唯葬論とは何か

18日の早朝から松柏園ホテルの神殿で月次祭を行いました。
この日は祭主である佐久間会長が不在のため、代わりにわたしが玉串奉奠を行いました。
その後、場所をホテル内のグランフローラに移して「平成心学塾」を開催しました。


本日の月次祭のようす

玉串奉奠を行いました



佐久間会長不在のため、最初からわたしが登壇しました。
わたしの持ち時間は30分というので、ブログ「30分砂時計」で紹介した砂時計を持参し、それを演壇の上に置いて話しました。砂時計の流れ落ちる砂を眺めながら、この1月から産経新聞社の終活WEB「ソナエ」で開始した新連載「一条真也のハートフル・ライフ」、および3月から 日本経済新聞電子版の「ライフ」コーナーで開始する新連載「一条真也の人生の修め方」のことを話しました。それぞれ隔週連載なので月2本づつの原稿を書くことになります。その結果、わたしの連載は月間12本ということになると述べ、「時間破産しないように頑張ります!」と宣言しました。すべては「天下布礼」のためであります。


平成心学塾のようす

30分砂時計を前に話しました



それから、2月14日・15日に開催された「みやこ紫雲閣オープン見学会」、また15日に開催された「小倉紫雲閣リニューアル見学会」の両イベントについて触れ、それぞれ動員および互助会の募集口数が目標を大いに上回ったことを報告しました。
続いて、ブログ「道徳セミナー」で紹介した14日開催の『論語』をテーマにした講演のようすを話し、道徳教育の理想としての「寺子屋」について語りました。わたしは、「平成の寺子屋」こと天道館で、いつの日か子どもたちを集めて「論語教室」を開きたいと思っています。


葬儀とは人類の存在基盤である!



論語』といえば、孔子は葬礼を何よりも重んじました。
わたしは、葬儀とは人類の存在基盤であると思っています。
約7万年前に死者を埋葬したとされるネアンデルタール人たちは「他界」の観念を知っていました。また、ブログ「抱き合う男女の埋葬遺骨」で紹介したように、最近ギリシャで約3800年前の(おそらくは)恋人たちの埋葬遺骨がディロス洞窟遺跡から発見されました。埋葬が行われた遺跡からは、さまざまな事実が明らかになります。「人類の歴史は墓場から始まった」という言葉がありますが、たしかに埋葬という行為には人類の本質が隠されています。それは、古代のピラミッドや古墳を見てもよく理解できます。


『唯葬論』の構想について語りました



わたしは人類の文明も文化も、その根底には「死者への想い」があると考えているのですが、長らく構想を温めていた『唯葬論』(仮題、三五館)の執筆をついに開始しました。世の中には「唯物論」「唯心論」をはじめ、岸田秀氏が唱えた「唯幻論」、養老孟司氏が唱えた「唯脳論」などがありますが、わたしは「唯葬論」です。結局、「唯○論」というのは、すべて「世界をどう見るか」という世界観、「人間とは何か」という人間観に関わっています。わたしは、「ホモ・フューネラル」という言葉に表現されるように人間とは「葬儀をするヒト」であり、人間のすべての営みは「葬」というコンセプトに集約されるように思います。


『唯葬論』の内容を説明しました



『唯葬論』では、第一章「怪談論」、第二章「幽霊論」、第三章「死者論」、第四章「交霊論」、第五章「葬儀論」といった章立てを考えています。
「心の時代」などと言われますが、それは主に「哲学」「芸術」「宗教」から構成されます。いずれも、肉体を超越して精神を純化させる試みであり、「死」というものが最大のテーマとなります。さらに、わたしはすべての人間の文化の根底には「死者との交流」という目的があったのではないかと推測しています。怪談もそうですが、写真や映画といったメディアも「死者への想い」から誕生したのではないかと考えています。


グリーフケア・メディアとしての写真と映画について



たとえば、写真は一般に「時間を殺す芸術」と呼ばれています。
心霊写真というものがありますが、あれはじつは19世紀の欧米の写真館がサービスで故人の遺影と遺族の写真を合成していたグリーフケア・メディアでした。
一方、映画は「時間を生け捕りにする芸術」ではないでしょうか。
そして、映画とは「死者との再会」という人類普遍の願いを実現するグリーフケア・メディアであるように思えてなりません。実際、映画を観れば、わたしが好きなヴィヴィアン・リーにだって、グレース・ケリーにだって、高倉健菅原文太にだって会えます。


イスラム国」についても述べました



話は変わって、わたしは「イスラム国」についても述べました。
イスラム国」は、人質にしていたヨルダン人パイロットのモアズ・カサスベ中尉を焼き殺しました。これを知ったわたしは、湯川さんや後藤さんの斬首刑以上の衝撃を受けました。イスラム教では火での処刑は禁じられており、火葬さえ認められていません。遺体の葬り方は、土葬が原則です。イスラム教において、死とは「一時的なもの」であり、死者は最後の審判後に肉体を持って復活すると信じているからです。また、イスラム教における「地獄」は火炎地獄のイメージであり、火葬をすれば死者に地獄の苦しみを与えることになると考えます。よって、イスラム教徒の遺体を火葬にすることは最大の侮辱となるのです。「イスラム国」は、1月20日付で火での処刑を正当化する声明を発表しています。自分たちの残虐行為を棚に上げてイスラム教を利用するご都合主義が明らかです。



大田俊寛氏という若き宗教学者がいます。わたしは、日本宗教学界の期待の新星だと思っていますが、彼は著書『オウム真理教の精神史』(春秋社)で次のように書いています。
「人間は生死を超えた『つながり』のなかに存在するため、ある人間が死んだとしても、それですべてが終わったわけではない。彼の死を看取る者たちは、意識的にせよ無意識的にせよ、そのことを感じ取る。人間が、死者の肉体をただの『ゴミ』として廃棄することができないのはそのためである。生者たちは、死者の遺体を何らかの形で保存し、死の事実を記録・記念するとともに、その生の継続を証し立てようとする。そしてそのために、人間の文化にとって不可欠である『葬儀』や『墓』の存在が要請される。そこにおいて死者は、『魂』や『霊』といった存在として、なおも生き続けると考えられるのである」


オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義

オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義

かつて大田氏は自身のHPで、わたしに次のようなコメントを寄せてくれました。
伝統仏教諸宗派が方向性を見失い、また、一部の悪徳葬祭業が『ぼったくり』を行っていることは、否定できない事実だと思います。しかしだからといって、『葬式は、要らない』という短絡的な結論に飛びついてしまえば、そこには、ナチズムの強制収容所オウム真理教で行われていた、『死体の焼却処理』という惨劇が待ちかまえているのです。社会のあり方全体を見つめ直し、人々が納得のいく弔いのあり方を考案することこそが、私たちの課題なのだと思います。とても難しいことですが」
わたしは、この大田氏の意見に深く共感します。火葬の場合なら、遺体とはあくまで「荼毘」に付されるものであり、最期の儀式なき「焼却処理」など許されないことです。


葬儀なき遺体焼却を認めません!



わたしは、葬儀という営みを抜きにして遺体を焼く行為を絶対に認めません。
かつて、ナチスやオウムが葬送儀礼を行わずに遺体を焼却しました。ナチスガス室で殺したユダヤ人を、オウムは逃亡を図った元信者を焼いたのです。しかし、「イスラム国」はなんと生きた人間をそのまま焼き殺しました。このことを知った瞬間、わたしの中で、「イスラム国」の評価が定まりました。わたしたち日本人は、通夜も告別式もせずに火葬場に直行するという「直葬」あるいは遺骨を火葬場に置いてくる「0葬」といったものがいかに危険な思想を孕んでいるかを知らなければなりません。葬儀を行わずに遺体を焼却するという行為は「人間尊重」に最も反するものであり、ナチス・オウム・イスラム国の精神に通じているのです。


先祖の話

先祖の話

それにしても、この日本で「直葬」が流行し、あろうことか「0葬」などというものが発想されようとは・・・・・・わたしは信じられない思いでいっぱいです。なぜ日本人は、ここまで「死者を軽んじる」民族に落ちぶれてしまったのでしょうか?
そんな疑問が浮かぶとき、わたしは「日本民俗学の父」と呼ばれる柳田國男の名著『先祖の話』の内容を思い出します。『先祖の話』は、敗戦の色濃い昭和20年春に書かれました。
柳田は、連日の空襲警報を聞きながら、戦死した多くの若者の魂の行方を想って、『先祖の話』を書いたといいます。日本民俗学の父である柳田の祖先観の到達点です。 
柳田がもっとも危惧し恐れたのは、敗戦後の日本社会の変遷でした。具体的に言えば、明治維新以後の急速な近代化に加えて、日本史上初めてとなる敗戦によって、日本人の「こころ」が分断されてズタズタになることでした。


柳田國男の危惧は現実のものとなった!



柳田の危惧は、それから60年以上を経て、不幸にも現実のものとなりました。
日本人の自殺、孤独死、無縁死が激増し、通夜も告別式もせずに火葬場に直行するという「直葬」も増えています。家族の絆はドロドロに溶け出し、「血縁」も「地縁」もなくなりつつあります。『葬式は、要らない』などという本がベストセラーになり、日本社会は「無縁社会」と呼ばれるまでになりました。この「無縁社会」の到来こそ、柳田がもっとも恐れていたものだったのではないでしょうか。彼は「日本人が先祖というものを忘れてしまえば、いま散っている若い命を誰が供養するのか」という悲痛な想いを抱いていたのです。


終戦70周年の今年こそ!



今年は終戦70周年の年です。日本人だけでじつに310万人もの方々が亡くなられた、あの悪夢のような戦争が終わって70年目の節目なのです。今年こそは、日本人が「死者を忘れてはいけない」「死者を軽んじてはいけない」ということを思い知る年であると思います。いま、柳田國男のメッセージを再びとらえ直し、「血縁」や「地縁」の重要性を訴え、有縁社会を再生する必要がある。わたしは、そのように痛感しています。そして、英霊たちの魂の行方を想いながら、『唯葬論』を書き上げる覚悟です。


「50周年記念企画」について説明する石田部長

「ともいき俱楽部」について説明する関野所長



わたしは、以上のような話をしました。檀上の砂時計を見ると、30分を少しばかりオーバーしたところでした。わたしの後は、サンレー企画開発部の石田部長が「50周年記念企画」および3月9日に松柏園ホテルで開催される「安倍昭恵総理夫人講演会」について、またサンレー総合研究所の関野所長が「ともいき倶楽部」の現状および今後のビジョンについての話を15分づつ行いました。佐久間会長は不在でしたが、本日の平成心学塾は塾生にとって非常に有意義な時間であったように思います。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年2月18日 佐久間庸和

金沢BFのお知らせ

いよいよ、この3月から北陸新幹線が開通します。金沢が大いに盛り上がっています。
そこで、マリエールオークパイン金沢からのお知らせです。来る2月22日(日)、ダブルリニューアル記念「総合ブライダルフェア」を開催いたします。日頃のご愛顧に感謝を込めて、マリエールオークパイン金沢の全てをご覧いただけるビッグなイベントです!



マリエールオークパイン金沢
ダブルリニューアル記念 総合ブライダルフェア
【開催日】2月22日(日)
【時 間】9:30〜19:00
     ※30組無料ご招待(完全予約制)
    《模擬披露宴&婚礼料理無料試食会》
1部 11:00〜
     2部 14:00〜
     3部 17:30〜



【内 容】☆模擬披露宴〜ウェディングをリアル体験♪
      本番さながらの披露宴を体験!
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     【時 間】15:00〜16:30
      白無垢を気軽に体験できる人気イベント!
      プロカメラマンによる撮影付きで、美しい白無垢姿を記念に残せる!



≪お申込み・お問合せ≫
マリエールオークパイン金沢
住 所:石川県金沢市北安江3−1−44
TEL:076−223−3000
ホームページはこちらから
http://marier-oakpine.com




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2015年2月18日 佐久間庸和