「This House is Mine」(Doerte Hansen)

久々に洋書など:


This House Is Mine: A Novel

This House Is Mine: A Novel


ドイツ語からの英訳。原書はこちら↓:

Altes Land: Roman (German Edition)

Altes Land: Roman (German Edition)


ドイツから離れた今もSpiegel誌発表のベストセラーリストはなるべくチェックしていて、2年前にこの作品が長らくリスト入りしていて興味を持っていました。今回英訳版が出ているのを見つけて読んでみました。

【参考】ゲーテ・インスティチュートによる特集記事(英語)

プロイセンからの難民としてハンブルク郊外で苦労してきたVera。義父から譲り受けた家で孤高の人生を送っていた彼女の下にある日、遠縁(異父姉妹の娘)の Anneが幼い息子と共に駆け込んできて…。


全編を通して印象に残ったのは「refugee」と言葉。Veraはもちろん、実家ともダンナとも仕事ともママ友とも折り合いがつかず遠縁のVeraに縋るしかなかったAnneもまた、ある意味現代社会での難民。そんな二人が距離感を保ちつつもゆっくりなじんでいく感じが面白い。


都会から逃れて田舎へ…という話にありがちな感動的な人情噺にならず、皮肉の効いた視点を交えて展開していくのもなかなか魅力的。Veraの隣人のうち、田舎生活礼賛ネタで一儲けしようと企むジャーナリスト夫婦の奮闘ぶりとか「あるある」感満載で思わずニヤリとしてしまう。
さらっと読めるけど軽いわけではない、絶妙なさじ加減が上手いなあと思える作品でした。新潮クレストあたりで翻訳出ないかなあ?