mauのしっぽぽ図書館

2017-02-05

[]先月読んだ本から 20:02

今年から仕切り直しぢゃ!との決意も空しくアワアワしている内にtwitter文学賞や日本翻訳大賞の投票がもうすぐ終わっちゃう!という事態に陥り、なんとか投票は済ませたもののまだまだ先が見えませぬ…とりあえず幾つか感想を:


枕草子/方丈記/徒然草 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集07)」:とにかく高橋源一郎訳(というよりコラボ?)の「方丈記(モバイル・ハウス・ダイアリーズ)」に打ちのめされました。<6.アルマゲドン>なんて思わず原文と比較してしまいました:

震災の直後、人びとは、少し変わったように見えた。目が覚めた、まったくどうしようもない社会だったんだ、といい合ったりしていた。おれたちは、欲に目がくらんでいたんじゃないか、とも。そう、人も社会も、震災をきっかけにして変わるような気がしていた。

だが、何も変わらなかった。時がたつと、人びとは、自分がしゃべっていたことをすっかり忘れてしまったのだ。

 (参考:http://web.kawade.co.jp/bungei/924/

人皆あぢきなき事を述べて、聊(いささ)か、心の濁りも薄らぐと見えしかど、月日重なり、年経にし後は、言葉にかけていひ出づる人だになし。

(原文参考:http://www.geocities.jp/rikwhi/nyumon/az/houjoki_zen.html


当時も今も私たちは呆れるほど何も変わっていないことを痛感させられる、まさに源ちゃんならではの怪作。これを文学全集に入れる河出&池澤氏の英断にも感服。




「アメリカーナ」:これは読んでてホント楽しかったなー。米国と移民、この複雑な関係を巧みに描きながら、語られるラブストーリーは至って王道。かなりのボリュームですが一気読みでした。



王様のためのホログラム

王様のためのホログラム

「王様のためのホログラム」:現代版「セールスマンの死」x「ゴドーを待ちながら」って感じ?と思って読んでいたら訳者のあとがきにもこの2作が挙げられていて、皆考えつくところは同じなのねーと自分の読みの浅さに反省。全体的にユーモラスで読後感は悪くなかったです。映画も公開されるのね(しかしトム・ハンクス出過ぎだ)。



トランペット

トランペット

モンテカルロ (フランダースの声)

モンテカルロ (フランダースの声)

火曜日 (フランダースの声)

火曜日 (フランダースの声)

トランペット」/「モンテカルロ」/「火曜日」:こういう地味な良作こそ、きちっと感想が書きたいんだけど…今は紹介だけで手一杯。残念。



さてさて冒頭で述べた各賞の結果やいかに?でも一番楽しいのは、候補作の中から埋もれていた傑作を見つけ出すことですよね!というわけで経過にも大いに注目しております。

2017-01-01

[]年末京都食探索 12:38

あけましておめでとうございます。今年からグルメブログとして生まれ変わります。

、というのは嘘ですが、現在試行錯誤中なので逆に色々と遊んでみるのも良いかと。というわけで久々に(10年ぶりくらいに)飲食関係などアップしてみます:



年末は相方の実家帰省のついでに京都に立寄るのが恒例行事。年の瀬で休みになるお店も多い中、頑張って何軒か回ってみました。

まずは前から狙っていた「めなみ」、三条木屋町にあるおばんざいやさん。(http://www.menami.jp/

手頃な雰囲気と料金で、きちんと出汁の効かせた小料理をつまみに日本酒をくいくい…って幸せすぎる。

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お酒はお店オススメの京都「徳次郎」原酒をいただきました。アルコール度数ちと高めで美味美味。

お通しが湯葉っていうのがまた素敵(観光客まるだしかしらん)。

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おでん(品書きとしては煮物なんですが)に辛子じゃなく粉山椒をかけると料理の格が一つ上がった、という感じ。さっそく家で試してみよう。

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普段はそうでもないのに、京都に来ると無性に漬物が食べたくなるのがまた不思議。



さらなる漬物を求めて「ぎおん川勝 ぶぶ家」へ(http://www.gion-kawakatsu.com/bubuya/bubuya.html)。

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糠漬けや粕漬けは苦手、でも浅漬けすぎるのもちょっと…と漬物の好き嫌いが結構ある私としては、色々な種類を(ご飯と一緒に!)試食できるところが有難いです。この中では左端の「干大根」(白いの)が好みだったので即購入。



昨年話題を呼んだ香港発祥のコーヒースタンド「アラビカ」(http://www.arabica.coffee/)、店舗は東山と嵐山でちょっと行くには時間が足りないなあ…と残念に思っていたら河原町の藤井大丸内にスタンドが出来た!と知って早速エスプレッソ・マキアートを。

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コーヒーもミルクも濃厚で至極満足。店のデザインもオシャレでこれは人気出るの分かるわ。

◆参考サイト:「アラビカ京都 藤井大丸; 遂にオープンした常設店」(http://andcoffee.net/arabica-kyoto-fujidaimaru/




持ち帰りしたので写真は無いですが、京都駅ショッピングモール内の「オレノパン okumura」(http://www.kyoto-okumura.com/orenopan.html)もオシャレで美味しくて素晴らしかった!京都のパンって本当レベル高くて泣きそう(全部試せなくて)。

◆参考サイト:「祇園の京懐石フレンチの名店がプロデュース「ORENO PAN 烏丸本店(オレノパン)」」(http://kyotopi.jp/articles/fQH9y



いつもどっさり買い込むのは「志津屋」(http://www.sizuya.co.jp/)のパンたち。京都市内を歩けば一駅に一軒くらいの割合で出店しているチェーン店だけど、どれを食べても美味し、で京都市民がつくづく羨ましくなるのでした。

◆参考サイト:「地元に愛されて約70年!“京都人の国民食”『カルネ』だけじゃない!!調理パン充実☆「志津屋」」(http://kyotopi.jp/articles/lyE8H


あーまた京都行きたい。ともあれ今年もよろしくお願いします。

2016-12-25

[]先月読んだ本から 11:37

10月から新しい仕事に就いて、生活リズムも随分変わりました。読書は隙間時間を使ってなんとか確保してるんですが、なかなか感想を書くまとまった時間が取れない…(あとDVD&海外ドラマも観れない!)。でも書かないとやっぱり忘れてしまうので、来年はうまく時間をやりくりできるよう仕切り直したいなあ…。


というわけで今回は2月分、しかもかなりの手抜きで(それは前から?):

帰郷の祭り

帰郷の祭り

「偉大なる時のモザイク」「帰郷の祭り」:「風の丘」のカルミネ・アバーテの旧作。大手と違ってさほど宣伝していないせいか店頭で見かけるまで気づかなかったですが、地味ながらも良作なので「風の丘」が好きだった人は探して読んでほしいなあ。出版社同士もちゃんとタッグを組んで宣伝してほしいもんです。



ブラインド・マッサージ (エクス・リブリス)

ブラインド・マッサージ (エクス・リブリス)

「ブラインド・マッサージ」:昨年は海外文学でもアジア系ついにキタ!という盛り上がりで、今年もその流れは続いているはずなんですが、この本に限っては随分扱いが地味かなあ。意外性はないけど読みやすくて面白いと思うんですけどね。



森の人々

森の人々

「森の人々」:昨年大作「A Little Life」が話題になった著者のデビュー作。アン・パチェット「密林の夢」を連想させるSF風熱帯小説ですが、うーんこれならパチェットの方が上かなあというのが正直な感想。「A Little Life」は全く違う作風みたいのなので、これは是非読みたいんだけど(でもすごく長いから翻訳で読みたい)。

A Little Life

A Little Life

密林の夢

密林の夢



「四人の交差点」:安定の北欧系。女たちのたくましさと男の繊細さが胸に残る。



浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル

「浮遊霊ブラジル」:この人も安定して面白いので新作が出たら必ず読みます。


さて、次に更新できるのはいつになるかな?ちょっと考えねば。

2016-10-03

[]先月読んだ本から 13:19

9月は失業状態だったので、せっかくだからと果敢に大作にも挑戦(?):

ゴールドフィンチ1

ゴールドフィンチ1

ゴールドフィンチ 2  ゴールドフィンチ 3  ゴールドフィンチ 4

「ゴールドフィンチ」:読む前は「盗難絵画を巡る本格ミステリ」を予想していましたが、全然違いました!1巻目なんて絵はほとんど置き去り状態で、名画をそんないい加減な扱いで良いのー?と逆に心配になってしまいました。

しかし読み進めていくうちに、ああこれは現代のディケンズなんだ…と途中で気づいて合点がいきました。このゆったりとした話の進め方とクセの強い登場人物陣、結論を急ぐ今どきの小説ではないのです。21世紀でもディケンズ調は(少なくともアメリカでは)通用するんだ、と結構驚き。時間があるときに読みましょう。

登場人物の中ではやっぱりボリスが一番好きかな。主人公にイマイチ魅力が無いのがちょっとね…。



第三帝国」:ボードゲームおたくのドイツ人が恋人とスペインの海岸に休暇に来て…という設定が個人的にツボ(ドイツ人あるある)。主人公が持ち込んだゲーム上で展開される第二次大戦の再現(といっても勿論ゲームなので史実通りとはいかない)が、現実の人間関係に微妙に影を落としていくという構成も見事。まだ若い頃の作品らしいですが、ボラーニョ作品の中では一番わかりやすくて素直に面白いと感じました。長さもちょうどいいし(笑)。



「ベスト・ストーリーズ III」:現代小説の中でも特に新しいものが好きなので、I・IIは飛ばしてIIIから読むことに。収録されている作品・作者は正にオールスターズ!という感じで、短編の苦手な私にも大変楽しめました。冒頭のトレヴァーは勿論良かったし、他にもアップダイクとJ・バーンズの自由連想的な話が結構好みでした。また自分の引き出しが少し増えたような充実感。



「ミルク殺人と憂鬱な夏」:ドイツのご当地ミステリ。ローカル感満載ながら丁寧な筋書き、かつ心優しき主人公の警部さんの日常が良い味出してます。続編の翻訳&TVドラマ↓の日本放送を期待!

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訛りはかなり強そう。



暇にまかせてTVドラマもどっぷりと:

「ホロウ・クラウン/嘆きの王冠」なかなかDVD化してくれそうにないのでHuluの2週間トライアルで視聴。(すでに解約)

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いやあ堪能しました…(うっとり)。トムヒのハル王子、カンバーバッチのリチャード3世がハマり役なのは観る前から容易に想像がつきましたが、お話的にこれまで興味の薄かった「リチャード2世」のベン・ウィショーが素晴らしかったですね!ラストなんて明らかにキリスト殉教を彷彿させる、絵画のような非情な美しさ…これはたまりません。

ちょっと不満だったのはヘンリー4世でしょうか。ジェレミー・アイアンズは大好きなんですが、「リチャード2世」のヘンリー役の人が歳とってもジェレミーにはならんでしょ!その辺はまだケネス・ブラナーの方がしっくりいったんじゃないか…ケネスとトムヒの親子対決って観たかったしなあ(妄想)。あとやっぱりフォルスタッフはオーソン・ウェルズの印象が強すぎて今一つノレませんでした。



ブレイキング・バッド」:前から観てみたかったんですがタイミングよくCSで全シリーズ再放送してくれたので、朝ドラのように1日1話見続けて約3カ月、先日やっと最終回。確かにこれはすごかった…!


マンガにもどっぷり:

残酷な神が支配する」:連載中は内容があまりにヘヴィでとても読んでられませんでした…先日イベントで御尊顔を拝見してからファン熱が再燃、最近の未読作品はあらかた読みつくし残ったのがこの作品。そろそろ読みとおせるかな、と決意してやっぱり3カ月くらいかけて読了。予想以上に濃密でした…。

やはり前半の虐待場面は読んでてつらくて再読できなかったです。しかし後半にイアンとジェルミが延々と繰り返す回想と対話、そしてマンガならではの作画表現の繊細さに魅了されて、気がつくと後半は何度も何度も読み返し、しかも何度読んでも唸らされるという…。長年現役で描いてきて、なおもこの創造力。凄いなあ。もうノーベル賞でもなんでも差し上げたい気分であります。



10月には新しい仕事に就けそうなので、読書ペースはもっと落ちるかな。でも相変わらず気になる作品が多くて困っております。(海外ドラマの観すぎじゃ…)

2016-09-06

[]先月読んだ本から 11:46

「執着」:「白い心臓」を読んでからずーっと新作の翻訳を待っていたのに、なんでこんなに訳されないかね?そりゃ一見理屈ぽいところがあるとはいえ、このウネウネした男女間の思考の絡み合い、せめぎ合いが面白いのになあ。ぜひぜひ旧作ももっと日本で紹介してほしい!


マトリョーシカと消えた死体」:探偵ブロディシリーズ第2弾。TVドラマの方を先に観ていたので筋は知っていたけど、小説で読んでもややこしい筋書きで充分楽しめました。ドラマシリーズ全体の設定は、この2作目にかなり負っているんですね。(舞台がエディンバラとか相棒役ルイーズの存在とか)そして原作のブロディはドラマほど格好良くはない…ははは。ともあれシリーズ残りの作品も訳されてほしいものです。


スティグマータ

スティグマータ

スティグマータ」:マンガ「弱虫ペダル」のヒットで自転車競技もだいぶメジャーになってきましたが、小説化となると、その心理的駆け引きを読み解きながら一つの物語にまとめるのはまだまだなかなか難しい。「サクリファイス」から「エデン」、そしてこの「スティグマータ」と続いて発表されているこのシリーズは、その意味で稀有な存在であり、また非常に楽しみにしている作品でもあります。前作「エデン」からの登場人物が多数出てくるので復習してから臨んだ方が良いかも。

サクリファイス (新潮文庫)

サクリファイス (新潮文庫)

エデン (新潮文庫)

エデン (新潮文庫)


約7年勤めた職場が閉じることになって、今後はプライベートの時間の割り振りが大きく変わってくるかも。まあとはいえ気負わずに読みたいものを読みます。

2016-08-20

[][]「The Gustav Sonata」(ローズ・トレメイン) 23:46

The Gustav Sonata

The Gustav Sonata


著者のことは先日出版された「道化と王」↓で初めて知ったのですが、本国ではベテラン作家で概して評判が良いので、新作を読んでみました:


小説の始まりは第二次大戦後まもなくのスイス父親を早くに亡くし母親と二人暮らしの Gustavは、幼いながらも母の負担になるまいと常に気丈にふるまっている。後に彼は同じクラスに転入してきた Antonと仲良くなるが、母親はユダヤ人である Antonとその家族にどこかよそよそしい。どうもそれは父親の死とも関係があるようなのだが…。


第二次大戦中のユダヤ人迫害が主題なのかと思ってましたが、それは物語の要素の一つ(もちろん重要な要素ではありますが)で、メインは Gustav の人生と、それに伴う繊細な彼の心の動きを追うことなのだと思いました。特にしばしば作品で言及されるスイス人の "mastering oneself"、己を律する精神、克己心というのが Gustav には大きな意味を持っていて、そのため小さなうちから頼られて我慢ばっかりしていて、これじゃあ Gustav かわいそうだよ!みんなもっと彼を思いやってあげなよ!と読んでて同情してしまいました。


読みながら竹宮恵子「変奏曲」↓あたりを思い浮かべてました。Antonはピアノの才能はあるのですが精神的に脆く大勢の前で演奏をすると実力が全く発揮できない。密かに彼を慕う Gustav はそんな彼を懸命にサポートするのですが、当の Antonは自分のことしか見えていない。もーもどかしくてもどかしくて。


変奏曲 vol.1 (1)

変奏曲 vol.1 (1)


そんな風に、少し昔の(昭和24年組あたりが好んで描いた欧州舞台の)少女マンガっぽい展開でした。まあ私が最近萩尾望都を読み直しているからそう思うのかもしれませんが…

2016-08-08

[]先月読んだ本から(2) 12:00

先月は海外ものも充実:


ポーランドのボクサー」:東欧の作家と思っていたら南米でした…しかもユダヤ系移民ということで、自分のアイデンティティをどこに求めるかという主題を抱えながらも、発表済の3つの中編をあえてバラバラにして再編成するという大胆な試みに、ユダヤ/移民文学に留まろうとしない作者のなみなみならぬ文学的野心を感じました。本質はエンリーケ・ビラ=マタス的な文学オタクだと思います。

バートルビーと仲間たち

バートルビーと仲間たち



ある子供

ある子供

「ある子供」:三つ子の魂百まで、ってつい思ってしまう、毒舌ベルンハルト幼年時代。もちろん本人の弁なので書いてあること全部そのまま鵜呑みになんてしないけど、少なくとも著者本人の中ではこういう経験だったのでしょう。どんどん続きが読みたい!

「消去」の新装版も出たしね!大傑作ですよこれは。



「煉瓦を運ぶ」:アリステア・マクラウドの息子もまた小説家に、とはいえ資質はかなり異なる気がします。アレクサンダーの作品は体験、それも自分の「身体」が体験したこと、そこから自分の人生の意味がまるっきり変換してしまう一種のエピファニーのような体験を描いて胸にズシンとこたえます。上手い、上手すぎる…。



プランD

プランD

「プランD」:ベルリンの壁が崩壊せず東独がいまだ存在するパラレルワールドで起こった事件を巡るミステリ。社会主義革命があのように無残に失敗せず、改革によって今も健在だとしたら?という設定が面白い。実在の政治家も改変された姿で登場してきてニヤリ。

読了後にドイツ本国での書評をチェックしていたら、同時期に発表されたEugen Ruge「In Zeiten des abnehmenden Lichts」と比較しているものがあって、ああそういえばこっちも早く翻訳されないかしら?と改めて期待しちゃいました。まあミステリってジャンルがはっきりしている方が売り込みやすいんでしょうが…。

2016-08-07

[]先月読んだ本から(1) 14:49


先月は久々に充実した読書ライフを過ごせました:


難民調査官

難民調査官

難民調査官」:日本の難民受入れ現状を主題としたタイムリーな小説。基本的にはエンタメですが、情報量も多く、難民問題の複雑さを感じることが出来ました。もっと注目されていいテーマだと思います。



竜と流木

竜と流木

「竜と流木」:久々に読んだ篠田節子作品は、初出が新聞掲載だから?普段の篠田作品よりは、ややマイルドなファンタジー。とはいえ現代社会への批判を絡めて毒はしっかり仕込んであります。

こういうの好きな人はアン・パチェット「密林の夢(State of Wonder)」もぜひ読んでほしいなあ。ぜったい繋がるものがあると思うんだよなあ。

密林の夢

密林の夢



ビビビ・ビ・バップ

ビビビ・ビ・バップ

「ビビビ・ビ・バップ」:題名からジャズ絡みとは分かっていたけど、ぱっと本を開いたらフォギーの名前が目に飛び込んできて、えっ「鳥類学者のファンタジア」の正統続編?!と読み進めたら、なんか時代設定が違う…なんとこっちのフォギーは「鳥類学者」フォギーの曾孫、ってこれ近未来SFなのか!(全然事前情報持ってなくてスミマセン)でもノリは正に「鳥類学者」の溌剌とした軽やかさと躍動感。

人工知性と仮想現実が急激に進化していく時代に、「場を読む」即興力を必要とするモダンジャズは果たして通用するのか、という興味深いテーマを底音に響かせながらも、演奏時以外はぼんやりフォギーとキレモノ揃いの周囲の人達の掛け合いがなんとも楽しい。色々な文体を使い分ける奥泉氏だけど私はこの手のノリが一番好き。光る猫も出てくるしね!

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)



アリス殺し (創元クライム・クラブ)

アリス殺し (創元クライム・クラブ)

クララ殺し (創元クライム・クラブ)

クララ殺し (創元クライム・クラブ)

アリス殺し」/「クララ殺し」:小林氏のホラーは本当に怖くて怖がりの私はとても読めましぇん。ですがこの「アリス殺し」はオリジナルの屁理屈な論理展開を上手くアレンジしたミステリで面白かったです。

クララ」はハイジの彼女だと思っていたら「くるみ割り人形」の方でした…ホフマンの世界にもう少し熟知していたらもっと楽しめたのかな。私の勉強不足でした。


長くなったので、海外小説編はまた改めて。

2016-08-04

[]ドイツ映画2本(「I Phone You」「辛口ソースのハンス一丁」) 12:06


最近は映画館に行く気力も無くて、もっぱらDVD鑑賞で済ませているのですが、こんなのDVDにもならんだろ!みたいなマイナードイツ映画がイベント絡みで上映されたのでいそいそと出かけてきました:


●映画「I Phone You」(於:SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016)

公式サイト紹介

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あらすじ:重慶の花屋で働くリンは、ベルリンから来た中国人ビジネスマンと恋に落ちる。しかし彼はiPhoneを彼女に贈り、帰国してしまう。その後、iPhoneで連絡を取り合うなか、彼女は思いにまかせベルリンへ。だが、空港に迎えに来たのは彼の運転手だった。(公式サイトより)

正確には(初の)独中共同制作映画。お互いの文化の違いもあって完成まで色々大変だった、とは上映後の監督インタヴューにて。話としては他愛もないラブコメですが、いかにもドイツのコメディっぽい…と思ったら脚本は監督の原案を基に、師匠筋でもあるドイツの大御所脚本家 Wolfgang Kohlhaaseが手掛けたのだそうな。実際にもドイツではそこそこ好評だったのに対し、中国ではヒロインが愛人的ポジションということもあって公開当時(2011年)は結構批判もあったとか。今なら中国ももっと開放的になっているから受け止め方も変わるかも、という裏話が印象的でした。


ここでの私のお目当ては、運転手マルコを演じるフローリアン・ルーカス君!チョイ悪ぶってるけど本当はイイ奴、なんて正に彼にピッタリの役ではありませんか。役作りなのか久々に観る彼は普段より精悍な感じに仕上がっていて、なのにヒロインにいいように振り回されてるのが、ああもどかしーい。そんな女ほっときなよ!と何度思ったことか。いやこういう奔放ヒロインは私苦手なんですよ…(女優さんとしては魅力的でしたが)。


今回初めて川口のSKIPシティに行きましたが、特別直通バスがなければどうやって行ったらいいのか分からないような不便な場所で、しかも上映が雨の平日昼間ということで、広い会場も閑散として(観客は関係者ばっかりという感じ)一人で心細かった…周囲も正直何もないところだし、これで週末はそれなりに人が入るのかしら?と心配になっちゃいました。企画自体は良いと思うんですけどね。


●「辛口ソースのハンス一丁(Einmal Hans mit scharfer Soße)」(於アテネ・フランセ文化センター)

公式サイト

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あらすじ:ヒロインはトルコ系移民2世、未婚の妹の妊娠に因習的な両親が気づく前にやはり未婚の姉ハティジェが先に結婚せねばならない。だが彼女は恋人と別れたばかり、てんやわんやの婿探し騒動が幕を開ける。(公式サイトより)

タイトルは「トルコ人のように情熱的な(でもトルコかぶれしてない)ドイツ人が結婚相手に欲しい!」って意味合いでしょうか。

こういう結婚を巡るドタバタ劇って、実は今の日本でも健在だよなあ…なんて思いながら観てました。たとえ人種・民族が同じでも、それぞれの家族にはそれぞれの習慣とかしきたりとかがあって、その共同体から抜け出して結婚するって正に異文化衝突なんですよね。


ヒロインは都会でキャリアウーマンやってて結婚なんてしなくていい!と思っていても、結局は実家に帰って家族と過ごす幸せを手放せなくて親の言うままに結婚相手を探しまわる。親の干渉を嫌っているようで、共同体の居心地の良さにしがみついているのは実はヒロインの方だった…というのも「あーあるある」な展開でした。


というわけで、これも他愛のないコメディといえばそれまでですが、客人もてなしの重要な要素としてしばしば出てくるトルコ料理が本当に美味しそうでした。一応世界三大料理に入っている割に今一つ人気のないトルコ料理ですが、この映画観ると美味しそうだな食べたいな、と思ってしまいますね。


企画側としてはこの映画の前に上映された「女闘士」の方が話題性もあって一押し!だった感もありましたが、今回は時間の関係で観られなかったのでこれはまたの機会に。合間の渋谷氏のトークはいつも通り白熱していて色々勉強になりました。「帰ってきたヒトラー」観たらまた色々考察することが出てきそう。


昨年出たこの本をベースに着実に活動を広げている編者の皆さんには感服しまくり。私もイベントにできるだけ参加することで、ささやかながら応援していきたいです。がんばるぞー。

2016-07-28

[][]「The Green Road」(アン・エンライト) 11:12


発表と同時に話題を呼び、各種文学賞レースにも全面参戦、なのにこれまで読むのを控えていたのは以前読んだブッカー賞受賞作「The Gathering」にあまり良い印象を持っていなかったから。今回もある出来事をきっかけにバラバラに暮らしていた家族が再集合する…って同じような筋書きだからどうかなあ?と腰が引けていたのですが、The Irish Novel of the Year 2015 なんて獲ってしまったらやっぱりアイルランドびいきとしては読まない訳にはいかない…とおずおず読み始めたら、なんと!すごーく面白いではありませんか!うーんやられたなあ。


地元のおばちゃん感あふるるConstance、ゲイであることを身内に隠し(バレバレだけど)北米で暮らすDan、社会的義憤に燃え世界を飛び回るEmmet、情緒不安定気味のHanna。この4人の兄弟姉妹が、母親が実家を売却すると宣言したのをきっかけにクリスマスに再会を果たす…というホームドラマ。それぞれの人生の一部を切り取ったような前半の各章は、短編小説として独立して読んでもいいくらい完成されています。後半の家族再集合となってからの展開も、緊張感を保って最後までドキドキさせられっぱなし。考え抜かれた構成も見事ですが、文章も良い意味で軽みとユーモアがあって深刻になりすぎない。「The Gathering」が鬱々としていて読んでてつらかったのに対し、今回はぐいぐい読まされました。映像化しても面白そうです。映画より全4回くらいのTVドラマが良いかなあ(妄想)。


著者はそろそろ日本でも本格的紹介があって良い頃。日本語版、期待してます。


今のところ日本で翻訳されているのはこれだけかな?(しかもどの章を誰が書いたのかわからない仕掛け)。著者の一人、コルム・トビーンは「ブルックリン」翻訳&映画公開でようやく日本での知名度も少々上がってきましたね。みんながんばれー。