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一条真也のハートフル・ブログ

2011-03-05

「英国王のスピーチ」

一条真也です。

話題の映画「英国王のスピーチ」を観ました。

映画界最大の祭典「第83回アカデミー賞」で作品賞、脚本賞、監督賞に輝きました。

また、コリン・ファースが主演男優賞を受賞し、4冠を達成した作品です。


内容は、第2次世界大戦期にジョージ5世が国民を演説で鼓舞するため、言語聴覚士のライオネル・ローグとともに吃音の克服に挑むというものです。

映画の冒頭にはアルバート王子としての演説の場面があり、最後にジョージ6世としての重要な演説の場面が登場します。その2つの演説の間において、彼が涙ぐましいほどの努力を重ねる姿が描かれているのです。

そこには、夫人をはじめとした家族の温かい励ましがありました。映画では、ヘレナ・ボナム=カーターが演じるエリザベス夫人の献身ぶりが感動的でした。

他人の妻との恋に走って国王としての義務を放棄した兄のウィンザー公と違って、自ら義務を買って出たジョージ6世には家族という宝物があったのです。


タイトルの「スピーチ」(speech)には「演説」だけでなく、「話し方」という意味があります。つまり、この映画のタイトルは、「英国王の演説」および「英国王の話し方」という2つの意味を表しているわけです。

ちょうど、この時期はマイクの性能が進み、ヒトラーの台頭を後押しする役目を果たすことになりました。さらには、ラジオという最新メディアが出現しました。

英国民はみんなジョージ6世がスピーチが苦手ということはよく知っていました。

それだけに彼が演説するときは家族や側近の者だけでなく、すべての国民がハラハラしていました。そして、「どうか、王様が上手に話しますように」と祈るような気持ちで耳をすませていました。

ラストにナチス・ドイツを英国が迎え撃つという重要な演説を見事に終えたとき、誰もが心からの拍手を送りました。そのとき、英国民の「こころ」はひとつになっていました。

この場面を観て、わたしの胸は熱くなりました。たしかにジョージ6世は口下手でしたが、それがゆえに、愛された国王になったのかもしれません。

一方、演説の天才であったアドルフ・ヒトラーは、さらに自分の「強み」に磨きをかけていきましたが、最後には悲惨な運命が待っていました。

いま、日本のビジネスマンは誰でもドラッカーの受け売りで「強みを生かす」ということを言います。しかし、うまく話せないというコンプレックスのあったジョージ6世は、逆に「弱みを生かす」ことによって国民に愛されたのではないでしょうか。


映画の中でジョージ6世が「私の話を聞け!」と言ったとき、ローグは「なぜ?」と問いかけます。そのとき、激昂した彼は「私が国王だからだ」と叫ぶのですが、ローグはそれを聞いて「その通りだ」と静かに頷くのでした。

そもそも、政治の世界において大切なことは「何を語るか」ではなく、「誰が語るか」です。

そして、それは政治の世界だけではなく、経営の世界においても同じだと思います。

ソフィアバンク代表の田坂広志氏によれば、経営者にとっての究極の役割とは、力に満ちた言葉、すなわち「言霊」を語ることだとか。

社員の心を励ます言葉。マネジャーの胸を打つ言葉。

経営幹部の腹に響く言葉。顧客の気持ちを惹きつける言葉。

そうした言霊の数々を語ることこそ、経営者の役割だというのです。



「言霊」ということを考えた場合、決してリーダーが口にしてはならない言葉があります。

「吾れ言を知る」と言った孟子は、その「言」を4つ挙げています。

1つは、詖(ひ)辞。偏った言葉。概念的・論理的に自分の都合のいいようにつける理屈。

2つ目は、淫辞。淫は物事に執念深く耽溺することで、何でもかんでも理屈をつけて押し通そうとすること。3つ目は、邪辞。よこしまな言葉、よこしまな心からつける理屈。

4つ目は、遁辞。逃げ口上のことです。

つまり、これら4つの言葉は、リーダーとして決して言ってはならない言葉なのです。



では、リーダーは何を言うべきなのでしょうか。

それは、真実です。リーダーは第一線に出て、部下たちが間違った情報に引きずられないように、真実を語らなければなりません。部下たちに適切な情報を与えないでおくと、リーダーが望むのとは正反対の方向へ彼らを導くことにもなります。

そして説得力のあるメッセージは、リーダーへの信頼の上に築かれます。

信頼はリーダーに無条件に与えられるわけではありません。

それはリーダーが自ら勝ち取るものであり、頭を使い、心を込めて、語りかけ、実行してみせることによって手に入れるものなのです。



この映画の最後にスピーチの会場に出向くジョージ6世に対して、ウィンストン・チャーチルが「じつは、私も言語障害に悩まされました。でも、最後は自分で乗り越えました」とささやきます。雄弁家として知られるチャーチルの意外な過去を知った国王は一瞬驚きつつも、「ありがとう」と感謝の言葉を述べます。極度の緊張状態にあった場面で、チャーチルの一言によって、彼の心はどれだけ慰められたでしょう!

それだけ人の心に影響を与えることのできる一言を発したという事実だけでも、チャーチルは真の「言葉の天才」だったと思います。

古今東西、吃音で知られた有名人は数え切れません。

たとえば、モーセにはじまり、デモステネス、アリストテレス、パウロ、ニュートン、ダーウィン、エンゲルス、ルイス・キャロルサマセット・モーム、クララ・バートン、アラン・チューリング、ジョン・アップダイク、マリリン・モンロー、ジェームス・アール・ジョーンズ、ブルース・ウィルスジュリア・ロバーツエリック・ロバーツ、タイガー・ウッズ・・・・・・それから中国の韓非子に日本の柴田勝家、徳川家光、大杉栄田中角栄・・・・・などなど。



最後に、わたし自身もスピーチというものが苦手で、本当に苦労しました。

多くの聴衆を前にして話をすることなど、想像すらできませんでした。

でも、わたしにはライオネル・ローグのような存在の人物がいました。

丹波哲郎さんです。言うまでもなく、数多くの映画やテレビドラマに出演した大俳優であり、死後の世界の真相を説く「霊界の宣伝マン」としても有名な方でした。

霊界についての本を60冊以上出版し、映画まで製作して空前の霊界ブームを巻き起こしました。 わたしは丹波さんには生前大変にお世話になりました。

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               スピーチを指導して下さった丹波哲郎さん


今からもう20年くらい前のことですが、『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』(国書刊行会)を読まれた丹波さんから連絡をいただき、新宿の中華料理店で会食したことがありました。そのとき、「こういう本を書くことによって人々の死の不安を取り除いてやることは素晴らしいことだ。でも、いつかは執筆だけではなく、大勢の人の前で直接話をしなくてはいけない。自分が演説の仕方を教えてあげよう」と言われたのです。

その後、新都庁近くにあった丹波オフィスを十数回訪れ、わたしは発声法をはじめとしたスピーチのレッスンを、天下の丹波哲郎から無料で受けたのです。



現在のわたしは、講演や大学での講義などで、数百人の人々を前に話をしています。

会社での朝礼、会議、訓示、訓話なども含めれば、ほぼ毎日、わたしはスピーチをしています。これは、本当に丹波さんのおかげです。心から感謝しています。大恩人です。

レッスン後の「霊界よもやま話」も楽しい時間でした。

ブログ「ヒア アフター」で紹介したクリント・イーストウッド監督の新作を観たときも、ずっと丹波さんのことを思い出していました。そして今日、「英国王のスピーチ」を見ながら、また丹波さんのことを考えている自分がいました。



丹波さん、いま、霊界でお元気にされていますか?

丹波さんは、わたしに「死は不幸な出来事ではない」、あるいは「死は最大の平等である」という言葉を多くの人々に伝えることが使命であると告げられました。

丹波さんに教えていただいた貴重なメッセージを今後も多くの方々に伝えていくために頑張りますので、どうか霊界からサポートして下さい。よろしくお願いします!


2011年3月5日 一条真也