労働倫理

 土曜は新自由主義研究会。ジクムント・バウマン『新しい貧困』。毎年一冊以上の本を出し続ける著者のこと、記述の上では「書きっぱなし」な感じがあって、それが主な不満であったが、もうすこし本質的な不満としては、現代を「消費社会」と定義づけることが、それが物を買う、という行為にとどまるのではなく、たとえば労働(職)やアイデンティティでさえも消費をモデルにしてやり取りされるという意味だとしても、直感的な警戒心をぬぐうことができない。つまり、生産や労働が見えなくなっているというのが支配的イデオロギーの効果として存在するのは確かだとしても、その支配的イデオロギーを「なぞる」ことで終わってしまわないか、と。と言ったらそれってM浦さんがヴィルノに対して言った不満と同じじゃん、ということになり、それはその通り。

 でも、最後の跳躍には興奮を禁じえないものがある。「労働倫理」の変遷と消費社会への変貌を軸とする新自由主義/ポストフォーディズム論である本書の最後の提案は、「労働と労働市場との切り離し」である。これは労働というものを賃労働に限定しないということであって、一方ではヴィルノの言うポストフォーディズムの一側面を貫徹しようという提案であり、もう一方ではそれはベーシック・インカム提案なのである。ベーシック・インカムのひとつの根拠が、「労働が全面化しているがゆえに、人間の生には対価が支払われるべきである」ということなのだから。

 ということで、次回はそのベーシック・インカムが再び主題に。『現代思想』の特集を全部読む会です。詳細はいずれ。

 ここ一週間、慢性的寝不足状態で、もうボロボロになりながらも飲み始めたらそれなりに元気に。でもさすがに最後は息切れして、クイア歌唱部へのお誘いを固辞。

現代思想2010年6月号 特集=ベーシックインカム 要求者たち

現代思想2010年6月号 特集=ベーシックインカム 要求者たち