mauのしっぽぽ図書館

2018-07-14

[]最近読んだ本から 11:50

また忙しくなりそうなので、その前にざっくりまとめ:


「鯨」:「白鯨」みたいな話かと思ったら違いましたが、筋書きの破天荒さ、荒々しさは正に鯨級。池上永一梁石日を掛け合わせたみたいな激しさがある。鯨そのものはそんなに出てこなくて、むしろ心優しき象さんの方が印象に残るのがなんだか不思議。

この晶文社の「韓国文学のオクリモノ」シリーズは外れなしの良企画でした。韓国の現代文学にはまだまだお宝がありそう!


贋作

贋作

「贋作」:3つの時代を行き来しながら進行する絵画ミステリ。面白かったけどあえて言わせてもらえるなら、サラ、エリーに加えるもう一人の主要人物は、マーティじゃなくて妻のレイチェルにすべきじゃなかったのかな。その方がこの筋書きの裏側にある「女性というだけで受ける理不尽な仕打ち」をもっと立体的に見せることができたと思うんだけど。

一見何の不自由のない有閑マダムのようで陰で不妊治療と上流社会との交流に屈託を抱えるレイチェルが、お坊ちゃまの夫マーティをそそのかしてエリーに罠を仕掛けるもいつしか女性同士は共感を呼びあうように…みたいな展開の方が私的にはスッキリくるかなあ。


ディス・イズ・ザ・デイ

ディス・イズ・ザ・デイ

「ディス・イズ・ザ・デイ」:津村記久子の作品は文章も話の運びも上手くてスルスルと読んでしまう。今回も国内サッカー2部リーグのサポーターたち、というメジャーとマイナーの狭間に立つ人たちの微妙な心情を余すところなく描いて読み応え充分。次々と繰り出され、なるほどこんな切り口もあるか!と納得させられるサポーターの心境の複雑さに胸がつまる。そうそう一口にファンといってもいろんな立場があっていろんな愛で方があるんだよね…と最近ちょっとファン心理をこじらせている私には妙に切実な連作集でした。面白かった!



Poldark [DVD]

Poldark [DVD]

「風の勇士ポルダーク」:GYAOの期間限定配信でシーズン2まで鑑賞。どうしてNHKは「ダウントン・アビー」の後にこれを放映しなかったのかしらん。そしたら以前のヨン様ブーム以上のエイダン様ブームが巻き起こったかもしれないのに!

と言いたくなるほどエイダン・ターナーがかっこいい。話はバリバリにメロドラマだけど分かりやすいし、美男美女のコスプレがとってもよろしい。しかしロスはデメルザをもっと大事にしなさい!そんな仕打ちしたら絶対バチが当たるよ!(怒)

新井潤美の読者としては、英国階級意識がとっても分かりやすく(ステレオタイプすぎるくらい)描かれていて興味深いです。いくら頑張っても成り上がり者扱いのワーレガン、いやな奴だけど意地悪したい気持ちはわかるよ…。


新井潤美を読んだ後では何を観ても、もう「階級」のことしか考えられない。


これ邦題がスゴイんですが(汗)、ここでエイダン・ターナーが演じてるラファエル前派の立役者・ロセッティがとっても良かったので日本でちゃんとDVD化してほしいなあ。そのためにもエイダン様ブームが必要なんだけどなあ。



「そろそろ<左派>は経済を語ろう」:階級からの連想で。最近の欧州のポピュリズム的傾向を経済学的視点から解き明かしていく内容は、私にはとても勉強になりました。もともと「上/下」の階級闘争だった政党の関係が「右/左」の思想論争にねじれていった結果さまざまな矛盾が生じている、みたいな説明が面白かったので、関連図書を読み込んで色々考えてみたい一冊。

2018-06-16

[][]「The Comet Seekers」(Helen Sedgwick) 08:12

読むきっかけは多分The Irish Timesの書評。とーっても私好みのお話でした:

The Comet Seekers: A Novel

The Comet Seekers: A Novel

南極調査隊の一員として出会い、お互いに惹かれ合うものを感じる2人、Róisín(ローシーンと読むのかな?)とFrançois。物語はそこから2人の過去に遡っていく。


アイルランドの田舎で2つ下の従兄弟 Liamと育ってきたRóisín。頭脳明晰で彗星の研究者を目指すRóisínにとって故郷はあまりに狭く魅力に乏しい。一方、昔から農場を営んできた家系である Liamに故郷を離れるという選択肢は無い。成人し愛し合うようになる2人だが、生き方の違いが2人の仲を引き裂いていく。


フランスはバイユーに住むFrançoisの一族は、彗星が地球に近づくと館に住みつく祖先たちの霊と会話できる、という不思議な力を備えていた。Françoisはまだその力に目覚めていないが、母親のSeverineは若い時から祖先たちと深く関わりあうあまり周囲からは狂人扱いされ引きこもりがち。幽霊話には懐疑的なFrançoisも、母親を気遣って傍らを離れないようにしていたのだが…。


リケジョの生きづらさがリアルなRóisínの物語と、ハリポタばりのファンタジー要素満載のFrançoisの物語。彗星という共通点を持って交互に語られる2つの物語が、重なりそうでなかなか重ならないのがまたニクイ。はかないようで実は周囲に強い影響力を与えている彗星という存在が、作品全体のモチーフとして効果をあげている。


もともと学者系女子の話にヨワい私はRóisínの生き方に惹かれちゃいました。学術的目標に向かっては迷いなく進めても、そこに人間関係のしがらみが加わると途端に不器用になってしまう。うーん切ない。

あと今どきの女子としては、Françoisが「南極料理人」というのもポイントが高いですね!(爆)


新潮クレストあたりで翻訳が出て、ついでに映画化とかしてくれると嬉しいなあ…と夢見たくなる作品でした。私にしては柄にもなくロマンティック。でもいいですよ。

2018-06-11

[]最近読んだ本から 07:02

地球にちりばめられて

地球にちりばめられて

「地球にちりばめられて」:昔はあまり好きではなかったのに、今では新刊が待ち遠しくてならない多和田葉子。今作も多言語にまたがる言葉遊びを駆使しつつ、移民や原発など現代の問題点を徐々に浮かび上がらせる内容で、分量はそれほどでもないのに読み応え充分でした。今のところ上半期の国内作品ベスト。



太平洋の精神史:ガリヴァーから『パシフィック・リム』へ

太平洋の精神史:ガリヴァーから『パシフィック・リム』へ

混血列島論 ポスト民俗学の試み

混血列島論 ポスト民俗学の試み

「太平洋の精神史」/「マニエリスム談義」/「混血列島論」:読めば読むほど関連図書まで手を伸ばしたくなって沼にハマるタイプの本たち。みんな博覧強記すぎて困るー。



文芸翻訳教室

文芸翻訳教室

「文芸翻訳教室」/「理系のための『実践英語力』習得法」/「英語のこころ」:英語ネイティブでない人間は、こういう本をひたすら読みこんで地道に一つずつ穴を埋めていくしかないんですよね…語学に近道はない、と思ってます(え、違う?)。

2018-05-05

[]最近読んだ本(と観たドラマ)から 08:24

時間もないのに歴史ものというか大河ドラマにハマっております。きっかけはCSで放送した「イサベル 波乱のスペイン女王」。15世紀にスペイン統一の礎を築いたイサベル1世の波乱万丈の生涯を描いたもので、これがみんな陰謀を張り巡らせるから話はなかなか進まないんだけど、めっぽう面白かったのです。女子としては「ベルばら」でいえばアンドレ・ポジション(愛しい女王を陰で支える役)のゴンサロ(鈴木亮平顔)が特にお気に入り。

今は続編の「フアナ」を経て「カルロス」観賞中。いやあ勉強になるなあ。とにかく人間関係(というか婚姻関係)が複雑なので、ドラマでジックリ観ないと覚えられません。


狂女王フアナ―スペイン王家の伝説を訪ねて

狂女王フアナ―スペイン王家の伝説を訪ねて

というわけで、復習で↑あたりを読んでみたり。語り口があまり好みではないけど、ドラマファンにはちょうど良いとっつきやすさかも。


しかしこのイサベルの末っ子がイングランドに嫁いでキャサリン・オブ・アラゴンとして苦労するわけね…と思うと胸が痛む。ちょうどGYAOで期間限定配信をやっていた「チューダーズ」を再鑑賞してしまいました:

チューダーズ <ヘンリー8世 背徳の王冠> DVD-BOX1  チューダーズ <ヘンリー8世 背徳の王冠> DVD-BOX?  チューダーズ <ヘンリー8世 背徳の王冠> DVD-BOX3  チューダーズ <ヘンリー8世 背徳の王冠> DVD-BOX ?


『ウルフ・ホール』『罪人を召し出せ』を読んだ影響で、再鑑賞の今回は特にウルジー、トマス・モア、クロムウェルの関係性に注目して楽しみました。次に観るときはスペイン(と神聖ローマ帝国)との関係が気になるんだろうなあ(何度でも観たい)。

ウルフ・ホール (上)  ウルフ・ホール (下)  罪人を召し出せ



調子に乗って↓なんてパラパラ見ていたら久しぶりにマンガも読みたくなって:


読み始めたのが『天上の虹』。里中満智子はそれほど好きな作家ではなかったのだけど、これを読むとベテランとしての構成力の上手さに唸らさせっぱなし。(これも人間関係(婚姻関係)が複雑なんですが、それぞれのキャラがしっかり描かれているのですんなり頭に入ってくる)先陣に立って少女マンガの世界を開拓してきた彼女ならではの主張も一貫していて、いやよく完結してくれました。続編的意味合いの『女帝の手記』もこれから読みます。


で、今はAmazonプライムで解禁になったHBOのドラマ「ローマ」を今頃いそいそと観ております。ヴォレヌスがんばれー。

ROME [ローマ] 〈前編〉 [DVD]  ROME [ローマ] 〈後編〉 [DVD]

2018-04-20

[][]「Inch Levels」(Neil Hegarty) 07:11

昨年 Irish Times紙のBook Clubにも選ばれた気鋭の新人、ということで読んでみました:


Inch Levels (English Edition)

Inch Levels (English Edition)

Inch Levels

Inch Levels

舞台はデリー州(北アイルランド)とドネガル州(アイルランド)の州境(国境ともいえる)、と言うだけで複雑な歴史が推測できそうな地域。さらにフィヨルドという独特の地形を活かして第二次大戦中は軍港としても栄えたとのこと。そのあたりの歴史は物語を語る際に随所に差し挟まれる。


物語は少女の突然の失踪、そして数日後の遺体の発見から始まる。明らかに殺人、しかし手がかりは何もなく、現場周辺の住民の間に悲しみと空しさ、そして怒りが広がっていく。


…ここから事件解明に向けて進んでいくのかと思いきや、話は突然数年後、ガンで死期間近の若者とその家族を中心に回っていく。愛情表現が下手でしばしば話し相手を傷つけがちな母親を筆頭に、存在感の薄い父親、優しいが情緒不安定な姉といけ好かないその夫、そして血縁でもないのに何故か常に母親と一緒にいる女性、といった面々のそれぞれの過去が、時代を行きつ戻りつしながら描かれる。


いやそれはそれで充分面白いんだけど、でも殺人事件はどうなったの?この一家と殺された少女の間に直接的な関係は何もない。同じ地域に住んでいて、事件に関する一連の報道をみな気にかけていたというくらいで…。

、と思ったら、終盤に思わぬ接点が出てきて一応ミステリとしてはオチがつく。イヤミスですけどね。


登場人物の中で一番印象的なのはやっぱり母親。最近読んだコルム・トビーン『ブラックウォーター灯台船』の母親にも通じる、愛情表現の不器用さ。アイルランドの母親って『アンジェラの灰』的に愛情深くおおらかなイメージがあるけれど、その陰には本来家庭向きでない女性(私だ)の人一倍の苦労もあるんだろうなあ。


アンジェラの灰 (上) (新潮文庫)

アンジェラの灰 (上) (新潮文庫)

アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)

アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)


しかしアイルランド作家の青田買いはやはり収穫がある。日本にも紹介されてなくはないんだけど、もっとまとまった形で意識的にキャンペーンをやってほしいものです。(その点、韓国の現代文学は今とても良い形で紹介されていてうらやましい)


この人は順調に新作も続々発表していて、若手の中でも一歩抜け出ている感じ。


なんでこんな表紙なんだろ?中身と違和感があって残念。


きみがぼくを見つける

きみがぼくを見つける

これは邦題に違和感。良い話なのになあ。

2018-04-15

[]最近読んだ本から 07:04

面白い本、沢山読みました:

日本人の恋びと

日本人の恋びと

『昏い水』/『日本人の恋びと』:どちらの物語も人生の終盤に入った老齢の女性達を中心に展開するのですが、いやあみなさんなんてパワフルなの。「老い」を主題に日本だと暗くシリアスにしか進まないような内容も、ユーモアも交え人間味たっぷりに描いてあってグイグイ読まされました。周辺の人物も丁寧に書き込まれていて、全員主人公になれそう。


ドラブルは以前読んだエドナ・オブライエンと同様、日本ではフェミニズム運動の流れの中で「女性の本音小説」的な紹介をされていた印象があって、ちょっと敬遠気味だったのですが、今回読んだらその辺の背景なんてもうどうでもいいなーと思える面白さでした。ドラブルとオブライエンの旧作、新潮クレストあたりで出し直したら色眼鏡なしに素直に読んでくれる読者が増えそう。私ももっとちゃんと読んでみよう。



雪の階 (単行本)

雪の階 (単行本)

『雪の階』:やっぱり奥泉光は読んでて楽しいなー。今作は『グランド・ミステリー』を彷彿とさせる骨太のミステリで、そこここに奥泉節を散りばめながらもメタに逃げ込まなかったので好印象。

しかし奥泉作品に出てくるダメ男くんって、本当に残念なインテリダメ男くんばかりで読んでてニヤニヤしてしまう。女性の方が決断早くて行動力があって気持ちいいよね!



外の世界

外の世界

『外の世界』:マグリットの不穏な挿画が表紙だったので、不条理&メタっぽい話かな?と思っていたら、事実関係は実際に起こった誘拐事件をかなり忠実にたどっていると知ってちょっとビックリ。過去と現在が交差する構成が絶妙でまたビックリ。しかもあとがき読んだら以前読んだ『パライソ・トラベル』の作者の新作と気づいてまたまたビックリ。いやあすっかり忘れてましたけど(汗)、現在精力的に活動しているようで嬉しい限り。今度は忘れないよ!



ゲームの王国 上

ゲームの王国 上

ゲームの王国 下

ゲームの王国 下

『ゲームの王国』:SF大賞受賞作。上巻から下巻への「切り換え」感が素晴らしい。SFというジャンルにこだわらない人にこそおススメしたい作品なので、受賞はひょっとしてむしろ潜在読者を遠ざけるかも?逆にSFファンは前半読んで「これはSFではない」って言うかも?ジャンル小説業界ならではのこういう問題提起は面白いですね。

2018-04-14

[][]「You Should Have Left」(ダニエル・ケールマン) 05:49

大好きなケールマン。1年前に購入したのになかなか読めなくて、今回ようやく:


You Should Have Left (English Edition)

You Should Have Left (English Edition)


ドイツ語からの英訳。オリジナルは↓:

Du haettest gehen sollen

Du haettest gehen sollen


スランプ気味の脚本家が家族で借りた一軒家にこもって新作を書こうとするも、邪魔や邪念でなかなか思うように筆が運ばず…、という「バートン・フィンク」と「8 1/2」と、あとちょっとだけ「シャイニング」みたいな話。脚本の台詞が地の文に混入してきたり、文章が書きかけのまま放置されたり、とやや実験的な小品。ケールマンらしいシラッとしたユーモアは感じられるけど、最新作「Tyll」↓の執筆中、気分転換にさらっと書いてみましたみたいな感じ?


Tyll (German Edition)

Tyll (German Edition)

ただいまドイツのベストセラーリスト入りの「Tyll」はドイツの伝承的人物、ティル・オイゲンシュピーゲルをモチーフとした歴史小説ということで、めちゃくちゃ興味ありますねー。

【参考】「世界の書店から:第215回@ミュンヘン」(Asahi Globe)


そういえば「僕とカミンスキー」の映画、DVDになったら観ようと思ってたのに全然音沙汰なし。公開からもう一年になるのになあ。どこかでネット配信でもしてくれないかしら。

2018-04-08

[]最近読んだ本から 08:07

今回はまずドイツ括りで:


ヒトラーの試写室 (角川文庫)

ヒトラーの試写室 (角川文庫)

ヒトラーの試写室』:ナチスの映画好きや日独共同映画「新しき土」には前から関心があったので、もっと面白く読めると思ったんだけど…うーん? 主人公があまりに物語の展開に都合のいい役割で、魅力に乏しいのが惜しい。脇役の円谷の方がやっぱり気になっちゃいますね。


『「新しき土」の真実』:、というわけで、上記の関連資料として読み始めているわけですが、事実は本当に小説より奇なりで非常に興味深いものがあります。あとやっぱり孫引き資料は信用しないこと、と肝に銘じました。



メルケル右傾化するドイツ』:メルケルの生い立ちをたどりながら、彼女の理想主義的采配の反動でドイツという国が右傾化に進んでいるという、ちょっと回りくどい主張。メルケルはこの難しい状況下で良くやってる方だと思いますけどね。



ナチスの「手口」と緊急事態条項』:政治や憲法について語るにはこのくらい丁寧に論を重ねなければいけない、という好例を見せてもらいました。


ほかにもいろいろ書きたいことがありますが、ここで一旦休憩。

2018-02-18

[][]「This House is Mine」(Doerte Hansen) 16:00

久々に洋書など:


This House Is Mine: A Novel

This House Is Mine: A Novel


ドイツ語からの英訳。原書はこちら↓:

Altes Land: Roman (German Edition)

Altes Land: Roman (German Edition)


ドイツから離れた今もSpiegel誌発表のベストセラーリストはなるべくチェックしていて、2年前にこの作品が長らくリスト入りしていて興味を持っていました。今回英訳版が出ているのを見つけて読んでみました。

【参考】ゲーテ・インスティチュートによる特集記事(英語)

プロイセンからの難民としてハンブルク郊外で苦労してきたVera。義父から譲り受けた家で孤高の人生を送っていた彼女の下にある日、遠縁(異父姉妹の娘)の Anneが幼い息子と共に駆け込んできて…。


全編を通して印象に残ったのは「refugee」と言葉。Veraはもちろん、実家ともダンナとも仕事ともママ友とも折り合いがつかず遠縁のVeraに縋るしかなかったAnneもまた、ある意味現代社会での難民。そんな二人が距離感を保ちつつもゆっくりなじんでいく感じが面白い。


都会から逃れて田舎へ…という話にありがちな感動的な人情噺にならず、皮肉の効いた視点を交えて展開していくのもなかなか魅力的。Veraの隣人のうち、田舎生活礼賛ネタで一儲けしようと企むジャーナリスト夫婦の奮闘ぶりとか「あるある」感満載で思わずニヤリとしてしまう。

さらっと読めるけど軽いわけではない、絶妙なさじ加減が上手いなあと思える作品でした。新潮クレストあたりで翻訳出ないかなあ?

2018-02-11

[]最近読んだ本から 08:52

前回はアイルランド括りでまとめたので、それ以外のものを:


『地下鉄道』:ピュリッツアー賞も受賞した話題作。もっと長くて読みにくいかと思ったらスイスイあっという間に読めちゃってもっと読みたーい。停車駅をもっともっと増やして黒人奴隷の様々な局面を描いてほしかったな、というのは読者のワガママですね、はい。でもテレビシリーズにしてオリジナルエピソードをどんどん足してくれればいいな、「銀河鉄道999」みたいに!



ネバーホーム

ネバーホーム

『ネバーホーム』:レアード・ハントを読むのは初めて。南北戦争絡みで女性が男性の代わりに戦場に赴く、という実話を元にした設定も驚きだけど、その語り口もまた独特で秀逸。久々に柴田元幸節を堪能しました。旧作も読まなきゃなあ。



U

U

『u』:皆川博子の想像力は留まるところを知らないのか?今回も2つの隔たった時代の物語をどう接続するのかと思ったら…こうきたか…ちょっとビックリでしたね。ヨーロッパもの好きなら読むべし。



『ソロ』:作者がインド系ということで作品の舞台もインドなのかと思ったら、20世紀のブルガリアドイツが中心で、私としてはかなりオイシイ設定。物語の展開も第1部と第2部のくっつき具合というか離れ具合がなんとも絶妙でそそられました。前に挙げた皆川博子もだけど、みんないろいろ考えるねえ(感心)。


映画もネット配信でちょこちょこ観ましたが、海外文学絡みだと:


『メッセージ』:もっとメチャクチャに改変してるのかと思ったけど、まあ…まあ…映画だからしょうがないかなというところ。原作の良さが活かされてるのは2割くらい?でもそれは原作が超傑作だからしょうがないよ!普通に観たらそれなりに面白いよ!(…そうかな?)



『白鯨との闘い』:「白鯨」執筆にあたりメルヴィルが参考にしたという、捕鯨船座礁の顛末を描いた実話の映像化。いやあ事実は小説よりエグい…そしてCGによる嵐や捕鯨シーンが凄まじい迫力。当時の捕鯨の様子がよく分かって興味深かったです。これはホント命がけや…。

個人的には、ほとんど出てこないメルヴィル役をベン・ウィショーが演じていて思わずウットリ。もうこれだけでお釣りが来ます。いや主演のヘムズワースもこういう荒くれヒーローが似合ってかっこいいけどね。



最後に、最近のお気に入りワイン(唐突):

「ジェルソ・ネロ」:プーリアの赤ワイン。地ブドウ系って1杯めはインパクトがあって美味しいけど、ボトル1本飲みきるころには大抵飽きてもういいや、ということが多いんですが、これは全然飽きなくてスルスルいける!というわけでリピート中。濃いけどまろやか。