『十年不倫の男たち』

一条真也です。

『十年不倫の男たち』衿野未矢著(新潮文庫)を読みました。
ブログ『十年不倫』で紹介した本の続編です。前作は不倫関係にある未婚女性の立場からのレポートでしたが、本書は既婚男性の発言が中心になっています。

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本音と建前の狭間で揺れる複雑な男性心理に迫る!



本書のカバー裏には、以下のような内容紹介があります。
「『悪者扱いしないでほしい』。私生活を語ることの少ない男性たちが、自身の道ならぬ恋について語り始めた。妻の目をまっすぐ見られないほどの罪悪感に苦しみながらも、長く関係を続けるのはなぜか。恋人の将来をどう考えているのか。妻と恋人のどちらをより愛しているのか――。本音と建前の狭間で揺れる複雑な男性心理に迫り、前作『十年不倫』と対をなすノンフィクションの傑作」



本書の「目次」は、以下のようになっています。
序章   語り始めた男たち
第一章  男は不倫に何を求めるのか
第二章  二人の女にはさまれて
第三章  ジレンマとスパイラル
第四章  「十年不倫」のこれから
第五章  得たもの、失ったもの
「あとがき」



序章「語り始めた男たち」の冒頭で、著者は前作『十年不倫』の単行本を世に送り出して以来、パーティーの会場などで以前から顔見知りだった男性から「あの本を読みましたよ」とささやかれることが多くなったそうです。
そして、その後で必ず「十年ではありませんが、実は僕も・・・・・」と語り出すのだとか。
こんな体験を何度となく体験したという著者は、次のように述べています。
「これまで男性から、恋愛についての本音を引き出すのはむずかしいと感じてきた。女性のように『恋愛話』や『身の上話』を楽しむ習慣がないため、過去の体験や気持ちを言葉で整理して、人に伝えるのが得意ではないせいもあるだろう。それに男性の多くは『カッコつけ』である。自分の切実な想いを軽々しく口にするのは男らしくない、お腹の底にしまっておくべきものだという考えもあるにちがいない。
まして妻以外の女性との間で、恋愛関係や性交渉を持ったことがある男性は、『責められるのではないか』と、最初から身構えていることが多い。いきなり『あなたにはわからないだろうが、人にはそれぞれの事情があるんだ!』と、喧嘩腰になられたこともある。その事情とは何かと踏み込んでたずねると、『説明したところで、女性には理解できないでしょう』とそっぽを向かれてしまった。
私に男性をただ責めるつもりはまったくない。断罪したいわけでもない。なぜ妻以外の女性が必要なのか、なぜ十年も続いたのか、続かない人と続く人のちがいは何か。それらを知りたくてたまらなかっただけだ」



前作同様、著者自身が取材したリアルな不倫の事例が多く紹介されています。
その中で、不倫する男性のキーワードとして「空の巣症候群」という言葉が出てきました。これは、仕事上の挫折や転換などにともなう喪失感から生まれるそうです。
子どもが進学や就職、結婚をして巣立ったあと、空虚さにさいなまれる母親の姿と、彼らの喪失感には共通するものがあると、著者は分析しています。
そして、興味深いのは彼らの喪失感を埋めるものとしてマラソンの存在を指摘していることです。著者は20代で既婚男性と恋愛関係におちいりました。そう、不倫です。また、著者は40代でマラソンを始めたそうですが、その根っこは同じだそうです。著者がマラソンについての取材をしていると、「なんとなく」走り出した人の背中を押したものが、女性なら失恋、男性では仕事上の挫折や転換が多かったそうです。著者のように離婚や別居で1人の時間が増えたために走り出した人もいれば、十年不倫を清算するために走り出した人もいるそうです。著者は、次のように述べています。
「心の隙間と『空いた時間』を埋めたいが、新しいことに挑戦する気力はわかず、金銭の余裕もない。そんなときに、家を出てそこらを走り回るだけでよいランニングは、うってつけの『時間つぶし』であり、達成感や満足感を手っ取り早く味わわせてくれるのである」



なるほど、そういえば、わたしの周囲でも不倫男性は走っていることが多いですね。
そして、金銭に余裕のある者はトライアスロンを、余裕のない者はマラソンをしている傾向がありますね。マラソンブームは、メタボリック症候群を中心とする健康ブームや、ホノルルマラソン東京マラソンなどの人気で一気に燃え上がったとされていますが、著者によれば、その背景には景気悪化があるそうです。著者は、次のように書いています。
「仕事にやりがいや生きがいを求めるまじめな人ほど、リストラ、収入減、子会社への出向、会社の統合などのクライシスに対して弱い。将来への不安や迷いも深いだろう。マラソンは『目標を設定し、それを達成する』という喜びや、『自分の身体1つで、これだけの距離を走り通すことができた』という自信をもたらす。体重の減少や走れる距離が伸びていく、完走タイムが縮まるなど、絶対的な評価も得られる」



不倫もまた、マラソンをブームに押し上げたさまざまな要因を満たすわけです。
さらに著者は、次のように述べています。
「『妻以外の女性への想いを深める』という行為は、対象さえあれば、1人でも始められる。いざ関係が始まり、食事だホテルだということになれば、お金や手間がかかるが、『最初の一歩』には、道具も技術もいらない。
50代後半の男性が、妻以外の女性との恋愛関係を持ったときに味わうであろう『俺もまだまだ現役だ!』という喜びや自信と、マラソン大会で自己ベストを出したときの『俺はまだまだやれるんだ!』という感激には、共通するものがあるはずだ」
非常に鋭い分析ですが、続けて著者は次のように述べます。
「お金も手間もかけずに始められ、達成感や満足感を得ることができ、揺らいでいたアイデンティティをがっちりと補強してくれる。マラソンやランニングがブームになる社会は、不倫を必要とする社会でもあるはずだ」
たしかに、不倫もマラソンもともに敷居が低くなったことが共通点ですね。



終章「得たもの、失ったもの」も興味深く読みました。十年不倫の当事者たちに取材を重ねるうちに、著者は女性と男性のあまりの違いに呆然とします。
著者は、次のように書いています。
「十年不倫をしているシングル女性の多くは、強固な女友だちネットワークを持っていた。おしゃべるはコミュニケーションの手段であり、ストレス発散にもなり、自問自答の場でもあり、自分でものさしを他人のとすりあわせて、目盛りのゆがみを正すきっかけにもなる。しかし男性は、女性のような井戸端会議的なネットワークを作ろうという発想をあまり持たないようだ。いったん葛藤や執着にとらわれると、1人で抱え込み、整理をつけられず、客観視もできないまま、複雑化させてしまう場合も多いのではないだろうか。
妻にしろ、愛人にしろ、女性に『得たものと失ったもの』をたずねると、具体的な言葉が返ってくることが多かった。十年不倫を総括し、言語化している男性は、女性に比べてぐっと少ない。また、自らが身を置くいびつな三角形の構造を読み解こうとして、一定の答えを得ているのも、女性のほうに多いようだ」



もともと、女性は男性に比べてコミュニケーション力が高いとされています。
実際、隣人祭りや老人ホームなどの集まりにおいても、すぐガールズ・トークならぬオールドウーマンズ・トークが始まって、男性の高齢者は沈黙してしまうことが多いとか。
また、孤独死するのも男性が圧倒的に多いというデータが出ています。
十年不倫においても、女性が女性同士の人間関係を豊かにし、かつ精神的に強くなったのと反対に、男性は孤立し、かつ体力的に弱くなっていく傾向があるようです。
早朝に睡眠不足のまま車を運転して愛人宅を出発し、そのまま交通事故で死亡した男性もいました。著者は、次のように書いています。
「通常の夫は、24時間ずっと『夫』である。しかし十年不倫をしている夫は、24時間のうちいくらかを、シングル女性の恋人という役割を果たすのに使ってしまう。当然のことながら、妻には時間が余り、夫には足りなくなるのである。
妻は、夫が別の役割を果たしている時間を、煩悶や、憤りや、嫉妬心、焦り、欠落感、簡単には人に話せないという孤独感にさいなまれて過ごす。じっとはしていられなくなり、『すがりつくことができる相手』や『癒してくれる場』を求める。
だから妻たちには、『得たものがある』の実感が残るのだ。しかし2つの役割をこなすだけで手一杯の夫は、疲れ果て、何も残らないのではないだろうか」
著者の見方は辛らつですね。でも、わたしも、その通りだと思います。



そして、著者は「不倫」についての考えを次のように明確に述べています。
「不倫とは、テーブルにこぼれた水を拭き取るかわりに、テーブルクロスをかぶせて隠すようなものではないだろうか。手では触れられず、目にも見えないが、蒸発するのをさまたげられた水は、いつまでも乾くことなく存在し続ける。それどころか、テーブルクロスの圧力で、水はテーブルの上に少しずつ広がっていき、一部は床にこぼれ出してしまう」
不登校」や「ワーキングプア」が、現代社会を語る上でのキーワードになっています。
これらもテーブルクロスではおおいきれなくなり、外にこぼれだすまでは「自己責任」や「本人だけの問題」とされていました。しかし、床に水たまりができた今、多くの人々が政策レベルで取り組む問題であると認識しています。「ワーキングプアは個人レベルだけでは対処できない」ということを踏まえて、著者は述べます。
「しかし不倫は、床に巨大な水たまりができても、『自己責任』であり、『本人だけの問題』である。背景にある『不倫を求めている社会』とのかかわりは、あまりにも間接的で、実証はできない。そしてまた、妻以外の女性に心を傾けていく男性の、自己弁護や言い訳を、そのまま認めるわけにもいかないのだ」


なぜ人は結婚するのか



それにしても、書店に行くと、不倫関係の本の多さに驚きます。
『不倫のルール』や『愛人の掟』などのマニュアル本から、硬派なルポルタージュまで。
こんなに多くの不倫本が出版されるということは、実際に不倫をしている人も多いのでしょう。わたしは別に不倫男ではありませんが、日本社会の晩婚化・非婚化について考える上で、一通りこれらの本を読みました。その中で、亀山早苗氏の『不倫の恋に苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『不倫の恋に苦しむ女たち』の不倫三部作(いずれも新潮文庫)が特に読み応えがありました。不倫という窓を通して「結婚」「夫婦」「恋愛」の本質を考えるすぐれた思想書になっています。亀山氏の不倫三部作は、明らかに本書や前作『十年不倫』にも大きな影響を与えています。
新潮文庫は、亀山早苗から衿野未矢と続けて、「不倫シリーズ」を作ったわけですね。
わたしは、約10年前に亀山氏の著書を読んで「不倫とは何か」「夫婦とは何か」について考え、そして「なぜ人は結婚するのか」について考えました。
その結果、生まれた本が『結魂論』(成甲書房)です。
不倫あるいは結婚について悩んでいる方は、よろしければ御一読下さい。
もしかしたら、現状を打開するヒントを発見かもしれません。


2012年2月12日 一条真也

スーツケース

一条真也です。

14日から、シンガポールとマレーシアの首都クアラルンプールに行きます。
所属している福岡経済同友会の国際委員としての活動です。シンガポールでは、大学時代の同級生である野村證券の三浦公輝君に会うという楽しみもあります。


ブルーのスーツケースを購入しました



わたしは、海外へ行く機会はわりと多いほうです。
じつは、昨年まで28年連続で海外に行っていました。
その連続記録が途絶えたのは、言うまでもなく、昨年の足の骨折が大きな原因です。
あと、同じ福岡経済同友会の行事で上海万博を視察に行くはずでしたが、出発前に仕事上で急な用件が発生してキャンセルしたこともありました。
今回の海外視察は4泊5日です。それ用の旅行用スーツケースを物置から取り出したところ、相当にガタがきて壊れかけていることに気づきました。
特に、カギとキャスター部分が限界に来ています。
もうずいぶん長いこと酷使してきたから仕方ありません。
そこで、地元の百貨店である井筒屋に入っているサムソナイトのショップを訪れました。
やはり、こういうときは地元の百貨店を利用しないといけません。
そこに陳列されていたスーツケースを一発で気に入り、購入しました。
ブルーの貝殻のようなデザインのスーツケースです。


後から見ると、こんな感じ・・・・・



サムソナイト史上、最強・最軽量。」を謳っているスピナーというスーツケースです。
なんでも、100年を超えるサムソナイトの歴史の中で、最も軽いスーツケースだとか。
持ってみると、たしかにムチャクチャ軽い! 足の悪いわたしには非常に助かります。
同社のHPによれば、「設計や素材の選定段階から、極限まで軽さを追及し開発されました。厳しさを増す航空各社の荷物制限をクリアするために、軽さは欠かせない条件です。そして、指1本で持ち上げられる軽さに加え、驚きの衝撃耐性を実現しました。
ボディに採用したのは特許技術で作られた革新的な素材Curv®(カーヴ)。ポリプロピレンシートが幾重にも重ねられた構造を持ち、日常環境下だけではなく極度の低温下においても衝撃や歪みといった圧力に対し優れた耐性を発揮します。スーツケースブランドでは、サムソナイトだけが独占使用している素材です。また、さらなる魅力はこれまでのスーツケースの世界観を変える独創的なデザイン。丸みを帯びた独特のフォルムは、貝殻(シェル)の強さに発想を得て開発されました」とのことです。


コスモライトには、いくつかのサイズがありますが、わたしは80リットルの「スピナー74」を購入しました。4〜7泊の旅行用ということで、ぴったりです。わたしは海外に行く際、読書用の本を大量に持参するので少し大きめくらいがちょうどいいのです。
また、インターネットの通販で購入する場合はブラック、シルバー、レッドの3色しかありませんが、井筒屋店にはブルーがありました。
なんだか、本当に深海に眠る貝殻のようで、とても気に入りました。
このブルーに惚れ込み、現品限りの商品を求めた次第です。



シンガポール、マレーシアに続いて、4月には「東アジア冠婚葬祭国際交流研究会」で韓国に行きます。それ以外にも、中国などに行く機会も増えるはずです。
そのときは、このブルーのコスモライトを持って出掛けるつもりです。
わたしは物欲がないほうで、何かを買いたいと思うことが少ないです。
でも、今回のブルーのスーツケースは嬉しい買い物でした。
このスーツケースを眺めていると、いろんな国に行ってみたくなってきます。
本当は、飛行機ではなく船に乗って、見知らぬ国に行きたいですね。そう、井上陽水が名曲「つめたい部屋の世界地図」で歌った「はるかなはるかな見知らぬ国へ」と・・・。


2012年2月12日 一条真也

ホイットニー・ヒューストン急逝

一条真也です。

ホイットニー・ヒューストンが急逝したというニュースには驚きました。
言うまでもなく、彼女は世界で最も売れている歌手の1人でした。
彼女は、わたしと同じ1963年生まれでもありました。そう、世界を代表するディーバは、48歳の若さで亡くなったのです。グラミー賞の前夜パーティーに参加するために宿泊していたホテルの部屋で遺体となって発見され、死因は不明だそうです。


1985年に発表された彼女のデビュー・アルバム「ホイットニー・ヒューストン」を初めて聴いた時の衝撃は今も記憶しています。当時、大学生だったわたしは「世の中に、こんなに歌のうまい人間がいるのか」と思ったものでした。
アルバムは女性歌手のデビュー・アルバムのベストセラーになる大ヒットとなりましたが、特に「オール・アット・ワンス」が気に入りました。
この曲を聴くと、あの頃のさまざまな思い出がよみがえってきます。


また、同じデビュー・アルバムに収録されている「グレーテスト・ラヴ・オブ・オール」にも心を奪われました。この曲は、プロボクシングの世界ヘビー級チャンピオンだったモハメッド・アリの自伝映画「アリ・ザ・グレーテスト」のテーマ曲でしたが、映画の最後に流れてきたこの曲を聴いたとき、魂が震えるほど感動しました。
1987年に発表した2枚目のスタジオ・アルバム「ホイットニー」も、よく聴きました。
このアルバムは、ビルボード200チャートに初登場1位を記録しました。
これは女性歌手では初めての快挙でした。彼女の偉大さを示していますね。


1991年には、第25回スーパーボウルアメリカ合衆国の国歌を歌いました。
これは「史上最高の国歌斉唱」として後に語り継がれています。
あまりにも評価が高かったので、シングルとしても発売されたほどです。
10年後、9・11アメリカ同時多発テロ事件のチャリティとして再リリースされました。


そして、1992年に、ケビン・コスナーと共演した初主演映画「ボディガード」が公開されます。映画のサウンドトラックには彼女の新曲6曲を収録され、全世界で4200万枚を売り上げるメガヒットとなりました。
日本でも280万枚を売り上げ、当時の洋楽史上最高のヒットとなりました。
このアルバムは、当然のごとく1994年のグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞しますが、アルバムから「オールウェイズ・ラヴ・ユー」がシングル化されました。
この「オールウェイズ・ラヴ・ユー」こそ、ホイットニー自身最大のヒット曲です。



累計セールスはアルバムは1億4000万枚以上、シングルは5000万枚以上。
この驚異的な数字をわずかな人生で記録した彼女は、人類史に残る歌手の1人だと思います。特に、彼女の歌うラヴ・ソングは多くの恋人たちに愛されてきました。
14日はバレンタイン・デーです。世界中の恋人たちは、ぜひホイットニー・ヒューストンのラヴ・ソングを聴いて、偉大な女性シンガーのことを想ってほしいです。
それにしても、マイケル・ジャクソンに続き、また、わが青春時代の大スターが逝去しました。寂しいです。マイケルが「KING OF POP」なら、ホイットニーは「QUEEN OF POP」でした。心より御冥福をお祈りいたします。合掌。


2012年2月12日 一条真也