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佐久間庸和の天下布礼日記

2017-06-04

命  




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この記事は、当ブログの1996本目の記事です。
たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。
そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。
その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。
今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「命」です。



偉大な先哲・安岡正篤は言いました。何でもないことのようで、実は自分を知り、自力を尽くすほど難しいことはない、と。自分がどういう素質能力を天から与えられているか、それを称して「命」と呼びます。それを知るのが命を知る「知命」です。知ってそれを完全に発揮していく、すなわち自分を尽くすのが「立命」です。



『論語』の最後には、命を知らねば君子でないと書いてありますが、これはいかにも厳しく正しい言葉です。命を立て得ずとも、せめて命を知らなければ立派な人間ではありません。水から電気も出る。土から織物も薬品も出る。これは水や土の命を人間が知って、命を立てたものです。自然科学は、この点で大いなる苦心と努力を積んできましたが、命とはかくのごとく先天的に賦与されている性質能力なのです。いかようにも変化するもの、すなわち動きのとれないものではなく、動くものであるという意味において「運命」とも言います。運は「めぐる」「うごく」という文字なのです。



やはり偉大な先哲・中村天風は言いました。運命には二種類ある、と。すなわち「天命」と「宿命」です。天命は絶対で、宿命は相対的なものです。
現在、ミッション・マネジメントという言葉をよく聞きます。「ミッション」という言葉は、もともとキリスト教の布教を任務として外国に派遣される人々を意味する言葉でしたが、現在はより一般的に、何らかの任務を担って派遣される使節団やそうした任務のもの、あるいは「社会的使命」を意味するようになってきています。ミッション経営とは、社会について考えながら仕事をすることであると同時に、顧客のための仕事を通して社会に貢献することです。すなわち、顧客の背後には社会があるという意識を持つ経営です。



ミッションが企業価値を高める時代になってきました。
目の前の利益だけを追い求める企業よりも、社会的使命としてのミッションの意識を明確に持って活動する企業が顧客と社会によって高く評価され、発展していくことになります。その意味で、ミッションとは企業の命そのものと言えるでしょう。



ミッションを意識するのは、社長などのトップ・リーダーだけではありません。その企業の活動に携わる社員全員が共有すべきものがミッションです。第一生命営業調査役の柴田和子さんという女性がいます。保険セールス日本一を連続二十年以上も続け、ギネスブックにも掲載された驚くべき人です。ある年など、たった1人で444億円を売り上げたそうです。



柴田さんはこの仕事を始めるにあたって、まず保険のことを徹底的に勉強したといいます。その結果、保険というものがいかに大切かが身にしみてわかったそうです。これがないと、残された遺族はどうやって生活していけばいいのか。彼女は「保険がいかに大切なものか、私が心底思っていることを一生懸命説明するだけです」と語っています。



柴田さんは、顧客の家族構成を頭に入れていて、あらゆるケースを想定して保険の必要性を説くといいます。ふさわしい商品がない場合は、会社に掛け合って、その家族向けの商品を自分で設計するそうです。「私はつねに正しいことをしているという確信がありますから、お客様に自信を持って保険をすすめることができます」と断言する彼女は、自らの仕事に大いなる社会的使命を感じているのです。



ドラッカーは「仕事に価値を与えよ」と述べていますが、これはとりもなおさず、その仕事の持つミッションに気づくということにほかなりません。わが社は冠婚葬祭業を営む企業ですが、わたしは、この仕事くらい価値のある仕事はないと心の底から思っています。2001年10月の社長就任以来、「冠婚葬祭業とは哲学産業であり、芸術産業であり、宗教産業である」とずっと社員に訴えてきました。また、「結婚は最高の平和である」と「死は最大の平等である」を二大テーゼに、結婚式や葬儀の1件1件が実は人類の「平和」「平等」の実現につながっているのだと説いてきました。



ミッションを明確に成文化して述べることを「ミッション・ステートメント」といいます。わが社では、2001年11月18日の36回目の創立記念日より、「S2M宣言」を導入し、大ミッションを「人間尊重」、小ミッションを「冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをする」と定めました。具体的なステートメントとして、まず、「サンレー・トゥー・メンバーズ〜会員様のお役に立つサンレー」「システム・トゥー・マネー〜財務力を強化するシステムの確立」「スピード・トゥー・マーケット〜市場への迅速な対応」「サービス・トゥー・マインド〜お客様の心に響くサービス」の4つを発表。 



翌年には、「スキル・トゥー・メジャー〜一流になるための技術の向上」「ストレート・トゥー・ミッション〜社会的使命の追求」、さらにその翌年には、「スマイル・トゥー・マンカインド〜すべての人に笑顔を」「サポート・トゥー・モラル〜倫理道徳の支援」を発表して、合計8つになりました。最初から8つすべてがわたしの頭の中にはあったのだが、一度に発表すると社員が混乱すると判断し、毎年2つづつ増えていったのですが、その結果、世にも珍しい「増殖する経営理念」となりました。



現在、全国の各拠点で朝礼の際に唱和し、当社のミッションを確認しています。
この「S2M」こそ、当社の命そのものと言えるでしょう。
なお、「命」については、『孔子とドラッカー 新装版』(三五館)に詳しく書きました。

孔子とドラッカー 新装版―ハートフル・マネジメント

孔子とドラッカー 新装版―ハートフル・マネジメント



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2017年6月4日 佐久間庸和