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2013-05-11

野々原ゆずこという視点、その風景、そして憂鬱 / 『ゆゆ式』 5話

前回の記事においては 『ゆゆ式』 世界における彼女たちの共有感や、また共有しようと望むその目線の置き方について書かせてもらったわけですが、しかしながらこの5話においては一転して彼女たちの世界における断絶を描いていたように感じられたと言いますか。

それはこれほどまでに独特の空気感を即興且つ、変幻自在に作り上げてしまう彼女たちにしても、やはりその何もかもが一心同体では決してなく、相容れない目線というのも確かにそこにはあるのですということで、つまりは簡単に言ってしまうと “親友以上、幼馴染未満” という立場を取る野々原ゆずこの立ち位置って実はかなり危ういよね、とかいうそんな話で。

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特にそういったことを強く意識させられたのは、唯と縁が織り成す世界観からゆずこがそれとなく疎外されているように感じられるカットの数々。画面から若干見切れているところも含め、またそれは “彼女の目線” 的なアングルそのものでもあるように感じられました。

自分だけが知らない過去を語る二人の笑顔と、その空気感は彼女のその目線からしてどう映り込んでいるのかという疑問。常におどけてみせる彼女の上辺からは徹底してコメディチックな言動が飛び出しますが、しかしその裏で彼女が抱える “そうしてみせる理由” は一体、どのような感情をその発露としているのか。

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それは例えば、ゆずこの視点によって描かれる “手を繋ぐ二人を眺める” というこの一連のシーン。この辺りなんかはすごく顕著だなぁなんて思えたりもするもので、このAパートラストにおいて彼女がつぶやく 「ぐねっとくもんだね」 の一言からは、それこそ現状況下を笑いに転化するための意味合い(話としてのオチ)というものを強く感じさせられるわけですが、その反面、やはりこのアングルの置き方からは一枚の厚い壁というものをどうしたって克明に意識させられてしまうわけです。

で、そうなってくると必然と彼女の中にあるであろう感情や本音については大まかにその憶測を立てることが出来てしまえるわけで、やはり彼女はどこかこの3人の中における自分という立ち位置に不安感を抱えているのではないか、などと思えてきてしまう上に、そこにこれまでの彼女の姿勢やおどけっぷりが加味されると尚のこと強烈に彼女が抱える不の感情がどんどんこちら側に押し寄せてくる。

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また 「ゆずこは頭が良い」 という背景や、それこそ目まぐるしく話題を変則するテクニックに加え、その流れに上手く取りついていく柔軟性、また時折挟み込まれる思考的な独白のシーンなどなど、ゆずこって実はちゃんと考えて行動してるよねっていう描写がなかなかに多かったりするわけで、だからこそ、彼女がただその場任せというスタンスで行動したり、喋ったりしているようには到底、私は思えないのです。

そして、それ故に垣間見えてくる彼女が抱える不安や憂鬱といった感情はより色濃く映し出され、画面の節々からもそれはじわりと滲み出す。鳴らない電話を擦る指の重さ、その動きの切なさからは、どうしたって 「ああ、やはり…」 という感情を身に沁み込ませずにはいられない、、とかそんな感覚。

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けれど、そんなコミュニティ内における壁を描いた上であったとしても、最終的にこの作品はその反語として 「けれど彼女たちは並列であり、その目線は共有される」 ということをしっかりと描き出してくれたことが何よりも嬉しかったと言いますか。

それは唯の「(3人が死ぬ時って)一緒な気がする」だったり、縁の「私たち、ずっと一緒なら不死身だね」 のその一言だったりで、“仮に違う部分が私たちにあったとしても、その程度で私たちは崩れない” というその想いの強さに他ならず、またそれを彼女たち自身が直接的な愛情表現をもってしっかりと語ってくれたからこそ、それまでのゆずこの負の感情はその表情を表層に出さぬままこの温かな空間に飲まれることができたのだと思います。

それに今回はたまたまゆずこにスポットライトが当たった形になったわけですが、これは縁にしても唯にしても実は同じなんじゃないかな、などと思っている節があったりもして、彼女たちは常に “相手が何を見て、何を感じているのか” という事柄を必死に探り当てようと模索し、その気持ちを共有しようとしている。それはある種、テーマを定めた上で、広大なネットの海から彼女たち3人が落ち着くことのできる答えを探すが如く、なんとなくでありながら、けれども確かにそれは方向性の定まった彼女たちなりの愛情表現であり、また彼女たちだからこそ出来る意思の疎通方法でもあるのだと思います。

繋がりを常に求めたいというか、まぁようするにみんなやっぱり不安だったり、怖かったり。それこそ4話における保健室で目を覚ました唯が感じた不安とか、そんなネガティブな感情の揺らめきの上で彼女たちは手を取り合って歩いているんだなぁと。

まただからこそ、相川さんや今回描かれたモブキャラのように、彼女たちの空間を遠巻きで眺めつつ 「入れない」 とか感じてしまうのは凄く分かるなとか、そんなことにも思いを巡らされた今回の話ではありました。まぁ私は彼女たちを見ているだけで幸せなので、そんな遠巻きでさえも、この場所に居させてもらえるだけで嬉しい限りだなとか、今はこの世界に沁み染みとそんな想いを馳せている次第です。

ゆゆ式 (5) (まんがタイムKRコミックス)

ゆゆ式 (5) (まんがタイムKRコミックス)

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