合には、神聖な場所において魂と心を込めて作った食べ物や、『幣帛(へいはく)』という絹布などを神様に差し上げるための『神祭』が執り行われます。これが日本人の『おもてなし』の原型にあるのです」 
なるほど、「おもてなし」の心は、「まつり」から生まれたわけですね。ならば2020年、オリンピックという「地球まつり」において、日本人がそのような「おもてなし」を世界に示すのか。それを考えると、今からワクワクしてしまいます。


「おもてなし」の源流は「神祭」にあり!



「おもてなし」の心は、「察する」という心の手法に長けた日本人が育ててきたものです。
山村氏は、続けて次のようにも述べています。
「日本人には、取り立てて相手が口に出していわなくても、自分が『察する』、『気づく』という心の手法を使って、何かをしてあげたいという気持ちを抱く人が多いものです。これが世界でも高く評価されているのです。つまり、『目には見えなくても、思いやりや、相手をいたわる心はわかる』というのが日本人であり、これは、キリスト教の神(God)とは異なる神(kami)を大切にするところから来ています。日本人が元来、目には見えないコミュニケーションの仕方がとても上手な民族なのは、神道の『自然に対して真摯に向き合う』という精神性があるからなのです」


「おもてなし」はジャパニーズ・ホスピタリティ!



また、「おもてなし」には三位一体としての「もてなし」「しつらい」「ふるまい」があります。
「もてなし」とは、わざわざ足を運んでいただいたお客様に、できるだけ満足して帰っていただくための迎える側の心構えです。また、「しつらい」とは。季節や趣向に合わせて、部屋を調度や花などの飾り付けで整えることで、「室礼」とも書きます。そして、「ふるまい」とは、TPOや趣向にふさわしい身のこなしをすることです。


「礼法」についても説明しました

「礼」の重要性を訴えました

相手の身になって行動する



そして、わたしは小倉ゆかりの小笠原流礼法の話をしました。
小笠原流礼法は、「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つの心に支えられています。礼法とは「人間関係の潤滑油」にして「最強の護身術」でもあります。
相手のことを思いやる「こころ」のエネルギーを「かたち」にして、現実の人間関係に変化を及ぼす「魔法」でもあります。そのルーツは、古代中国で孔子が説いた「礼」にあります。
そんなことを説明した後、「相手の身になって行動する」として、具体的な「おもてなしエピソード」を色々お話しました。


「観光」とは何かを述べました

慈礼」というコンセプトを提唱しました



「観光」という言葉についても話しました。「おもてなし」が集約されるのが「観光」です。
「観光」とはもともと中国古典の『書経』にある言葉で、「その国の光を観ること」ですが、「観光の三物」として「風物」「産物」「人物」があり、これらすべてを魅力的にする必要があります。
「観光」で大切となるのが「おもてなし」の心です。それには、慈しみのある人間尊重の心としての「慈礼」が大切になります。


観光は究極の平和産業である!



最後に「世界平和パゴダ」の話をしながら、「観光は究極の平和産業である」と言いました。講演終了後には盛大な拍手を頂戴し、感激しました。帰り道、高齢者の方々が「今日はとても良い話を聴いたよ」と言って下さっているのが聞こえて、嬉しかったです。ホテル業の経営者を始めとした観光産業のみなさんが、わたしの講演を真剣に聴いて下さいました。


北九州市観光協会の稲富専務理事(中央)、高松事務局長(右)と



北九州市観光協会の稲富裕子専務理事、高松浩文事務局長からも「素晴らしい講演でした。ありがとうございました」との丁重なお礼の言葉を頂戴しました。
暴力追放に向けて大きな足跡を残した北九州市が、これからアジアを代表するような観光地になるよう、観光協会のみなさんとともに、わたしも尽力したいと思います。


本日受賞した松柏園ホテルの塚野さん(左)、軸丸さん(右)と



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年10月31日 佐久間庸和