12月4日-12月17日

ボートの三人男 (中公文庫)
犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」を読んで以来、ずっと気になっていた。三人と一匹の楽しい船遊びのお話。腹を抱えて笑うのではなくて、口元に微笑を浮かべるような軽やかな可笑しさのある小説。モンモラシーが熱湯と格闘するほどやんちゃな犬で心ときめいた。
少年少女飛行倶楽部
空を飛ぶことを目的とする飛行倶楽部を舞台にした青春物語。さっすが加納朋子!という爽やかさ。恋愛描写にも定評のある作者だが、最後の先輩の発言は、その、大変きゅんとしたけれど、中二の若造変人先輩に言わせるにはちょっと高度すぎる発言ではないかと。大変きゅんとしたけれど。
黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション (5) (角川ホラー文庫)
後世の読み物に登場するとき、大抵、明智小五郎という人は澄ましきった完璧超人みたいに描かれている。が、原作を見返すと案外、馬鹿で間抜けで人間味のある奴なのだ。黒蜥蜴は、女賊のあやしさ美しさと彼女の美術館のほどよいエログロ加減が相まってすごくいい。そこに明智が加わることでぐっとチャーミングになる。取り澄ましていていけすかない奴だけれども、確かにいいキャラクタではある。
シングルベル
山本さんの描くパワフルであくの強い魅力的な女性が好きだ。最近のオシゴト系小説のやや情けない男性キャラクタも悪くはないが、やはり物語をぐいぐい引っ張っていってくれるこの存在感、たまらない。変型お見合い小説で、いずれもあくの強い女性が三人、さらに身内の老女三人に、小悪魔な少女が一人。船頭が多すぎて山に登れない感もあるにはあるが、最後は見事に着地、おみごと!
メタル・アイズ (集英社スーパーファンタジー文庫)
積読の山から10年越しの発掘。表紙の女の子の厚ぼったい唇に惹かれてジャケ買いしたのだと思う、おそらく。薬害で特殊能力を発症した主人公がその能力を生かして警察で働いているよという設定で、警察の捜査がお粗末な以外は結構骨太。主人公を取り巻く人間が大変インパクトのある人たち揃いで、シリーズ化を見越しているような詰め込み具合だったが、2009年現在、続刊はない模様。
マザーグースのミステリー
人から人へ伝わるうちに語句が変化していったことを考察する5章あたりは大変楽しく読めたが、舞台となった教会はこっちじゃないの?ってなつっこみに終始していた1章などにはあまり興味がわかず。知っているものは物語のまた聞きが主で、詩のリズムや響き、その不条理さにうっすら興味があるという初心者マザーグースファンにはちょっと敷居が高かったかも。