道徳セミナー


バレンタインデーの今日、ブログ「道徳セミナーのお知らせ」で紹介した講演を行いました。テーマは「『論語』に学ぶ人の道」で、場所は北九州市立若松図書館です。


若松図書館前のバス停から若戸大橋が見えました

若松図書館の入口前で

案内チラシが掲げられていました

明るくて素敵な図書館でした



本年より若松図書館が主催する「道徳」に関するセミナーが開催されますが、「古来、日本人が持っている美徳、地域での相互の助け合いなど、近年、失われつつある道徳観を再度見直していく機会を持ちたい」という高邁な目的で企画されたと伺いました。わたしもこれまで企業や大学など、多くのの方々の前で講演させていただいたことはあります。それでも、今回のセミナーは「道徳」について考えるという真摯な企画であり、身の引き締まる思いです。初めて訪れた若松図書館はとても明るくて、素敵な場所でした。


セミナーの冒頭で挨拶する原田館長



セミナーは、おかげさまで空席なしの超満員になりました。冒頭では、若松図書館の原田多賀子館長から「ネットで『論語』について検索したら、一条真也さんという方の名前をよく目にしました。この方をお呼びするにはどうしたらいいかを周囲に相談しましたところ、サンレー佐久間庸和社長と同一人物であることがわかりました。今日は、お忙しいところをわざわざお越しいただき、光栄です」と丁重な御挨拶をいただき、わたしの講演がスタートしました。


みなさん、こんにちは!

最初に、簡単な自己紹介をしました

孔子への想いを語りました


簡単な自己紹介の後、わたしは「今回の講演依頼を受け、即座に『論語』についてお話したいと考えました」と述べました。道徳とは、まさに「人の道」にほかなりません。
この「人の道」について日本人に多大な影響を与えた人物こそ、孔子ではないでしょうか。
わたしは、人類が生んだあらゆる人物の中で孔子をもっとも尊敬しています。
孔子こそは、人間が社会の中でどう生きるかを考え抜いた最大の「人間通」であると確信しています。その孔子が開いた儒教とは、ある意味で壮大な「人間関係学」です。


道徳セミナーのようす



孔子は「仁」「義」「礼」「智」といった人間の心にまつわるコンセプト群の偉大な編集者でした。彼の言行録である『論語』は千数百年にわたって、わたしたちの先祖に読みつがれてきました。意識するしないにかかわらず、これほど日本人の心に大きな影響を与えてきた書物は存在しません。特に江戸時代になって徳川幕府儒学を奨励するようになると、教養の中心となりました。そうして儒学は、武士階級のみならず、庶民の間にも普及したのです。


「世界の四大聖人」について



わたしは、パワーポイントを使って講演しました。
まず、孔子の人物紹介や世界史的位置づけから説明しました。
孔子は、紀元前551年に中国の山東省で生まれました。ブッダとほぼ同時期で、ソクラテスよりは八十数年早い誕生でした。孔子ブッダソクラテスにイエスを加えて、世界の「四大聖人」です。孔子は学問に励み、政治の道を志しましたが、それなりのポストに就いたのは50歳を過ぎてからでした。試みた行政改革が失敗に終わって、「徳治主義」という自らの政治的理想を実現してくれる君主を求めて、諸国を流浪したのです。


孔子を学ぶ理由とは?



春秋戦国時代の末期であった当時は、古代中国社会の変動期でした。
つねに「天」を意識して生きた孔子は、混乱した社会秩序を回復するために「礼」の必要性を痛感し、個人の社会的道徳としての「仁」が求められると考えました。多くの弟子を教えた孔子は、74歳で没します。死後、彼の言行録を弟子たちがまとめたものが『論語』です。そして、なぜ孔子を学ぶのか、その理由を説明しました。


現代日本の問題点について

人間と人間学について



それから現代日本に話題を移し、「無縁社会」の話をしました。年間に3万2000人が無縁死し、3万人が自殺する社会に日本がなってしまった大きな原因は、血縁と地縁が弱まったことです。そして、その結果、あらゆる人間関係が希薄化しました。わたしたちが生きる社会において、最大のキーワードは「人間関係」だと思います。社会とは、つまるところ人間の集まりです。そこでは「人間」よりも「人間関係」が重要な問題になってきます。そもそも「人間」という字が、人は一人では生きてゆけない存在だということを示しています。人と人との間にあるから「人間」なのです。だからこそ、人間関係の問題は一生つきまといます。


ブックレット『論語塾』を掲げる

人は学問で成長する

親に対する礼とは



それから、ブログ『論語塾』で紹介したブックレットに沿って、具体的に『論語』の言葉を示しながら、そのエッセンスを話しました。
「人は学問で成長する」「何をするのも、まずは健康」「和とは何か」「幸せに生きるために」「友人について考える」「信用される人になろう」「リーダーになるために」「親に対する礼とは」「親の葬儀は人の道」「人生を設計する」「思いやりがすべての基本」をテーマに話しました。みなさん非常に真剣に聴いて下さり、メモを取っている方も多かったです。ちなみに『論語塾』を参加者全員にプレゼントさせていただいたところ、大変喜ばれました。


「八大徳目」についても説明



それから、「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の八大徳目についても説明しました。江戸時代の日本において、『論語』で孔子が述べた思想をエンターテインメントとして見事に表現した小説が誕生しました。滝沢馬琴が書いた『南総里見八犬伝』です。江戸の大ベストセラーになりました。その中に登場する八犬士が持っていた玉には、それぞれ「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の文字が浮かび上がりました。
この8つの文字こそ、孔子儒教思想のエッセンスとしてまとめたコンセプト群であり、わたしたち日本人が最も大切にした「人の道」のキーワードなのです。


「仁」について語りました

「義」につて語りました



本当は日本人の心の奥深くに入り込んだ「八大徳目」のすべてについてお話したかったのですが、今日は時間の関係上、「仁」と「義」について詳しく説明させていただきました。このようなスタイルで、僭越ながら「道徳とは何か」について私見を述べさせていただきました。講演終了後は盛大な拍手を頂戴し、感激しました。



最初の質問を受ける

最初の質問に答える


講演の後は、質疑応答コーナーでした。ふつう、こういった時間にはあまり質問が出ないこともあるのですが、この日は立て続けに5人も手を挙げて質問をされたので驚きました。非常に熱心な方々ばかりでした。質問の内容は「四大聖人の中で、孔子ブッダソクラテスが同時代に出現したのはなぜか」「道徳教育の導入についてそう思うか」などといったものから、「佐久間先生はそんなに『人の道』というものを目指して生きておられて辛くはないですか」といったものまでありました。その質問に対して、わたしは「『人の道』を目指さずに生きることのほうが辛いです」と述べ、「何事もバランスです。孔子は『礼楽』というものを唱えましたが、わたしもカラオケを歌ってストレスを発散しています」と答えました。


最後の質問を受ける

最後の質問に答える



最後に質問された女性は「ずっと佐久間先生のお話を伺いたいと思っておりましたが、今日はようやく願いが叶いました。本当にありがとうございました」と言って下さり、わたしの胸は熱くなりました。質問が終わった後は、再び原田館長から丁重な謝辞を頂戴しました。原田館長は「わたしは今日、本当に感動しました。素晴らしいお話でした。『人間っていいものだな』と思いました。今日はバレンタインデーですが、神様が私どもの道徳セミナーに佐久間先生を遣わして下さったのかもしれません」と言っていただき、非常に恐縮しました。


原田館長が謝辞を述べて下さいました

みなさんにお会いできて「亦た悦ばしからずや」です!



真摯な姿勢で聴かれる方が多かった講演会でした。
みなさんにお会いできて、「亦たまた悦ばしからずや」という心境でした。
また、このような機会があれば、ぜひお話ししたいと思います。
参加されたみなさんは、どうか『論語』そのものをお読み下さい。
必ず、みなさんの人生を豊かにするヒントが得られることと思います。
原田館長をはじめ、若松図書館のみなさんにはお世話になりました。


若戸大橋を背に・・・・・・



若松図書館を出たわたしは、若戸大橋がよく見える場所に向かいました。
思えば、この橋が完成した頃が北九州市の全盛期だったかもしれません。
若戸大橋を見ながら感傷に耽った後は、急いで若松から小倉に戻りました。
今夜は、わたしが副会長を務める北九州中経協主催の花火&レーザーショー「バレンタインファンタジーin北九州」が行われるのです。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年2月14日 佐久間庸和