民主党・小沢一郎氏の選挙戦略に学ぶ「あるべき営業本部長像」

先日8月30日に行われ民主党の大勝に終わった衆議院選挙。その民主党の選挙戦略を責任者として取り仕切った小沢一郎氏のその手法が色々なところで取り上げられておりますが、その中でも「自民党を震え上がらす これが小沢選挙だ(日刊ゲンダイ)」がかなり克明にその内容を伝えており、はてブでも結構話題となりました。

私もこの記事に感銘を受けたのですが、よくよく自分の立場に戻って考えてみると、これってまさしく「営業の極意」とも言える内容であり、またまさしくこれは「あるべき営業本部長像ではないか」と思ったんですね。。

そんな小沢営業本部長に学ぶ「営業の極意」と「営業チームマネジメント」、そんな視点で少し書いてみたいなと思います。

小沢営業本部長の営業極意1:基本原理・原則の徹底

これはもう何度もニュースなどで報道されていますが、小沢営業本部長は、今回多くの新人候補、浪人候補に対し、(1)1日50か所の辻立ち(街頭での演説)、(2)ポスター3,000〜5,000枚の掲示などの「ドブ板戦術」を徹底させています。また、年末年始に「除夜の鐘が鳴る前に神社の前に立て」、そして初詣客を「あけましておめでとうございます。○○です」と挨拶で迎えろと指示。まさしく営業本部長直々の「1日50回」という具体的な数字での「ドブ板営業徹底の指示」ですね。

そしてこの各候補者がしっかり「ドブ板選挙」をやっているかは、小沢一郎と寝食を共にし、また選挙を熟知した「小沢一郎秘書軍団」がその活動状況を継続的にチェック。時には営業本部長自らが電撃訪問で自ら確認することも。こういった「PDC(Plan→Do→Check)」は、当たり前のこととは言いながら、なかなか継続してできないものであります。ここでもこれが徹底されているのは、小沢営業本部長の手腕がなせる技ですね。。

小沢営業本部長の営業極意2:自ら体を張って手本を示す

とはいいながら自分の部下である候補者にやかましく色々きれいごとを言っても、全員が付いてくるくるとは限りません。そのあたりも小沢営業部長はよくわかっていて、抜け目ないところを見せてくれます。

2007年の参議院選のこと。選挙初日に小沢営業本部長が選んだ遊説先は自民党の牙城である鳥取県。しかしタイミング悪く当日は激しい台風に見舞われ、とても鳥取にまで行けるような状態ではありませんでした。しかし、小沢営業本部長は「どうしても行く」と豪語。何とか小型機を探し出し、鳥取に向かって空を飛んだとのこと。。当日小沢営業本部長を待ちわびていた聴衆は、当初予想では150人ほどでしたが、蓋を開けてみたらなんと2,000人!その2,000人全員と握手をして、聴衆全員はいっぺんに「小沢ファン」になったといいます。。

また、小沢営業本部長が民主党と支持基盤である労働組合との関係修復に取り組んでいた時のこと。小沢営業本部長は自ら連合の地域本部を訪ね、現場の労組幹部と会い、居酒屋で上着を脱いで一緒に酒を酌み交わすことを恒例としていました。また、私はここがすごいと思うんですが、小沢営業本部長はこういう時にわざと「一番狭い部屋」を用意させるらしいんです。そして体と体がふれあうくらいの距離で話し込むということなんですね。

地方の候補者が、自分のために営業本部長自らが体を張った「ドブ板営業」を炸裂させているのを見てしまったら。。これはもう明日から当選するまで「辻立ち1日50か所」となりますね。これは。

小沢営業本部長の営業極意3:合理的な選択と集中

非常に情に厚い小沢営業本部長。ですが、非常に冷静に「どうすれば票が増えるか」という一点で緻密な計算を行っているという一面もあるんですね。。

一番私が典型的だと思ったのが「メディア戦略」。小沢営業本部長は東京ではあまり記者会見をせず、逆に地方に行った際には積極的に記者会見を行うとのこと。またその際、東京から取材に来た記者にはそっけなく、逆に地方紙の記者に対しては極めて丁寧な対応を取るということなんですよ。この狙いは、地方紙はやはり小沢営業本部長クラスの記者会見、そして地方紙記者への丁寧な対応となると、自然を記事の大きさは大きくなるんですね。そしてここまで営業本部長の地方紙への手厚いサービスがあると、ほとんどが朝刊一面トップの扱いに。小選挙区制を考えると、地方紙での朝刊一面トップは、全国紙のそれなりの記事が載るよりも、有権者への大きなアピールとなるわけですね。

また、小沢営業本部長と「小沢秘書軍団」は、勝敗ラインギリギリの「重点選挙区」に特に人材とお金を集中的に投下しています。逆に「重点選挙区」以外はほとんど支援しないのも小沢流。。これも「小沢秘書軍団」が中心となり日頃の緻密なデータ収集・分析を行っていて、タイムリーにその選挙区の勝敗予想ができるという、データ収集・分析体制が確立されているからこそなせる技だと思いますね。これも言うのは簡単ですが、実現させるのはかなり難しいところであります。。

小沢営業本部長の営業極意4:新しい取組への柔軟性

私もこの記事に遭遇して初めて知ったんですが、小沢営業本部長はかなりネットを活用している政治家の一人だとのことなんですね。

2008年10月には「Ameba Blog」の公開生放送「Ameba Studio」に小沢営業本部長自ら出演、小沢営業本部長自らお相手に上原さくらを指名、私生活から女性の好みまで赤裸々に語ったと言います。(「小沢さんのご指名」民主党代表が上原さくらとアメスタでご満悦生トーク)また、08年12月31日と09年1月1日は、「年末年始、小沢代表が動く!ニコニコ生放送「『日本は変わる!年越し1万人ネット生討論』出演」と、ネットメディアの活用に非常に柔軟です。

小沢営業本部長は、「選挙というのは、政党、マニフェスト、候補者の魅力を伝えるために、有権者とどう効果的にコミュニケーションをとっていくか」という「コミュニケーションの視点」に立って色んな事を組み立てているような気がします。なので、選挙の目的を達成するためのコミュニケーションツールとしてのネットは、もっと有効活用していきたいと考えておられるでしょう。営業本部長であっても、ネットメディアは若手任せではだめなんですね。。

小沢営業本部長の営業極意5:とは言いながら「泣きの一言」も忘れない

ドブ板営業」と「合理的アプローチ」を有機的に融合させる小沢営業本部長。とは言いながら、やはり締めはこんな「泣きの一言」なんですね。。07年の参議院選では、毎週小沢営業本部長から「檄文」が届いたそうですが、下記がその中の一つです。。

「幸運の女神は、前髪しかないと言います。女神の先に回り込み、その前髪をつかんだ人にだけ、女神が微笑みます。私が先頭を走ります。ともに女神を追い抜き、勝利を手にしようではありませんか」。強面の小沢らしくない文章に思えるが、「一緒に勝利を掴もう」という強いメッセージは候補者を鼓舞するのに十分だった。(「自民党を震え上がらす これが小沢選挙だ」より)

私も営業の経験があるのでよくわかるのですが、営業の最前線にいる営業マンは、日々社内外に吹く風雪に晒され、時には疲弊して立ち上がれなくなるものです。そんな時の営業本部長の一言がもう一回立ち上がらせてくれる力となる、ということはやはりどんな時代になってもあるに違いない。そう私は思います。

最後に:小沢営業本部長はまさしく「パラノイヤ」

今回の小沢営業本部長の選挙への取り組みを見ていると、かのインテル創業者・アンディー・グローブの下記の名言を思い出します。

Only the Paranoid survive (パラノイヤ<病的な心配性>のみが生き残る)

小沢営業本部長の病的なまでに緻密で徹底された選挙戦略。これはその根底にこの「病的な心配性」があるのではと思ったんですね(以前アンディー・グローブについて書いておますので、よかったらご覧ください)。心配性であるがゆえに基本原理・原則の徹底を口やかましく言う。心配性だからこそ自らが「ドブ板営業」を実践する。これは営業本部長だけではなく、何かチームを率いて何かを成し遂げようとしている方全員が、この小沢営業本部長の選挙戦略に学ぶことができるのではないか。そんなことを考えさせられた「小沢一郎営業本部長」の選挙戦略でありました。

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